研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2011年2月14日月曜日

リヤシートベルトのバックルが全席共通であってはいけない理由はどこにあるのだ

クルマの開発者に、何故リヤのシートベルトは、3座共通のバックルとして、どこのバックルにもタングプレート(差し込む方)が差し込めるようにしていないのか、と聞いてみると、まるで“神様”でも有るかのような答えが返ってくることが多い。

その答えとは「指定された正しい場所にベルトが来ていないと、シートベルトとしての性能が発揮されない」からだという。これはつまり事故を予見し、どのような形で事故が起こり、どのような形で乗員にダメージが加わるから、ここを押さえておかなければ意味がない、と言うことを知っていての発言? そんな馬鹿なことがあるか、予見なんていうことは不可能であるし、そうだとしたら“神の技”以外にない。なので、これはかなりいい加減な答えである。

でも、時々いるんだ「左は左の、中央は中央のバックルにタングプレートを入れるようにしなければ、シートベルトとしての機能が正しく発揮されないから、3座共通と言うのはダメ」、と言う設計者が。しかし、その設計者が言うところの間違った位置へ取り付けていたほうが、被害が少ない可能性は50:50のはず。なのに、決められた位置を主張し、そのために「わが社のクルマでは隣のバックルへの装着は出来ません」、と来た。そこで「貴方は神様ですか」と問いかけたこともある。

このように説明するヤツ(失礼)に限って、フロントのシートベルトは裏表に関係なく、また助手席側に対しても装着できる、と言う使い勝手にこだわっていることを知らない。

日本でもリヤシートベルトの装着が高速道路走行では義務付けられたが、その前にクルマとしてやっておくことが重要。それは、如何に装着しやすく造るかである。しかし、日本車では装着しにくいクルマ(メーカー)が多いのにはあきれる。

装着のしやすさとは、単純な話。バックルとタングプレートが素早くロックできれば良いだけのこと。でも、そうなっていないクルマ(メーカー)のほうが非常に多い。何故だか分からない。「決められたバックルに正しい向きでタングプレートを装着していないと、シートベルトとして機能が確実ではない」、というのだが、何のことを話しているのか、分かる方は、リヤシートベルトの装着で、一言いいたい人ではないだろうか。

何を言いたいのかと言うと、例えばリヤのシートが3人掛けで、中央のバックルが左側に有る場合、あるメーカーのクルマでは、左側に座る人が、シートベルトを装着できるチャンスは、最大4回の行動を取らなければならないような設計があること。

つまり、そのクルマでは左側のベルトバックルが2本出ており、どちらのバックルが左側のベルト用なのか、目視しなければ分からない。と言うことは、シートに腰掛けた状態でそれを確かめることは不可能。

また、そのバックルには裏表があり、ベルト側のタングプレートと合致しなければ装着は出来ないクルマもある。2本有り、裏表が有るので最大操作は4回あることとなる。これじゃベルトを装着しろといっても、素直に行動は難しいし、行動してもその答えが返ってこないのだから、ベルトの装着をしなくなる。

あるとき、妻とタクシーに乗る機会があり、彼女は右側で私は左側に座った。当然我が家ではリヤシートでのベルト装着は数十年前から当たり前の習慣だから、右側に座る妻も私が強制する必要はなく、タングプレートをバックルに押し込んだが「これ壊れている」と言う言葉を発した。そこで「壊れていない、ベルトを裏返しにしてみなさい」とアドバイスをすると、装着完了。

私のほうは、1度目で拒否され、ベルトをひっくり返してヒットした。そのときの運転手さんに「リヤシートのベルト装着は、どんな感じですか」と聞いてみたところ「運転免許を持っている方でも、リヤシートベルトのことは皆目分かっていないようで、最初にうまくヒットしないと、自宅へ到着するまでカチャカチャやっている人が殆どです」、と言う話をしてくれた。つまり自分のやり方が間違っていると言う判断をしてしまうのだ。作る方が間違っているのだが。

運転手がシートベルトを装着するような行動を取ると、セクハラになる可能性があるので、手は出さないと言う。妻の場合には、クルマに興味がなく、我が家のクルマでは、装着しやすくしてあるので「壊れている」と言う結論を出したのだと思う。

