研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2010年11月21日日曜日

ポイント式点火装置について考える

 現在では新車に使用されているクルマもバイクもない、というものがポイント式の点火装置だ。しかし、フルトランジスター点火装置に取って代わるまでの長い間、全てのガソリンエンジン(ガスエンジンも)では、点火プラグのスパーク用として、重要な点火時期と、高電圧を発生させる手段の役割を持たせていた。

 全てが機械的に作動するため、当然磨耗したり汚れたり、エンジンの燃焼ということからすると、トラブル発生の元になっていたのがポイント式点火装置だった。しかし、ポイント式でもポイントの焼損を防ぎ、安定して長持ちさせるセミトラ(ウルトラ製ばかりではなく自動車メーカーも一時期は採用した)が登場すると、メンテナンスではかなり楽になってきたが、機械的な部分は相変わらずメンテする必要が残っている。

 改めてポイント式点火装置の構造と(構造を知るとメンテも理解できる)メンテナンスについて書いてみたいと思う。

 クルマでは多気筒ということもあり、ひとつのイグニッションコイルから高電圧を分配するディストリビューターがあるけれど、その部分に対するメンテナンスはほとんどない。ポイントカム軸に差し込まれるローターの先端と、ディスキャップ側のセグメントにスパーク(電気の分配では接触するわけではない)による焼損があっても、ヤスリ等で磨いてはいけない。見てみぬふりに止める。

 何故磨いてはいけないかというと、点火プラグに限らずスパークは先のとがった(角になった)部分で行われることが知られている。そして、焼損しているローターとディスキャップのセグメントは、スパークによってギザギザ(つまり先端が無数にできている)に磨耗している。それは、スパークするために必要な要求電圧が少ないことを意味する。よって、せっかく条件が整っているのに、それを放棄してはもったいないからだ。

 定期的にメンテが必要な部分はポイントの接点で、セミトラでなかったら数千キロに一回は接点を点検し、荒れていたら400番の耐水ペーパーを二つ折りにして、ポイントに挟み、20回ほど往復させて磨き、その後ポイント面の油分を落とす。

 大きく焼損していた場合には、ポイントを取り外して、オイルストーンを使って研磨するが、傾かないように研磨することが重要だ。また、ベース側は平らにして、羽側は中央が少し高くなるように研磨すると、長持ちするようだ。

 メンテナンスはポイントそのものだけにとどまらない。遠心ガバナを使用した進角装置が正しく作動するかの点検も重要で、これはローターを持って、回転方向へねじった後、手を離して素早く元に戻ればOK。この作動がスムーズでないと、エンジン回転と燃焼開始のタイミングがベストにならず、パワーや燃費が低下する。

その他にも有るのが、オクテンセレクターというバキュームを利用した進角装置。点検ではキャブ側もしくは別のホースを使って、ディストリビューターに取り付けられているダイヤフラムを口で吸ったとき、ポイントベースがローターの回転方向と逆方向へ移動し、舌でホースを閉じていれば、進角状態が保持できれば問題なし。もちろん作動に抵抗感がなく、スムーズであることは重要。



1.これは単気筒の点火装置でデモンストレーション用として造ったものだが、バッテリーと繋ぎ、ポイントを開閉すれば、点火プラグにスパークが発生する。これを使って基本的な部分の説明をする。
              

2.クルマの(4気筒)ポイント部分。ポイントは一つで開閉するカム山は4個ある。これだけでは点火プラグへ高電圧を配分できないので、ディストリビューターなる分配装置がこの上側に付けられる。
              

3.ディスキャップとローター。ポイントカム軸にローターを押し込み(位置決めの切り欠きがある)、ディスキャップを被せる。ディスキャップ内の4箇所ある突起がセグメント。この部分は荒れていても何もしないことがベスト。
              

4.ポイントが荒れていたら、400番の耐水ペーパーを二つ折りにしてポイントに挟み、折曲がらないように力を加減し、場合によってはポイントを閉じるバネを戻しながら、20回ほど往復させる。ポイント面の焼損がある程度綺麗になったら(磨いたようにはならなくてもOK)油分を除去するため、パーツクリーナーなどを含ませた厚手の紙を挟んで引き出し終了。
              

5.ポイント磨きが終了したらポイントの最大開き幅(ポイントギャップという)の調整をする。これが正しくないと、エネルギーの高いスパークが得られない。ギャップの寸法は0.45mmというのが基本だが、1mmの半分ほど、と覚えておけばいい。最後は点火時期の調整をやる。
              

6.ポイントが大きく焼損し、取り付けられた状態ではどうにも処理が出来ないようなら。ポイントを取り外してオイルストーンで研磨するのだが、これはかなり難しい。というよりコツが必要。自分でやるなら、何回もトライして覚えるしかない。
              

