研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2020年6月25日木曜日

ニッサン・スカイライン32GTRと33GTRの違いに素早く反応した結果は、33GTRは・・・



33GTRにケチをつけた

32GTRの素晴らしさは、菅生サーキットでの試乗会で体感していた。それまで菅生サーキットをクルマで走ったことのないのに、いきなりアクセル全開。前方に走るベテランレポーターがブレーキを掛ける時点を確認したら、「オレは彼よりも10m先からブレーキを掛ける」なんていうことを考えながら、試乗を楽しんだ。

とにかく、運転者の気持ちと技量を32GTRは読み取ってくれているようで、不安な要素はひとつもなかった。そこから「アクセルを踏み込め」なんていう動きの状態まで理解できる。32GTRと意思の疎通がやれているような気持ちを味わった。

もちろん、32スカイラインのフロントサスペンション周りに欠点があるということはこのときに知る由もなかったが。

フロントのマルチリンクサスペンションは、コンピューター解析により生まれたものだが、熟成と詰めは甘かった。サスペンションジオメトリーとそのジオメトリー通りにサスペンションを作動させるには、サスペンション周りのボディ剛性、取り付け点の精度、さらに使用されるゴムブッシュの硬さの均一化が必要となるのだが・・・

それはともかく、33GTRが発売されたときの試乗会は筑波サーキットで行われた。筑波サーキットは走り慣れたサーキットであるし、32GTRでも走っていたので、32GTRの操縦性の素直さや素晴らしさは十分に理解していた。

100Rから90Rに変化する最終コーナーでは、3速エンジンブレーキのアンダーステアとなる状況から、アクセルを全開にするまで踏み込むタイミング。そして、4WDのアテーサETSによるフロントへの駆動力配分もよく、アンダーステアはピタリと止まり、それと同時に気持ちの良い加速力を味わえた。つまりドライバーの気持ちがそのまま反映され、狙ったラインを確実にトレースする素晴らしさは、これまで味わったことのないものだった。

その経験から33GTRはもっとすごいのだろうと言う期待を持って試乗したのだが、見事に裏切られた。

速度が高い最終コーナー。32GTR同様の挙動が帰ってくるのかと期待したが、いくら待っても返答はない。どこからアクセルを踏み込めばいいのか分からないのだ。で、楽しく試乗は出来なかった。

反対に、カウンターステアを得意とする試乗者は、パワフルで思いのままだ、と言う評価であったが、私とは正反対。

この制御ではダメだ、と言う評価をしたのだが、それは、その後の市場が端的に良否の判断をしている。33GTRは販売が伸びなかったのだ。チューニングショップの評価もそうであったし、一般の方が買い替えしたときの評価は、最低だったからだ。

高性能カーは、ドライバーとのコミュニケーションがしっかりと取れていないと、安全で楽しくは運転できないということであると思う。

2020年6月17日水曜日

燃費競技会のホンダエコノパワー(エコマイレッジチャレンジに代わる前だけではなく、現在の運営組織にも)に対してもケチをつけた



ケチをつけは話

数十年に 亘り取材や運営のアドバイスをしていると、他の方では気が付かないことに目がいく。

例えばそれは、走行中にオフィシャルが振るフラッグに対してがまず最初だったように思う。コース上にトラブルで停止している競技車があれば、それを後続のクルマに知らせて、事故などが起きないようにするのだが、その旗を振る位置や高さがベストではないと気が付いた。フラッグの振る位置が高すぎるのである。

これであると、あの狭く窮屈なドライビング状態から、旗の色と振り方から、何を表現しているのか判断に悩むだけではなく、旗が振られていることさえ認識しにくい。

いくら速度が遅いからといって、目の前で旗が振られたのでは、走行ラインを変えるとこは不可能。ましてブレーキを掛けるという行為は、そのイベントからの脱落を意味するのだから。

事故になるかもしれない状況を見ると(実際に事故が起きる手前から事故後まで、全てを見ることもあった)、現場で競技関係者にそのことを伝える。

また、スタート最終チェックでは、燃料が正しい位置まで入っているかを見て、不足している場合だけではなく、レベルが高すぎるときにも、スポイトなどを使用してその燃料(ガソリン)をレベルに合わせるのだが、運営組織が変わってから、その過不足を調整するガソリンが、テーブルのオイルジョッキに入って、無造作に置かれていたことも。

この状態で、誰かが机にぶつかり、ジョッキに入っているガソリンをコース上にぶちまけ、それにビックリした関係者が、持っている工具などを落としたとしたら、そこのこぼれているガソリンの蒸発ガスに簡単に火が点く。

