研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2014年10月25日土曜日

不定期連載 数式を使わない、クルマの走行安定性の話・4/17


荷馬車の車軸はガタガタが正しい!!!

もうひとつ面白い現象を考えてみよう。それは馬や牛が引くに馬車である。この荷馬車に付けられる車輪は、車軸に対してかなりガタガタである。人間や自転車で引くリヤカーにはボールベアリングが採用されていたにも関わらず、荷馬車の車輪はガタガタで、トーやキャンバーが常に変化する状態に取り付けられている。

これがいったい何を意味するものなのか、車輪の挙動変化や牛の動きを見てみるとなにかが分かる。例えば、どちらかの車輪が石などに引っかかり、動きが一瞬止まったときなど、このガタガタ車輪はトーがアウトになったりインになったりして、受けた外乱を処理しながら荷重の移動を行い、車体の姿勢変化もなく荷馬車は向きを変えることなしに前進する。

ところが、この車軸をボールベアリングで支持したとたんに、彼らは荷馬車を引かなくなる。もちろん衝撃荷重が強く作用すると、ベアリングが破損してしまうことにもなるのだが、そのような問題が発生する以前での話だ。なぜかというと、衝撃的に入る外乱の処理能力が、ボールベアリングの採用で失われたからである。

もちろんここに細い空気入りタイヤが使われていたら少し状況は違ってくる。空気入りタイヤがある程度までの衝撃的外乱は処理してしまうから、荷馬車の走行性にそれほど影響を与えないだろう。

ではなぜ彼らは荷馬車を引くのをやめたのであろうか。それは、車軸のガタがなくなり衝撃的な外乱を処理できなかった反動が、車体に伝わり、前方にのびたアーム(鞍に取り付けて、荷重と牽引力がかかる)がかれらの脇腹を叩くき、その痛みに耐えきれず牽引するのをやめると考えられる。

速度としてはわずか45km/hでのことであるが、車輪は堅くダイレクトな動きとなるために、より強調されることになる。こんな低速車にも、外乱の処理をする必要がある。

馬による牽引車では以下のような状況も見られる。それは、イギリスやフランスの競馬にあるもので、馬に騎手が直接乗るのではなく、小型の馬車を引き、そこに騎手が乗タイプのもの。この馬車に使われるタイヤは、細いが空気入りのもの。車輪とスピンドルは、当然のようにボールベアリングかテーパーベアリングである。走路はハードコートで、舗装ではなく泥と砂を混ぜて固めたもの。当然馬のひずめ等による凸凹や車輪による轍がある。

ここで馬車を走らせれば、路面からの外乱処理が問題になる。しかし、馬車には外乱処理のシステムは取り付けられてはいない。もしここで、馬と騎手だけによる走り方と同じ襲歩(しゅうほ・ギャロップ)としたら、たちまちのうちに馬も馬車も横転するだろう。とにかく、前後左右の足が同時に浮き上がっている状態が、入れ替わりに生じるので、当然のことといえそうだ。

つまり、あくまでも外乱は処理されていない訳で、その力をどこかに分散させてしまうか、あるいは押さえつけてしまうかである。あの馬車の場合、分散させることは難しい、押さえつけるしかない。

そこで生まれたのが、あの一見優雅に見える馬の走り方であると、勝手に結論付けた。その走り方をよく思い出してみると、必ず片側前後の足が同時に、しっかりと路面をとらえている。猫の早歩き方なのだ。つまり、馬車の車輪から入った外乱は、馬がそれを押さえつけてしまわなければならないわけで、あの走り方のテンポとしないと、押さえつけることはできない。ときどき見られる横転事故は、馬車に入り込んだ外乱が大きすぎたことによるものであったり、何かの拍子に、馬が両足を上げてしまったときに起きているように思う。