7.ポイントの組み立てでは、羽側は絶縁するという構造をしっかりと理解すること。特にボルトとベースが接触しないようブッシュが入っていること忘れないように。
              

8.これがポイントベースの下側に装着されている遠心ガバナ。回転することでガバナのウエイトが遠心力で開き、カムを回転方向へ回す。この部分での進角幅は大きくないが、クランク軸とは1/2に減速されているので、進角量は2倍となる。ガバナの動きがスムーズで、ガバナスプリングが装着されていること。
              

9.青色のホースがオクテンセレクター作動用のバキュームホース。ここへのバキュームは、スロットルバルブが開き始めてから作用するようになっている。つまり、スロットルバルブとキャブのベンチュリー部分で起きるバキュームを利用する。目的は、エンジンの負荷に合わせた点火時期を得ること。スロットルが大きく開けばバキュームは低下するので、この部分での進角がなくなりノッキングを防ぐ。軽負荷ではバキュームが強く働き、進角幅を最大にする。これで燃費を稼ぐ。
              


ウルトラのポイントレスキット組み付け方法。対応車種がある。また、これだけで点火装置が完成するわけではない。他に専用のイグニッションシステムが必要

 

2010年11月7日日曜日

プラグコードの抵抗値を測る、ついでに点火プラグの抵抗値も

プラグコードと点火プラグには、雑音防止と言う観点からある抵抗値を負荷している。ただ、プラグコードにカーボンコードと称するものを使用していると、長さによって抵抗が違うため、その値はバラバラ。

その抵抗を、長さに関係なく一定としたものが、ウルトラのシリコンコードで、プラグキャップとディスビ側ブーツ部分にそれぞれ1kΩ、トータル2kΩの抵抗を取り付けている(ブルーポイント・パワーコードは0.5kΩ)ため、安定した点火エネルギーを供給できる構造。さらに純粋のシリコンゴムを使っているため耐候性に優れ、経年劣化が少ないことも特徴。

カーボンコードでは長さ1mで約20kΩ程の抵抗を負荷しているので、長さによる違いが、プラグのスパークエネルギーに、微妙な影響を与えている、と考えても不思議ではない。

「流れる電流地が非常に小さいので、抵抗は関係ない」と考える方もいるが、少しでも性能を阻害するファクターを排除したいと考えるなら、一定の抵抗のほうが望ましいはず。ちなみに、点火プラグに掛かる電圧は普通点火方式で15000V(CDIであると45000V)程だが、実際にはこの電圧に達する前にスパークが開始されるため、最大電圧は電流に置き換えられ、点火エネルギーが増大する。

現在では点火プラグも抵抗付きが標準で、以前は抵抗無しや、ギャップ内臓と言うものも有ったが、ギャップ付はプラグのスパークエネルギーが大きくなる反面、要求電圧が高くなる(=コイルの発熱なので、高くならない程度とメーカーでは言っていたが)ばかりでなく、雑音が多く発生するため、現在では製造されていない。

 
1.ウルトラのシリコンコード抵抗を測ってみると2.01kΩ(ファンクションスイッチは20kΩ)。0.01kΩオーバーは接触誤差と判断して差し支えない数字。プラグキャップ部分に1kΩ、ディスビ側ブーツに1kΩを加えている。


2.手元にあったカーボンプラグコードの抵抗を測ってみると10.41kΩ。長さは約50cmだった。


3.約30cmの短い方を測ると7.13kΩで、3kΩ以上の差がある。この差がどう出るのかは、判定が難しいけれど、誤差のないほうが良いに決まっているのは確かだ。


4.プラグに負荷している抵抗を測ってみると、意外なことが分かった。旧タイプの日立製は抵抗無しの000Ω。


5.同様な時期に造られたNGKでは、導通なしであることから、ギャップ内蔵型であることが分かる。目的から考えると、おそらく抵抗は負荷していないだろう。


6.使い古した白金のR(抵抗)付では4.04kΩ。相場は5kΩと言うことになっているが、どうやら違うようだ。使用状態を考慮したものなのか。


7.新品のバイク用R付きタイプでは5.82kΩの抵抗。点火方式がCDIと言うことを考慮したのか、何かの機会に聞いてみたい。



ウルトラのシリコンコードについて、永井電子より

2010年11月3日水曜日

ノーマルのポイント式点火装置をセミトラに改造するときはここに注意

1970年代後半まで当然のように使われていた点火方式はポイント式だった。ベーシックなポイント式点火装置において、点火タイミングとイグニッションコイルに誘導発生させる接点は、そのポイントが開く瞬間に数百ボルト(閉じている間は12V4Aほど)の電圧がかかり、コンデンサーを取り付けても、常にスパークが発生し、ポイント接点を劣化させ、強いては点火エネルギーの低下ばかりではなく、点火時期が狂って性能悪化からエンジン始動不能まで、あらゆるトラブルの引き金になっていた。

