それまでトヨタが使っていたエンジンは、ツインターボ仕様。その型式がレギュレーションの変更で使えなくなり、新設計したNAエンジンを搭載。
ターボ仕様の時には、鈴鹿の耐久レースで、ガソリン給油のたびにラップタイムが低下し、スタートからトップを独走していたにもかかわらず、入賞を逃してしまった。
何が悪かったのか、この結果だけでは判断できなかったが、後日、大手のチューナーから電話があり「燃料給油でピットインするとき、エンジンはどうなっていた」という質問を受けた。「何故ですか?」という問いに対して「給油中のアイドリングは出来ないことになっているので、それに変わる何かをやらなければ、ターボの軸が焼きついて、過給圧が上がらなくなるからね」という答。
確かにその通りで、ターボを常に回さなくても、ターボへ潤滑オイルを強制的に送り、冷却と潤滑を行うなどすれば、ターボの軸が焼きつくことはない。それをトヨタはやらなかったので、成績は・・・
他に何も装備はなかったか、ということの答えは、「何もありませんでした」ということで「それジャーあんな成績になって当然だ。という結論で電話を切った。
その後、エンジンに対する規則が変更され、ターボではなく自然吸気エンジンの使用が決まったので、トヨタは新しくV10、3.5リッターエンジンを開発。最初のシェイクダウンは鈴鹿サーキットで、富士スピードウエイほど最高速が高くならなかったため、エンジン回転リミッターが作動するまでにならなかったのだろうが、富士スピードウエイでは、グランドスタンドのゴールラインを過ぎたあたりから、エンジン回転リミッターが作動。
その状態を目の当たりにしたとき、そばにいたトヨタの関係者に「次の周回でたぶんガレージに入るでしょう」と話したら、怪訝な顔をしていたがその通りになった。
何故、その予測をしたかというと、当時のエンジンにある対策をしない状態で、点火の間引きでエンジン回転リミッターを使うと、その点火に関する刺激がイグナイターに回り込み、点火装置全体を不良にする、という状況を知っていたからだ。
何故そのようなことが起きるか。それは、バイクのエンジンも当時は単純に点火を間引く方式でのリミッターを使うメーカーがいて、試乗会当日にエンジン不調が表面に出ていた。
その状況を別のバイクメーカー関係者に話をすると「うちでも同様なことをやり、点火装置が壊れることを確認していたので、回転リミッターとして使う場合には、点火を間引くのではなく、点火を遅らせたり、2ストロークの場合には、排気バルブを閉じる方向へ変化させて制御している、という話を聞いていたからだ。
点火の間引きで回転リミッターとすると、リミッターが作動した瞬間から、イグナイターに点火信号がキックバックしてしまうため、点火装置全体がトラブルを引き起こす。
このような結果となることを知らなかったトヨタは、試走会で、みっともない状況を作り出してしまったのだ。
最初のトラブル状況を理解していなかったため、ガレージに入ってから装置を交換して、再度テスト走行したが、結果は同じで、数周後にはガレージに。