研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2010年11月21日日曜日

ポイント式点火装置について考える

 現在では新車に使用されているクルマもバイクもない、というものがポイント式の点火装置だ。しかし、フルトランジスター点火装置に取って代わるまでの長い間、全てのガソリンエンジン(ガスエンジンも)では、点火プラグのスパーク用として、重要な点火時期と、高電圧を発生させる手段の役割を持たせていた。

 全てが機械的に作動するため、当然磨耗したり汚れたり、エンジンの燃焼ということからすると、トラブル発生の元になっていたのがポイント式点火装置だった。しかし、ポイント式でもポイントの焼損を防ぎ、安定して長持ちさせるセミトラ(ウルトラ製ばかりではなく自動車メーカーも一時期は採用した)が登場すると、メンテナンスではかなり楽になってきたが、機械的な部分は相変わらずメンテする必要が残っている。

 改めてポイント式点火装置の構造と(構造を知るとメンテも理解できる)メンテナンスについて書いてみたいと思う。

 クルマでは多気筒ということもあり、ひとつのイグニッションコイルから高電圧を分配するディストリビューターがあるけれど、その部分に対するメンテナンスはほとんどない。ポイントカム軸に差し込まれるローターの先端と、ディスキャップ側のセグメントにスパーク(電気の分配では接触するわけではない)による焼損があっても、ヤスリ等で磨いてはいけない。見てみぬふりに止める。

 何故磨いてはいけないかというと、点火プラグに限らずスパークは先のとがった(角になった)部分で行われることが知られている。そして、焼損しているローターとディスキャップのセグメントは、スパークによってギザギザ(つまり先端が無数にできている)に磨耗している。それは、スパークするために必要な要求電圧が少ないことを意味する。よって、せっかく条件が整っているのに、それを放棄してはもったいないからだ。

 定期的にメンテが必要な部分はポイントの接点で、セミトラでなかったら数千キロに一回は接点を点検し、荒れていたら400番の耐水ペーパーを二つ折りにして、ポイントに挟み、20回ほど往復させて磨き、その後ポイント面の油分を落とす。

 大きく焼損していた場合には、ポイントを取り外して、オイルストーンを使って研磨するが、傾かないように研磨することが重要だ。また、ベース側は平らにして、羽側は中央が少し高くなるように研磨すると、長持ちするようだ。

 メンテナンスはポイントそのものだけにとどまらない。遠心ガバナを使用した進角装置が正しく作動するかの点検も重要で、これはローターを持って、回転方向へねじった後、手を離して素早く元に戻ればOK。この作動がスムーズでないと、エンジン回転と燃焼開始のタイミングがベストにならず、パワーや燃費が低下する。

その他にも有るのが、オクテンセレクターというバキュームを利用した進角装置。点検ではキャブ側もしくは別のホースを使って、ディストリビューターに取り付けられているダイヤフラムを口で吸ったとき、ポイントベースがローターの回転方向と逆方向へ移動し、舌でホースを閉じていれば、進角状態が保持できれば問題なし。もちろん作動に抵抗感がなく、スムーズであることは重要。



1.これは単気筒の点火装置でデモンストレーション用として造ったものだが、バッテリーと繋ぎ、ポイントを開閉すれば、点火プラグにスパークが発生する。これを使って基本的な部分の説明をする。
              

2.クルマの(4気筒)ポイント部分。ポイントは一つで開閉するカム山は4個ある。これだけでは点火プラグへ高電圧を配分できないので、ディストリビューターなる分配装置がこの上側に付けられる。
              

3.ディスキャップとローター。ポイントカム軸にローターを押し込み(位置決めの切り欠きがある)、ディスキャップを被せる。ディスキャップ内の4箇所ある突起がセグメント。この部分は荒れていても何もしないことがベスト。
              

4.ポイントが荒れていたら、400番の耐水ペーパーを二つ折りにしてポイントに挟み、折曲がらないように力を加減し、場合によってはポイントを閉じるバネを戻しながら、20回ほど往復させる。ポイント面の焼損がある程度綺麗になったら(磨いたようにはならなくてもOK)油分を除去するため、パーツクリーナーなどを含ませた厚手の紙を挟んで引き出し終了。
              

5.ポイント磨きが終了したらポイントの最大開き幅(ポイントギャップという)の調整をする。これが正しくないと、エネルギーの高いスパークが得られない。ギャップの寸法は0.45mmというのが基本だが、1mmの半分ほど、と覚えておけばいい。最後は点火時期の調整をやる。
              