現在では当たり前になっているポイントレスのフルトラ点火方式だが、旧車をポイントレスのフルトラやCDIに改造することは出来なくても、ポイントを保護し強力で安定したスパークを維持させることが出来る。それが、ポイント接点を有効活用したセミトラと称する点火方式だ。

取り付け方式は非常に簡単で、説明書通りに接続すれば良いのだが、その前に重要なことを整える必要がある。それは、使用するイグニッションコイルについてだ。純正のコイルか、あるいはセミトラに改造する前から使用し、ポイント焼けなどのトラブルを起こしていないコイルなら問題ない。でもやりがちなのが「この際だから強力なコイルに交換しておこう」、と言うパターン。

まずこれはダメ。と言うのは、強力なコイルとセミトラが電流的にマッチングしていないということが多いからだ。イグニッションコイルには1次側にも2次側にも内部抵抗があるのだが、1次側ではその抵抗値が外付け抵抗と合わせて、3Ω前後必要とされている(外付け抵抗なしの場合も3Ω)。

もちろん1次抵抗をテスターで計測し、3Ω前後あることを確認出来ればそのコイルを使用することに問題ないが、閉磁型(モールド型)と呼ばれるコイルでは1Ω程しか1次側に抵抗値がないので、ポイントに流れる電流は15A近くとなり、ポイントが焼けてしまう。

セミトラに改造したときに、このようなコイルを使用すると、コイルが大きな電流を要求する形となり、取り付け直後は問題なく始動できても、短期間でポイントではなく、イグナイターユニットが不良となる。

点火系のエネルギーを高くすれば、エンジン性能は上がるが、クルマによっては不具合なども発生するので、取り付けるクルマがどのように造られているか、十分に理解しておくことは重要。

例えば、タコメーターが動かなくなったり、キャブのアイドルカットソレノイドに通電できず、アイドリングしないと言うことも事例としてある。タコメーターに関しては回転感知方式がいろいろあるので、どこに繋げば良いのか、あるいはその対策はないのか、ということは不明だが、アイドルカットソレノイドを装備しているクルマでは、その構成を理解していれば、簡単に対策出来るはずだ。

なお、ポイント仕様の純正イグニッションコイルが入手できないのなら、イグナイターとイグニッションコイルが一体となった、ウルトラのNo8900などを入手して、それを取り付ける。これなら安心してセミトラ点火方式に変更できるだけではなく、点火エネルギーも純正コイルを使用するより高いため、エネルギー効率に優れる。

1.ポイント式点火装置をトランジスター点火装置に変更するウルトラのセミトラ。この点火装置を使用するときに注意したいのは、イグニッションコイルの1次側抵抗値である。


2.抵抗を計測すると、このコイルの場合(純正品)3.0Ω。外付けの抵抗を合わせてであるが、トータルの抵抗が重要なので、これで十分。


3.輸入品のコイルでももちろん対応しているものはあるが、純正のイグニッションコイルを使用することが大原則なので、そのことはしっかりと頭に入れておきたい。

4.手元にあるコイルに装着されている外付け抵抗は1.2Ωの刻印がある。ほとんどの外付け抵抗には抵抗値が刻印されている。抵抗が小さいため、計測するときの接触抵抗で誤差が大きくなるからだ。


5.抵抗や電位差を計測するにはデジタルテスターが便利。クルマ専用のアナライザーでなくても、ホームセンターで購入できるもので十分。計測できる抵抗最小値は200Ωぐらいが便利。1000Ω(1kΩ)では小数点以下が表示されないため、僅かなところで、確認できないことがある。



6.使ってはいけないイグニッションコイルが、この閉磁型と呼ばれるタイプ。

            

7.もし手元に純正のイグニッションコイルがないのなら、このように、セミトラのイグナイターと一緒になった物を選ぶしかない。ウルトラのハイパー・イグニッション・システムNo8900は、イグナイターとコイルをベストマッチングさせているので、強力な火花が得られる。



ニッサン・TSサニーのシェイクダウン

2010年10月28日木曜日

電装用品取り付けで理解しておきたいACC、B、IGとは何?

