研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2010年10月28日木曜日

電装用品取り付けで理解しておきたいACC、B、IGとは何?

カー用品店などで販売されているカーナビや、各種メーターなどの電装用品では、必ず作動させるための電気配線が必要で、取り付けるクルマに引き回されている配線から、それらを分岐して取り出す必要があるのだが、作動させる用件に合ったものを何箇所かから取り出すことが必要になる。

その部分と言うのがACCであったり、あるいはIGと言うことになるのだが、この言葉(略語)の意味を理解していないと、配線を間違えてクルマのコンピューターを破損させたり、バッテリー上がりを起こしたりのトラブルや、せっかく購入した用品が使えなかったりして、クルマいじりが楽しくなくなる。

もちろん自分で取り付けるのでなければ心配は要らないが、人任せでは納得できなかったり、装着手数料をかけたくない、となったら、リスク承知で自分でやるしかない。そこで知っておきたいのが、ACCIGと言う文字だ。

取り付け説明書にある言葉としては、例えば「橙線をACC回路に(あるいはACC電源に)」、「赤線を端子に(あるいは常時電源に)」、「黄線をIG回路に」、「黒線をグランドに(あるいはアースへ)」、と言うような書き方をしている。グランドやアースは分かりやすいが、これとてボディに配線する場合、既存のボルト(クルマメーカーが電気配線用として使っている)に締め付けることを選択する方が確実。

話が少しずれてしまったが、ではACCとは何か。これはACCESSORY(アクセサリー回路)のことで、イグニッションキーを一段階ひねったときに通電する回路のこと。一般的にラジオやカーナビ、シガーライターなどが作動する。つまり、イグニッションキーと連動した回路となる。エンジンは始動しない回路だが、この状態で長時間止めとくとバッテリーは上がる。

ACCのないクルマも過去にはあったが、最近はそのようなクルマはない。これも過去の話だが、エンジンが始動する位置にキーを回さなければラジオが聞けなかったり、キーの位置とは関係なくラジオが聞けたりしたクルマも。このクルマでは、ラジオを消し忘れると、バッテリーが上がった。特に、地下の駐車場へ入れたときには要注意のクルマだった。

端子(あるいは常時電源)とはBATTERY(バッテリー)のプラスへという意味で、これは、常に電気がほしいと言うことを表している。電装用品の設定を記憶させておく電気となるので、ACCに繋ぐと、作動は正常であっても、キーをひねるたびに初期設定が必要となってしまうから、使いにくいのは当然だ。

IG回路とはIGNITION(イグニッション回路)のことで、エンジンが始動しているときに通電する配線を意味する。IG回路では当然ACCも繋がった状態となる。ただしセルを回す回路では、ACCやヘッドライトに関わる部分の通電を切って、エンジン始動にバッテリーのエネルギーを全部使うように設計されているので、一時的にヘッドライトが消えたり、カーナビやラジオがリセットされたりするが、トラブルではない。

では、電装用品の電気はどこから取るのが良いか、という話になると、これはかなりややこしい。それは、クルマによって違うからだ。ヒューズボックス(室内側にある)から取れる場合もあるし、ステアリングのコラムカバーを外し、イグニッションキーの根元から取らなければならない場合もある。

しかし、最新のクルマで制御関係を通信(この条件が成立しなければ意味がない)で行うものでは、ウルトラのCAN-BUSアダプターなるものを装着すれば、そこから簡単に信号や電気を取ることが出来る。

メーカーごとの専用となるが、その信号取り出し場所は、OBDⅡ(オン・ボード・ダイアグノシス・バージョンⅡ)カプラとCAN通信線。OBDⅡはアメリカの基準だが、大半のクルマには、このカプラが装備されている。なおOBDⅡについては、ここでの説明を割愛する。

もちろんOBDⅡカプラが付いているからといって、全てのクルマにCAN-BUSアダプターが装着できるわけではない。自分のクルマで使用できるかどうかは、ウルトラ(永井電子)に直接聞いたほうが良いだろう。

電装用品取り付けにおいて国産車ばかりではなく、配線を理解しにくい輸入車では、カーナビなどの取り付けを行う場合、どこを分解して、どこに配線を接続すれば良いか苦労するが、このCAN-BUSアダプターを装備できるクルマなら、そこから全ての信号と電気を取ることが可能となるので、電装品の取り付けが非常に楽になると言えそうだ。

1.イグニッションキーのシリンダー部分には、このように0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの刻印がある。0はキーが抜ける位置、ⅠはACCでラジオなどを聴くことが出来る、Ⅱはエンジン始動状態(IG回路が繋がる)のとき、Ⅲがセルを回す位置で、手を離すとⅡの位置まで自然に戻る。



2.ウルトラのCAN-BUSアダプター。クルマの制御にCAN通信を使っている最近の車では、このアダプターを取り付けることで、電装品の装着がとても簡単になる。電気回路ばかりではなく、信号も取り出せるのだ。



3.CAN-BUSアダプターはOBDⅡのカプラとCAN通信線に取り付ける。そのOBDⅡカプラがこれ。運転席側の手が届くところで、露出して取り付けなければならない、と言う規制があるので、簡単に探せる。



4.基本配線図を見ると、クルマの電装用品を取り付けるときに要求される、全ての信号と電気が、ここから取り出せるようになる。また一部のメーカーは、OBDⅡカプラへの接続だけで、CAN通信線への接続なしで要件を満たすことが出来る。



インパネ外しは大変だ

2010年10月24日日曜日

レストアした昭和43年式スバル1000スポーツ?!を見に出かけた

富士重工のスバルには、1000cc水平対向エンジンを搭載したセダンと、そのエンジンをベースにした(ソレックスのツインキャブ)2ドアのスポーツが存在した。

中学校時代からの友人が、このスバル1000スポーツを、後生大事に所有していて、60歳を過ぎてからレストアに出し、走れる状態にしたと言うので、見に出かけた。(と言うより、ケチを付けに出かけた)

