研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2010年12月19日日曜日

ポイント式点火装置と外部抵抗付イグニッションコイル

丸型イグニッションコイルには外部抵抗付があるが、このコイルは抵抗無しのものと比べ、高速時の電圧低下を少なくすることが目的。

外部抵抗無しのコイルではコイルに流れる1次電流は、電流を流そうとしたときゆっくりと立ち上がるため、低速時ではポイントの閉じている時間が長いため、1次電流は十分に流れる時間がある。(図のi)しかし、エンジンが高速回転となると、ポイントは閉じている時間が短くなり、1次電流が十分流れないうちにポイントが開く(図のi)ため、エンジンの回転数が高くなるほど2次電圧が低下してくる。

そこで、外部抵抗付のコイルは、1次コイルの巻き数を減らすことにより、1次電流の立ち上がりを良くして(図のi)高速時の2次電圧低下を少なくした。

1次コイルの巻き数を減らせばコイルの抵抗値も減少し、図のiのように低速時または停止時の1次電流が大きくなると共に、コイル自体の発熱も高くなるため、外部抵抗として1次ターミナルのプラス側へ1.2~1.5Ωの抵抗を直列に入れ(1次コイルとの合計抵抗を2.5~3.0Ω)、1次電流が大きくなり過ぎないようにしている。

なお、1次コイルの巻き数を減らすと、点火エネルギーが減少するため、外部抵抗付コイルでは抵抗なしコイルよりも1次電流を大きくして、点火エネルギーの減少分を補っている。(図のiiよりも上にあることで理解できる)


1.エンジン回転数と1次電流の関係はこのようになる。フルトラ点火方式では、閉角度制御という内容が加わり、ある回転数から1次電流を増やす制御が加わり、高速時の2次電圧低下を防いでいる。

ポイント式点火装置とイグニッションコイルの関係

ポイント式点火装置(セミトラを除く)では、ポイントが閉じているときに、イグニッションコイルの1次側に対して、3~4A程の電流が流れているが、次にポイントを開くと、コイルの電流が急激に遮断されることで、自己誘導作用により1次コイルには約300Vの電圧が発生。それに伴い2次コイルには、相互誘導作用により、瞬間的に10000~30000Vの電圧が誘起する。これが点火プラグへのスパークとなる。

このように作用するとき、1次コイルに誘起される電圧は1次電流に左右される。つまり、変化する割合に比例する。したがってポイントが早く開けば電流変化が早くなり電圧は高くなる。また、1次電流が大きくても電圧は高くなる。

ポイントが開いた状態から閉じるときにも1次電流は変化するが、コイルにはコイルに流れる電流を変化させると、その変化を妨げる性質があるため、この場合の1次電流は緩やかに立ち上がり、コイルに誘起される電圧も低く、放電電圧に達しない。なお、2次コイルに誘起される電圧は、1次コイルと2次コイルの巻き数比に比例する。


1.ポイント式点火装置の回路図。セミトラではないので、イグナイターなどはない普通点火方式。

丸型イグニッションコイルの構造を理解する

丸型、あるいは普通型と呼ばれるイグニッションコイルだが、その構造は至って簡単。入力電圧の割りに出力電圧が高いので(12Vを使って30000Vとするので)、特別な構造かと勘違いしてしまうが、基本的にトランスのような構造である。ただ、入力から出力に至るまでのプロセスが違うだけだ。

丸型のイグニッションコイルでは、1次コイルと2次コイルがコア(薄い珪素鋼の板を重ね合わせたもの)に巻かれている。2次コイルは0.05~0.1mmの細いエナメル線を15000~30000回巻き、その上に0.5~1.0mmのエナメル線を150~300回重ねて巻いている。コイル1層ごとにコイル間の短絡を防止するため、薄くて絶縁性の高い絶縁紙が巻き込んである。

鉄板をプレスして作った外筒との空間には、ピッチかオイルを充填して絶縁すると共に、使用中にコイルから発生する熱を放出させる役目も持つ。

2次コイルの巻き始めは鉄心に沿わせスプリングを介して2次端子(高電圧を取り出す側。俗にコイルコード差込側)に接続されている。2次コイルの巻き終わりは、1次コイルの巻き始めと繋がっており、1次ターミナルのプラス側へ接続される。1次コイルの巻き終わりは、1次ターミナルのマイナス端子に接続される。なお、両方のコイルは同方向へ巻いてある。