6.ポイントが大きく焼損し、取り付けられた状態ではどうにも処理が出来ないようなら。ポイントを取り外してオイルストーンで研磨するのだが、これはかなり難しい。というよりコツが必要。自分でやるなら、何回もトライして覚えるしかない。
              

7.ポイントの組み立てでは、羽側は絶縁するという構造をしっかりと理解すること。特にボルトとベースが接触しないようブッシュが入っていること忘れないように。
              

8.これがポイントベースの下側に装着されている遠心ガバナ。回転することでガバナのウエイトが遠心力で開き、カムを回転方向へ回す。この部分での進角幅は大きくないが、クランク軸とは1/2に減速されているので、進角量は2倍となる。ガバナの動きがスムーズで、ガバナスプリングが装着されていること。
              

9.青色のホースがオクテンセレクター作動用のバキュームホース。ここへのバキュームは、スロットルバルブが開き始めてから作用するようになっている。つまり、スロットルバルブとキャブのベンチュリー部分で起きるバキュームを利用する。目的は、エンジンの負荷に合わせた点火時期を得ること。スロットルが大きく開けばバキュームは低下するので、この部分での進角がなくなりノッキングを防ぐ。軽負荷ではバキュームが強く働き、進角幅を最大にする。これで燃費を稼ぐ。
              


ウルトラのポイントレスキット組み付け方法。対応車種がある。また、これだけで点火装置が完成するわけではない。他に専用のイグニッションシステムが必要

 

2010年11月7日日曜日

プラグコードの抵抗値を測る、ついでに点火プラグの抵抗値も

プラグコードと点火プラグには、雑音防止と言う観点からある抵抗値を負荷している。ただ、プラグコードにカーボンコードと称するものを使用していると、長さによって抵抗が違うため、その値はバラバラ。

その抵抗を、長さに関係なく一定としたものが、ウルトラのシリコンコードで、プラグキャップとディスビ側ブーツ部分にそれぞれ1kΩ、トータル2kΩの抵抗を取り付けている(ブルーポイント・パワーコードは0.5kΩ)ため、安定した点火エネルギーを供給できる構造。さらに純粋のシリコンゴムを使っているため耐候性に優れ、経年劣化が少ないことも特徴。

カーボンコードでは長さ1mで約20kΩ程の抵抗を負荷しているので、長さによる違いが、プラグのスパークエネルギーに、微妙な影響を与えている、と考えても不思議ではない。

「流れる電流地が非常に小さいので、抵抗は関係ない」と考える方もいるが、少しでも性能を阻害するファクターを排除したいと考えるなら、一定の抵抗のほうが望ましいはず。ちなみに、点火プラグに掛かる電圧は普通点火方式で15000V(CDIであると45000V)程だが、実際にはこの電圧に達する前にスパークが開始されるため、最大電圧は電流に置き換えられ、点火エネルギーが増大する。

現在では点火プラグも抵抗付きが標準で、以前は抵抗無しや、ギャップ内臓と言うものも有ったが、ギャップ付はプラグのスパークエネルギーが大きくなる反面、要求電圧が高くなる(=コイルの発熱なので、高くならない程度とメーカーでは言っていたが)ばかりでなく、雑音が多く発生するため、現在では製造されていない。

 
1.ウルトラのシリコンコード抵抗を測ってみると2.01kΩ(ファンクションスイッチは20kΩ)。0.01kΩオーバーは接触誤差と判断して差し支えない数字。プラグキャップ部分に1kΩ、ディスビ側ブーツに1kΩを加えている。


2.手元にあったカーボンプラグコードの抵抗を測ってみると10.41kΩ。長さは約50cmだった。


3.約30cmの短い方を測ると7.13kΩで、3kΩ以上の差がある。この差がどう出るのかは、判定が難しいけれど、誤差のないほうが良いに決まっているのは確かだ。


4.プラグに負荷している抵抗を測ってみると、意外なことが分かった。旧タイプの日立製は抵抗無しの000Ω。


5.同様な時期に造られたNGKでは、導通なしであることから、ギャップ内蔵型であることが分かる。目的から考えると、おそらく抵抗は負荷していないだろう。


6.使い古した白金のR(抵抗)付では4.04kΩ。相場は5kΩと言うことになっているが、どうやら違うようだ。使用状態を考慮したものなのか。


7.新品のバイク用R付きタイプでは5.82kΩの抵抗。点火方式がCDIと言うことを考慮したのか、何かの機会に聞いてみたい。



ウルトラのシリコンコードについて、永井電子より

2010年11月3日水曜日

ノーマルのポイント式点火装置をセミトラに改造するときはここに注意

1970年代後半まで当然のように使われていた点火方式はポイント式だった。ベーシックなポイント式点火装置において、点火タイミングとイグニッションコイルに誘導発生させる接点は、そのポイントが開く瞬間に数百ボルト(閉じている間は12V4Aほど)の電圧がかかり、コンデンサーを取り付けても、常にスパークが発生し、ポイント接点を劣化させ、強いては点火エネルギーの低下ばかりではなく、点火時期が狂って性能悪化からエンジン始動不能まで、あらゆるトラブルの引き金になっていた。