そういえば、そのスバル1000スポーツは、エンジンが調子悪くなったとかで、数十年前、その後乗っていた1300Gのエンジンに乗せ換えたはず。オリジナルのエンジンは、どうしたのだろうか、そのあたりも聞いてみたい。

友人宅を訪ねると、ガレージに入っているスバル1000スポーツは、風雨の被害がなかったため極めて状態が良い。錆の発生や色あせなどもほとんどなく、磨いたらきれいになったとか。もちろん全てを整備して、車検を取り、走れる状態である。ま~ここまでよくやるな~という感じだ。

ボンネットを開けてエンジンを確認すると、やはり1300Gのエンジンが載せられている状態。クラシックカーミーティングなどにも参加しているため(もちろん自走して会場に入る)、点火系には気を使っており、プラグコードはウルトラのシリコンコードに交換してあった。

1000スポーツにも使えるように、標準より1mm細い7mmのコードとしながら、1300Gで使うディスキャップへの差込部分のダストブーツを特別に取り寄せたそうだ。点火装置もウルトラのセミトラを取り付けている。確実に燃焼を行わせるだけではなく、ポイントの劣化を防ぎ、長期に渡って安定した性能を期待できることから、本気でこれからも乗る気であることを想像できる。

では、肝心の1000スポーツ用のエンジンは、というと、さすがにオーバーホール(というよりリビルド)をしなければならない状態となっているため、知り合いのレストア屋に出しているそうで、自宅では見ることが出来なかった。次のクラシックカーイベントでは、リビルドした1000スポーツのエンジンを、エンジンスタンドに取り付けて、展示しようかと言う目論みもあるそうだ。

 
1.友人宅のガレージに収まっている昭和43年式のスバル1000スポーツ。ボディ周りには手を加えていないようで、特別光り輝いていないのが、歴史を物語っていて親近感を覚える。



2.フロントグリルには、スポーツであることを証明するエンブレムが、しっかりと取り付けられている。


3.メッキ部分などには錆もなく、もちろん再メッキした様子もない。全体的になんとなくくたびれているが、それが時代を生き抜いてきた証拠でもある。今の尺度で見ると、恐ろしくこじんまりとして「当時はこんなものだったのか」、と改めてドライブに行ったときを思い出した。


4.でも、確かエンジンは載せ換えたと聞いている。ボンネットを開けてエンジンはどうなっているか見た。すると、やはり1300Gのものが載っていた。1000スポーツなら、ツインキャブのはずだし。エアクリーナーは、1300Gオリジナルであると「でかくてみっともないから」、適当なものに変更したらしい。


5.点火系には手を入れたようで、赤いプラグコードから、ウルトラのシリコンコードであることが分かる。よく見れば、プラグコードは太さ8mmではなく7mmを使っている。7mmは1000スポーツ用のプラグコードだが、ディスキャップ構造が違うため、どちらにも使えるようにダストブーツを特別に付けてもらって、1300Gのディスキャップにも使えるようにしたらしい。



6.点火装置もウルトラのセミトラへ変更したようだ。ポイントのメンテナンスサイクルが長くなり、かつ点火プラグへのスパークも安定して強くなるので、旧車には打ってつけの点火装置といえる。


7.当時のスバルでは、コストを無視した取り組みをしていたことがよくわかる。それは、ブレーキの構造にも見られる。一般的には、ブレーキがホイール側に来る構造だが、スバルは、インボードディスクを採用した。つまり、ブレーキのディスク(ドラムの場合も)はデフ側にあり、メンテナンス性は良くないが、バネ下重量は軽くなって、路面とタイヤの追従性に優れる。現在では、極一部の特別なスポ-ツカーにしか見られないこの構造が、普通のセダンにも使われていたのだ。


8.また、合理的な構造もある。それは、ヒーターとサブラジエターと言う関係。つまり、メインのラジエターに繋がるもうひとつの小さなラジエターがあり、そこには専用のファンを装備。夏は、ダクトを開放してファンを回し、エンジンの熱を放出。そのためメインのラジエターにはファンがない。冬は、サブラジエターのダクトを締めて、ファンをマニュアル操作し、熱を室内に引き込む。素晴らしい発想と言える。


スバル1000、昭和42年のCM

2010年10月17日日曜日

リッター当たり3000キロの性能を誇るイベント

このリッター3000キロの性能とは、燃費競技会でのこと。なお日本を代表するイベントであったHondaエコノパワー燃費競技大会は、名称をHondaエコマイレッジチャレンジと改め、さらに運営事務局も変更して再スタート。ただし、やり方や目的、規則などはこれまでと同様。でも運営事務局は初心者、参加メンバーは9割がベテランと言うことになり、進行がスムーズに行くかどうか心配したが、特別大きな問題も出ていなかったようだ。

ツインリンクもてぎで10月9日と10日に行われたこのイベントは、9日が練習走行で(とはいっても、決勝日と同様の周回数、平均時速で燃費の計算もしてくれる)、10日は本番。9日の天候が一日中雨天で、天気予報でも、この状況は変わらず、10日も雨天かと思われたが、決勝スタート直前からいきなり晴天で、走行条件が大幅に改善したことから、好記録を期待できた。

イベントの内容はともかく、毎回リッター当たり数千キロの性能は当たり前で、3000キロを超えていることもしばしば。今年もそれに加わり、4回目の3000キロオーバーの記録を達成した。

このイベントに使われるエンジンは、ホンダの4ストローク50ccを基本とするが、最近では海外からのエントリーも増え、彼らが使用する150ccも視野に入れた、ニューチャレンジクラスも開催する。