これが想定されたので、そのことを関係者に話したら「ここにいる連中は、こぼれたガソリンに火をつけるようなやつは居ないから、心配ない」と言う
返事。故意に火をつけることはなくても、事故は起きる。
 
運営組織が変わったことで、何が重要なのかがわからなくなり、適当に運営すると、このような大きな事故要素が生まれる。勿論、この現状は直ぐに改善させた。

では、それまでの運営組織はどのようにガソリンの管理をしていたのか、当時の組織に聞いてみると「ガソリンメーカーをスポンサーにしていたので、全てはそのガソリンメーカーのエキスパートが管理して、どこから見ても事故が起きないようにしていた」、と言う話だ。あるほど、昔の画像を見てもそのような危険な状態は発見できなっかた。

またあるとき、車検後の路面に青く広がった痕を発見。これはエンジンオイルが垂れたもので、多量ではないが事故の元になることはある。

なぜこのようなことになっているかと言うと、燃費競技会に使うエンジンは、ウエットサンプ潤滑の状態が必要なく、適当にオイル分が各所にあれば良い。そのため、勿論オイルポンプもない(改造してあるエンジンは)。場合によっては、シリンダーヘッドのヘッドカバー内に、必要最低のオイルを滴下させたエンジンも。そして、当然軽量化と熱量低減のため、クランクケース下は密封されていない。

こうなれば、滴下したオイルの行き先は、走行路面と言うことになる。それを防止するため、どのようなエンジンであっても、クランクカース下にオイル受けを付けるという規則を作った。

また、あるとき燃料の温度についても管理と規制が必要である、と気が付いた。それは、埼玉県桶川にあるホンダのレインボー教習所の直線コースで行われた大会で、関係者が、配給されたガソリンの入ったガラス容器を、ドライアイスで60分ほど冷やす行為。これによりガラス容器のガソリンは体積が小さくなり、ビックリするほどガソリンレベルが低下していた。

これでスタート前チェックでは、レベルの下がったガソリンを補給してくれるわけで、燃費の計算としては有利になる。

ただこの行為をやったマシンは、テレビ局のアナウンサーが乗るもので、乗り方がいい加減だから本来の性能は出ない。そのため、結果に対して文句を言うものは居なかった。

これを思い出したので、最終燃料調整のところで、非接触型(今巷で使用している体温測定と同じもの)の温度計を使って、燃料温度を測るべきだという提案をした。

翌年のイベントでは、全てのマシンに対して、燃料の温度を測定する行為が見られた。

その後の規則には燃料を冷やしてはいけない、と言う条項が追加されたが、エコマイレッジチャレンジと言う開催名に変わってから、この燃料温度の計測がない。

その旨を競技関係者に伝えたら、決勝日になって、どこからか1個だけ借りてきた温度計で、抜き打ち検査をしていたが、抜き打ちではダメで、全車やる必要がある。

その温度測定違反に引っかからなかったラッキーなマシン、チームが出てしまっては、規則が何のためにあるのか分からなくなるからだ。

2020年6月6日土曜日

アイドリングのクリープ走行から、ハンドルを操作すると速度が勝手に上がるファミリーカー



ケチをつけた話

それは、新車の試乗会での出来事だった。試乗車に乗り込み、エンジンを始動し、左足をブレーキペダルに載せながら、アイドル状態のクリープ走行をするが、次の瞬間、これまでにない挙動に自分の操作が間違ったのか、と一瞬あせった。

そこで、再度試乗車の駐車場所にクルマを戻し、そこから、絶対に操作の間違いをしないような行動を取って、同じようにクリープで発進し、ハンドル操作を行うと、その試乗車は速度が上がる。強烈な加速ではないが、左右にハンドルを動かすことを連続すると、ハンドル操作するたびに少しずつ速度は上がる。

ま、左足をブレーキペダルの上に乗せているので、問題が発生したら急ブレーキを十分に利かせられるのだが、一般の方だったら、どうなることか。

このクルマはT社の初代ヴィッツ。以前にもブログに書いたと思う。

おかしな挙動なので、試乗後に開発担当者にそのことを話すと、20分ほど行ったり来たりを繰り返していたが、降りてきたときには汗をびっしょりと掻いていた。

原因は何かと聞くと「・・??」

私が察するに、当時は、ステアリングのアシストが油圧式で、ハンドル操作すれば、当然エンジンに負担が掛かるので、回転が落ちないよう、アイドリング回転数フィードバック制御を使っていたはず。

