研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2010年10月28日木曜日

電装用品取り付けで理解しておきたいACC、B、IGとは何?

カー用品店などで販売されているカーナビや、各種メーターなどの電装用品では、必ず作動させるための電気配線が必要で、取り付けるクルマに引き回されている配線から、それらを分岐して取り出す必要があるのだが、作動させる用件に合ったものを何箇所かから取り出すことが必要になる。

その部分と言うのがACCであったり、あるいはIGと言うことになるのだが、この言葉(略語)の意味を理解していないと、配線を間違えてクルマのコンピューターを破損させたり、バッテリー上がりを起こしたりのトラブルや、せっかく購入した用品が使えなかったりして、クルマいじりが楽しくなくなる。

もちろん自分で取り付けるのでなければ心配は要らないが、人任せでは納得できなかったり、装着手数料をかけたくない、となったら、リスク承知で自分でやるしかない。そこで知っておきたいのが、ACCIGと言う文字だ。

取り付け説明書にある言葉としては、例えば「橙線をACC回路に(あるいはACC電源に)」、「赤線を端子に(あるいは常時電源に)」、「黄線をIG回路に」、「黒線をグランドに(あるいはアースへ)」、と言うような書き方をしている。グランドやアースは分かりやすいが、これとてボディに配線する場合、既存のボルト(クルマメーカーが電気配線用として使っている)に締め付けることを選択する方が確実。

話が少しずれてしまったが、ではACCとは何か。これはACCESSORY(アクセサリー回路)のことで、イグニッションキーを一段階ひねったときに通電する回路のこと。一般的にラジオやカーナビ、シガーライターなどが作動する。つまり、イグニッションキーと連動した回路となる。エンジンは始動しない回路だが、この状態で長時間止めとくとバッテリーは上がる。

ACCのないクルマも過去にはあったが、最近はそのようなクルマはない。これも過去の話だが、エンジンが始動する位置にキーを回さなければラジオが聞けなかったり、キーの位置とは関係なくラジオが聞けたりしたクルマも。このクルマでは、ラジオを消し忘れると、バッテリーが上がった。特に、地下の駐車場へ入れたときには要注意のクルマだった。

端子(あるいは常時電源)とはBATTERY(バッテリー)のプラスへという意味で、これは、常に電気がほしいと言うことを表している。電装用品の設定を記憶させておく電気となるので、ACCに繋ぐと、作動は正常であっても、キーをひねるたびに初期設定が必要となってしまうから、使いにくいのは当然だ。

IG回路とはIGNITION(イグニッション回路)のことで、エンジンが始動しているときに通電する配線を意味する。IG回路では当然ACCも繋がった状態となる。ただしセルを回す回路では、ACCやヘッドライトに関わる部分の通電を切って、エンジン始動にバッテリーのエネルギーを全部使うように設計されているので、一時的にヘッドライトが消えたり、カーナビやラジオがリセットされたりするが、トラブルではない。

では、電装用品の電気はどこから取るのが良いか、という話になると、これはかなりややこしい。それは、クルマによって違うからだ。ヒューズボックス(室内側にある)から取れる場合もあるし、ステアリングのコラムカバーを外し、イグニッションキーの根元から取らなければならない場合もある。

しかし、最新のクルマで制御関係を通信(この条件が成立しなければ意味がない)で行うものでは、ウルトラのCAN-BUSアダプターなるものを装着すれば、そこから簡単に信号や電気を取ることが出来る。

メーカーごとの専用となるが、その信号取り出し場所は、OBDⅡ(オン・ボード・ダイアグノシス・バージョンⅡ)カプラとCAN通信線。OBDⅡはアメリカの基準だが、大半のクルマには、このカプラが装備されている。なおOBDⅡについては、ここでの説明を割愛する。

もちろんOBDⅡカプラが付いているからといって、全てのクルマにCAN-BUSアダプターが装着できるわけではない。自分のクルマで使用できるかどうかは、ウルトラ(永井電子)に直接聞いたほうが良いだろう。

電装用品取り付けにおいて国産車ばかりではなく、配線を理解しにくい輸入車では、カーナビなどの取り付けを行う場合、どこを分解して、どこに配線を接続すれば良いか苦労するが、このCAN-BUSアダプターを装備できるクルマなら、そこから全ての信号と電気を取ることが可能となるので、電装品の取り付けが非常に楽になると言えそうだ。

1.イグニッションキーのシリンダー部分には、このように0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの刻印がある。0はキーが抜ける位置、ⅠはACCでラジオなどを聴くことが出来る、Ⅱはエンジン始動状態(IG回路が繋がる)のとき、Ⅲがセルを回す位置で、手を離すとⅡの位置まで自然に戻る。