シャシーやボディ・カウルなど、全てが手作りといっても良いマシンだから、そこに創意工夫と奇抜なアイディアが生まれ、それを実現してしまうのも、このイベントの素晴らしいところだろう。当然エンジンも、ベースからかけ離れたものとなり、50cc(大半がスーパーカブ用をアレンジしているが)という小さな排気量、小さな燃焼室でも、点火プラグを追加して、ダブル点火方式としているマシンが多い。

そのようなところに使われるイグニッションコイルは、同時点火用ではなく、それぞれシングルシリンダー用を使用しなければならないのだが、状況をよく理解していないチームでは、同時点火用のイグニッションコイルを装備しているのを見かける。彼らに話を聞いてみると、当然点火エネルギーが足らないため、プラグギャップは極端に小さくして、かろうじて燃焼させる対策とか。

せっかくタイミングチェーン側にも点火プラグを取り付けられる加工をして、燃費性能アップをもくろんでも、これでは何の意味も持たない。どうして、同時点火のコイルを使用すると、そのようになるかの話をして、彼らも納得したようだ。

つまり同時点火と言う状況が成立するのは、例えば360度クランクの2気筒エンジンで、ひとつのシリンダーが圧縮状態となれば、ここではスパークエネルギーを多く要求するが、反対側のシリンダーでは排気上死点にあるので、このシリンダーにスパークするエネルギーは、ほとんどゼロに近い。

ということから、燃焼にかかわるシリンダーでは十分な点火エネルギーが得られるために、この同時点火と言う状況が成立する。しかし、両方のプラグが圧縮状態(圧縮圧力が高いとスパークするためのエネルギーも要求が高くなる)となっては、ひとつのコイルからのエネルギーでは不足してしまうため、点火しないことになる。

このことから、無理やり点火させるには、プラグギャップを極端に小さくする以外に手はない。そうなれば、当然燃焼状態が良くならないわけで、燃費は改善されない。

同時点火のイグニッションコイルは、コイルからのプラグコードが2本出ているけれど、それぞれプラス側とマイナス側に分かれている。シングルのイグニッションコイルは、マイナス側はアースとなり、プラス側がプラグコードとなる。つまり、全てのエネルギーを1本のコードで出すか、2本のコードに分散するかで、分散すればエネルギーは半減する。

これを解決するには、点火のタイミングシグナルはひとつでも良いが、イグナイターやイグニッションコイルは、それぞれの点火プラグ用を取り付ける必要がある。このような改造が、当然のように行われるチームと、そうでないチームでは、おのずと性能差は大きくなる。

 
1.ダブル点火プラグとしながら、同時点火のコイルをひとつ取り付けたため、点火エネルギーが不足している状態。もったいない改造だ



2.ダブルプラグでイグニッションコイルも、シングル用をふたつ使用したマシン。点火エネルギーのロスは出ない。タイミングチェーンの間に点火プラグ用のネジを作っている。潤滑は必要ないので、タイミングチェーンは露出したまま。



3.同じダブルプラグでイグニッションコイルもふたつ使用しているが、キャブではなくインジェクションを採用している。プラグコードはウルトラのシリコンコードを特注したのか。


4.こんなクルマも二人乗りクラスには登場した。あの、本田宗一郎がメカニックを勤めたレーシングカー・カーチス号をモデルとしたマシン。リッター換算で記録は327.335km。ホイールは木製、フロントのリーフスプリングは竹を重ねたもので作動ストロークを持つ。ダンパーは摩擦板式だ。



ホンダ・エコノパワー燃費競技会 

2010年10月3日日曜日

73年もののフィアット500をいじる

友人が持ち込んできたフィアット500だが、なんとなくアイドル回転が乱れて、500cc2気筒のリズミカルな排気音がしていない。そこで、リヤのエンジンルームを覗くと、気になる配線やプラグコードの取り回しなど目立っていたので、これを解決してやることにした。

その気になる部分とは、オルタネーター(発電機)のB端子に接続されている太いコード。中間で固定せず直接B端子へ繋がっているため、エンジンの大きなゆれで端子部分に応力が集中し破断する可能性がある。これは、一次クランプをオルタネーター本体としてやれば済むことなので(しっかりとボルト穴もある)、絶縁を考えながら、固定する。

次は、プラグコード。2気筒の360度クランクでは、同時点火が可能となるため、このフィアット500もディストリビューターを外して、同時点火コイルを装備している。そのため、プラグコードもコイルへ直接接続されているが、途中の振れ止めとして細工した部分に問題を見つけた。

プラグコード2本を直接ステーにタイラップで締め付けているため、プラグコードの被服に亀裂が出来る可能性を持つ。亀裂が出来れば、そこから電気は漏れるので、プラグはスパークしない。

このプラグコードは、ウルトラのシリコンプラグコードへ交換する。ダストブーツなどもシリコンゴムを使用しているので、しっかりと密着して耐久性が非常に高い。


点火コイルのコード差込穴に発生していた緑青(銅などを含む金属に発生する腐食物)も、エレキクリーナーと接点復活剤を塗布してきれいにしたので、今後このようなトラブルは出ないだろう。

さらに点火プラグのメンテナンスも同時に行ったため、アイドル回転は安定し、2気筒等間隔燃焼の排気音はリズミカルな状態を取り戻した。

 
1.プラグコードの中間固定部分に気になる所を発見。直接タイラップで金属に締め付けているため、コードの被服に亀裂が生じる可能性がある。トラブルとなりそうなリスクは取り除くと言うのが基本。



2.プラグキャップのダストブーツも亀裂が入っているので、雨天走行では漏電の可能性を持つため、ここはプラグコードを交換したほうが良いだろうということになった。



3.同時点火のコイルから、これまでのプラグコードを引き抜いてみると、見事に緑青が噴き出ていた。低電流・高電圧では、それほど影響が出ないけれど、腐食が進行すれば、コイルの断線などにも結びつくので、これはきれいに掃除して置いて損はない。



