研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2014年11月8日土曜日

スズキCARRYのオートギヤシフトに乗ってみた


現在、世界最高のギヤミッション・オートマチックだ

軽トラックでもトルクコンバーターを使用したAT(ステップAT)はあるが、どうにも効率は高くないし、駆動力は力強さという点から、現場で酷使される軽トラックとしては魅力が薄い。

同じ仕様であると販売価格が3ATと同じ。そして、JC08モード走行燃費は5AGSが一番いい。ただし、それが使用時の燃費と結びつくわけではないが、全体的にいい方向へ行くことは確かだ

機械的な精度と、それを働かせる制御がマッチングすれば、ステップATに負けない、ギヤミッション・オートマチックが出来る。それを証明したのがスズキキャリイに搭載された5AGSだ

やはり、ダイレクトに駆動が伝わるMTが求められるのだが、今ではAT限定免許という方が多い時代。

そのような背景もあって生まれてのが、ギヤミッションのシフトをオートマチックにするというもの。

欧州メーカーではかなり前から、このギヤミッション・オートマチックを採用しているが、アップシフトするたびに加速力が大きく抜けるため、身体をドライバーの運転方法にかかわらず、前後に揺す振られ、決して乗り心地がいいものではなかった。

だからといって、軽自動車ならこのようなシフトの悪さが許されるはずも無く、ツインクラッチとはいかないまでも、昔のステップAT(電子制御される前の話)並みか、それ以上が求められる。そして開発されたのが、スズキ・キャリーに搭載された5速オートギヤシフト(5AGS)である。

その結果、さすがに気持ちがこめられている。発進加速の最中でもシフトのたびに発生するはずの、不快な加速力の変化を感じさせないのだ。

アクセルを少し踏んでの発進加速は当然だが、一番変化の出易いアクセル半分踏みでの発進加速でも、非常に素直で、文句のつけようが無い状態。それこそ、一昔前のステップATよりも加速力の変化が無いぐらいである。

今、世界で一番のギヤミッションATがスズキのキャリイに搭載されている5AGSと断言できる。こいつを超えられるメーカーは出るのだろうか、楽しみである。

欲を言わせてもらうなら(開発者には話したが)、マニュアルモードでのシフトは、もっと素早く出来ないのか、それによるショックが出ても当然のこととして受け入れられるので、ドライバーの意思を優先し、スパッとシフトアップ、シフトダウンが望ましい。

このマニュアルモードにおいても、オートモード同様にショックの無いことを重視しているということだったが、それは違うように思う。

MTでのシフトダウンは、エンジンブレーキを重視したいことから、クラッチを繋いだときのショックは出てきて当然であり、スムーズにクラッチを繋ぐようなことをやっていたら、空走時間と距離により速度が速くなって、エンジンブレーキどころではなくなるからだ。そう考えれば、オートギヤシフトのマニュアルモードでも、同様なプログラムは必要と判断した。

そういえば、トヨタが10年以上前に発売していたMRSのクラッチペダルレスでは、ギヤミッションでありながら、クラッチは電子制御であっても、ギヤシフトはマニュアルモードのみ(オートモードは開発していたが完璧ではなかったという)。

アクセルを踏んだままのシフトでも、インジェクターの制御と点火時期の制御で、違和感のある大きなシフトショックは無かったと記憶する。電制スロットルが採用される前でこれが出来たのだから、現在の技術を使えば、MRS以上のマニュアルモードによるシフトが完成できても不思議ではないだろう。

2014年11月7日金曜日

新型マツダ・デミオの1.5リッターディーゼルは、2.2リッターエンジン開発とは違った苦労があった


デミオクラスに搭載されるディーゼルエンジンであれば、1.5リッターとなることは自ずと判断できるのだが、ただ単純に排気量が小さなエンジンを造れば済むようなことではない。それがガソリンエンジンとポスト新長期を目指したディーゼルエンジンの大きな違いである。
新開発の1.5リッターディーゼルエンジン。マーケットは日本ばかりではない。アメリカでは魅力を感じてもらえないので、輸出するつもりはないという話だ
 
当然、Noxは後処理なしで、2.2リッター同様に基準値以下。アメリカ輸出のため2.2リッターではEGRの量を増やして対応しているが、1.5リッターとしてはアメリカ輸出を考えていない。それは、排気量が小さいと(アメリカ人は多少燃費が悪くても、とにかく大きなトルクを要求するので)、いくらディーゼルの燃費が良いからといって、購入する気持ちが働かないからだという。


もちろん先輩である2.2リッターエンジンがあるから、それと同等の燃焼効率で軽いフットワークを望まなければ話は簡単だが、それでは許されない世界をマツダ自身が作り上げてきた。

製造コストもそうであるが、小さなエンジンルーム内に収めるには、2.2リッターエンジンでやってきたことの一部を大きく変更しなければならなくなる。それがインタークーラーの取り付け場所と形状である。

すでに欧州メーカーでは取り入れているが、吸気コレクターの容積を上げ、そこに水冷式のインタークーラーを取り付けるという方法を採用した。排気量の大きなエンジンでは効率が悪くなる状況でも、1.5リッターであるなら、十分高い冷却効率とスペース効率、充填効率を確保できたのである。

吸気コレクターの中に納められた水冷式のインタークーラー。コンパクトであるだけではなく、過給パイプも短くなり過給遅れが小さいのも特徴
 
また、吸気マニホールドとターボコンプレッサーを繋ぐパイプが短くなるため、過給圧の上昇が早く、過給遅れの症状が小さくなることも見逃せない。

最大過給圧は2気圧でインジェクターの最大噴射圧力は2000気圧。これは2.2リッターエンジンと同じ。ただ大きく違うのはインジェクターの駆動がピエゾ素子からマグネット式に変更されたこと。それによるコストダウンはかなりあるというが、求める性能は十分で、インジェクターとしての作動インターバルはピエゾが0.1mmS(ミリ・セカント)であるが、新開発のマグネット式は0.2mmS。これまでのマグネット式では0.4~0.5mmSであったことからすると、大きな飛躍であり、噴射パターンを少なくしても排気ガス問題も起こらず、燃焼音も小さいので問題は出ていない。

下が1.5リッター用に開発したマグネット式のインジェクター。作動インターバルはピエゾに及ばないが、目的の噴射パターンには対応している
 
インジェクターの作動は大半が5パターンで、DPF再生の時には6パターンとなる。通常の噴射パターンはパイロット・プレ・プレ・メイン・アフターである。

ターボチャージャーは2.2リッターのようなシーケンシャルツインではなく、シングルで、それにVG(バリアブル・ジオメトリー)採用とした。

タービンに排気ガスが当たる角度を自由に調整できるVGターボの利点を生かし、冷間時始動ではVGを全閉とし、部分燃焼した排気ガスが行き場を失い、これをシリンダーに押し戻すことで、初期の圧縮温度を高め、始動を確保している。2.2リッターのような排気バルブを一時的にリフトして、吸気行程でその排気ガスを引き込むというような機構は採用していない。

