研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2011年11月25日金曜日

2012年次RJCカーオブザイヤー顛末記


 今年のRJCカーオブザイヤー最終確認テストが、11月15日ツインリンクもてぎ内の周回路を利用して行われ、当日投票して結果が出た。

 当日は、事前に選ばれたシックスベストのクルマや技術が、ツインリンクもてぎのパドックに持ち込まれ、改めて試乗したり、開発者から話を聞いたりするわけだが、そのシックスベスト(6のノミネート)を選ぶにも、会員の気持ちとメーカーやインポーターのヤル気がその結果に繋がるのは当然だ。

 最後の確認試乗が開始される前のパドック。メーカーの関係者がミーティングをする風景も見られる

 そのシックスベストだが、テクノロジー(新型車に採用された新技術)は、マツダ・デミオのSKYACTIV-G 1.3、同じくマツダ・アクセラのSKYACTIV-Drive、日産リーフの電気自動車技術、トヨタ・プリウスαのコンパクトなリチウムイオンバッテリー、フィアット500/500Cに搭載のTwin Airエンジン、ボルボS60/V60に採用された歩行者検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキシステム。以上順不同

 インポート(輸入車)は、フィアット500/500Cツインエア、アウディA1BMW1シリーズ、シトロエンDS4、フォルクスワーゲン・パサート/パサートバリアント、ボルボS60/V60。以上順不同

 カーオブザイヤー(国産車、逆輸入車も含める)は、ダイハツ・ミラ・イース、ホンダ・フィットシャトル、マツダ・デミオ13SKYACTIV、日産リーフ、トヨタ・プリウスα、スズキ・ソリオ。以上順不同

 投票会場前には広報の方々が最後のお願いに集まる。しかし、ここで会員の気持ちが揺らぐことはない。一種のパフォーマンス?
 そして、もてぎでの最終投票の結果、選ばれたのは、テクノロジーがマツダ・デミオのSKYACTIV-G 1.3。インポートがボルボS60/V60。カーオブザイヤーは日産リーフだった。

 この結果は、予想通りというのが会員大半の意見。つまり、メーカーやインポーターの広報活動が影響を与えているといっても過言ではない。

 テクノロジーはマツダデミオのSKYACTIV-G 1.3に決まる。圧縮比14と言う数字を具現化した技術が評価されたのだ。実用燃費も高い

 インポートはボルボS60/V60に決まる。特別強い個性を持たないが、時代を先取りする安全技術などが盛り込まれたことも評価された

 もちろん、問題のある技術やクルマに対して、どこかの国のお役人ではあるまいし、裏取引で票集めをしたわけではない。どうしてもRJCのカーオブザイヤーが欲しいという気持ちが、試乗会や技術の説明会を頻繁に開催する。RJC会員に対して見識を持ってもらいたいがためである。その見識を持って「投票願いたい」、という気持ちの表れが、結果に繋がったのだ。

 まだ未完成(充電インフラや、道路環境など多いと思う)と言われるEV市場で、日産リーフがカーオブザイヤーとなったのは、三菱のi-MiEVが市販されたときにカーオブザイヤーが採れなかったことから、同様なリーフがそれを採るのはおかしい、という批判もあるだろう。しかし・・・

 当然のことだが、私の評価はどちらも同じ。以前のi-MiEVに対しても最高点を入れたし、リーフも同様に最高点を入れた。

 時代を牽引する技術やクルマに対しては「差別なく評価する」。そして、それができる見識は重要であると思っている。

RJCカーオブザイヤーは日産リーフ。三菱i-MiEVから具体的に始まった電気自動車へのシフトは、世界規模へと動き始めた。専用設計のボディによる性能は実用性を高い方向へ導いている

2011年11月6日日曜日

ブレーキ不調の原因は、フルードの混合にあった


知り合いのメルセデス。最近中古で購入したものだが、当初からブレーキの不調を訴えていた。それは、走行中のブレーキングで後輪がいきなり効いたままになったり、駐車場から出そうとすると、走り出しが重かったりという現象。それもしばらく放置するとそのトラブルが消えてしまう。

何が悪いのか、「一度見てやるから自宅に持っていらっしゃい」、という話をしておいたら、やってきました翌日には。
 
エンジン停止の状態で、ブレーキペダルを数回踏んでみると、ブレーキブースターにはバキュームがなくなっているにもかかわらず、踏み応えが優しい。つまり、まるでブースターが作動しているかのように、フワフワした感触がある。これは、ブレーキエアが入っていると判断し、早速エア抜きを開始する。

フロントはブレーキペダルを踏むたびにブレーキ液がブリーダープラグから(少し足らない感じだが)排出される。

ところが、リヤにおいては一向に排出されない。バキュームポンプを使って引き抜き作戦を試みたが、それでもブレーキ液が吸引される気配はない。試しにブリーダープラグを締めて、ブレーキの踏み応えを確かめると、なんと感触ゼロ。踏み代がひとつもないのである。 これこの通り、目
の前にマスターシリンダーがあり、ブレーキパイプのフレアナットを緩めるにも、ブースターからマスターシリンダーを取り外すにも、苦労はしない。

そのときの状態をリザーバータンクの液面で見ると、ブレーキペダルを踏んだときには液面が下がり、ペダルを放すと元の液面に戻る。つまり、ブレーキ液はマスターシリンダーとブレーキパイプ、ブレーキキャリパーまでの間を行ったり来たりしているということになる。

ここで思い当たるのは、息子のハーレーでブレーキパッドを交換したとき。リヤブレーキのパッドを交換し、いざブレーキペダルを踏んで踏み代を出そうともがいたが、一向にパッドはローターに当たらない。よく見ていると、ブレーキペダルを踏むとパッドが押されるが、ブレーキペダルを放すと、パッドが元の位置に戻る。