2.ウルトラのCAN-BUSアダプター。クルマの制御にCAN通信を使っている最近の車では、このアダプターを取り付けることで、電装品の装着がとても簡単になる。電気回路ばかりではなく、信号も取り出せるのだ。



3.CAN-BUSアダプターはOBDⅡのカプラとCAN通信線に取り付ける。そのOBDⅡカプラがこれ。運転席側の手が届くところで、露出して取り付けなければならない、と言う規制があるので、簡単に探せる。



4.基本配線図を見ると、クルマの電装用品を取り付けるときに要求される、全ての信号と電気が、ここから取り出せるようになる。また一部のメーカーは、OBDⅡカプラへの接続だけで、CAN通信線への接続なしで要件を満たすことが出来る。



インパネ外しは大変だ

2010年10月24日日曜日

レストアした昭和43年式スバル1000スポーツ?!を見に出かけた

富士重工のスバルには、1000cc水平対向エンジンを搭載したセダンと、そのエンジンをベースにした(ソレックスのツインキャブ)2ドアのスポーツが存在した。

中学校時代からの友人が、このスバル1000スポーツを、後生大事に所有していて、60歳を過ぎてからレストアに出し、走れる状態にしたと言うので、見に出かけた。(と言うより、ケチを付けに出かけた)

そういえば、そのスバル1000スポーツは、エンジンが調子悪くなったとかで、数十年前、その後乗っていた1300Gのエンジンに乗せ換えたはず。オリジナルのエンジンは、どうしたのだろうか、そのあたりも聞いてみたい。

友人宅を訪ねると、ガレージに入っているスバル1000スポーツは、風雨の被害がなかったため極めて状態が良い。錆の発生や色あせなどもほとんどなく、磨いたらきれいになったとか。もちろん全てを整備して、車検を取り、走れる状態である。ま~ここまでよくやるな~という感じだ。

ボンネットを開けてエンジンを確認すると、やはり1300Gのエンジンが載せられている状態。クラシックカーミーティングなどにも参加しているため(もちろん自走して会場に入る)、点火系には気を使っており、プラグコードはウルトラのシリコンコードに交換してあった。

1000スポーツにも使えるように、標準より1mm細い7mmのコードとしながら、1300Gで使うディスキャップへの差込部分のダストブーツを特別に取り寄せたそうだ。点火装置もウルトラのセミトラを取り付けている。確実に燃焼を行わせるだけではなく、ポイントの劣化を防ぎ、長期に渡って安定した性能を期待できることから、本気でこれからも乗る気であることを想像できる。

では、肝心の1000スポーツ用のエンジンは、というと、さすがにオーバーホール(というよりリビルド)をしなければならない状態となっているため、知り合いのレストア屋に出しているそうで、自宅では見ることが出来なかった。次のクラシックカーイベントでは、リビルドした1000スポーツのエンジンを、エンジンスタンドに取り付けて、展示しようかと言う目論みもあるそうだ。

 
1.友人宅のガレージに収まっている昭和43年式のスバル1000スポーツ。ボディ周りには手を加えていないようで、特別光り輝いていないのが、歴史を物語っていて親近感を覚える。



2.フロントグリルには、スポーツであることを証明するエンブレムが、しっかりと取り付けられている。


3.メッキ部分などには錆もなく、もちろん再メッキした様子もない。全体的になんとなくくたびれているが、それが時代を生き抜いてきた証拠でもある。今の尺度で見ると、恐ろしくこじんまりとして「当時はこんなものだったのか」、と改めてドライブに行ったときを思い出した。


4.でも、確かエンジンは載せ換えたと聞いている。ボンネットを開けてエンジンはどうなっているか見た。すると、やはり1300Gのものが載っていた。1000スポーツなら、ツインキャブのはずだし。エアクリーナーは、1300Gオリジナルであると「でかくてみっともないから」、適当なものに変更したらしい。


5.点火系には手を入れたようで、赤いプラグコードから、ウルトラのシリコンコードであることが分かる。よく見れば、プラグコードは太さ8mmではなく7mmを使っている。7mmは1000スポーツ用のプラグコードだが、ディスキャップ構造が違うため、どちらにも使えるようにダストブーツを特別に付けてもらって、1300Gのディスキャップにも使えるようにしたらしい。



6.点火装置もウルトラのセミトラへ変更したようだ。ポイントのメンテナンスサイクルが長くなり、かつ点火プラグへのスパークも安定して強くなるので、旧車には打ってつけの点火装置といえる。