VG付きのシングルターボ。バルブを完全に閉めることで、冷間時の始動性を確保した
 
また、排気量の関係で冷却損失が大きいため、圧縮比は2.2リッターの14よりも高い14.8にせざるを得ない状況になっている。

さらにシリンダーボアが小さくなることで、これまでの技術では追いつかない状態が出たため、ピストン頂面の形状を変更することによりこれを改善。

何が起きていて、それをどのように改善したのか

燃焼室(ガソリンエンジンとは違ってピストン側にある凹み)の形状こそ2.2リッターエンジンからの踏襲したエッグシェイプだが、マツダのSKYACTIV-Dは上死点燃焼を目標としている関係で、燃焼室上部端面からシリンダー壁面までの距離が小さいと、ピストンが下がる前に燃焼ガスの初期火炎がシリンダー壁に当たり、シリンダー壁面熱損失が発生するため、燃焼室に近いピストン頂面の一部を削り、段付きとしてこれを抑制。

右が1.5リッターディーゼルのピストン。ピストン頂面を見れば、段付きの形状がわかるだろう。これで効率を高めている。左が2.2リッターのもの
 
また、インジェクターからの噴霧を出来るだけ小さく飛ばし、燃焼初期の高温ガスを、出来るだけ燃焼室壁面から離すことで壁面熱逃げを抑制し、燃焼効率を高いものとした。

これによるトルク特性は、2.2リッターのような山型ではないものの、5200回転まで気持ちよく回るエンジンにより、十分に楽しめるエンジン特性を得ている。
1.5リッターディーゼルエンジンの上にカバーが付くとこうなる。エンジン音の低減だけではなく、見た目にもバランスがいい

カバーを取り外すとこのように。ゴムのグロメットに押し込まれているだけの固定なので、引き上げれば簡単に取り外せる

2014年11月2日日曜日

点火プラグの締め付け後における接地電極の向きについて、えっ、考えていなかったの、という状況が見える


これまで、点火プラグの締め付け後における接地電極の位置によっては、アイドル時の失火に結びつくようなことが起きるので、そのような条件にならないプラグを選んで、取り付けると良い方向に行くということを書いてきたが、それがどうも、そはうまくは行かない、ということがわかった。

つまり、数十年前にトヨタが「アイドル時の不安定燃焼を防ぐため、プラグメーカーに対して、接地電極の位置とネジの関係を統一させた」事が大きく関係していたのだ。

自動車メーカーがシリンダーヘッドの加工をするときに、プラグのネジ切りに関して、常に同じ位置から切り始めれば、プラグメーカーが作る点火プラグの接地電極位置と、燃焼で都合の良い状態は作り出せる。

それは、接地電極の開放している側(溶接部分の逆)が、吸気バルブ方向を向くようにすること。

点火プラグをしっかりと締め付けた後、接地電極の開放している側が吸気バルブ方向を向いていれば、混合気が点火プラグの電極間を流れる確率は高くなり、失火や斑な燃焼を引き起こすことがなくなりやすい。

特に回転数が低い領域では、タンブル(縦の渦)やスワール(横の渦)の発生が少なく、条件が悪い。

その条件の悪さを少しでも解消したい、というのが趣旨である。

さてここでよ~く考えてみると、点火プラグはどれも基本的に同じ位置に接地電極がある。N社は確認(画像でもわかるだろう)、D社は未確認。

このように、ふたつの点火プラグは、ほぼ同じネジの位置に接地電極が溶接されている。なので、点火プラグをしっかりと(ここ大事)締め付けてから、電極の開放側が吸気バルブ方向を向いていなかったら(完全でなくともいい。前後60度ぐらいはOKの範囲)、新品の点火プラグをいくつ購入しても、求める状態にはならない。その対策は、シム(極薄のワッシャ)を自作するか、ショップで購入して、点火プラグを取り付けるときに、標準ワッシャとの間に挟んで取り付けて解決する
 
ということは、もし今取り付けられている点火プラグの電極の向きが芳しくない場合、いくら新しい点火プラグを購入しても、求める位置に点火プラグの電極位置は来ないということ。

全てのバイクと自動車メーカーがこのことに対して、まじめに取り組んでいるわけではいないので(品質のことから考えても損だと思うのだが)、このようなエンジンに遭遇したときには、自分で解決するしか方法が無い。

そのときには、自分で薄いアルミ板や銅板を用いて作るか、チューニングショップ(カー用品店でもありそうだが)で販売している、専用のシムを購入して挟み込む。

点火プラグのネジピッチはBとDが1.25mmでCが1.0mmであるから、それを計算して挟み込むシムの厚さを計算すれば良い。

この方法で、ほぼベストな向きに点火プラグの締め付けが完了したことで、アイドル回転近くから穏やかに発進するとき、不意に発生していた、大きなミスファイヤーも無くなり、安心して走行できるように改善できた。

特にバイクで排気量とシリンダーボアの大きな2気筒や1気筒のエンジンにおいて、発進時にミスファイヤーやパスエンスト(パスッと言ってエンストするから)が出ていたら、この方法で解決出来る可能性は高い。

2014年10月25日土曜日

不定期連載 数式を使わない、クルマの走行安定性の話・4/17


荷馬車の車軸はガタガタが正しい!!!

もうひとつ面白い現象を考えてみよう。それは馬や牛が引くに馬車である。この荷馬車に付けられる車輪は、車軸に対してかなりガタガタである。人間や自転車で引くリヤカーにはボールベアリングが採用されていたにも関わらず、荷馬車の車輪はガタガタで、トーやキャンバーが常に変化する状態に取り付けられている。

これがいったい何を意味するものなのか、車輪の挙動変化や牛の動きを見てみるとなにかが分かる。例えば、どちらかの車輪が石などに引っかかり、動きが一瞬止まったときなど、このガタガタ車輪はトーがアウトになったりインになったりして、受けた外乱を処理しながら荷重の移動を行い、車体の姿勢変化もなく荷馬車は向きを変えることなしに前進する。

ところが、この車軸をボールベアリングで支持したとたんに、彼らは荷馬車を引かなくなる。もちろん衝撃荷重が強く作用すると、ベアリングが破損してしまうことにもなるのだが、そのような問題が発生する以前での話だ。なぜかというと、衝撃的に入る外乱の処理能力が、ボールベアリングの採用で失われたからである。

もちろんここに細い空気入りタイヤが使われていたら少し状況は違ってくる。空気入りタイヤがある程度までの衝撃的外乱は処理してしまうから、荷馬車の走行性にそれほど影響を与えないだろう。

ではなぜ彼らは荷馬車を引くのをやめたのであろうか。それは、車軸のガタがなくなり衝撃的な外乱を処理できなかった反動が、車体に伝わり、前方にのびたアーム(鞍に取り付けて、荷重と牽引力がかかる)がかれらの脇腹を叩くき、その痛みに耐えきれず牽引するのをやめると考えられる。

速度としてはわずか45km/hでのことであるが、車輪は堅くダイレクトな動きとなるために、より強調されることになる。こんな低速車にも、外乱の処理をする必要がある。

馬による牽引車では以下のような状況も見られる。それは、イギリスやフランスの競馬にあるもので、馬に騎手が直接乗るのではなく、小型の馬車を引き、そこに騎手が乗タイプのもの。この馬車に使われるタイヤは、細いが空気入りのもの。車輪とスピンドルは、当然のようにボールベアリングかテーパーベアリングである。走路はハードコートで、舗装ではなく泥と砂を混ぜて固めたもの。当然馬のひずめ等による凸凹や車輪による轍がある。