4.エレキクリーナーや接点復活剤などを吹きつけ、コイルのプラグコード取り付け穴に発生した緑青を洗い流す。穴の中に残ってしまう洗浄剤は、缶を逆さにしてガスだけを出せば、その勢いで吹き飛ばせる。



5.交換するプラグコードだが、実績のあるウルトラのシリコンコードが良い、とオーナーが言うのでそれに決める。特別な長さのものまで製作してくれるし、点火コイルとのインピーダンス(回路中の抵抗値)をきちんと取るため(ラジオなどへの雑音防止もある)点火エネルギーのロスが出ない、と言う特徴もある。



6.ディストリビューターがないので、プラグコードの交換は気を使う必要なし。それよりも、振れ止めとしての中間固定部分をどう処理するかだが、安定的に留める方法として、樹脂製のコルゲートチューブをプラグコードに巻き、それをタイラップで固定してから、ホルダーへ通した。これで、プラグコードの被服に亀裂が入ることもなくなった。



7.最後はオルタネーターのB端子コード処理。一次クランプをオルタネーター本体とするため、鉄板を曲げ、自転車のチューブを巻き付けて固定。これで、端子の疲労を防ぐことが出来る。




フィアット500のTV・CF

2010年9月22日水曜日

新型スズキ・スイフトに乗る

操縦性を大幅に向上させた新型だが、燃費志向でトルクに細さを感じる

新型スイフトで大きく変化したのは、向上したステアリングフィールだ。先代モデルでは、スポーツを含めて、ステアリングは切り始めから瞬時に向きを変えることがなく、速度によっては(それほど速い訳ではない)完全に一呼吸遅れてフロントが回りこんでくる。特にエンジンブレーキのときにそれが出る。

このようなことから、コーナリングの横Gの大きさで、反応テンポが違うため、安全で楽しい走りをするには難しい操縦性を持っていた。それでも、モデル最終時期にはかなり改良が進み、設計値近くまで引き上げられていたが、誰でも納得できる状態までには行き着いていなかった。

このステアリングに対する反応の甘さの原因は、ボディ剛性の不足(特にリヤ開口部)や、ステアリングラック取り付け部の剛性不足などが原因と見られる。

そこで今回のモデルチェンジでは、高張力鋼板も使用部位を大きく増やし、さらにリヤの開口部の面積を小さくして、ボディ全体の剛性バランスを引き上げた。それに合わせてステアリングのギヤ比もクイックな方向へ変更し、より素直な操縦性を求めた。これにより、これまでのような応答遅れはなくなって(同じ走行条件ではないので、確かではない)、ドライバーの期待値から外れることは見られなかったが、ボディ剛性が上がった分リヤサスペンションに妙な動きを感じるときがある。

それはコーナリング中の路面に凹凸があると、リヤが左右にヒョコッと妙な動きをすること。この点について開発者は「リヤのサスペンション取り付け部分のブッシュに問題があるようで、これでも先代より悪さをするブッシュの動きは半分になっているのだが、新型ではボディ剛性が上がったため、その動きを顕著に感じる。先代ではボディがその動きを吸収していたようで、感じることはなかった」と語っている。

当然、新型スイフトスポーツも同時に開発しているだろうから、このあたりの問題点は、ブッシュの動きをもっと抑制するような構造として対処しないと、スポーツ走行では、いきなりリヤがスライドしてしまうというアクシデントも・・・

また、今回のCVTモデルには、副変速機付が採用されたが、燃費志向を追求したエンジンとCVTセッティングのため、Dポジションでの走行性は、かなりのストレス、というよりドライバーの期待値からずれてしまう加速感が気になる。上級モデルのXSでは、ステアリングにマニュアルシフトのパドルを持つので、その操作を意識的に取り込んで、走りたくなる。

例えば、Dポジションで走行中アクセル全開としても、思うようなキックダウンはしないため、仕方なくシフトパドルをダウン方向へ操作すると、エンジンは勢いよく回り、素直な加速力を発揮して、速度がスムーズに伸びる。ただ、パドルの操作に対するシフトの反応は遅く(特にシフトダウン)、エンジンブレーキを少し有効利用しようとしても、必要以上にシフトダウン操作を行ってしまう状況が発生した。

また、パドル操作後における、そのポジションでのホールド時間が短く、直ぐにDポジションとなるのも気になる。例えば登坂時にパドルシフトダウンから加速、そしてコーナリングを開始し、その後少し緩加速となると、いつの間にかDポジションとなり、次の加速では、再びシフト操作が必要となる。もちろん、これを回避するには、CVTセレクターのMモードを選べば良いのだが、Dポジションを有効活用しようとすると、どうしてもDのままで、シフトパドルの操作になるのは当然であると思う。

パドル操作の遅れとホールド特性について、開発者に聞いてみると「実際に担当したわけではないので、どのような意味合いでこの特性としたか分かりませんが、パドルシフト後のDポジションへ直ぐに戻る、というのは、燃費を気にしているからです。また、キックダウンの領域が狭いことも、燃費が基本にあります」、と言うことだったが、基本的な部分(つまり、クルマを走らせると言うこと)にストレスを生むようなセッティングは、好ましくないと思う、と伝えておいた。

 
新型となったスズキ・スイフト。寸法としてはこれまでより少し大きくなったが(ホイールベースはプラス40ミリ)、全体のデザインに大きな変更が見られないけれど、購入者の目にはどのように映ったのだろうか。





2.上級モデルのXSには16インチタイヤと、リヤにもディスクブレーキが装備される。この手のモデルで、ここまでの装備は必要ないと思うが、スポーツの登場を計算すれば、当然の成り行きか。