1次ターミナルのプラス側へは、イグニッションをONとした場合、バッテリーのプラス電気が作用する。同様にマイナス側はポイントと繋がり、ポイントが閉じている場合にはマイナスの電気が流れている。



1.これが普通型(丸型)イグニッションコイルの断面

2.イグニッションコイルの構造を図示するとこのようになる

2010年12月14日火曜日

ポイント式点火装置のメンテナンス その②

その①では、普段定期的に行う必要のあるメンテナンスを含めて取り上げたが、今回は、そのメンテナンスの最中に不都合な部分を見つけた場合どのようにするか、ディスビを分解しながら解説したいと思う。

不都合箇所として出やすいのがポイントの焼損や異常な磨耗。その原因には要求電圧がプラグギャップの磨耗で高くなったことやコンデンサーの不良、各接続端子の抵抗増大などがあるけれど、コンデンサーが取り付けられているとは言っても、ポイントは開く瞬間に僅かなスパークが起きるわけで、少しずつ焼損は起きてくる。これを防ぐには、セミトラ(永井電子などに商品がある)を採用するしかないが、使用する点火コイルは、純正であることを要求される。

ポイントの焼損がひどければ、取り付けられた状態での耐水ペーパーによる磨きは不可能。取り外して接点部分を確認し、オイルストーンで研磨するか、新しいものに交換。オイルストーンによる研磨は、様子を見ながら少しずつ行わないと、傾いたまま研磨することになるが、そうなったらベース側か羽側(カムで動かされる側)をネジって、中心が接するように矯正する。ポイント面の理想は中心が接していることだからだ。

バキューム進角がスムーズでなかったら、バキュームホースの亀裂などないか確認する。もちろんバキュームが作動するダイアフラムは、漏れがないことは重要だが、ダイアフラムから伸びる作動ロッドの先に繋がるベースプレートが、スムーズに回転しなければ意味がない。ポイントの焼損でオイルストーンによる研磨が必要な状態だったら、ついでにベースプレートを取り外して、回転の動きに問題ないか確認したい。

ぎこちない回転であったら、錆やグリース切れなどが考えられるので、十分に洗浄してから、ベアリング部分へ少量のグリース(耐熱グリースかリチウムグリース)を塗布して解決する。

このような症状が出ているときには、遠心ガバナの作動もスムーズではないはず。ベースプレートを取り外した内部を目視すれば、錆とその汚れが付着して、全体の動きに渋さが出ていることを予想できる。ポイントカムと一体となったガバナアッパー部は、中心に見えるボルトを取り外せば引き抜けるが、シャフトとの回転をスムーズにするため、上下に薄いシムが入っているので、扱いには注意が必要。

外したポイントカムは、汚れと錆などを除去するため、400番の耐水ペーパーで周囲を磨き、耐熱グリースかリチウムグリースを少量全周に擦り込む。多すぎるとグリースが飛び散ってポイントを汚し点火不良の原因となる。

ガバナの動きがスムーズではない原因のひとつは、ガバナピンとカムプレートのスリット間の渋さにある。ここのグリースが固着して段付磨耗のような状態を作り出しているため、スリットのピンが当たる側を耐水ペーパーで研磨してやると効果的。仕上げは耐熱グリースかリチウムグリースを少量塗布する。着けすぎると飛散して動きが阻害される原因を作ることになる。

全ての作動を確認して組み付けたら、ポイントのギャップを0.45mmとする。シュクネスゲージを使えばより正確になるが、使い方をマスターしないと不正確この上ない状態となるので、隙間から引き出すときの抵抗がどのくらい必要なのか、あるいは抵抗を感じてはいけないのか、何回も確認・調整して正しい値を求めることが重要。

最後は点火時期の調整だが、点火タイミングマークは見難いので、ホワイトマーカーなどで印を付けたほうが良い。エンジンを始動させて、進角状態の確認でも、最大進角位置にマークをつけておくとハッキリと確認することが出来る。

クランクをレンチで回し、イニシャル点火時期にマークを付けたら、その位置に固定。イグニッションをONにし、ディスビの締め付けボルトを緩めてディスビを左右に回して、コイルコードからスパークがある位置で止める。

コイルコードをディスキャップへ戻し、1番シリンダーのプラグコードへタイミングライトのセンサーをクランプ。センサーの感度によっては隣の点火信号も拾ってしまうので、できるだけプラグ近くで信号を取るようにする。