ここで馬車を走らせれば、路面からの外乱処理が問題になる。しかし、馬車には外乱処理のシステムは取り付けられてはいない。もしここで、馬と騎手だけによる走り方と同じ襲歩(しゅうほ・ギャロップ)としたら、たちまちのうちに馬も馬車も横転するだろう。とにかく、前後左右の足が同時に浮き上がっている状態が、入れ替わりに生じるので、当然のことといえそうだ。

つまり、あくまでも外乱は処理されていない訳で、その力をどこかに分散させてしまうか、あるいは押さえつけてしまうかである。あの馬車の場合、分散させることは難しい、押さえつけるしかない。

そこで生まれたのが、あの一見優雅に見える馬の走り方であると、勝手に結論付けた。その走り方をよく思い出してみると、必ず片側前後の足が同時に、しっかりと路面をとらえている。猫の早歩き方なのだ。つまり、馬車の車輪から入った外乱は、馬がそれを押さえつけてしまわなければならないわけで、あの走り方のテンポとしないと、押さえつけることはできない。ときどき見られる横転事故は、馬車に入り込んだ外乱が大きすぎたことによるものであったり、何かの拍子に、馬が両足を上げてしまったときに起きているように思う。

2014年10月15日水曜日

9月6日にアップしたBMWのX4カタログに出ていた、奇妙なクランクシャフトの結論が出た


このどうにも理解しがたいクランクシャフトの形について、BMW広報へ、調べて置いてくださるようお願いしていた。

その結果がやっと出た。

何のことは無い、少し面白いカタログにしようと、デザイナーが形をいじったというのである。

そこには「誰か気が付くかな」「気付くやつはいないかな」などの気持ちもあったでしょう、というのがBMW広報からの回答である。

実際のクランクシャフトは、ごく普通のワンプレーンで、1番と4番が同じ位置。2番と3番が同じ位置の等間隔燃焼ということだった。

デザイナーのお遊びに付き合ってしまった感じだが、それはそれで楽しかったな~。以上報告まで

2014年10月11日土曜日

不定期連載 数式を使わない、クルマの走行安定性の話・3/17


子供のローラースケートで間違えたセッティングをした

あまりにもお粗末な結論のために、日本車の操縦安定性に対する研究は、大幅に遅れることになったといえよう。ここで、もし基本的に、クルマの設計が悪いという結論になっていたとしたら、もっと早い時期に、まともなクルマになっていただろう。これがチャンスだったのである。

さらにおもしろい話を聞いた。いつ頃であったか忘れたが、日本のタイヤメーカーがメルセデスのバス用タイヤを造ることになったとき、これまでの日本のクルマメーカーから言われたことを重点にタイヤ造りをするつもりで、操縦安定性もその中に盛り込んだところ、メルセデスは「操縦安定性についてはこちらが性能を出すことで、タイヤメーカーが口を出すことではない」と、しかられたそうだ。そのタイヤメーカーに対して要求したことは、耐摩耗性と排水性(耐ハイドロプレーニング)であったそうだ。

ごく身近なところにもタイヤとボディをしっかりガタの無いように取り付けると走行性がおかしくなるものがある。例えば、子供達が使うローラースケートにおける、タイヤとスピンドルとのガタである。今はやりのインラインタイプではない、昔からあるタイヤが4個あるものでの話だ。

タイヤは、ゴムではなくプラスチックか木製。スピンドルとの間には玉押しボールベアリングが使われる。そして、取り付けナットはガタの調整が出来るようになっている。この堅いタイヤは、当然外乱をダイレクトに受けとめてしまう。

ある時、子供のローラースケートをいじっていた父親は、タイヤがガタガタで、ベアリングも油が切れていることを発見した。クルマのメンテナンスに自信のある父親は、そのローラースケートのベアリングアジャストナットを回し、ガタを完璧に取り、ベアリングにも適量のオイルを与え、音もなくスムーズにタイヤが回転するようにしてから、そのローラースケートを持って、子供と公園まで出かけた。

父親は、子供から「とても軽く走れて、スピードもでるし走りやすい」という言葉を期待していたのであるが、1周してきた彼からでた言葉は「とても走りづらくて、足首が疲れる」というものだった。

この状態から考えるに、つまりローラースケートのタイヤは、全ての外乱を処理できず、足に伝えてしまったのである。路面に散らばっている小さな石や凸凹は、ダイレクトにタイヤから伝わり、かつ子供の足の動きや荷重のかけ方が、そのままタイヤの向きを変えることになり、ローラースケートはあらぬ方向へ走り出すので、それを無理にコントロールしなければならず、ローラースケートは気持ちよくスイスイ走らないのだろう。

何が原因かは明らかである。父親が考え違いをしたのである。玉押しのボールベアリングに対して、いくらオイルを注したからと言って、ガタの無いようにしてしまったことが、乗りにくさにつながってしまったのだ。適度なベアリングに対するガタが、ローラースケートを快適に走らせる必要条件であったわけだが、ここで与えたガタはかなりの量で、結果としてみるとタイヤの幅に関係するものであった。

もちろん再調整後に、子供の笑顔が戻ってきたのは言うまでもない。これまで以上に快適になったかどうかは定かでないが、文句を言わなくなったことだけは確かである。

スーパーマーケットでもある現象を見た。それは篭を載せるお買い物カートにおいてである。ここに使われるタイヤは、自由に向きを変える自在キャスター付きのものが4個。このキャスターにトラブルが発生して、自由に向きが変わらなくなるとある問題が発生する。

スーパーマーケットの中のフロアはスリッピーであるし、非常に平らであるから、トラブルを抱えたキャスターでも、押して歩くことに対してそれほど問題が発生しない。多少力は必要になるが、無理をすれば自分の思っている方向へ移動することは可能である。

ところが駐車場に来ると事態は一変する。それまで何とかコントロールできたお買い物カートはとんでもない方角へ向かっていく。スーパーマーケットの中では片手でも、何の問題もなく押せていたものが、グリップのいいコンクリート路面となると、両手を使いしっかり向きを決めておかなければ、止めてある車に接触してしまう。とにかく勝手な方向へ進んでしまうのだ。

ここに使われているキャスター付きのタイヤは、その性質上キャスター角ゼロとして転がり、外乱をうまく処理している。正常に作用しているお買い物カー(カート)のタイヤを見れば、非常な勢いで首を振っていることが分かる。この首振りこそ外乱を処理している結果であるといえる。首を振らなくなったキャスター付きのカートは、外乱の処理が出来ないために、路面次第で勝手に向きを変えることになるのだ。

しかし、タイヤ経が少し大きくなったタイプで見ると、ほとんど首を振っていない。タイヤ幅は同じで外周にゴムを張ってある。当然キャスターゼロ(つまり直角)でもトレールは大きくなる。この部分が影響するのであろう。しかし、首の振り方が悪くなると、かなり悲惨な走り方となる。それは、いくら路面がフラットであっても、お買い物カートのコントロール性が非常に悪く、押して歩くことさえ大変となるのである。