3.リヤの剛性バランスを大きく向上させるため、ゲートの開口面積はかなり小さい。ここに高張力鋼板を使用するより、デザイン的なことを含めて、目的を達成しやすいからだそうだ。



4.リヤシートのスペースは、十分に広いとはいえないものの、大の大人が長時間腰を下ろしても疲労を感じさせないぐらいの余裕はある。



5.ステアリング操作に対する反応の感覚だが、今のところ問題は発見できていない。リヤの変な動きも大半の人は気がつかないだろう。よって、気にしなくても良いかもしれない。



6.エンジンは、2007年5月から変更された1200cc。吸排気共にVVT(可変バルブタイミング機構)を採用し、自己EGRの量を増やして排ガスと燃費の向上を狙ったが、燃費については10・15モード、JC08モードも先代モデルと同等の数字。実燃費に効果を期待したい。




スイフト欧州テスト走行


2010年9月11日土曜日

革巻きのステアリングはメンテが必要だ

本革を巻きつけたステアリング、豪華な感じで、シットリ感もあり、常時触れているものとしては、一味違った感触がたまらないのだが、長年使ううちに、色あせるだけではなく、シットリ感もなくなって、非常に滑りやすくて、扱いにくくなってしまうのが現実。


特に紫外線を多く浴びると、この状況は加速されるようで、数年で退色が始まるのだが、何とかこれを食い止めるだけではなく、色あせてシットリ感のなくなったものを、元の常態へ戻せないか行動を起こしてみた。

革製品の管理には保革油なるものがあるけれど、これは完全にオイルで、これをステアリングに塗れば、革としては良いが、その油分に閉口する。だからこの保革油をステアリングに塗りつけてはいけない。

とにかく滑ってしょうがない状況から逃れたいわけで、雨が降っていたら、その水分をいただいて、それをステアリングに少し染み込ませ、スリップ止めとして対策していたぐらいにひどかった。革製のステアリングを長く使ったことの有る方なら、このような体験はあるだろう。

なめしの革のしっとり感を取り戻すには、何が良いのがないか思案したところ、ひらめいたのは、靴のクリーナー。これなら塗りつけてもベタベタした感じは残らないし、塗りつけるそばから、革に吸収しているので、これをステアリングに少量塗りつけてみた。

すると、乾燥していた革は、直ぐに吸収して、なんとなく良い感じ。もちろんベタ付きもない。しかし、これをたっぷりと塗布して良いのか疑問で、少量摺りこんでとりあえず終了させたが、これではほとんど効果がなかった。果たして、このまま靴クリーナーを使うべきか考えたが、もっと効果があって、しかも革に優しいものはないかと思考した結果“ひらめいた”。

それは、人が使うクリーム。特に、赤ちゃん用(だけとは限らない)として販売されている、ベビーローション(ジョンソンベビー)。これなら革製品に塗りつけても、トラブルは起きないだろうと判断。とりあえず少量使ってみたが、効果を確認できたので、多少バクチ的な部分はあったが、2回目からは、たっぷりと盛り付けるように、ステアリング上へ塗布すると、時間と共に吸収され、べたつきはなくシットリ感だけが残り、さらに退色していた色も、そのローションで戻ってきた。

もちろん滑りやすいということもなくなり、雨が振っても、その雨水のお世話にならないで済んでいる。

あるクルマメーカーの用品開発者に「革製のステアリングは、数年使用するうちに、退色が起き、さらにシットリ感がなくなって、滑りやすくなるが、何か対策はないのか」、と聞いたところ、「何もないので、紫外線が当たらないようにしていただく以外手がない」とのことだったから、その方には、私の体験と実験の結果を知らせて、このような用品を使えば、革巻きのステアリングは、十分なケアが出来ることを、仕様書に記載すべきだ、と言うアドバイスをした。




1.数年使用するうちに、革巻きステアリングはツルピカとなり、グリップが効かなくなって、危険なこともある。もちろん色抜けもおきて、みっともない状態だ。




2.そこで使用するのが、お肌のケア用品。使用したのはジョンソンベビーのベビーローション(何のことはない自宅にあったからそれを使用)。人に優しいローションであれば、「当然、なめした革にも良いはず」と言う勝手な判断をした。



3.まず、ステアリングに付着している汚れを、固く絞った雑巾でふき取り(洗剤は使わなかった)、その後、しばらく乾燥させる。



4.ベビーローションは、少量ではなく、たっぷりと塗布する。特に初めて塗る場合には、ベタベタ状態でかまわない。時間が経過してもローションが残るようなら、固く絞った雑巾でふき取れば良い。水溶性なのだから問題はない。



5.それを、指先で満遍なく革の部分へ広げて(裏側も忘れないように)、1時間ほど経てば全て吸収する。指先で広げていく最中にも、革が吸収していく様子を見て取れる。



6.写真は20分ほど経過した時点。まだ、革の凹んだ部分には、ローションが残っている。これもしばらくすると消える。一日経過後でもローション分が残っていたら、乾いたボロキレで拭き上げる。2年に一度軽く塗布すれば良い状態を保てるようだ。

2010年9月6日月曜日

点火プラグの締め付け方

点火プラグの締め付け要領

点火プラグの交換では、プラグの締め付け要領は重要だが、難しい話ではない。でも緩いよりは、多少締め付け過ぎの方がまだまし。

プラグの締め付け加減だが、これまでの説明で多かったのは、締め付けトルク1.5~2.1kg-mが基準で、ガスケットが新品の場合は、このトルクを指先だけで締めることが出来なくなってから(つまりガスケットがヘッドに当たってから)、90度に読みかえることが出来るとしている。