装着しやすくするには、どのバックルにでも裏表に関係なくタングプレートが入れられるようにするだけのこと。隣のバックルに入れたところで、シートベルトの機能に違いが出るはずもない。大切なことは、シートベルトをするということであり、正しい(何を基準として言えるのだろう)位置でなければベルトの役目が発揮されない、なんて言うことは誰にも言えないのである。

リヤシートベルトで大切なことは、事故で車外に放出されないことが第一。次いでフロントシートの乗員に危害が及ばないようにすることと同時に、自分へのダメージを最小限に止めることだと思う。全ての席で3点シートベルトも良いが、その前に重要なことは、ベルトの装着をしやすくするということ。

リヤシートベルトで3座とも共通のバックルを使用しているメーカーは、やはり欧州車に多い(日本車にもあるが)。その欧州のクルマでは、座圧センサーとベルトセンサーが装着され、乗員がシートベルトをしたかどうかが、運転手に分かるモニターが装備されている(規則がある)。にもかかわらず、ベルトは装着しやすいのである。

装着しやすくすることを無視して、自分達だけのお仕着せで設計・製造するのは、如何なものだろう。いくら優秀なテクノロジーが有ったところで、基本をしっかりと使っていなければ、何の意味もないと思う。


1.これが一般的な日本車のリヤシート・ベルトバックル。座ってしまったらどれが自分のものか判断は難しい。最初に触れたものにこだわることになり、それが正しくないと「壊れている」という結論を出してしまう。
2.そこで我が家では、中央のベルトをシートの下にしまいこんで使用する。タングプレートは裏表に関係なくバックルへ差し込めるクルマなので、これで間違うことはない。

3.中央以外のベルトはバックルが共通で、裏表もなく差し込める、という構造は日本車に多い。

4.フロントだって、このように左右・裏表に関係なく、ベルトの装着は可能だ。

5.輸入車には、リヤシート・バックルの全が共通であるというものが多い。この写真から判断できるだろう。中央の3点ベルトは右シートのバックルに。左のベルトは中央のバックルに差し込まれている。

6.このようなバックルもある。バックルベルトの内部にスプリングが組み込まれており、常に座る乗員の方向へ向いている。これなら間違えることはない。3座ともバラバラにシートスライド可能で、脱着できるシートなので、このように考えたのだろう。

7.それ以外にも、バックルの取り付けがベルトではなく金属のプレートを使うタイプ。これであると、勝手な位置に移動することもないため、使用するバックルを間違うこともない。

2011年2月4日金曜日

新型ヴィッツに試乗してきたぞ 上級車にも迫る作りこみ

リコール問題が取沙汰されているトヨタだが、新型はそのようなことが起きない作り込みをしていると確信したいところ。

ところでプリウス以外の売れ筋はヴィッツだろうから、思いの高さを高くして開発したに違いない。そのヴィッツの新型に試乗したので、インプレッションを書いてみた。最初に乗った1.3リッターのアイドルストップ搭載モデルで、クオリティの高さを感じてしまった。何のことはない、作り込みが上級モデル並みで、走り出す感覚や他のクルマと同列に並んで走るときの気持ちの安らぎは、これまでにないコンパクトカーといえるだろう。アイドリング時の振動が殆ど感じない処理にも敬服した。

走行音は静かで、特に新開発した1.3リッターはエンジン騒音の減垂性がよく、アクセルを大きく踏み込んでも、小気味良い唸り音を感じるだけ。それにも増して、新エンジンを搭載するなら、IQのプラットフォームをベースにしてストレッチすれば、ホイールベースの延長と前後重量バランスの最適化が出来たと思うのだが。

何故そのようにしなかったのか開発者に聞いてみると「確かに、IQのプラットフォームであれば、ミッションとデフの位置がこれまでのクルマのレイアウトと違って、前方になりますから、重量配分的には優れているため、初期の段階では検討したのですが、製造のコストなどを考えたときに、現行のプラットフォームで不都合な点を改良すれば十分という結論になったからです」、という話だ。

IQの駆動系やプラットフォーム、ステアリング周り、リヤサスペンションなどはヴィッツ以上にコストが膨らむようだが、それ以上にユーザーに対してのメリットは大きいように思うので、それを使わなかったのは残念である。