2014年10月9日木曜日

本田エコマイレッジチャレンジの二輪車クラス車両規定が、2014年大会でやっとチグハグではなくなった


二輪車クラス(昨年までは市販車クラス)の規則は、下の文章のようなしっかりとしたもので、基本的に市販認定時の型式を変えてはいけない状態。

右の赤い文章が今年改正された車両規則。これで良いとはいえない。と言うのは、フレーム形式を変更しなければOKなので、アルミで同形式のものを作り、それで参加する、と言うようなことが起きそうだからだ。気軽に普段乗っているバイクで、燃費を争いましょう、と言う趣旨がおかしくなることは十分考えられると思う
 
全長、全幅、全高、シート高などの変更は認めない、というものだが、フェンダー前後やレッグシールドなどは取り外してもかまわない。

この取り外しが・・・で、それぞれ解釈が大きく違っていた。全長の変更はダメ、ということになっているが、一部のバイク以外、リヤフェンダーを取り外す(場合によっては切断)と全長が変わるのだが、それのおとがめはない。

諸元を重視するのか、取り外し項目を重視するのか、かなりいい加減な状態で車検が行われていた。

この状態で腹が立ったのは、2013年に見たもの。リムをアルミにしたチームのバイクを正式参加させない、という競技役員とのやり取り。公平を期するためというが、規則にはリムの材質変更を認めない、という項目はない。まして、認定時諸元に抵触することはないからだ。

公平を最優先するなら車両規則どおりにすべきであり、リヤフェンダーを取り外したり、切断して全長が短くなったバイクは、正式参加(燃費記録は参考値になる)させてはいけないはずだ。

これを正しい方向へするべきである、ということを競技委員長へ申し込みしておいたら、1年、間が開いて今年の車両規則で変更された。

今年は二輪車クラスの参加者が増えた。とても良いことだと思うが、行き当たりばったりでは無く、方向性をしっかりと決めた車両規則で、それを正しく運用しないと、趣旨がどこかへ行ってしまいそうだ
 
要するに、うるさいことは無くなり、大まかな車両規定になったのだ。これならタイヤサイズを変更しないでアルミリムの装着は可能であるし、シートを取り外したり、ハンドルの変更、全幅に関係するフットレストの取り外しなど、やりたい放題が可能となって楽しさ倍増!!!???。しかし、どのような形でも良いので、安全面からフットレストは装備させたほうが良いように思う。

2014年10月5日日曜日

本田エコマイレッジチャレンジ2014で見た、とんでもない光景


とんでもない光景とは、燃料であるガソリンが入る、ガラスの容器(主催者が用意する)のレベルを最終的に調整する、燃料微調整場所で練習走行日の土曜日に見たもの。

なんと、微調整で使用するガソリンが、オイルジョッキに入れられ、無造作にテーブル上に置かれているのだ。

運営組織が変わってからの燃料微調整場所。テーブルの上にボトルに注入するためのガソリンが、オイルジョッキに入れられ、無造作に置かれている。こうすることで、ボトルへの注入はやりやすいが、事故はその分起きやすい。作業性を優先するか、人命なのか、考える必要はないはず。この状態を運営組織が変わって最初のイベントで見つけられなかったのは、申し訳なかったのだが・・・でもこれ俺の仕事か~

もちろんこれが、密閉できる状態なら太陽の熱で暖められていないか、そのことは注意が必要だが、そうではなく、完全に開放状態。

誰かが、テーブルを突き飛ばしたとたん、そのオイルジョッキは落下し、周りにガソリンをぶちまける。隣ではエンジンを始動しているマシンもあるし、路面温度は高い、そこに工具でも落とそうなら、一巻の終わり。

火災になったとたん、周りの人は大慌てで、他のテーブルもひっくり返すことは目に見えているから、そこいらじゅうが火の海になる。

消火器は用意してあるが、常にそれを持っている人がいるわけではない。よって消火活動は出来ない。そこにいる全員が火だるまになるのは明らか。

そう考えたとたん、ぞっとすると同時に私は、その微調整エリアに近寄らないことを決めた。

直ぐに競技委員長へ電話を入れ(俺がやることではないのだが)、現場に来てもらい、状況を説明した。そして、現場のオフィシャルが言いうには「これまでの方法と変わっていません」。「昨年はテーブルの下にガソリンが入ったジョッキを置き、それを使っていましたが、誰かがそのジョッキを蹴飛ばし、こぼしたことがあったので、今年はテーブルの上に置いてます」。「運営組織が変わってから、同じ方法で、それまでのやり方は知りません」という返事。

あそ~ですか、で済ませるわけにはいかない。これでは事故が起きても当然であるし、起きないほうが不思議。起きなかったからラッキーは、イベントとして最低。

「何とかしたほうがいいよ」。ということを競技委員長に申し入れした結果、運営反省会で取り上げられ、決勝当日は燃料を注入するボトルへ給油する係りを決め、ガソリン携行缶からオイルジョッキへ移し、直ぐさまボトルへ注入。数多くのボトルが用意されていた。

ここまではよかったのだが、まだテーブルの上にはオイルジョッキにガソリンが入っている状態が見られた。これは、恐らく微調整で入れすぎたガソリンを抜く注射器が一杯になったものを、テーブルの上に無造作に載せられているオイルジョッキの中に放棄したものだろう。もちろん開放状態であった。

ガソリンの怖さを知らない人たちが、重要なポジションを支配していることに脅威を感じざるを得ない。

では、運営が変わる前の組織ではどうしていたのか、当時の運営関係者に聞いてみた。すると、やはり、当然、の答えが返ってきた。

「スポンサーとしてゼネラル石油をお願いしていたので、ガソリンの危険な取り扱いは、そのゼネラル石油から派遣されてくる方が携わっていた」「ゼネラル石油にしても、自分達がスポンサーしているイベントで何かあったら大変、という気持ちがあるため、確実にリスクは排除する方法を取っていた」「燃料微調整では、ガソリン携行缶に入れて必要な量を用意し、それをゼネラル石油のプロが、石油ポンプを使ってボトルに詰め、注射器で抜き取ったガソリンは、密封した容器に破棄する形をとっていた」

2005年、運営組織が変わる前の燃料微調整場所。オイルジョッキに入れたガソリンなど、どこにも見当たらない。それは当然、そのような安易な取り扱いをしていない。リスクを排除することは当然だからだ

これまで30回以上、この燃費競技会へは、いろいろな形の取材で訪れているが・・・

ガソリンの危険を知らない、或いは大丈夫、という安易な気持ちが、このようなやり方で進行していたようだ。

「燃料微調整場所で、タバコをすったり、テロ行為をするやつなんかいない」という気持ちは正しいと思うが、意図的ではないところで起きる事故、それを想定できないのは最低であると感じた。

2014年10月1日水曜日

不定期連載 数式を使わない、クルマの走行安定性の話・2/17

このレポートは、最初のタイトルを「数式を使わないサスペンションの話」ということでまとめていたが、結論からすると、サスペンションではなく、走行安定性になるので、タイトルを現在のものに変更した。(以後割愛)

内容は筆者が携わってきたバイクやクルマいじり、それ以外にも改良から製作、はたまた、各分野の技術者から得たヒントを織り交ぜ、経験などを加えて自分流にまとめたもの。数十年前に書いた部分もあるので、今では「化石」状態の部分も。面白い読み物、ぐらいの感じで目を通してほしい。(以後割愛)

 ミシュランXがノーパンクタイヤ!!?