カー用品店などで販売されているカーナビや、各種メーターなどの電装用品では、必ず作動させるための電気配線が必要で、取り付けるクルマに引き回されている配線から、それらを分岐して取り出す必要があるのだが、作動させる用件に合ったものを何箇所かから取り出すことが必要になる。

その部分と言うのがACCであったり、あるいはIGと言うことになるのだが、この言葉(略語)の意味を理解していないと、配線を間違えてクルマのコンピューターを破損させたり、バッテリー上がりを起こしたりのトラブルや、せっかく購入した用品が使えなかったりして、クルマいじりが楽しくなくなる。

もちろん自分で取り付けるのでなければ心配は要らないが、人任せでは納得できなかったり、装着手数料をかけたくない、となったら、リスク承知で自分でやるしかない。そこで知っておきたいのが、ACCIGと言う文字だ。

取り付け説明書にある言葉としては、例えば「橙線をACC回路に(あるいはACC電源に)」、「赤線を端子に(あるいは常時電源に)」、「黄線をIG回路に」、「黒線をグランドに(あるいはアースへ)」、と言うような書き方をしている。グランドやアースは分かりやすいが、これとてボディに配線する場合、既存のボルト(クルマメーカーが電気配線用として使っている)に締め付けることを選択する方が確実。

話が少しずれてしまったが、ではACCとは何か。これはACCESSORY(アクセサリー回路)のことで、イグニッションキーを一段階ひねったときに通電する回路のこと。一般的にラジオやカーナビ、シガーライターなどが作動する。つまり、イグニッションキーと連動した回路となる。エンジンは始動しない回路だが、この状態で長時間止めとくとバッテリーは上がる。

ACCのないクルマも過去にはあったが、最近はそのようなクルマはない。これも過去の話だが、エンジンが始動する位置にキーを回さなければラジオが聞けなかったり、キーの位置とは関係なくラジオが聞けたりしたクルマも。このクルマでは、ラジオを消し忘れると、バッテリーが上がった。特に、地下の駐車場へ入れたときには要注意のクルマだった。

端子(あるいは常時電源)とはBATTERY(バッテリー)のプラスへという意味で、これは、常に電気がほしいと言うことを表している。電装用品の設定を記憶させておく電気となるので、ACCに繋ぐと、作動は正常であっても、キーをひねるたびに初期設定が必要となってしまうから、使いにくいのは当然だ。

IG回路とはIGNITION(イグニッション回路)のことで、エンジンが始動しているときに通電する配線を意味する。IG回路では当然ACCも繋がった状態となる。ただしセルを回す回路では、ACCやヘッドライトに関わる部分の通電を切って、エンジン始動にバッテリーのエネルギーを全部使うように設計されているので、一時的にヘッドライトが消えたり、カーナビやラジオがリセットされたりするが、トラブルではない。

では、電装用品の電気はどこから取るのが良いか、という話になると、これはかなりややこしい。それは、クルマによって違うからだ。ヒューズボックス(室内側にある)から取れる場合もあるし、ステアリングのコラムカバーを外し、イグニッションキーの根元から取らなければならない場合もある。

しかし、最新のクルマで制御関係を通信(この条件が成立しなければ意味がない)で行うものでは、ウルトラのCAN-BUSアダプターなるものを装着すれば、そこから簡単に信号や電気を取ることが出来る。

メーカーごとの専用となるが、その信号取り出し場所は、OBDⅡ(オン・ボード・ダイアグノシス・バージョンⅡ)カプラとCAN通信線。OBDⅡはアメリカの基準だが、大半のクルマには、このカプラが装備されている。なおOBDⅡについては、ここでの説明を割愛する。

もちろんOBDⅡカプラが付いているからといって、全てのクルマにCAN-BUSアダプターが装着できるわけではない。自分のクルマで使用できるかどうかは、ウルトラ(永井電子)に直接聞いたほうが良いだろう。

電装用品取り付けにおいて国産車ばかりではなく、配線を理解しにくい輸入車では、カーナビなどの取り付けを行う場合、どこを分解して、どこに配線を接続すれば良いか苦労するが、このCAN-BUSアダプターを装備できるクルマなら、そこから全ての信号と電気を取ることが可能となるので、電装品の取り付けが非常に楽になると言えそうだ。

1.イグニッションキーのシリンダー部分には、このように0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの刻印がある。0はキーが抜ける位置、ⅠはACCでラジオなどを聴くことが出来る、Ⅱはエンジン始動状態(IG回路が繋がる)のとき、Ⅲがセルを回す位置で、手を離すとⅡの位置まで自然に戻る。



2.ウルトラのCAN-BUSアダプター。クルマの制御にCAN通信を使っている最近の車では、このアダプターを取り付けることで、電装品の装着がとても簡単になる。電気回路ばかりではなく、信号も取り出せるのだ。



3.CAN-BUSアダプターはOBDⅡのカプラとCAN通信線に取り付ける。そのOBDⅡカプラがこれ。運転席側の手が届くところで、露出して取り付けなければならない、と言う規制があるので、簡単に探せる。