もちろん良いことばかりではない。この燃費狙いの仕様にはタイヤも燃費重視のものを装着してあり、それが気になる走行性を示した。緩い下り勾配のコーナリングで、アクセルペダルを半分ほど踏み込みながら走ろうとすると、有ろうことかオーバーステアのように、フロントが回り込んでしまうのである(フロントホイールアライメントのトーが影響するので原因は定かでない)。1.5リッターモデルではニュートラル。RSでは更に速度を10km/h高くしても、何も起きない。

また、スポーティなサスペンションとしてバネなどが硬いRSであるが、こいつのほうが道路の継ぎ目を連続して走行する場合、はるかに快適だ。言ってみれば下から突き上げられたときに“お釣りが来ない”のである。

何が違うか開発者に聞いてみると「バネとショックが違います。ショックは単に減垂力のことだけではなく、内容も違うのです」、という話である。でもそのショックを他の仕様にも採用するつもりはないようだ。

1.3リッターモデルではアイドルストップを装備しているが、このシステムはすでにIQの1300で採用していたもの。トルコンのドライブプレートにオーバーランニングクラッチを組み込み、リングギヤとセルのピニオンギヤは常時噛み合ったまま。セルとリングギヤが噛み合う音がしないから、ドレッシーな感じで再スタートする、というのだが、とてもそうは感じない。

確かにセルのピニオンがリングギヤに噛み込むときの音はしないが、その音はたいしたものじゃない。なのでピニオンギヤとリングギヤが噛み合って回る音のほうがうるさく、他社の廉価版システムとの違いを感じることは出来なかった。

このオーバーランニングクラッチを使うセルモーターの方法は、すでにバイクでは当然のものとしており、セルのギヤからリダクションのギヤまで、綺麗にシェービングされているため、ギヤが噛み合って回る音は感じない。バイクのセルを勉強しておけば、ヴィッツでも少しはドレッシーな始動になっただろうに、と思う。

アイドルが一旦停止し、再始動する条件は各社違いがあるようだが、ヴィッツはステアリングを左右に動かしても再始動しない。他のメーカーでは、右左折時の発進遅れを考慮して、一時停止状態から、ブレーキやアクセルの操作をしなくてもハンドルに手をかけたとたん再始動させるのだが。

この点について開発者は「ブレーキペダルから足を離した瞬間、0.35秒後には再始動が完了しますから、ステアリングのトルクセンサーから信号を取っていません」ということだったが、左足でブレーキペダルの操作をしている場合、同時進行的にアクセルを踏むタイミングもあり、やはり再始動に遅れを感じる。再始動条件にはブレーキスイッチとブレーキ液圧検知を採用しているということだが、少しストローク的に鈍感すぎることが、他社のそれとは再始動時間の差が出ているようにも思う。

ただ、アイドルストップした後に少し前進させるようなとき、他のクルマでは時速20キロ以上とか、数十メーター走行しないと、など再始動の条件は厳しいが、ヴィッツの場合5m程クリープ走行させると、再びエンジンは停止する。距離を計測してアイドル停止の条件としているのか、と聞いてみると「そうではなく、時速2キロで走れば停止の条件となります。たぶん、クリープ走行で5mは、それに合致したのでしょう」という話だった。


1.これがアイドルストップ後に再始動させるとき、セルモーターからの力を伝えて、再始動後はエンジンからセルモーターへは回転が伝わらない、ATのドライブプレートに組み込まれたオーバーランニングクラッチ。特別新しいものではなく、バイクではこれがスタンダード。ドレッシーな始動音を求めたという話だが、そんなことは感じなかった。ピニオンギヤとリングギヤの噛み合う音が汚らしいからだ。

2.アイドルストップが付いたクルマには、非常に大きな容量のバッテリーが搭載される。表示を見ると85Ahとある。以前2.4リッターのディーゼルターボを乗っていたが、それに使われていたのは75Ahだった。汎用性が低いバッテリーなので、ディーラーで交換するときに高価だろう。

3.こちらは1.5リッターのエンジンルーム。バッテリーは極普通のサイズ。

4.1.5リッターのエンジンはこれまでのものを流用。全部の仕様でいえることは、ゆっくりと走らせている限り、上級モデルに匹敵する走行フィーリングを持ち、挙動が穏やかに造られていること。特に新エンジンとした1.3リッターは、バランスが良いのか、エンジンの負荷を大きくしても、綺麗なエンジン音を発する。