ヨーロッパ車の事故車におけるボディ修整に求められる精度では、日本車のような高い修整精度を要求していない、と言うことは最初にも書いたが、その点については、日本の高性能ボディ修整機がヨーロッパでは必要とされないので、引き合いがない、とあるボディ修整機を売るメーカーが、フランクフルトで行われたアウトメカニカで話していたことを思い出した。

これはいったいなぜなのだろうか。アウトバーンのあるドイツでの話である。ボディ修整に精度がそれほど要求されないと言うことは、サスペンションパーツの取り付け点精度もそれに準じることになる。ということはそれよりも重要な部分で、クルマの走行安定性が保たれているということか?

日本車のように高いボディ修整を要求しない現実。つまり、タイヤをきちんと設計どおりに動かさなくては、走行安定性を得られない、と勘違いしているクルマメーカーのエンジニアが造った日本車に対して、如何にして、勝手に向きを変えようとするタイヤをコントロールするかが、挙動安定性に関係する、ということを重要視しているのがヨーロッパ車であると見ている。

クルマは路面からの不規則なタイヤの動きを、ボディに伝えないような設計とすることで、横風にも強くなる。というのは、タイヤはあるきっかけで(常に外乱を求めている)勝手に、自分の好きな方向へ行こうとするから、ある程度タイヤそのものを、遊ばせておく必要がある。この“いなし方”が難しいのである。

そのヒントとして前後左右のタイヤが、クルマの操縦安定性に対し、互いに頼らないような設計とすること、は重要なポイントではなかろうか。

また、なぜバイアスタイヤからラジアルタイヤに交換することで、それまでどうしようもなくハンドルを取られていたクルマが、安定して走るようになるのだろうか。その答えは、ラジアルタイヤは、路面からの外乱を受け付けない特性を持っているからだが、その素晴らしい特性に頼ったクルマ造りが考え物である。

日本のクルマメーカーは、ひとつのチャンスを無駄にしてしまった。というのは、1960年後半から始まったクルマの大衆化で、操縦安定性が問題になり始めた。それは、フロントサスペンションを独立懸架とするなどの他、クルマを小型軽量化したことによって発生する、ごく当然の結果であったのだが、それに対する回答は出せなかった。試行錯誤しているところへミシュランが1949年に開発していたラジアルタイヤに着目。

当時は、スチールベルトの入ったこのミシュランX(定かではないが1965年ごろから輸入され始めた)を、そのスチールベルトによって、刺さった釘が、タイヤをパンクさせない、ノーパンクタイヤである、というキャッチフレーズで販売されていたし、そのための見本として、輪切りにされたタイヤに刺さる釘は、見事?に突き抜けていなかった。

チューブレスであるが、当時はそれに対応出来るホイールもなく、チューブを入れて使用するなど、本来あるラジアルタイヤの性能は、完全に無視されていたわけである。それほど、タイヤに対する認識度がなかった。

しかし、日本のクルマメーカーは、このラジアルタイヤに目を付けた。ミシュランタイヤの技術者のレポートをまじめに読み、自分たちのクルマに、そのラジアルを取り付けたに違いない。そして、問題になっていた操縦安定性の悪さが、なくなっていたことにびっくりし、ひとつの結論を出した。それは「タイヤが悪い」、というものだった。

サスペンション・ジオメトリーとボディ剛性については考えていたが、それはあくまでもスタティックな状態での計算で、動的なものではなかったから、いざ動かしてみると、問題が出てくる。その問題となる種がどこに存在するのか、はたまた、その種はどのようなことに発展するのか、殆ど分かっていなかったように思われる。

カマボコ道路を走行すれば中央方向(右)にハンドルは取られ、それが不規則に連続する道路では、安心してハンドルを握っていられない状態が続く。これが何故起きるのか、分かっていれば、ある程度解決の策はあったのだが、そこに到着する前にミシュランのタイヤが登場した。

では、何故カマボコ道路ではハンドルが取られるのかと言うと、それはキャンバースラストが強く発生するからである。サスペンションが作動することによって、あるいは作動しなくても、その路面形状になれば、アライメント(静的も動的も)の変化でキャンバーが変化し、それに合わせてトーの変化が出る。これを無視してサスペンションやボディを設計すると(当時は見よう見まねで設計していたから、本質を理解していない)、バイアスタイヤではトレッドが路面形状に合わせて接するため、タイヤの周長が変わり、短い周長(直径が小さい)方向へタイヤは移動しようとするが、そこへ更にトーが加わると、これこそキャンバースラストとなり、強い力でクルマの向きを変える。それも、左右のタイヤで勝手に突如として発生するから、走行性は最悪になる。

キャンバースラストとは、バイクや自転車のコーナリングで発生し、これがないとコーナリングは出来ない。絶対に必要なものなのだが、バイクや自転車では必要でも、クルマではいらない力となる。これを発生させないようにサスペンションとそれを取り付けるメンバー、ボディなど総合的に造らないと、安定性の高いクルマはできない。

2014年9月20日土曜日

不定期連載 数式を使わない、クルマの走行安定性の話・1/17


このレポートは、最初のタイトルを「数式を使わないサスペンションの話」ということでまとめていたが、結論からすると、サスペンションではなく、走行安定性になるので、タイトルを現在のものに変更した。

内容は筆者が携わってきたバイクやクルマいじり、それ以外にも改良から製作、はたまた、各分野の技術者から得たヒントを織り交ぜ、経験などを加えて自分流にまとめたもの。数十年前に書いた部分もあるので、今では「化石」状態の部分も。面白い読み物、ぐらいの感じで目を通してほしい。

 
昼になったから食事に行こう

走行安定性を分析するのは、エンジンよりも難しい。いくらコンピューターが優れている時代になっても、解析をするための用件が多すぎるからだ。サスペンションだけではなく、取り付けられるメンバーやボディ形状、剛性まで関係してくる。難しい公式など、いくら紐解いても、さらに難しい領域に入り込むばかりで、少しも理解出来なくなる。

また、公式を列記しても、計算上では解析出来るが、実際とは大きく違う。そのあたりのことについて、クルマメーカーのエンジニア達は十分理解しているのだ。そこで、読めば何となくわかるような気がするレポートとして、「数式を使わない、クルマの走行安定性の話」をまとめてみた

話は数10年前にさかのぼるが、ヨーロッパにおけるヨーロッパ車のボディ修整では、特にサスペンションの取り付け部分に対して、日本車のように高い取り付け位置の精度を要求されていない、ということを聞いた。