また、再使用では45度の締め付け角度を指定していたが、これらの2項目は古い締め付け要領で、当時のガスケット構造や、プラグの構造から決めたものだから、これを適用してはいけない。新品と交換したときには締め付け不足になるし、再使用では締め付けすぎの状態だ。

締め付け足らずは、トラブルの元となる。例えば、走っている最中に、プラグがヘッドから弾き飛ばされる、と言うことが昔は発生した。もちろんプラグ穴ネジ部分の製造問題もあったが、それでも、強めに締め付けられていれば、燃焼圧からの金属疲労も受けず、ネジ山ごと吹き飛ぶ、なんていう事件は起きなかったはずだ。

実際の交換作業でトルクレンチを重要視する必要もなく、角度法を取れば良いんだが、それにこだわるより、締めていくときの力の加減を覚えた方がミスをしない。またそれを感じれば良いだけ。

どのように感じれば良いのかと言うと、とりあえずプラグをヘッドに仮締めする。このときプラグを専用のソケットに差し込んでから、ヘッドのプラグ穴にゆっくりと入れるが、もしプラグを落下させたら、再度引き上げてプラグのギャップを確認すること。

仮締めの方法は、レンチのエクステンションだけをつまんで、指先の力を使って締めること。指先だけで締められなくなったら、ラチェットレンチなどを使って本締めする。

レンチを使って締め上げていくと、しばらくは一定の力だけで、レンチが回転していくはず。ところが、ある角度(これが大体120度)まで進むと、それ以上はかなりの力を必要とするので、ここで締め付け完了。

レンチを使い出してから、どのくらいの角度を締めたか測ってみると、おおよそ120~130度。120度と言うのがプラグメーカーの推奨角度だから、この感覚を分かって締めれば、自然にそれに合ったものとなるので、これを覚えていると便利だ。

では、改めてトルクレンチを使って指定のトルクである2.5kg-mで締めてみると、角度法と比較して、かなり近いところまで締めていることが分かった。なおメーカーの指定では2.5~3.0kg-mとしているが、3.0kg-mは、感覚的に締めたくない強いトルクに感じる。

ガスケットを再使用する場合のトルクも同様で、これも角度法とすると30度の指定があるけれど、実際にはそこまで締めるのにはかなりの力を必要とする。手首のスナップだけで締める、と考えれば問題ない。

また、プラグメーカーのサイトには、ネジ部分に潤滑剤などを塗布しないように、と明記してある。これは締め過ぎの傾向があるからだと言う。しかし、その点は力で加減が出来るため、私は焼きつき防止を考えて、耐熱グリース(ディスクブレーキなどの金属部分に使える)を少量使用する。エンジンオイルや普通のグリースは使用しない。耐熱性が高くないと、かえってネジが焼付いてしまうからだ。

ここに至ったのには訳がある。その訳とは、以前手に入れた10万キロ走行の中古車に、10万キロ対応プラグが使われていたため、一度も脱着していなかったことから、ネジが焼付きを起こしており、プラグ外しで苦労したからだ。なお、耐熱グリースを塗布する点については、自己の責任でやるのは当然だろう。



1.トルクレンチは締め付け領域でサイズを選ぶ必要がある。ソケットへの差込サイズが8分の3(インチ)を選べば問題ない。でも、安いもので5000円、ブランド品なら数万円する。安いものは、その精度を確認してからでないと、使うのが怖い。



2.使用中の点火プラグガスケットは、上側のように厚さが薄くなっている(つまり断面が潰されている)。対して、新品はふくらみが強い。プラグを締め付けていくことで、この断面が潰されていくわけだから、潰れの限界まで締めれば良いのだ。


3.とりあえず指先だけで締めるが、重くなって指先だけでは回らなくなったからといって、それがヘッドにガスケットが当たったからだとはいえない。レンチを使って、軽く回るのなら、それが終わってから、新品なら120度締めると考える。


4.使用するラチェットレンチは短いものの方が安全。短ければ締め付けトルクは必要以上に入れられないから、締め過ぎを心配する必要もない。この長さだと、力一杯締めても120度の角度だった。


5.トルクレンチで締め付け加減を確認すると、120度という角度は、正に2.5kg-mのトルクだった。3.0kg-mはかなりの締め加減であり、強すぎを感じる。やはり、いちいちトルクレンチを使うより、手での感覚を覚えたほうが安全ともいえそうだ。


6.ガスケットを再使用するときの、締め付けトルクは新品のときと同じ。ただし、締め付け角度は30度。短いラチェットレンチでは、これもかなりの力を必要とする。


7.このように長いラチェットレンチを使うと、同じ力でも締め付けトルクは大きくなるので、心配となるなら、レンチを短く持って(ラチェットの根元あたり)力を入れること。写真のような位置を握って締めると、締めすぎは必至。


8.点火プラグを確実に締め付けていないと、このプラグキャップが示すように(本来は青いキャップだが先端が黒くなっている)、燃焼ガスがプラグネジとヘッドネジの間から吹き出し、エンジン不調の原因を作り出す。最悪、ヘッドのネジを破損させて、プラグが飛び出す可能性も有るので、自分での交換では(特に新しいものとの交換)締め付け角度とその要領を覚えるべきだ。


9.焼付き防止を考えて、ディスクブレーキ用の耐熱グリースを塗布するが、プラグメーカーでは、締めすぎの懸念が有るので、使わないようにとしている。でも、私は、経験上から使っているが、もしこれを読まれた方が使うとしたら、それは自己責任でお願いする。

2010年9月3日金曜日

点火プラグの電極の向きと燃焼

プラグは電極の向きにも注意する

ガソリンエンジンの燃焼に重要な点火プラグだが、指定のものが取り付けられていれば良い、というものではない

点火プラグとガソリンエンジンの燃焼(爆発と言う定義ではない)については、その要求度が進んで、これまでとは違った形状のものが登場してきたが、それでもそこに要求されることは、経験上それまでと変わりないと思っている。