エンジンを始動し、点火時期を確認すると共に正しい点火時期となるよう、ディスビをゆっくりと動かして調整。進角状態の確認では、スロットルバルブを僅か開いたときに大きく進角し(バキューム進角が最大となる位置)、そこから更にスロットルを開くと、一旦進角が元に戻ってから、エンジン回転上昇と共に進角して行けばOK。


.焼損の激しいポイントは取り外して修正するか交換。修正ではオイルストーンで研磨するが、それには慣れが必要。

.オイルストーンでの研磨。平行に研磨できるようになるのは経験が必要。でも、傾いて研磨した場合では、羽側(鉄板が薄い)を曲げて矯正すれば良いだけ。ポイントが合わさっているときに、お互いが平行であれば良いのだ。もちろん、様子を見ながら少しずつ研磨するのは当然。

.取り外したベースプレートの動きを点検。ここは二重のプレートとなっており、ベアリングを挟んで回転する構造。回転と言っても10度ほど動くだけなので、どうしても異物が溜まりやすい。

.ベースプレートの構造には各種あるが、このクルマでは鋼のバネ力によってボールを押し付けているので、どうしてもその部分が汚れやすい。しっかりとパーツクリーナーなどで洗浄し、ボール部分へグリースを塗布して動きをスムーズにする。

.ベースプレートを取り外した内部を見ると、長い間メンテナンスがされていなかったことを物語る光景がある。これではガバナ進角としての役目が、十分発揮されていなかったことは想像できる。点検で、ディスビのローターを握って捻ったときの感触がその状況を物語っていた。

.ポイントカムを取り外したら、とりあえずカム全周の研磨を400番の耐水ペーパーで行う。その後、リチウムグリースなどを擦り込むように塗布する。ガバナピンの入るスリット部分も、固着しているグリースを耐水ペーパーで研磨するように磨き上げる。

.ガバナウエイトの動きやガバナスプリングの状態などを点検し、パーツクリーナーで洗浄した後十分に乾燥させ、問題がなければポイントカムのスリット部分にリチウムグリースなどを少量塗布して組み付けるが、このときに入るシムを忘れないように。

.組み付けたらクランクをレンチで回しポイントが一番開く位置にして、ポイントギャップの調整を行う。0.45mmという数字は、目視で何とかできるともいえないので(出先の現場ではそれで十分だが)、シュクネスゲージを使用するが、ポイント接点から、あるいはカムの谷とポイントヒールの間から、どのくらいの力で引き抜ければ良いのか、何回か調整して正しいギャップを求めること。

.点火時期を確実に調整するには、どうしてもタイミングライトが必要になる。しかし、タイミングライトでタイミングマークを見るのは難しい(特にこのクルマのようにフライホイールにタイミングマークのあるものでは)ため、予めホワイトマーカーを使って印をつけておくことが望ましい。

10.ディスビの締め付けボルトを緩め、イグニッションをONとしてから、コイルコードからのスパークで、イニシャル点火時期を求める。これは、あくまでもエンジンが始動できる状態を作り出すことであり、そこで点火時期を決めるわけではない。

11.タイミングライトのセンサーを1番シリンダーのプラグコードへクランプしてエンジン始動。アイドルでの点火時期を調整してから、エンジン回転を上下して、進角状態を確認する。エンジンを停止しディスビの締め付けボルトを締めて終了。

12.点火時期マーク(正しくは上死点マーク)は一般的にクランクプーリーにある。その場合には、タイミングギヤケース上の角度数字は読めるが、プーリーにあるマークの切り欠きが見えないので、この場合にもホワイトマーカーで印を付けたい。

2010年12月9日木曜日

ポイント式点火装置のメンテナンス その①

簡単な機構で点火プラグへ火花をスパークさせるポイント式点火装置は、メンテナンスが重要で、それを怠るとエンジン始動不能と言う状態にまで発展するが、例えそうなっても、ある程度いじれる人がいれば、簡単な手当で回復させることが出来た。それほど簡単な機構が、長い間使われてきた理由かもしれない。電子点火装置が当たり前となった現在では、現場での回復は不可能である。

その①では快調にしておくメンテナンスなので、火が出なくなったと言う想定はしない。普段から調子良く使うためには、どのあたりに注意して様子を見ておくべきかについて述べてみる。その②では、問題を見つけたときの対処を取り上げたい。

