研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2010年12月9日木曜日

ポイント式点火装置のメンテナンス その①

簡単な機構で点火プラグへ火花をスパークさせるポイント式点火装置は、メンテナンスが重要で、それを怠るとエンジン始動不能と言う状態にまで発展するが、例えそうなっても、ある程度いじれる人がいれば、簡単な手当で回復させることが出来た。それほど簡単な機構が、長い間使われてきた理由かもしれない。電子点火装置が当たり前となった現在では、現場での回復は不可能である。

その①では快調にしておくメンテナンスなので、火が出なくなったと言う想定はしない。普段から調子良く使うためには、どのあたりに注意して様子を見ておくべきかについて述べてみる。その②では、問題を見つけたときの対処を取り上げたい。

.まずディスキャップだが、取り外して外観の検査。これは、ひび割れやプラグコードの差し込まれている部分に対して行う。ひび割れがあれば交換だが、プラグコードの差込部分に出来てしまった白あるいは青い腐食は、パーツクリーナーで洗浄し、出来れば接点復活剤などを塗布する。内部ではセンターピースの状態を見る。スプリングにより押し出される形にあるので、スムーズに出入りするか、指で押して点検。ローターから電気を受け取るセグメントも破損がないか、異常な磨耗はないかを点検。ギザギザの磨耗は清掃しないでそのままにしたほうが、電気のロスが出ない。

.ローター側の点検では、セグメントに配電する先端に異常磨耗がないかを点検。この先端のギザギザ磨耗も、そのままにしておくほうが、電気的ロスを防げる。

.ポイント接点部分の点検を行う。マイナスドライバーで強制的に開き、両方の接点に異常焼損がないか目視する。同時にポイントヒール(カムが当たる部分)の磨耗点検や、カムに僅かなグリースの塗布なども考える。塗りすぎるとポイントの汚れる原因になるので注意する。

.ポイントに焼損があるときには、400番の耐水ペーパーを二つ折りにして磨く。短く持ち往復のストロークを小さくしないとペーパーが折れ曲がる。磨く回数は10回往復をペーパーの位置を替えて2回行う。耐水ペーパーは100円ショップやホームセンターで売っている。

.磨き終わったら、綺麗なボロキレにブレーキクリーナーを染み込ませ、ポイントに挟んで引き抜き磨きカスや油分を除去する。この作業は2~3回やる必要がある。油分が残っているとスパークしない原因となるからだ。

.ポイントのギャップ量も重要項目で、正式にはこのようにシュクネスゲージを使って、0.45mmとするのだが、1.0mmの半分と言う判断でもOK。直接ポイントにシュクネスゲージを差し込むのではなく、ポイントが最大に開く状態としてから、ヒールとカムの低い部分のギャップを測っても良い。この方がポイントを汚さなくて済む。狭すぎるとポイントの開くタイミングで切れが悪くなり、特に始動時ではスパーク性能に影響する。また、広すぎると、高回転ではIGコイルに電気を流しておく時間が短くなるため、スパークエネルギーが低下し、ミスファイアの原因となる。

.ポイントを開閉するカムシャフト(ローターシャフト)は、常に同じタイミングでポイントを開くことが重要となるので、この部分のガタは全ての性能を大幅に低下させる。めったに磨耗するものではないが、360度の方向へ揺すってガタのないことを確認する。

.点火装置にはエンジンの回転上昇に併せて点火時期を早める装置がある。それが遠心ガバナで、ポイントカムの回転方向へねじり、軽い力で数度動いてから手を離したときに、素早くスムーズに元の位置へ戻ることが重要。これがスムーズに作動しないと、素早く正しい点火時期が得られず、燃費や加速性能に影響する。

.点火時期の進角には、エンジン回転数と関係するガバナ進角の他に、エンジンの負荷を検出して、それに併せた進角を行う装置がある。それがバキューム進角とかバキュームアドバンサー、あるいはオクテンセレクターと呼ばれるもので、スロットルバルブの開閉角度とエンジン回転数によるバキューム量で進角幅を決めるもの。上側の写真は進角していない状態(作動確認の小さな突起が突き出している)で、ホームセンターで販売されている工作用の注射器などを使い、キャブに差し込まれているホースを抜き取って、注射器に接続し、注射器のピストンを引いてバキュームを造ったとき、突起が引き込まれればOK。また、その状態が保持できれば内部のダイアフラムに破損はない。口でくわえて同様な確認も出来るが、あまりお勧めできない。この作動はエンジン始動中にアクセルを少し開閉してみると、突起の出入りが確認できるはず。
              

10.ポイントからコイルまでのコードを途中で繋いでいる場合には、その接続部分も磨いて電気のロスを防ぐことが必要となる。意外に忘れられている分部なので、よく注意して観察したい。

11.点検が終わったら点火時期の確認。クランクシャフトを回して、基本の点火時期マークをあわせたら、次にディスビの固定ボルトを緩め、ディスキャップからコイルコードを引き抜き、アースとコード間でスパークの確認できる状態としてからIGキーをONとし、ディスビをゆっくりとローターと逆の方向へ回し、プラグコードからスパークが起きたところで、ディスビの固定ボルトを締めて終了。スパークが起きなければ、すでにポイントが開いていると判断し、ローターの回転方向へディスビを回し、ポイントを閉じてから、逆方向へ回してスパークするところを探す。


フィアット500の点火時期調整