4.基本配線図を見ると、クルマの電装用品を取り付けるときに要求される、全ての信号と電気が、ここから取り出せるようになる。また一部のメーカーは、OBDⅡカプラへの接続だけで、CAN通信線への接続なしで要件を満たすことが出来る。



インパネ外しは大変だ

2010年10月24日日曜日

レストアした昭和43年式スバル1000スポーツ?!を見に出かけた

富士重工のスバルには、1000cc水平対向エンジンを搭載したセダンと、そのエンジンをベースにした(ソレックスのツインキャブ)2ドアのスポーツが存在した。

中学校時代からの友人が、このスバル1000スポーツを、後生大事に所有していて、60歳を過ぎてからレストアに出し、走れる状態にしたと言うので、見に出かけた。(と言うより、ケチを付けに出かけた)

そういえば、そのスバル1000スポーツは、エンジンが調子悪くなったとかで、数十年前、その後乗っていた1300Gのエンジンに乗せ換えたはず。オリジナルのエンジンは、どうしたのだろうか、そのあたりも聞いてみたい。

友人宅を訪ねると、ガレージに入っているスバル1000スポーツは、風雨の被害がなかったため極めて状態が良い。錆の発生や色あせなどもほとんどなく、磨いたらきれいになったとか。もちろん全てを整備して、車検を取り、走れる状態である。ま~ここまでよくやるな~という感じだ。

ボンネットを開けてエンジンを確認すると、やはり1300Gのエンジンが載せられている状態。クラシックカーミーティングなどにも参加しているため(もちろん自走して会場に入る)、点火系には気を使っており、プラグコードはウルトラのシリコンコードに交換してあった。

1000スポーツにも使えるように、標準より1mm細い7mmのコードとしながら、1300Gで使うディスキャップへの差込部分のダストブーツを特別に取り寄せたそうだ。点火装置もウルトラのセミトラを取り付けている。確実に燃焼を行わせるだけではなく、ポイントの劣化を防ぎ、長期に渡って安定した性能を期待できることから、本気でこれからも乗る気であることを想像できる。

では、肝心の1000スポーツ用のエンジンは、というと、さすがにオーバーホール(というよりリビルド)をしなければならない状態となっているため、知り合いのレストア屋に出しているそうで、自宅では見ることが出来なかった。次のクラシックカーイベントでは、リビルドした1000スポーツのエンジンを、エンジンスタンドに取り付けて、展示しようかと言う目論みもあるそうだ。

 
1.友人宅のガレージに収まっている昭和43年式のスバル1000スポーツ。ボディ周りには手を加えていないようで、特別光り輝いていないのが、歴史を物語っていて親近感を覚える。



2.フロントグリルには、スポーツであることを証明するエンブレムが、しっかりと取り付けられている。


3.メッキ部分などには錆もなく、もちろん再メッキした様子もない。全体的になんとなくくたびれているが、それが時代を生き抜いてきた証拠でもある。今の尺度で見ると、恐ろしくこじんまりとして「当時はこんなものだったのか」、と改めてドライブに行ったときを思い出した。


4.でも、確かエンジンは載せ換えたと聞いている。ボンネットを開けてエンジンはどうなっているか見た。すると、やはり1300Gのものが載っていた。1000スポーツなら、ツインキャブのはずだし。エアクリーナーは、1300Gオリジナルであると「でかくてみっともないから」、適当なものに変更したらしい。


5.点火系には手を入れたようで、赤いプラグコードから、ウルトラのシリコンコードであることが分かる。よく見れば、プラグコードは太さ8mmではなく7mmを使っている。7mmは1000スポーツ用のプラグコードだが、ディスキャップ構造が違うため、どちらにも使えるようにダストブーツを特別に付けてもらって、1300Gのディスキャップにも使えるようにしたらしい。



6.点火装置もウルトラのセミトラへ変更したようだ。ポイントのメンテナンスサイクルが長くなり、かつ点火プラグへのスパークも安定して強くなるので、旧車には打ってつけの点火装置といえる。


7.当時のスバルでは、コストを無視した取り組みをしていたことがよくわかる。それは、ブレーキの構造にも見られる。一般的には、ブレーキがホイール側に来る構造だが、スバルは、インボードディスクを採用した。つまり、ブレーキのディスク(ドラムの場合も)はデフ側にあり、メンテナンス性は良くないが、バネ下重量は軽くなって、路面とタイヤの追従性に優れる。現在では、極一部の特別なスポ-ツカーにしか見られないこの構造が、普通のセダンにも使われていたのだ。


8.また、合理的な構造もある。それは、ヒーターとサブラジエターと言う関係。つまり、メインのラジエターに繋がるもうひとつの小さなラジエターがあり、そこには専用のファンを装備。夏は、ダクトを開放してファンを回し、エンジンの熱を放出。そのためメインのラジエターにはファンがない。冬は、サブラジエターのダクトを締めて、ファンをマニュアル操作し、熱を室内に引き込む。素晴らしい発想と言える。