2011年2月1日火曜日

改造プラグから始まった着火性に優れる点火プラグを考察する

20年以上の前だが、改造プラグの流行った時期がある。きっかけは、当時の読者がアイディアを出して実験した“スラントプラグ”という名称のものだった。このようなことから、当時は私もいろいろな形状の改造プラグを作り、紙面展開した。

改造はエスカレートし、接地電極を二つに切り開きV字の電極にしたものまで造ったが、熱負荷が心配だったので高負荷で使うことはしなかったが、当時はそれなりに効果があったように記憶している。このような経緯からスピリットファイヤーの切り開いた接地電極は、当時私が考えて誌面に発表したため、日本では私以外特許申請できない状態にある。

その後プラグメーカーはいろいろな形状の電極を開発したが、真似のできるのは、日立のクロスカット。中心電極に十字の切込みを入れただけのものだったからだ。直ぐに自作したが、結果は不明だった。

点火プラグがこのままで行き着くところにきているのかと思っていたら、どうやらそうでもなさそうな気配だ。これまでの考え方や求められることは、安定したスパークを長期に渡って確保することに主眼が置かれていたのだが、最近では、単に燃焼させれば良いのではなく、より確実に燃焼させることに目標を変えてきた感じで、燃焼室内に対する電極の向きがどのような影響を持つのか、あるいは、その向きによって失火が起きる可能性はどのくらいなのか、などの研究が行われ、どのような形状の電極が理想的なのかの研究も行われ始めた。

電極を細くする理由は、エッジや細い部分からのスパークが自然であり、耐熱金属では磨耗するために、白金やイリジウムと言う金属を使用している。また、細くすることで、熱引きが小さくなるため、スパークによる火炎核が小さくなりにくく、点火エネルギーに繋がるため、失火が少なくなることも細い電極を使う理由だ。

最近の研究課題は、高効率を目指した小排気量の高出力エンジンに対する、厳しい温度環境と振動などに耐え、ヘッドへ取り付けられたときの電極の向きが理想的ではなくても、失火が起きにくい形状などが求められている。また、どのような方向から混合気が電極の間を通過するかは、エンジンの造り方で変わってくるため、一概に方向を決められないこともある。

基本的な実験では混合気が電極の間に入ってくる角度を0度、90度、180度などで確認すると、0度と90度は理想的だが、180度は失火が起きやすいということになっており、これは実験などしなくても空気の流れを考えればおのずと分かる。そのため、私は気筒数以上のプラグを用意し、締め付け後の電極の向きを整え、アイドリング時の失火改善に役立てている。


1.これがスラントプラグと命名された改造プラグ。中心電極を斜めにヤスリで削り、それに沿わせるように接地電極をねじっている。どのような理屈でこの形になったのか説明はなかった。

2.混合気がプラグの下から迫って来たときでも、接地電極が邪魔をしないよう、ふたつ割にして、接地側のどちらからでもスパークが起きるよう考慮した。条件の良いほうでスパークすることにより、要求電圧は下がり点火時期は安定するばかりではなく、点火コイルの発熱も少なくなるので、安定する。と考えて造った改造プラグ。

3.日立のクロスカット。中心電極に十字に切り目を入れただけ。エッジを多く造りスパークしやすくしたのだろう。これならまねは出来そうだ。

4.接地電極の位置から本物のようには行かないが、45度ずれた位置にクロスカットを作る。金属用の糸鋸を使えば可能だ。ただし、いずれの改造プラグも削りカスの除去に十分な注意が必要。また、接地電極を曲げ伸ばしするので、劣化による折れも十分に考慮する必要がある。

5.これらが高着火プラグと呼ばれるもので、現在の主流だが、やはり締め付け後の電極角度によって、失火の原因を作り出しやすい。

6.失火の原因を作り出しにくい電極形状と、熱・振動耐久性をこれまで以上に高めたプラグ。右の電極形状は失火のリスクを少なくするらしい。着火性としては僅かだが左の形状という結論。いつごろ販売が開始されるのだろうか気になる。