これは、ヒョットするとブレーキ液の混合があったのかもしれない、という判断の元、マスターシリンダーを分解してみると、ピストンのカップは膨潤して大きくなり、カップの役目をせずリングの作動となっている。

本来ならピストンが戻るときにカップとシリンダーの間をブレーキ液が通過しなければならないわけだが、それが出来ていない。更に、ブレーキペダルを放したときに必要な、ブレーキラインの残圧を逃がす、コンペンセーティングポート(リターンポートと解釈して良い)もカップで塞がっていた。

この原因は、ブレーキ液の品質違いを混ぜたこと。ハーレーはシリコン系を純正としているが、日本国内で普通に流通しているのはグリコール系。このふたつが混じるとゴムは膨潤してトラブルを起こす。

 マスターシリンダー分解では、スナップリングにスナップリングプライヤーを引っ掛ける穴がないので、シリンダーの一部を削り、小さなマイナスドライバーを差し込んで、こじり出した。分解考えていないのかな~。

市販のブレーキ液には「このブレーキ液はグリコール系。シリコン系や鉱油系との混合は禁止」と表示してある。更に、「自動車用非鉱油系ブレーキ液」と書いてあるはずだから、これをしっかりと守ることが重要。

ブレーキクリーナーなどで洗浄すれば、シリコン系のブレーキ液を使用していたものに、グリコール系を使っても膨潤は起きていないことから、変更するために専用のカップやシールの必要性はないようだ。

以上の経験から、メルセデスも同様な状態にあるのではないかと、マスターシリンダーを取り外し(国産車よりもやりやすい)分解してみると、ピストンにはめ込まれているカップは3個とも、フニャフニャで使える状態にない。リヤのオイルシールも膨潤し、まともな状態ではない。
 この通り、すべてのゴムカップは膨潤してフニャフニャ。カップ状態とならず、シリンダーの中ではどちらからの圧力も受けるリング状態となってしまう。これではブレーキ液を送っても、引き戻す作用が起きて、使い物にならない。

マスターシリンダーの構造がこれまで分解したものとは違うので(国産車ばかり。ハーレーのブレーキも日本製)、ブレーキ液の流れや作動状態を把握するのに時間がかかったが、ブレーキペダルを放した後の残圧を逃がす、コンペンセーティングポートの構造が大きく違っていることに気が付いた。

日本製は、ピストンのカップが通過するシリンダーに、リザーバータンクと繋がる小さな(1mmぐらい)穴があり、ブレーキペダルを踏むとカップはその穴を通り越して油圧が発生し、ペダルを放すとカップとシリンダーの間をブレーキ液が流れて、キャリパーから戻るブレーキ液の遅れ分を補う。ペダルが完全に戻る瞬間、コンペンセーティングポートとリザーバータンクが繋がり、マスターシリンダーの残圧はリザーバータンクへ戻る。
 問題はカップだけではなかった。コンペンセーティングポートの作動が壊れていた。
国産車で使われているものでは、写真のようなところにあるのがコンペンセーティングポートで、この図は少しブレーキペダルを踏んだ状態。ポートはカップが通過することでリザーバータンク繋がりがなくなり、油圧を発生させる。ピストンが戻るとコンペンセーティングポートとリザーバータンクは繋がるので、残圧をリザーバータンクへ戻す。

このコンペンセーティングポートが正しく作動しなければ、ブレーキラインの残圧は残り、ブレーキが効いたままとなってしまう。

ブレーキトラブルのメルセデスは、シリコン系とグリコール系のブレーキ液が混合されたことで、ゴムが膨潤した。それにより、パッドが摩耗しても必要なブレーキ液は送られず、まるでエアを吸い込んだ状態となったばかりではなく、ブレーキペダルを踏んで出来た液圧の開放ラインが閉ざされてしまい、リヤのブレーキが効いたままとなる状態が発生していたのだ。
 メルセデスに使われていたピストンをよく見ると、なにやら見慣れぬ構造がある。リヤ側(手前)ピストンには、直角に開いた穴にグラグラ動く四角い棒が取り付けられている。フロント側のスリットは、ピストンの動きに対応するものだが、その中を見ると、何か出張っている。ドライバーで押してみると、ピコピコ動き出たり入ったりする。弱いスプリングが組み込まれているようだ。リヤ側も同様な作動なのだろうが動きは渋い。これがコンペンセーティングポートの役目をする部分で、ピストンが押し戻されたときに、この細い棒が押し込まれ、通気状態になり減圧されるのだ。この作動がトラブルを起こしており、どの状態としても通気しなかった。


リヤのブレーキに関わる部分の膨潤がひどかったのは、リザーバータンクの構造が関係する。つまり、フィラーキャップの位置が、リヤブレーキを受け持つ側(後方)に付いていたため、ブレーキ液補給のとき主にリヤ側に混ぜてはいけないブレーキ液が入り込んだからだ。

部品を注文しようと近くの部品商へ電話してみると「本国オーダーとなり一ヵ月半かかります」との返事。さーどうしようか、と思案していると、メルセデスのオーナーは「自宅に別のメルセデスから取り外したマスターシリンダーがあるので、それが使えるかどうか調べます」という。

ネットで注文した中古品は形が違って使えず(かなりいい加減な業者だ)。「そういえば・・・」で思い出したマスターシリンダーがピタリと合って、翌日にはブレーキトラブルは解消した。

ガソリンに浸すと大きく膨潤するので、内部のシリコン系ブレーキ液が排出されないかと、数分浸けてから天日干ししたが、完全に元へは戻らなかった。


 メルセデスのW202Cクラス。V6エンジンを搭載する。ボンネットが直角に開くため、ブレーキのマスターシリンダー脱着はとてもやりやすい。