スバル1000、昭和42年のCM

2010年10月17日日曜日

リッター当たり3000キロの性能を誇るイベント

このリッター3000キロの性能とは、燃費競技会でのこと。なお日本を代表するイベントであったHondaエコノパワー燃費競技大会は、名称をHondaエコマイレッジチャレンジと改め、さらに運営事務局も変更して再スタート。ただし、やり方や目的、規則などはこれまでと同様。でも運営事務局は初心者、参加メンバーは9割がベテランと言うことになり、進行がスムーズに行くかどうか心配したが、特別大きな問題も出ていなかったようだ。

ツインリンクもてぎで10月9日と10日に行われたこのイベントは、9日が練習走行で(とはいっても、決勝日と同様の周回数、平均時速で燃費の計算もしてくれる)、10日は本番。9日の天候が一日中雨天で、天気予報でも、この状況は変わらず、10日も雨天かと思われたが、決勝スタート直前からいきなり晴天で、走行条件が大幅に改善したことから、好記録を期待できた。

イベントの内容はともかく、毎回リッター当たり数千キロの性能は当たり前で、3000キロを超えていることもしばしば。今年もそれに加わり、4回目の3000キロオーバーの記録を達成した。

このイベントに使われるエンジンは、ホンダの4ストローク50ccを基本とするが、最近では海外からのエントリーも増え、彼らが使用する150ccも視野に入れた、ニューチャレンジクラスも開催する。

シャシーやボディ・カウルなど、全てが手作りといっても良いマシンだから、そこに創意工夫と奇抜なアイディアが生まれ、それを実現してしまうのも、このイベントの素晴らしいところだろう。当然エンジンも、ベースからかけ離れたものとなり、50cc(大半がスーパーカブ用をアレンジしているが)という小さな排気量、小さな燃焼室でも、点火プラグを追加して、ダブル点火方式としているマシンが多い。

そのようなところに使われるイグニッションコイルは、同時点火用ではなく、それぞれシングルシリンダー用を使用しなければならないのだが、状況をよく理解していないチームでは、同時点火用のイグニッションコイルを装備しているのを見かける。彼らに話を聞いてみると、当然点火エネルギーが足らないため、プラグギャップは極端に小さくして、かろうじて燃焼させる対策とか。

せっかくタイミングチェーン側にも点火プラグを取り付けられる加工をして、燃費性能アップをもくろんでも、これでは何の意味も持たない。どうして、同時点火のコイルを使用すると、そのようになるかの話をして、彼らも納得したようだ。

つまり同時点火と言う状況が成立するのは、例えば360度クランクの2気筒エンジンで、ひとつのシリンダーが圧縮状態となれば、ここではスパークエネルギーを多く要求するが、反対側のシリンダーでは排気上死点にあるので、このシリンダーにスパークするエネルギーは、ほとんどゼロに近い。

ということから、燃焼にかかわるシリンダーでは十分な点火エネルギーが得られるために、この同時点火と言う状況が成立する。しかし、両方のプラグが圧縮状態(圧縮圧力が高いとスパークするためのエネルギーも要求が高くなる)となっては、ひとつのコイルからのエネルギーでは不足してしまうため、点火しないことになる。

このことから、無理やり点火させるには、プラグギャップを極端に小さくする以外に手はない。そうなれば、当然燃焼状態が良くならないわけで、燃費は改善されない。

同時点火のイグニッションコイルは、コイルからのプラグコードが2本出ているけれど、それぞれプラス側とマイナス側に分かれている。シングルのイグニッションコイルは、マイナス側はアースとなり、プラス側がプラグコードとなる。つまり、全てのエネルギーを1本のコードで出すか、2本のコードに分散するかで、分散すればエネルギーは半減する。

これを解決するには、点火のタイミングシグナルはひとつでも良いが、イグナイターやイグニッションコイルは、それぞれの点火プラグ用を取り付ける必要がある。このような改造が、当然のように行われるチームと、そうでないチームでは、おのずと性能差は大きくなる。

 
1.ダブル点火プラグとしながら、同時点火のコイルをひとつ取り付けたため、点火エネルギーが不足している状態。もったいない改造だ



2.ダブルプラグでイグニッションコイルも、シングル用をふたつ使用したマシン。点火エネルギーのロスは出ない。タイミングチェーンの間に点火プラグ用のネジを作っている。潤滑は必要ないので、タイミングチェーンは露出したまま。



3.同じダブルプラグでイグニッションコイルもふたつ使用しているが、キャブではなくインジェクションを採用している。プラグコードはウルトラのシリコンコードを特注したのか。