これはつまり、タイヤをきちんと、設計値どおりのジオメトリーで動かさなくてもクルマの安定性が保てる、というひとつの現れだろう。対して、日本車は限りなく設計値どおりに動かすことを目標に、ボディ修整を要求されていた。しかし、ここにはボディ剛性とサスペンション設計、ゴム・ブッシュの使い方の違いによる、考え方が大きく関係しているように思えた。

考えるにヨーロッパ車は、如何に自由にタイヤの動きを使いながら、それをコントロールすることが重要である、に開発・設計のポイントが置かれているような気がしてならない。

ヨーロッパにおける、優れたクルマ造り(この場合デザインは含まない)をするメーカーは、サスペンションをどのように作ればいいか、ということがわかっているとも取れる。

取り付け点の位置、サスペンション剛性とボディ剛性の関係、しなやかに外乱を処理するために採用するゴム・ブッシュの使い方など、当然のことをデータとして持っている。そのために、新型車を作るときでも、サスペンション設計に必要以上の時間はかからない。もちろん、実験においても同様であり、開発実験ではなく、確認実験であるかのようだ。

それに引きかえ1980年代の日本車は、どのようにサスペンションを作ったらいいのかわかっていなかった。クルマ毎にサスペンション型式を変え、絶対寸法まで変えてしまうわけだから、新型車を開発する度に、全てのデータがゼロからスタートすることになり、同じ過ちを繰り返すこともある。ところが同じディメンジョンとジオメトリーのサスペンションを使い続けることで、問題点を克服できることもある。もちろん何が問題なのかが分かってなければダメだが。

ヨーロッパ車も日本車も目標とする走行性は変わらない、と考えていいが、設計の段階からどう作ればこのクルマはこうなる、ということがほぼわかっていると思われるのに対して、日本車は作ってみるまでわからない。つまり何をどうしたらどうなるのかが、皆目分かっていなかった時代だった。

面白い例えとしてこう考えた、ヨーロッパ車の場合は、「昼になったから、食事に行こう」。それに対して日本車は「昼か、はらがへった、どうしたらいいのか」と、研究員達がディスカッションして、「これは、どうやら食事に行かなければいかんのだ」というような結論をだす。ただし、ここに出す結論が食事になるか、食料品の買い出しか決まっていない。

外乱をうまく処理し、安定してドライバーとの対話が出来るサスペンションとするには、確かな剛性を持つボディと、同様に優れた剛性を持つサスペンションに関わる全てのパーツ、ゴム(ピロー)・ブッシュの使い方、そして、サスペンションのデザイン、つまりジオメトリーをどうするかである。更に重要なのは、その動的作動の軌跡が、設計値に限りなく近くなるかどうかだ。

以下、不定期で次号

2014年9月13日土曜日

新しいエネルギーが加わりバージョンアップされたスズキ・ワゴンR


ワゴンRがハイブリッド仕様になって登場した、といっても過言ではないシステムを搭載してきた。それは、オルタネーターをモーターにも使う、マイルドハイブリッド方式の採用。ニッサンセレナでは一部の仕様ですでに確立させているが、軽自動車となると、どこのメーカーも「只今考え中・・・」で止まっていた。さすが先を行くスズキ(ゴマ摺りではない)、それをやってのけた。


スティングレーに試乗。明らかに、軽自動車の高級モデル、と言える部類だが、価格が気になるところ

それまでも、エネチャージという名称で、減速時を重点にオルタネーターの発電を、搭載するリチウムイオンバッテリーや鉛バッテリーへ蓄える方式により、加速時のオルタネーター負荷を低減。それによってエンジンの駆動効率を高めて、燃費と動力性能を引き上げていた。

このシステムを更にバージョンアップしたのが、今回のS-エネチャージである。オルタネーターをスターターモーターにも使うことにより、アイドリングストップからの再始動では、セルモーターのピニオンギヤとリンクギヤ、更にギヤからの唸り音など、不快な音がなくなることで、非常にドレッシーなアイドリングストップを実現することとなった。

そして、そのモーター(12V1.6kW)を加速時のアシストに使用し、動力性能をアップするのではなく、燃費アップの方向へ使ったのである。そのことが非常に評価できる。

つまりアシスト力(リチウムイオンバッテリーの電力を使用)をプラスして、中速域の加速性能を大きく高めるには、このモーター特性では能力不足(基本的に小さすぎる。それ以上を求めるにはエンジンルーム内のスペースとコストが問題)。


S-エネチャージシステムは、これから他の機種へも採用する

最大トルクが大きくエンジン始動にも使える能力を持っていても、それがそのまま高回転まで持続しないのがモーターであり、アイドルストップからの始動用として、その性能を発揮させるとしたら、今の状態では両方がうまくいかない。

アシストモーターとしての実力は3000回転で4Nm(50ccバイク並み。プーリー比で見ると1/2ほど減速するので、中速域のアシスト用としては実用性が乏しい)という話であるし、モーターばかりではなく、バッテリーに対しても同様なことは言える。


ベルトは専用としたため2本使用。ISGベルトは強い駆動が加わることから、テンショナーはこれまでとは逆の位置に取り付けている

使用する部品の共通化は当然であり、その中で最大に効率を追求する。その結果、鉛バッテリー(最初の始動ではセルモーターを回し、アイドルストップからの再始動ではISGに電力を与える)とリチウムイオンバッテリーは、これまでのエネチャージシステムと同じもの、ただし、制御系が大きく違い、最大電流値も違うことから、それに耐えるものを新しく開発した。

このオルタネーター・モーターには、インバーターが組み込まれているので、部品として購入すると自作EV用に使える??と考えたのは間違いではないと思うが。

オルタネーターをアイドリングストップからの再始動用モーターとして使うと、その穏やかな始動状態に感動する。雑音がないからである。

更に良いところは、クランキングスピードがセルモーターで回したときの300回転から600回転となることで、走り出すまでのタイムロスを考えた場合、初速が速いことから、エンジン再始動と同時にアイドル回転を大きく立ち上げる必要もない。結果的に穏やかな感じが強くなる。

また、S-エネチャージでも走行中からアクセルを離して停止まで持ってくると、時速13キロほどでエンジン回転計は仕事をやめて、いきなりゼロを指すが、エネチャージを採用したばかりのときのワゴンRと違って、突き出し感(減速の強さが途中から少ないほうへ変化することで起きる)は発生しない。

これは、CVTと副変速機の制御を改良した結果で、同社のハスラー試乗のときに感じたため、開発者にそれとなく聞いてみると「実は、ワゴンRのマイナーチェンジから変更しています」とのこと。

何が変わったのかは、五感を研ぎ澄まして運転するとわかる。

エンジン回転計がゼロを指すか指さないうちに、エンジンからの唸り音と振動を感じる。つまりエンジン回転が上がり始め、エンジンブレーキを効果的に作用させながら、突き出しを発生しない状態を作り出しいるのである。

副変速機とCVTとのやり取りで、一番難しいのは副変速機のギヤをハイからローへダウンシフトして、スムーズにエンジンブレーキ状態を停止寸前まで持っていくことである。

突き出し感があったときには、CVTを最大にローレシオとし、そこまでは効果的に減速させるのだが、副変速機はハイギヤのまま。そのまま停止までやろうとすると、エンジンの回転はとんでもなく低くなってしまい、例えばその状態で再始動が要求されても、トルクコンバーターのロックアップを外し、そしてクランクをまわしての再始動は、どう見ても時間差が多くなって思わしくない。