.まずディスキャップだが、取り外して外観の検査。これは、ひび割れやプラグコードの差し込まれている部分に対して行う。ひび割れがあれば交換だが、プラグコードの差込部分に出来てしまった白あるいは青い腐食は、パーツクリーナーで洗浄し、出来れば接点復活剤などを塗布する。内部ではセンターピースの状態を見る。スプリングにより押し出される形にあるので、スムーズに出入りするか、指で押して点検。ローターから電気を受け取るセグメントも破損がないか、異常な磨耗はないかを点検。ギザギザの磨耗は清掃しないでそのままにしたほうが、電気のロスが出ない。

.ローター側の点検では、セグメントに配電する先端に異常磨耗がないかを点検。この先端のギザギザ磨耗も、そのままにしておくほうが、電気的ロスを防げる。

.ポイント接点部分の点検を行う。マイナスドライバーで強制的に開き、両方の接点に異常焼損がないか目視する。同時にポイントヒール(カムが当たる部分)の磨耗点検や、カムに僅かなグリースの塗布なども考える。塗りすぎるとポイントの汚れる原因になるので注意する。

.ポイントに焼損があるときには、400番の耐水ペーパーを二つ折りにして磨く。短く持ち往復のストロークを小さくしないとペーパーが折れ曲がる。磨く回数は10回往復をペーパーの位置を替えて2回行う。耐水ペーパーは100円ショップやホームセンターで売っている。

.磨き終わったら、綺麗なボロキレにブレーキクリーナーを染み込ませ、ポイントに挟んで引き抜き磨きカスや油分を除去する。この作業は2~3回やる必要がある。油分が残っているとスパークしない原因となるからだ。

.ポイントのギャップ量も重要項目で、正式にはこのようにシュクネスゲージを使って、0.45mmとするのだが、1.0mmの半分と言う判断でもOK。直接ポイントにシュクネスゲージを差し込むのではなく、ポイントが最大に開く状態としてから、ヒールとカムの低い部分のギャップを測っても良い。この方がポイントを汚さなくて済む。狭すぎるとポイントの開くタイミングで切れが悪くなり、特に始動時ではスパーク性能に影響する。また、広すぎると、高回転ではIGコイルに電気を流しておく時間が短くなるため、スパークエネルギーが低下し、ミスファイアの原因となる。

.ポイントを開閉するカムシャフト(ローターシャフト)は、常に同じタイミングでポイントを開くことが重要となるので、この部分のガタは全ての性能を大幅に低下させる。めったに磨耗するものではないが、360度の方向へ揺すってガタのないことを確認する。

.点火装置にはエンジンの回転上昇に併せて点火時期を早める装置がある。それが遠心ガバナで、ポイントカムの回転方向へねじり、軽い力で数度動いてから手を離したときに、素早くスムーズに元の位置へ戻ることが重要。これがスムーズに作動しないと、素早く正しい点火時期が得られず、燃費や加速性能に影響する。

.点火時期の進角には、エンジン回転数と関係するガバナ進角の他に、エンジンの負荷を検出して、それに併せた進角を行う装置がある。それがバキューム進角とかバキュームアドバンサー、あるいはオクテンセレクターと呼ばれるもので、スロットルバルブの開閉角度とエンジン回転数によるバキューム量で進角幅を決めるもの。上側の写真は進角していない状態(作動確認の小さな突起が突き出している)で、ホームセンターで販売されている工作用の注射器などを使い、キャブに差し込まれているホースを抜き取って、注射器に接続し、注射器のピストンを引いてバキュームを造ったとき、突起が引き込まれればOK。また、その状態が保持できれば内部のダイアフラムに破損はない。口でくわえて同様な確認も出来るが、あまりお勧めできない。この作動はエンジン始動中にアクセルを少し開閉してみると、突起の出入りが確認できるはず。
              

10.ポイントからコイルまでのコードを途中で繋いでいる場合には、その接続部分も磨いて電気のロスを防ぐことが必要となる。意外に忘れられている分部なので、よく注意して観察したい。

11.点検が終わったら点火時期の確認。クランクシャフトを回して、基本の点火時期マークをあわせたら、次にディスビの固定ボルトを緩め、ディスキャップからコイルコードを引き抜き、アースとコード間でスパークの確認できる状態としてからIGキーをONとし、ディスビをゆっくりとローターと逆の方向へ回し、プラグコードからスパークが起きたところで、ディスビの固定ボルトを締めて終了。スパークが起きなければ、すでにポイントが開いていると判断し、ローターの回転方向へディスビを回し、ポイントを閉じてから、逆方向へ回してスパークするところを探す。


フィアット500の点火時期調整