つまり、そのレベルが高くなっただけのことで、あくまでも目的は、どの回転、どんな負荷でも完全燃焼、つまり未燃焼ガス(HC)の発生を抑制することにある。ただし、そこには大量のEGR投入で、燃焼温度を下げNOxの発生を最小限に止めるため、どうしても燃焼しづらい状況が起きる。

それを少しでもカバーするために、多様な形状の点火プラグ(電極周りだが)が開発されてきたのだが、それだけでは追いつかないと常日頃から思っている。それは、燃焼室内におけるプラグ電極の向きである。

確実に燃焼させようと吸気時には、タンブル(縦の気流回転渦)やスワール(横の気流回転渦)を発生させ、プラグの電極に混合気をぶつけるような事をさせるばかりではなく、混合気を回転させることで、燃焼速度を早くして、性能アップを図ろうという策略も見逃せない項目だから、各メーカー必死に実験を重ねている。

そうは言っても、吸気量が少なく、吸気流速が上がらないアイドル時や、低回転時などでは、タンブルもスワールも設計値通りの状態で発生せず、理想的な燃焼からかけ離れるのは必至。それを少しでもカバーできるのが、点火プラグにおける電極の向きと言える。

この電極の向きに関する研究は、ホンダの初代インサイトエンジン研究で行われたことがあり、そのときには、リーンバーンエンジンであることから、混合気が薄く(空気とガソリンの重量比で、一般的なエンジンでは14.7:1を基本とするが、それを20:1前後まで薄くする)、プラグギャップの間に混合気が流れ込まなければ、燃焼とならない可能性があり、それはどのような条件で発生するか、また、どうしたら回避できるか、と言う目的で、プラグを締め付けたときの電極の向きに着目して研究がなされた。

その結果、ある程度点火プラグで解決できる、と言う結論となって、製作上の手法に手を加えていないが、トヨタでは違った見方をしていた。

トヨタは、アイドリングのバランスのよい燃焼にこだわりを持っており、その回転に乱れが有ることをOKとしない。そこで、プラグ締め付け後の電極の向きに着目し、出来るだけ、吸気バルブ側に電極の開放部(接地電極の反対側)が来るよう、プラグ製造メーカーとネジの切り出し位置を打ち合わせするだけではなく、自分たちも、プラグ穴のネジに対する切り出し角度を決めた。

このように製作したことで、トヨタエンジンについては、点火プラグ締め付け後の電極位置が、とんでもない方向にあることはないので(もちろん日本のプラグメーカー品での話し)、改めてプラグの向きを合わせても、アイドリングはそれ以上変化しないはず。

他のメーカーでは、納得の出来る位置にするためには、気筒数プラス2~3本のプラグを必要とするが、ガンバッテこれをやると、アイドリングの乱れが解消することは多い。

なお、レースの世界では、この電極の向きに対して、重要視しており、目標となる角度を得るため、ガスケットと共にシム(薄いワッシャ)を挟んで、対策している。目的は、アイドリングではなく、アクセルを踏んだ瞬間の、100分の1が勝敗に影響し、それが締め付け後のプラグ電極の向きと関係するからだと言う。

 
1.点火プラグは、スパークする電極間に混合気が入り込まなければ、燃焼に結びつかないわけで、シリンダーヘッドに締め付けたときの、吸気バルブとの位置関係が重要と考えている。


2.プラグ用のソケットを使用し、そこに使うエクステンションには、プラグの電極開放側の位置が分かるよう、ガムテープを貼り付けたり、エクステンションの上側にヤスリで凹みを造って、ラチェットレンチを外したときに分かるよう細工する。


3.指先だけで締めこんでから、ラチェットレンチを使用して、しっかりと締め付ける。締め付けの要領は、近いうちに説明するが、新品のプラグを使用する場合と、継続使用では、締め付けの感覚が少し違うことになる。


4.ラチェットレンチをエクステンションから外して(絶対にプラグソケットを抜いてはいけない、締め付け角度が分からなくなる)、マーキングした位置から、電極開放位置がどこにあるか確認。吸気バルブ側を向いていればOKとなる。


5.ヘッドの中心から見て90~100度ずれているのはベストではないが、OKの範疇に入れる。ただし、他の気筒のプラグや新品と交換しても、このような角度になってしまう場合に限る。

2010年9月2日木曜日

アースをないがしろにしてはいけない

アースの重要性を、ある高級車で身近に体験したことにより、そのことへのこだわりを強く持つようになった

クルマのアースと言えば、 バッテリーのマイナスターミナルから、ボディやエンジンに太いコードを使って接続するのは当然で、太いコードを使う理由は、セルモーターを回す瞬間に大電 流(数百アンペア)が必要になり、それに対応させるためだ。当然プラス端子からも、セルモーターにはマグネットリレーまで、同様に太いコードが繋がってい る。

ここまでは当たり前のことであり、どのクルマも当然のように配線が行われるのだが、バッテリーをリヤのトランクに取り付けていた、問題のRR(ロールス・ロイス)ベントレーは、問題のトラブルを見つけるのに数週間かかってしまった。

あるとき知り合いの修理工場に大きなクルマが入っていた。それがRRベントレー。トラブルと言うのは、セルは何とか回るのだが、エンジンが始動しない。始動するときもあるが、その次には不能。翌日は一発で始動する。これの繰り返し。

始動しそうで、連続しない。セルを回すことをやめた瞬間だけ数回燃焼する。そこでOBDⅡソケットに(トラブルコードを出力するソケットがある)スキャンツールを取り付けて、どのようなトラブルが有るのか検証するが、問題は発見できない。