それでは減速の途中でハイギヤからローギヤへダウンシフトしたらどうなるか。その切り替えを瞬時に行う必要があり、結果として、大きなショックが常に発生してしまう。もちろんトルクコンバーターのロックアップはされた状態でないと突き出し感が出てしまうので、そう簡単な話ではない。

これまでは副変速機をハイギヤのまま、トルクコンバーターのロックアップクラッチを切り離さなければならず、その結果、突き出し感が発生してしまっていたのだ。

それを排除するためには、乗員が違和感を感じないうちに副変速機のギヤをハイからローにシフトすればいいのだが、それがなかなか難しい。でも、スズキはそれをやってのけた。

副変速機をハイからローへシフトしたときにショックを感じないようにすれば良いわけだから、トルクコンバーターのロックアップクラッチを滑らせながら、副変速機のシフトを行うように改良。

ロックアップクラッチが滑っている最中(つまり半クラッチ状態)であれば、副変速機のギヤをハイからローへダウンシフトしてもショックは感じないのだ。ローギヤへのシフトが終了したら、エンジン回転がスムーズに上がるよう、素早くスムーズにロックアップを開始する。ただこれだけのことだが、それの見極めが非常に難しい。

これにより、エンジン回転計が動きを止めても、クランクシャフトは回り続けており、その最中にダウンシフトするので、ショックを感じさせないのだ。エンジン回転計が常に動くような造り方をすれば、ハッキリとわかるのだがな~。


アイドリングストップしている最中の不用意な再始動を防ぐため、ブレーキペダルのにストロークセンサーを取り付けた。これにより、より快適なアイドルストップは、更に安定した

アイドリングストップでも進化が見られた。それは、不用意な再始動を誘発しない制御を加えたこと。何が加わったのかというと、ブレーキペダルにストロークセンサーを取り付け、ペダル位置が決まった高さに戻らないと再始動しないというもの。これで、アイドリングストップした直後に、いきなり再始動したり、再始動したと思ったらストップしたり、などという、チグハグな行動はなくなった。

2014年9月6日土曜日

BMWのX4カタログに出ていた、奇妙なクランクシャフト


BMWが新発売したX4のカタログをしげしげと見ていて、4気筒エンジンなのに見たこともない形のクランクシャフト写真に、目が釘付けとなった。

 
カタログ写真なので、正確に判断するのは難しいが、それでもこれまでの直列4気筒クランクとは明らかに違う

これまでの4気筒クランクシャフトであれば、クランクピンの位置は1番と4番、2番と3番が一緒で180度ずれた位置にある。

しかし、どう見てもそのような造りではない。1番と2番、3番と4番が同じ位置にある。更によく観察すると、その1番と2番(3番、4番も)なんとなく位置(角度)が違うような感じも見える。

これもしかして270度クランク?


270度クランクを採用しているクルマは聞いたことがない。バイクではヤマハが10年以上前からこの270度クランクを市販の2気筒や排気量の大きな4気筒(YZF-R1)に採用し、ロードレースの最高峰であるモトGPマシンにもこの270度クランクを採用。ホンダも2気筒バイクのNC700,750には、この270度クランクを採用した。

2011年東京モーターショーに展示された、ヤマハ・モトGPマシンのクランクシャフト。4気筒なのにクロスプレーン型クランク。つまり、クランクピンの位置は90度づつずれた270度クランクとなる
 
では、なぜ不等間隔燃焼となる270度クランクを採用するのだろうか。ヤマハのサイトにはその理由が書かれているので、すでにご存知の方もいるだろう。

性能アップが目的ではなく、高回転まで回したときの素直さ、スムーズさを狙ったとか。それにより、ライダーは高回転を楽しめるので、余裕が出るからだという。

レースのマシンではそれが当然だが、ストリートバイクではどのような利点があるのだろうか。それは、燃焼による鼓動が低速から中速に掛けて味わえるからで、バイクを乗る人間の気持ちに訴える十分な要素を持つ。

確かに、2気筒であると時速100キロからの追い越し加速でも、しっかりと鼓動を感じさせる挙動が見えるのだ。

では、何故そのようなことになるかというと、それは、クランクシャフトの回転位置がどこにあっても、必ず動いているピストンが存在することに要因があるという。3気筒や6気筒では当然のことだが。

普通に180度クランク構造では、上死点、下死点は全てのピストンが同時になるため、必ず停止する状態が出てくる。しかし、270度クランクとすれば、常にどのピストンかは動いており、それが気持ちよさにつながるのである。

こう考えると、2リッター4気筒ターボのX4(それ以前から?)は、とにかくエンジンがスムーズで、とても4気筒とは思えない静けさがあるのはうなずけるのだが。

燃焼間隔が乱れるため、自然吸気エンジンであると重要な、排気脈動を使う性能アップは無理だが、ターボが装備されているので、それも関係ない。

6気筒仕様もあるため、4気筒2リッターであると、エンジンルームの換気性能は高い。更に鼻が軽いため、普通に走らせる中でも、楽しさが味わえる

アイドリング中にマフラー出口で排気音を聞いてみたが、ターボにかき回されるので、特別な音ではなかった。

この点について、日本のBMW広報へ聞いてみたが???という感じ。何故何故問答は、BMWのエンジン開発担当でもなければ無理かもしれないな。でも知りたい。日本の自動車メーカーのエンジン開発担当は、このようなことを知り尽くしているのだろうか。
新型X4。SUVとハッチバックセダンを融合させたような感じ。走行性は非常に自然で、かつ気持ちがいい。この感じでセダンを作って欲しいと思ったのは、私だけではないだろう
 

2014年8月30日土曜日

1972年、アメリカ・デイトナ200マイルレースのプログラムが出てきた


倉庫の片づけをしていたら、こんなものが出てきた。たぶんかなり貴重だと思う。それは、1972年のアメリカAMAシリーズ第1戦となる、デイトナ200のプログラムだ。

実は1972年に会社(八重洲出版モーターサイクリスト編集部)を2ヶ月休職して(当時の社長が「海外を見て来い、休職してもかまわないぞ」と言っていたので)、当時アメリカへ遊学していた実兄を訪ね、アメリカ大陸往復横断(LAから出発してLAに戻る)をクルマで行った。

当時はガソリンもエンジンオイルも非常に安価で、排気量の大きなフルサイズカーでも、燃費を気にする状況にはならなかった。クルマは中古のフォードギャラクシー289(約4800ccで、当時では小さい部類)MTを使用。でかいので、身長180cmの我々でさえ、その中での就寝も可能だった。

余計な話はこれくらいにして。アメリカ大陸を計画なしに横断してもつまらないから、2月のデイトナ500(4輪のストックカーレース)、3月のデイトナ200(バイクのレース)をそれぞれ正式にプレスパスを取得し見に行くことは決めていた。その途中では、かなり面白いことが起きてしまっていたのだが、その話は長くなるので割愛。