現在では当たり前になっているポイントレスのフルトラ点火方式だが、旧車をポイントレスのフルトラやCDIに改造することは出来なくても、ポイントを保護し強力で安定したスパークを維持させることが出来る。それが、ポイント接点を有効活用したセミトラと称する点火方式だ。

取り付け方式は非常に簡単で、説明書通りに接続すれば良いのだが、その前に重要なことを整える必要がある。それは、使用するイグニッションコイルについてだ。純正のコイルか、あるいはセミトラに改造する前から使用し、ポイント焼けなどのトラブルを起こしていないコイルなら問題ない。でもやりがちなのが「この際だから強力なコイルに交換しておこう」、と言うパターン。

まずこれはダメ。と言うのは、強力なコイルとセミトラが電流的にマッチングしていないということが多いからだ。イグニッションコイルには1次側にも2次側にも内部抵抗があるのだが、1次側ではその抵抗値が外付け抵抗と合わせて、3Ω前後必要とされている(外付け抵抗なしの場合も3Ω)。

もちろん1次抵抗をテスターで計測し、3Ω前後あることを確認出来ればそのコイルを使用することに問題ないが、閉磁型(モールド型)と呼ばれるコイルでは1Ω程しか1次側に抵抗値がないので、ポイントに流れる電流は15A近くとなり、ポイントが焼けてしまう。

セミトラに改造したときに、このようなコイルを使用すると、コイルが大きな電流を要求する形となり、取り付け直後は問題なく始動できても、短期間でポイントではなく、イグナイターユニットが不良となる。

点火系のエネルギーを高くすれば、エンジン性能は上がるが、クルマによっては不具合なども発生するので、取り付けるクルマがどのように造られているか、十分に理解しておくことは重要。

例えば、タコメーターが動かなくなったり、キャブのアイドルカットソレノイドに通電できず、アイドリングしないと言うことも事例としてある。タコメーターに関しては回転感知方式がいろいろあるので、どこに繋げば良いのか、あるいはその対策はないのか、ということは不明だが、アイドルカットソレノイドを装備しているクルマでは、その構成を理解していれば、簡単に対策出来るはずだ。

なお、ポイント仕様の純正イグニッションコイルが入手できないのなら、イグナイターとイグニッションコイルが一体となった、ウルトラのNo8900などを入手して、それを取り付ける。これなら安心してセミトラ点火方式に変更できるだけではなく、点火エネルギーも純正コイルを使用するより高いため、エネルギー効率に優れる。

1.ポイント式点火装置をトランジスター点火装置に変更するウルトラのセミトラ。この点火装置を使用するときに注意したいのは、イグニッションコイルの1次側抵抗値である。


2.抵抗を計測すると、このコイルの場合(純正品)3.0Ω。外付けの抵抗を合わせてであるが、トータルの抵抗が重要なので、これで十分。


3.輸入品のコイルでももちろん対応しているものはあるが、純正のイグニッションコイルを使用することが大原則なので、そのことはしっかりと頭に入れておきたい。

4.手元にあるコイルに装着されている外付け抵抗は1.2Ωの刻印がある。ほとんどの外付け抵抗には抵抗値が刻印されている。抵抗が小さいため、計測するときの接触抵抗で誤差が大きくなるからだ。


5.抵抗や電位差を計測するにはデジタルテスターが便利。クルマ専用のアナライザーでなくても、ホームセンターで購入できるもので十分。計測できる抵抗最小値は200Ωぐらいが便利。1000Ω(1kΩ)では小数点以下が表示されないため、僅かなところで、確認できないことがある。



6.使ってはいけないイグニッションコイルが、この閉磁型と呼ばれるタイプ。

            

7.もし手元に純正のイグニッションコイルがないのなら、このように、セミトラのイグナイターと一緒になった物を選ぶしかない。ウルトラのハイパー・イグニッション・システムNo8900は、イグナイターとコイルをベストマッチングさせているので、強力な火花が得られる。



ニッサン・TSサニーのシェイクダウン