研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2011年2月4日金曜日

新型ヴィッツに試乗してきたぞ 上級車にも迫る作りこみ

リコール問題が取沙汰されているトヨタだが、新型はそのようなことが起きない作り込みをしていると確信したいところ。

ところでプリウス以外の売れ筋はヴィッツだろうから、思いの高さを高くして開発したに違いない。そのヴィッツの新型に試乗したので、インプレッションを書いてみた。最初に乗った1.3リッターのアイドルストップ搭載モデルで、クオリティの高さを感じてしまった。何のことはない、作り込みが上級モデル並みで、走り出す感覚や他のクルマと同列に並んで走るときの気持ちの安らぎは、これまでにないコンパクトカーといえるだろう。アイドリング時の振動が殆ど感じない処理にも敬服した。

走行音は静かで、特に新開発した1.3リッターはエンジン騒音の減垂性がよく、アクセルを大きく踏み込んでも、小気味良い唸り音を感じるだけ。それにも増して、新エンジンを搭載するなら、IQのプラットフォームをベースにしてストレッチすれば、ホイールベースの延長と前後重量バランスの最適化が出来たと思うのだが。

何故そのようにしなかったのか開発者に聞いてみると「確かに、IQのプラットフォームであれば、ミッションとデフの位置がこれまでのクルマのレイアウトと違って、前方になりますから、重量配分的には優れているため、初期の段階では検討したのですが、製造のコストなどを考えたときに、現行のプラットフォームで不都合な点を改良すれば十分という結論になったからです」、という話だ。

IQの駆動系やプラットフォーム、ステアリング周り、リヤサスペンションなどはヴィッツ以上にコストが膨らむようだが、それ以上にユーザーに対してのメリットは大きいように思うので、それを使わなかったのは残念である。

もちろん良いことばかりではない。この燃費狙いの仕様にはタイヤも燃費重視のものを装着してあり、それが気になる走行性を示した。緩い下り勾配のコーナリングで、アクセルペダルを半分ほど踏み込みながら走ろうとすると、有ろうことかオーバーステアのように、フロントが回り込んでしまうのである(フロントホイールアライメントのトーが影響するので原因は定かでない)。1.5リッターモデルではニュートラル。RSでは更に速度を10km/h高くしても、何も起きない。

また、スポーティなサスペンションとしてバネなどが硬いRSであるが、こいつのほうが道路の継ぎ目を連続して走行する場合、はるかに快適だ。言ってみれば下から突き上げられたときに“お釣りが来ない”のである。

何が違うか開発者に聞いてみると「バネとショックが違います。ショックは単に減垂力のことだけではなく、内容も違うのです」、という話である。でもそのショックを他の仕様にも採用するつもりはないようだ。

1.3リッターモデルではアイドルストップを装備しているが、このシステムはすでにIQの1300で採用していたもの。トルコンのドライブプレートにオーバーランニングクラッチを組み込み、リングギヤとセルのピニオンギヤは常時噛み合ったまま。セルとリングギヤが噛み合う音がしないから、ドレッシーな感じで再スタートする、というのだが、とてもそうは感じない。

確かにセルのピニオンがリングギヤに噛み込むときの音はしないが、その音はたいしたものじゃない。なのでピニオンギヤとリングギヤが噛み合って回る音のほうがうるさく、他社の廉価版システムとの違いを感じることは出来なかった。

このオーバーランニングクラッチを使うセルモーターの方法は、すでにバイクでは当然のものとしており、セルのギヤからリダクションのギヤまで、綺麗にシェービングされているため、ギヤが噛み合って回る音は感じない。バイクのセルを勉強しておけば、ヴィッツでも少しはドレッシーな始動になっただろうに、と思う。

アイドルが一旦停止し、再始動する条件は各社違いがあるようだが、ヴィッツはステアリングを左右に動かしても再始動しない。他のメーカーでは、右左折時の発進遅れを考慮して、一時停止状態から、ブレーキやアクセルの操作をしなくてもハンドルに手をかけたとたん再始動させるのだが。

この点について開発者は「ブレーキペダルから足を離した瞬間、0.35秒後には再始動が完了しますから、ステアリングのトルクセンサーから信号を取っていません」ということだったが、左足でブレーキペダルの操作をしている場合、同時進行的にアクセルを踏むタイミングもあり、やはり再始動に遅れを感じる。再始動条件にはブレーキスイッチとブレーキ液圧検知を採用しているということだが、少しストローク的に鈍感すぎることが、他社のそれとは再始動時間の差が出ているようにも思う。

ただ、アイドルストップした後に少し前進させるようなとき、他のクルマでは時速20キロ以上とか、数十メーター走行しないと、など再始動の条件は厳しいが、ヴィッツの場合5m程クリープ走行させると、再びエンジンは停止する。距離を計測してアイドル停止の条件としているのか、と聞いてみると「そうではなく、時速2キロで走れば停止の条件となります。たぶん、クリープ走行で5mは、それに合致したのでしょう」という話だった。


1.これがアイドルストップ後に再始動させるとき、セルモーターからの力を伝えて、再始動後はエンジンからセルモーターへは回転が伝わらない、ATのドライブプレートに組み込まれたオーバーランニングクラッチ。特別新しいものではなく、バイクではこれがスタンダード。ドレッシーな始動音を求めたという話だが、そんなことは感じなかった。ピニオンギヤとリングギヤの噛み合う音が汚らしいからだ。

2.アイドルストップが付いたクルマには、非常に大きな容量のバッテリーが搭載される。表示を見ると85Ahとある。以前2.4リッターのディーゼルターボを乗っていたが、それに使われていたのは75Ahだった。汎用性が低いバッテリーなので、ディーラーで交換するときに高価だろう。

3.こちらは1.5リッターのエンジンルーム。バッテリーは極普通のサイズ。

4.1.5リッターのエンジンはこれまでのものを流用。全部の仕様でいえることは、ゆっくりと走らせている限り、上級モデルに匹敵する走行フィーリングを持ち、挙動が穏やかに造られていること。特に新エンジンとした1.3リッターは、バランスが良いのか、エンジンの負荷を大きくしても、綺麗なエンジン音を発する。