4.こんなクルマも二人乗りクラスには登場した。あの、本田宗一郎がメカニックを勤めたレーシングカー・カーチス号をモデルとしたマシン。リッター換算で記録は327.335km。ホイールは木製、フロントのリーフスプリングは竹を重ねたもので作動ストロークを持つ。ダンパーは摩擦板式だ。



ホンダ・エコノパワー燃費競技会 

2010年10月3日日曜日

73年もののフィアット500をいじる

友人が持ち込んできたフィアット500だが、なんとなくアイドル回転が乱れて、500cc2気筒のリズミカルな排気音がしていない。そこで、リヤのエンジンルームを覗くと、気になる配線やプラグコードの取り回しなど目立っていたので、これを解決してやることにした。

その気になる部分とは、オルタネーター(発電機)のB端子に接続されている太いコード。中間で固定せず直接B端子へ繋がっているため、エンジンの大きなゆれで端子部分に応力が集中し破断する可能性がある。これは、一次クランプをオルタネーター本体としてやれば済むことなので(しっかりとボルト穴もある)、絶縁を考えながら、固定する。

次は、プラグコード。2気筒の360度クランクでは、同時点火が可能となるため、このフィアット500もディストリビューターを外して、同時点火コイルを装備している。そのため、プラグコードもコイルへ直接接続されているが、途中の振れ止めとして細工した部分に問題を見つけた。

プラグコード2本を直接ステーにタイラップで締め付けているため、プラグコードの被服に亀裂が出来る可能性を持つ。亀裂が出来れば、そこから電気は漏れるので、プラグはスパークしない。

このプラグコードは、ウルトラのシリコンプラグコードへ交換する。ダストブーツなどもシリコンゴムを使用しているので、しっかりと密着して耐久性が非常に高い。


点火コイルのコード差込穴に発生していた緑青(銅などを含む金属に発生する腐食物)も、エレキクリーナーと接点復活剤を塗布してきれいにしたので、今後このようなトラブルは出ないだろう。

さらに点火プラグのメンテナンスも同時に行ったため、アイドル回転は安定し、2気筒等間隔燃焼の排気音はリズミカルな状態を取り戻した。

 
1.プラグコードの中間固定部分に気になる所を発見。直接タイラップで金属に締め付けているため、コードの被服に亀裂が生じる可能性がある。トラブルとなりそうなリスクは取り除くと言うのが基本。



2.プラグキャップのダストブーツも亀裂が入っているので、雨天走行では漏電の可能性を持つため、ここはプラグコードを交換したほうが良いだろうということになった。



3.同時点火のコイルから、これまでのプラグコードを引き抜いてみると、見事に緑青が噴き出ていた。低電流・高電圧では、それほど影響が出ないけれど、腐食が進行すれば、コイルの断線などにも結びつくので、これはきれいに掃除して置いて損はない。



4.エレキクリーナーや接点復活剤などを吹きつけ、コイルのプラグコード取り付け穴に発生した緑青を洗い流す。穴の中に残ってしまう洗浄剤は、缶を逆さにしてガスだけを出せば、その勢いで吹き飛ばせる。



5.交換するプラグコードだが、実績のあるウルトラのシリコンコードが良い、とオーナーが言うのでそれに決める。特別な長さのものまで製作してくれるし、点火コイルとのインピーダンス(回路中の抵抗値)をきちんと取るため(ラジオなどへの雑音防止もある)点火エネルギーのロスが出ない、と言う特徴もある。



6.ディストリビューターがないので、プラグコードの交換は気を使う必要なし。それよりも、振れ止めとしての中間固定部分をどう処理するかだが、安定的に留める方法として、樹脂製のコルゲートチューブをプラグコードに巻き、それをタイラップで固定してから、ホルダーへ通した。これで、プラグコードの被服に亀裂が入ることもなくなった。



7.最後はオルタネーターのB端子コード処理。一次クランプをオルタネーター本体とするため、鉄板を曲げ、自転車のチューブを巻き付けて固定。これで、端子の疲労を防ぐことが出来る。




フィアット500のTV・CF

2010年9月22日水曜日

新型スズキ・スイフトに乗る

操縦性を大幅に向上させた新型だが、燃費志向でトルクに細さを感じる

新型スイフトで大きく変化したのは、向上したステアリングフィールだ。先代モデルでは、スポーツを含めて、ステアリングは切り始めから瞬時に向きを変えることがなく、速度によっては(それほど速い訳ではない)完全に一呼吸遅れてフロントが回りこんでくる。特にエンジンブレーキのときにそれが出る。