アメリカ東海岸ではデイトナ200の前に、ホンダの研究所に勤務し、CB750開発・テストライダーとして活躍した後、アメリカのペンシルベニアへ渡った菱木哲哉氏に会いに行った。菱木さんはアメリカ東海岸のクラウスモーターサイクルにヘッドハンティング(当時はこんな言葉あったかな)され、渡米していたので、そのクラウスを尋ねると、菱木さんはクラウスに不在。

社長は「そんなやつ知らん」と、取り付く島もない。でも社長の奥様が「彼・マイク(当時マイク・ヘイルウッドにあこがれていたので、マイク菱木と改名)はニュージャージーのウイッギーホンダにいる」とのこと。

どうやら、日本での話と、現地アメリカでの話が違いすぎたようで、チャンスを見て家出???したらしいのだ(クラウスの奥様には話をしていたが)。

その菱木さんもウイッギーホンダでメカニックをやりながら、生活しており、そこを尋ねたら、「自分達もデイトナへ行きジュニアクラス100マイルに参加する」とのこと。ただし、菱木さんはメカニックとして同行するという。ウイッギーホンダを選んだいきさつは、長くなるのでこれも割愛。

このデイトナ200マイルでは、エキスパートクラスが200マイルで、ジュニアクラスは100マイル。他にノービスクラスがありこれは76マイル。

そして、このノービスクラスには日本人が出場していた(翌73年には、故隅谷守男氏が200マイルに出場し6位)。ヤマハ市販レーサー250TDⅡでエントリーする尾崎トシヒコさんという方で、マシンコンディションが悪く完走でレースを終わったが、後日、勤務していたバイクショップからの帰りにフリーウエイで交通事故に会い、帰らぬ人となってしまった。

ノービス76マイルレースに出場したのは、ゼッケン28の尾崎さん。マシンのセットアップがうまくいかず、完走でレースを終わった。後日、交通事故でお亡くなりになると言う、悲劇が・・・
 
そのデイトナ200には、ヨシムラがアメリカ進出を計画し、拠点作りのために初めて正式参加するが、表には出ずクラウスモーターサイクルのバックアップという形だった。

ライダーはロジャー・レイマンとゲーリー・フィッシャー。G・フィッシャーが乗ったマシンはホンダコレクションホールにある。成績は、どうだったか忘れた。
G・フィッシャーが乗ったマシン。ホンダコレクションホール所有。写真は今年のモーターサイクルショーで、ヨシムラのブースに展示されていたもの


このときに200マイルで優勝したのはドン・エムデ(空冷のヤマハ市販レーサー350TRⅢ)。メカニックは60歳は過ぎているだろうと思われる方が一人だけ。レース途中の給油ではヘルパーが付くけれど。

このメカニック氏がやっていた作業は、考えられないこと。それは、燃焼室を削って形状を変える加工。旋盤なんていうものはないから、リューターと回転ヤスリで少しずつ。圧縮比だけを下げるなら、ヘッドガスケットを2枚なんていう方法もあるが、それではダメなのだろう。2気筒だから左右の燃焼室を均等に手で削るのは、神業だが、でもそれをやってのけた。

プラクティスで少し走ってはまたヘッドを外して削る。これを4~5回ほど繰り返していたと思う。

スプリントレースではないので、とにかく乗り易くて燃費がよく、最後まで走ることが重要だから、この方法で改良したのだろう。で、とにかく優勝したのである。すごい

ゼッケン5がR・レイマン。10がG・フィッシャー。優勝したのはゼッケン25のドン・エムデ。メカニックのすごさにはただ脱帽。これほどのことを現場で、しかも自信を持ってやれる方が他にいるだろうか
マイク菱木さんが面倒を見たウイッギーホンダのマシンは、ヨシムラのキットを組み込んだCB750。ライダーはジェームス・クリスチアノ。予選はそこそこだったが、決勝グリッドに並んで最終チェックのとき、ヘルパーをやる同店のマネージャーが、オイルクーラーのパイプをねじ切ってしまい、あっけなく終わり。

ゼッケン19番がウイッギーホンダのジェームス。普段はウイッギーホンダでメカニックをやっている。チョイト頼りないが
そんなこんながあったデイトナ200マイルのプログラムである。

2014年8月11日月曜日

ホンダNC750X・DCTの試乗記で忘れていたこと


その忘れていたことは、アイドルアップとクリープ走行のような現象についてである。

クルマでもそうだが、ツインクラッチの制御は難しい。発売された当初のツインクラッチ(日本ではアウディが最初)では、チグハグな制御が目立っていたのだが、現在ではそれもない。指摘されたことを謙虚に受け止めて、改良を重ねてきたからである
 
700のDCTではこのような状況での走りを体験しなかったので、把握しなかったが、やはり距離が多い状態であると、普段、まず発生しない問題の走りが出てくる。イレギュラーは事故に結びつくので、改良の余地があると思う。

その問題の走りは、エンジンが中途半端に冷えているときに起きた。冷却水の温度は、エンジン始動後のアイドルアップのマップを要求する状況にあったのだろう。走り出して減速しようとアクセルを戻したが、思うように速度は低下しない。もちろん低速状態での話し。

いくらギヤミッションのATであっても、思うように速度調整が出来ないのは、一瞬あせりに。そのときには、「アッアッアッ、速度が落ちない」。いったい何が起きたのか見当も付かない状態だった。

そりゃそうだ、アクセルは完全に戻しているわけだから、ブレーキを使わなくても速度が低下し、最終的には停止にならなければいけない。なのに10~20キロほどの速度を維持したがる。徐行状態からのUターンだったので、慌ててフロントブレーキに手がかかったが、路面がドライであったため事故にはならなかった。

何故このようなことが起きたのか、しばらく考えながら走行したが、そこでの判断は、冷却水温度の低下とエンジンオイル温度の低下がリンクしていないためである、との結論だ。

どういうことかというと、走行後であれば、ラジエターを持つ冷却水の方が冷えるのは早い。再始動のときには、その冷却水温度によって、冷間時始動と同様にアイドルコントロールバルブが開き、燃料が増量され、アクセルを完全に戻していても、その状態に関係なくアイドル回転は上がる。

これが、エンジンオイルも冷えている状態であれば、オイルのフリクションによって勝手な行動が表に出ることはないのだろうが、前記のような症状が出たときには、エンジンオイルはまだ温まっている状態。つまりフリクションは小さい。

エンジン回転が上がっているという条件だけを取れば、バイク側の判断は「ライダーはアクセルを開き、走行を要求している」ことになるため、クラッチは接続を切り離す行為をしなかった。

これを防ぐには、アイドルアップが作動中で1速、2速ギヤで走行中(トップギヤからのダウンシフトでも)、アクセルを全閉した場合は、クラッチを切るという指令が必要で、そのようなことになれば問題も起きない。

また、マニュアルクラッチ仕様と違って、エンジンオイル温度センサーが取り付けられているので、そこからの情報を確実に利用すれば、冷却水温度が低下して、アイドルアップしたい条件であっても、エンジンオイル温度がそれを認めないような制御を組み入れれば、このような「暴走」とも取れることにはならないはずだが。