7.当時のスバルでは、コストを無視した取り組みをしていたことがよくわかる。それは、ブレーキの構造にも見られる。一般的には、ブレーキがホイール側に来る構造だが、スバルは、インボードディスクを採用した。つまり、ブレーキのディスク(ドラムの場合も)はデフ側にあり、メンテナンス性は良くないが、バネ下重量は軽くなって、路面とタイヤの追従性に優れる。現在では、極一部の特別なスポ-ツカーにしか見られないこの構造が、普通のセダンにも使われていたのだ。


8.また、合理的な構造もある。それは、ヒーターとサブラジエターと言う関係。つまり、メインのラジエターに繋がるもうひとつの小さなラジエターがあり、そこには専用のファンを装備。夏は、ダクトを開放してファンを回し、エンジンの熱を放出。そのためメインのラジエターにはファンがない。冬は、サブラジエターのダクトを締めて、ファンをマニュアル操作し、熱を室内に引き込む。素晴らしい発想と言える。


スバル1000、昭和42年のCM

2010年10月17日日曜日

リッター当たり3000キロの性能を誇るイベント

このリッター3000キロの性能とは、燃費競技会でのこと。なお日本を代表するイベントであったHondaエコノパワー燃費競技大会は、名称をHondaエコマイレッジチャレンジと改め、さらに運営事務局も変更して再スタート。ただし、やり方や目的、規則などはこれまでと同様。でも運営事務局は初心者、参加メンバーは9割がベテランと言うことになり、進行がスムーズに行くかどうか心配したが、特別大きな問題も出ていなかったようだ。

ツインリンクもてぎで10月9日と10日に行われたこのイベントは、9日が練習走行で(とはいっても、決勝日と同様の周回数、平均時速で燃費の計算もしてくれる)、10日は本番。9日の天候が一日中雨天で、天気予報でも、この状況は変わらず、10日も雨天かと思われたが、決勝スタート直前からいきなり晴天で、走行条件が大幅に改善したことから、好記録を期待できた。

イベントの内容はともかく、毎回リッター当たり数千キロの性能は当たり前で、3000キロを超えていることもしばしば。今年もそれに加わり、4回目の3000キロオーバーの記録を達成した。

このイベントに使われるエンジンは、ホンダの4ストローク50ccを基本とするが、最近では海外からのエントリーも増え、彼らが使用する150ccも視野に入れた、ニューチャレンジクラスも開催する。

シャシーやボディ・カウルなど、全てが手作りといっても良いマシンだから、そこに創意工夫と奇抜なアイディアが生まれ、それを実現してしまうのも、このイベントの素晴らしいところだろう。当然エンジンも、ベースからかけ離れたものとなり、50cc(大半がスーパーカブ用をアレンジしているが)という小さな排気量、小さな燃焼室でも、点火プラグを追加して、ダブル点火方式としているマシンが多い。

そのようなところに使われるイグニッションコイルは、同時点火用ではなく、それぞれシングルシリンダー用を使用しなければならないのだが、状況をよく理解していないチームでは、同時点火用のイグニッションコイルを装備しているのを見かける。彼らに話を聞いてみると、当然点火エネルギーが足らないため、プラグギャップは極端に小さくして、かろうじて燃焼させる対策とか。

せっかくタイミングチェーン側にも点火プラグを取り付けられる加工をして、燃費性能アップをもくろんでも、これでは何の意味も持たない。どうして、同時点火のコイルを使用すると、そのようになるかの話をして、彼らも納得したようだ。

つまり同時点火と言う状況が成立するのは、例えば360度クランクの2気筒エンジンで、ひとつのシリンダーが圧縮状態となれば、ここではスパークエネルギーを多く要求するが、反対側のシリンダーでは排気上死点にあるので、このシリンダーにスパークするエネルギーは、ほとんどゼロに近い。

ということから、燃焼にかかわるシリンダーでは十分な点火エネルギーが得られるために、この同時点火と言う状況が成立する。しかし、両方のプラグが圧縮状態(圧縮圧力が高いとスパークするためのエネルギーも要求が高くなる)となっては、ひとつのコイルからのエネルギーでは不足してしまうため、点火しないことになる。

このことから、無理やり点火させるには、プラグギャップを極端に小さくする以外に手はない。そうなれば、当然燃焼状態が良くならないわけで、燃費は改善されない。

同時点火のイグニッションコイルは、コイルからのプラグコードが2本出ているけれど、それぞれプラス側とマイナス側に分かれている。シングルのイグニッションコイルは、マイナス側はアースとなり、プラス側がプラグコードとなる。つまり、全てのエネルギーを1本のコードで出すか、2本のコードに分散するかで、分散すればエネルギーは半減する。

これを解決するには、点火のタイミングシグナルはひとつでも良いが、イグナイターやイグニッションコイルは、それぞれの点火プラグ用を取り付ける必要がある。このような改造が、当然のように行われるチームと、そうでないチームでは、おのずと性能差は大きくなる。