しかし、そのプログラムが間違っていたとすると、今回のような結果が起きるのではないのか。

しかし、そのときには、その問題の取材ではなく、使用したエンジンに対しての取材だったが、開発担当者は「今日は無理です」といって、扉の向こうに消えていった。

2020年6月3日水曜日

ロータリーエンジンの構造に口を挟んだ 潤滑のオイルポンプと吸気ポートの機構・仕様だ



3ローターのユーノスが発売になったとき、広島のマツダ本社まで、ロータリーエンジンの取材で出かけた時の話し。疑問に思っていたことをストレートに聞いた。ケチをつけた話

ついでに、ローターハウジング内側の鉄のタガを鋳込んだ部分に対する硬質クロームメッキ・ポーラス処理についても、時代錯誤。なぜニカジル(NiCa-Sil系)や爆射(後に、この技術はカヤバのものであることが分かった)など。また、ヤマハではアルミ部分に直接硬質クロームメッキを施し、耐久性を高めている実績は一番長いわけで、バイクの世界では当然のこととして行われているこのような処理をしないのか聞いてみたが、「現在の鉄のタガを鋳込んだところにクロームメッキという処理で、とりあえず目標とした性能が保てている」と言う返事だった。

しかし、ニカジルなどの表面処理を行えば、鉄のタガ鋳込みによる膨張率違いで発生する歪がなく、燃焼による吹き抜けも抑えられ、潤滑オイルの消費などが少なくて済むので、性能向上に役立つのだが・・・

そして、提案したその表面処理方法を知らなかった。やはり広島と東京は情報でも離れているのか。しかし、爆射についてはカワサキのバイクだから、近いところに情報はあったのだ。

潤滑のオイルポンプは、当時のマツダロータリーの場合、アクセルワイヤーと直接繋がりメカニカルポンプのストロークを変化させると言う、ごくベーシックな制御。これではエンジンの負荷以上にオイルが送られることになり、オイルの消費量も多くなる。

で、当時の高性能2ストロークバイクは、電子制御を使っていた。この制御は、排気タイミングを、アクセル開度とエンジン回転数から自在に変化させ、スロットル開度と負荷に対応を目的として、排気タイミングを変化させる電子制御を使っていた。特に排気ポートに対して、排気タイミングを変化させれば、低速から高速まで、十分なトルクが発揮できるような構造なので、ここに潤滑用のオイルポンプをリンクさせた。

オイルポンプのストローク変化と排気コントロールバルブはワイヤーで結ばれており、その動きによってオイル量を調節したので、必要以上のオイルが供給されることはなく、オイル消費量は非常に少ない。そのため、それらのバイクは煙の排出が少なく、かつ排気臭もほとんどなかった。

この電子制御のオイルポンプを採用したバイクもカワサキにはあったので、それを伝授した。

そして、電子制御のオイルポンプは、その後にマイナーチェンジされたRX7には採用されていた。

また、ローターリーは吸気ポートとの関係で、どうしても排気ガスが吸気側に多く流れ込む。(つまり、自己EGRが非常に多く、それを制御できない)それを防止するのにはリードバルブが有効ではないか、と言う話をすると「おっしゃるとおりリードバルブは有効なのですが、テストすると性能は良くても、リードが割れるのです」というから「使用したリードの材質はスチールですね」「なぜ樹脂のリードバルブを使用しなかったのですか」「今時のリードバルブは樹脂で、レーサーレプリカとなるとカーボンファイバーです」と言う話をしたら、「例えそれを解決できても、まだ吸気ポート内で排気ガスが充満してしまうので・・・」というから、「それは当然ですから、小さなポートを数個つくり、そこにそれぞれリードバルブをつければ、必要以上の排気ガスが吸気側に漏れることは防げると思います」と話したら、「なぜ即答できるのですか、我々は1ヶ月ほど考えた結果でしたが」ということだった。

そのときには、3リーターのロータリーエンジン取材で広島の開発グループに伺ったのだが、その3ローター開発責任者とは非常に親しくなり、マツダがルマン24時間耐久レースで優勝したときのエンジン分解でも、そのエンジン担当者は、3リーローター開発担当者と同じだったので、張り付きでの取材が可能だった。他の雑誌の編集者とは次元の違う話し内容だったため、他の誰も寄り付かなかった。でも、マツダ広報部からは、原稿を頼まれたが、事実を書くので、私がラフに書いた現行の都合の良い部分だけ使ってください、と話をし、そのラフ原稿をFaxした。