点火システムなど交換したが、解決の糸口がつかめない。そのうちに、バッテリーは元気でも、セルが回る気配さえなくなってしまう現象も起きる。

そ こで次のステップとして点検したのは、バッテリーからのアース。前述したように、このクルマはバッテリーがリヤのトランクにある。そして、そこからのマイ ナスは、トランクフロアからボディの下にコードを出して、太い端子をボルトでボディに固定している状態。つまり、完全に露出しており、周りの環境をもろに 受けてしまう設計だ。

このあたりがおかしいのではないか、と言う判断は、ある現象にヒントがあった。それは、なんとなく変な臭い(イオンの臭いで、電気がスパークすると発生する)を感じたことに端を発する。

そ の臭いの場所をたどると、なんと、アースコードとボディの接続が、トラブルを引き起こしているところに行き着いた。新車のうちならこのようなことは起きな いだろうが、数年間使う間に端子とボディの間に腐食が生じ、セルを回すときの大電流は何とか都合をつけても、インジェクションや点火装置を作動させる電流 は、セルに食われ十分ではなかった、と考えられる。

ボルトを取り、接続状態を点検すると、ボディ側だけではなく、端子側にもスパークによる腐食が見られ、緑青(ロクショウ)が発生していた。これをディスクサンダーで削り、導電グリースを塗布して、しっかりと締め付ければ終了のはずだったが、もうひとつ問題を抱えていた。

そ の残る問題点は、セルモーターのマグネットスイッチからプラス電源を取るのはいいとしても、そこに使われるコードの太さが十分ではなく、大型のオーディオ や補助ランプなどの追加で、設定以上の電流が流れ続けた結果、発熱し、コードに使われる銅の腐食が発生、抵抗が増していたことも不調の原因だった。

パワーアースの取り付けで、電位差が大幅に小さくなり、始動直後のアイドリングが安定した

このようなことから、電流の流れを自由にすることは非常に重要で、ただ単純にバッテリーのマイナス端子とボディが繋がっていればいいというものではない。

特に、端子とボディやエンジン回りとの接続に、接続抵抗と言うものが発生するとしたら、あまりうれしくないことの起きる可能性がある。それはセンサーからの信号に遅れが生じたり、大電流が必要なときにも一瞬の遅れとなって現れたりする。単純な話だが、ホーンの鳴るときの立ち上がりにも差が出てくることすら見受けられる。

このような経験からバッテリーにおけるアースはいつも気に掛けている項目。つまり、これを解決するには、アーシングの取り付けは重要と考えて、初代フィットにウルトラのパワーアースを実装してみた。もちろんバッテリーを消費しているときの電位差を計測し、パワーアースを取り付けることで、それがどのように解消されたかの検証もする。

ウルトラのパワーアースの特徴は、ターミナルブロックやそこに使われるボルトとナット、コードの端子、付属のボルトなどに金メッキを施していることで、安定した接続状態を長く保つことを狙っている点だろう。

取り付け説明書には、ある程度詳しくその取り付け位置が書かれているが、クルマによってはバッテリーのマイナス端子だけではなく、バッテリーそのものを取り外す必要があるので(フィットなど)、よく観察してから作業にかかることが重要だ。

取り付けを終了させてから、再び同じ条件で電位差を測定すると、その差は6分の1に低下していた。もちろん取り付け前の電位差64mmVでも問題となる数字ではないが、使われる電子・電気パーツが、ストレスなく作動する条件は、確実に確保できたと言うことは言えそうだ。

なお、アーシングはマイナス側に電流センサー(最近はバッテリーの管理を正しく行って、オルタネーターの負荷を減らし、燃費に貢献させるため、このような装置の取り付けが多い)の付いたクルマは、取り付けができない。無理に取り付けると、バッテリー上がりが発生する。

そして、取り付けが終了し、バッテリーを元に戻したら、時計やラジオのチューニングばかりではなく、それより重要な項目がある。それは、パワーウインドウのオートに組み込まれている、挟み込み防止機能の回復である。ホンダ車のように、その設定がなされていないと、オートにならなければ、事故は発生しないのだが・・・


1.ウルトラのパワーアースセット。端子やターミナルブロック、付属のボルトやナットに金メッキを施して、耐腐食性を大幅に向上させているのが特徴。もちろん、追加のケーブルを接続する場所は、時間をかけて探し出した部分だ。


 2.バッテリーのマイナス端子とシリンダーブロック間の電位差を計測すると、64mmVだったが、ヘッドライトとキーをONとした関係で、HIDが安定するまでに少し時間がかかったのか、数字の変化が大きかった。ヘッドライトを点灯した瞬間は100mmV近い電位差があった。



3.ボディなどへの追加部分では、既存のボルトを使うわけだが、塗装を剥がして、金メッキされた端子がしっかりと密着するようにする。当然、錆を防止したいので(防錆鋼板が使われているとは思うが)、浸透性潤滑剤などを吹き付けてからボルトを締める。


 4.組みつけが終了し、付属のタイラップでたるんだコードをまとめる。特にエキゾーストマニホールドへ接触させないように取り回すこと。バッテリーを載せてから、再度同じ部分での電位差を測定すると、ビックリする値に・・・


5.9mmV、これがパワーアースを取り付けてからの電位差。もちろんヘッドライトとIGキーをONとしているが、ほとんど電位差の変化はなく、ヘッドライトを点灯させた瞬間は10mmVだったが、直ぐに9mmVとなり、安定した。


6.忘れてはいけないのが、パワーウインドウのオートシステムの挟み込み防止機能を復帰させること。ウインドウを全開にしてから、軽くスイッチを引き、ウインドウを閉めてからも3秒間、そのスイッチを保持すればOK。もちろん、挟み込み機能は正常か、のテストをしておくことは大切。


ULTRA 永井電子機器株式会社
ウルトラパワ−アースー, ULTRA POWER EATH