 
1.ダブル点火プラグとしながら、同時点火のコイルをひとつ取り付けたため、点火エネルギーが不足している状態。もったいない改造だ



2.ダブルプラグでイグニッションコイルも、シングル用をふたつ使用したマシン。点火エネルギーのロスは出ない。タイミングチェーンの間に点火プラグ用のネジを作っている。潤滑は必要ないので、タイミングチェーンは露出したまま。



3.同じダブルプラグでイグニッションコイルもふたつ使用しているが、キャブではなくインジェクションを採用している。プラグコードはウルトラのシリコンコードを特注したのか。


4.こんなクルマも二人乗りクラスには登場した。あの、本田宗一郎がメカニックを勤めたレーシングカー・カーチス号をモデルとしたマシン。リッター換算で記録は327.335km。ホイールは木製、フロントのリーフスプリングは竹を重ねたもので作動ストロークを持つ。ダンパーは摩擦板式だ。



ホンダ・エコノパワー燃費競技会 

2010年10月3日日曜日

73年もののフィアット500をいじる

友人が持ち込んできたフィアット500だが、なんとなくアイドル回転が乱れて、500cc2気筒のリズミカルな排気音がしていない。そこで、リヤのエンジンルームを覗くと、気になる配線やプラグコードの取り回しなど目立っていたので、これを解決してやることにした。

その気になる部分とは、オルタネーター(発電機)のB端子に接続されている太いコード。中間で固定せず直接B端子へ繋がっているため、エンジンの大きなゆれで端子部分に応力が集中し破断する可能性がある。これは、一次クランプをオルタネーター本体としてやれば済むことなので(しっかりとボルト穴もある)、絶縁を考えながら、固定する。

次は、プラグコード。2気筒の360度クランクでは、同時点火が可能となるため、このフィアット500もディストリビューターを外して、同時点火コイルを装備している。そのため、プラグコードもコイルへ直接接続されているが、途中の振れ止めとして細工した部分に問題を見つけた。

プラグコード2本を直接ステーにタイラップで締め付けているため、プラグコードの被服に亀裂が出来る可能性を持つ。亀裂が出来れば、そこから電気は漏れるので、プラグはスパークしない。

このプラグコードは、ウルトラのシリコンプラグコードへ交換する。ダストブーツなどもシリコンゴムを使用しているので、しっかりと密着して耐久性が非常に高い。


点火コイルのコード差込穴に発生していた緑青(銅などを含む金属に発生する腐食物)も、エレキクリーナーと接点復活剤を塗布してきれいにしたので、今後このようなトラブルは出ないだろう。

さらに点火プラグのメンテナンスも同時に行ったため、アイドル回転は安定し、2気筒等間隔燃焼の排気音はリズミカルな状態を取り戻した。

 
1.プラグコードの中間固定部分に気になる所を発見。直接タイラップで金属に締め付けているため、コードの被服に亀裂が生じる可能性がある。トラブルとなりそうなリスクは取り除くと言うのが基本。



2.プラグキャップのダストブーツも亀裂が入っているので、雨天走行では漏電の可能性を持つため、ここはプラグコードを交換したほうが良いだろうということになった。



3.同時点火のコイルから、これまでのプラグコードを引き抜いてみると、見事に緑青が噴き出ていた。低電流・高電圧では、それほど影響が出ないけれど、腐食が進行すれば、コイルの断線などにも結びつくので、これはきれいに掃除して置いて損はない。



4.エレキクリーナーや接点復活剤などを吹きつけ、コイルのプラグコード取り付け穴に発生した緑青を洗い流す。穴の中に残ってしまう洗浄剤は、缶を逆さにしてガスだけを出せば、その勢いで吹き飛ばせる。



5.交換するプラグコードだが、実績のあるウルトラのシリコンコードが良い、とオーナーが言うのでそれに決める。特別な長さのものまで製作してくれるし、点火コイルとのインピーダンス(回路中の抵抗値)をきちんと取るため(ラジオなどへの雑音防止もある)点火エネルギーのロスが出ない、と言う特徴もある。



6.ディストリビューターがないので、プラグコードの交換は気を使う必要なし。それよりも、振れ止めとしての中間固定部分をどう処理するかだが、安定的に留める方法として、樹脂製のコルゲートチューブをプラグコードに巻き、それをタイラップで固定してから、ホルダーへ通した。これで、プラグコードの被服に亀裂が入ることもなくなった。



7.最後はオルタネーターのB端子コード処理。一次クランプをオルタネーター本体とするため、鉄板を曲げ、自転車のチューブを巻き付けて固定。これで、端子の疲労を防ぐことが出来る。




フィアット500のTV・CF