このようなことから、コーナリングの横Gの大きさで、反応テンポが違うため、安全で楽しい走りをするには難しい操縦性を持っていた。それでも、モデル最終時期にはかなり改良が進み、設計値近くまで引き上げられていたが、誰でも納得できる状態までには行き着いていなかった。

このステアリングに対する反応の甘さの原因は、ボディ剛性の不足(特にリヤ開口部)や、ステアリングラック取り付け部の剛性不足などが原因と見られる。

そこで今回のモデルチェンジでは、高張力鋼板も使用部位を大きく増やし、さらにリヤの開口部の面積を小さくして、ボディ全体の剛性バランスを引き上げた。それに合わせてステアリングのギヤ比もクイックな方向へ変更し、より素直な操縦性を求めた。これにより、これまでのような応答遅れはなくなって(同じ走行条件ではないので、確かではない)、ドライバーの期待値から外れることは見られなかったが、ボディ剛性が上がった分リヤサスペンションに妙な動きを感じるときがある。

それはコーナリング中の路面に凹凸があると、リヤが左右にヒョコッと妙な動きをすること。この点について開発者は「リヤのサスペンション取り付け部分のブッシュに問題があるようで、これでも先代より悪さをするブッシュの動きは半分になっているのだが、新型ではボディ剛性が上がったため、その動きを顕著に感じる。先代ではボディがその動きを吸収していたようで、感じることはなかった」と語っている。

当然、新型スイフトスポーツも同時に開発しているだろうから、このあたりの問題点は、ブッシュの動きをもっと抑制するような構造として対処しないと、スポーツ走行では、いきなりリヤがスライドしてしまうというアクシデントも・・・

また、今回のCVTモデルには、副変速機付が採用されたが、燃費志向を追求したエンジンとCVTセッティングのため、Dポジションでの走行性は、かなりのストレス、というよりドライバーの期待値からずれてしまう加速感が気になる。上級モデルのXSでは、ステアリングにマニュアルシフトのパドルを持つので、その操作を意識的に取り込んで、走りたくなる。

例えば、Dポジションで走行中アクセル全開としても、思うようなキックダウンはしないため、仕方なくシフトパドルをダウン方向へ操作すると、エンジンは勢いよく回り、素直な加速力を発揮して、速度がスムーズに伸びる。ただ、パドルの操作に対するシフトの反応は遅く(特にシフトダウン)、エンジンブレーキを少し有効利用しようとしても、必要以上にシフトダウン操作を行ってしまう状況が発生した。

また、パドル操作後における、そのポジションでのホールド時間が短く、直ぐにDポジションとなるのも気になる。例えば登坂時にパドルシフトダウンから加速、そしてコーナリングを開始し、その後少し緩加速となると、いつの間にかDポジションとなり、次の加速では、再びシフト操作が必要となる。もちろん、これを回避するには、CVTセレクターのMモードを選べば良いのだが、Dポジションを有効活用しようとすると、どうしてもDのままで、シフトパドルの操作になるのは当然であると思う。

パドル操作の遅れとホールド特性について、開発者に聞いてみると「実際に担当したわけではないので、どのような意味合いでこの特性としたか分かりませんが、パドルシフト後のDポジションへ直ぐに戻る、というのは、燃費を気にしているからです。また、キックダウンの領域が狭いことも、燃費が基本にあります」、と言うことだったが、基本的な部分(つまり、クルマを走らせると言うこと)にストレスを生むようなセッティングは、好ましくないと思う、と伝えておいた。

 
新型となったスズキ・スイフト。寸法としてはこれまでより少し大きくなったが(ホイールベースはプラス40ミリ)、全体のデザインに大きな変更が見られないけれど、購入者の目にはどのように映ったのだろうか。





2.上級モデルのXSには16インチタイヤと、リヤにもディスクブレーキが装備される。この手のモデルで、ここまでの装備は必要ないと思うが、スポーツの登場を計算すれば、当然の成り行きか。



3.リヤの剛性バランスを大きく向上させるため、ゲートの開口面積はかなり小さい。ここに高張力鋼板を使用するより、デザイン的なことを含めて、目的を達成しやすいからだそうだ。



4.リヤシートのスペースは、十分に広いとはいえないものの、大の大人が長時間腰を下ろしても疲労を感じさせないぐらいの余裕はある。



5.ステアリング操作に対する反応の感覚だが、今のところ問題は発見できていない。リヤの変な動きも大半の人は気がつかないだろう。よって、気にしなくても良いかもしれない。



6.エンジンは、2007年5月から変更された1200cc。吸排気共にVVT(可変バルブタイミング機構)を採用し、自己EGRの量を増やして排ガスと燃費の向上を狙ったが、燃費については10・15モード、JC08モードも先代モデルと同等の数字。実燃費に効果を期待したい。




スイフト欧州テスト走行