富士重工のスバルには、1000cc水平対向エンジンを搭載したセダンと、そのエンジンをベースにした(ソレックスのツインキャブ)2ドアのスポーツが存在した。
中学校時代からの友人が、このスバル1000スポーツを、後生大事に所有していて、60歳を過ぎてからレストアに出し、走れる状態にしたと言うので、見に出かけた。(と言うより、ケチを付けに出かけた)
そういえば、そのスバル1000スポーツは、エンジンが調子悪くなったとかで、数十年前、その後乗っていた1300Gのエンジンに乗せ換えたはず。オリジナルのエンジンは、どうしたのだろうか、そのあたりも聞いてみたい。
友人宅を訪ねると、ガレージに入っているスバル1000スポーツは、風雨の被害がなかったため極めて状態が良い。錆の発生や色あせなどもほとんどなく、磨いたらきれいになったとか。もちろん全てを整備して、車検を取り、走れる状態である。ま~ここまでよくやるな~という感じだ。
ボンネットを開けてエンジンを確認すると、やはり1300Gのエンジンが載せられている状態。クラシックカーミーティングなどにも参加しているため(もちろん自走して会場に入る)、点火系には気を使っており、プラグコードはウルトラのシリコンコードに交換してあった。
1000スポーツにも使えるように、標準より1mm細い7mmのコードとしながら、1300Gで使うディスキャップへの差込部分のダストブーツを特別に取り寄せたそうだ。点火装置もウルトラのセミトラを取り付けている。確実に燃焼を行わせるだけではなく、ポイントの劣化を防ぎ、長期に渡って安定した性能を期待できることから、本気でこれからも乗る気であることを想像できる。
では、肝心の1000スポーツ用のエンジンは、というと、さすがにオーバーホール(というよりリビルド)をしなければならない状態となっているため、知り合いのレストア屋に出しているそうで、自宅では見ることが出来なかった。次のクラシックカーイベントでは、リビルドした1000スポーツのエンジンを、エンジンスタンドに取り付けて、展示しようかと言う目論みもあるそうだ。
1.友人宅のガレージに収まっている昭和43年式のスバル1000スポーツ。ボディ周りには手を加えていないようで、特別光り輝いていないのが、歴史を物語っていて親近感を覚える。
3.メッキ部分などには錆もなく、もちろん再メッキした様子もない。全体的になんとなくくたびれているが、それが時代を生き抜いてきた証拠でもある。今の尺度で見ると、恐ろしくこじんまりとして「当時はこんなものだったのか」、と改めてドライブに行ったときを思い出した。
4.でも、確かエンジンは載せ換えたと聞いている。ボンネットを開けてエンジンはどうなっているか見た。すると、やはり1300Gのものが載っていた。1000スポーツなら、ツインキャブのはずだし。エアクリーナーは、1300Gオリジナルであると「でかくてみっともないから」、適当なものに変更したらしい。
5.点火系には手を入れたようで、赤いプラグコードから、ウルトラのシリコンコードであることが分かる。よく見れば、プラグコードは太さ8mmではなく7mmを使っている。7mmは1000スポーツ用のプラグコードだが、ディスキャップ構造が違うため、どちらにも使えるようにダストブーツを特別に付けてもらって、1300Gのディスキャップにも使えるようにしたらしい。
6.点火装置もウルトラのセミトラへ変更したようだ。ポイントのメンテナンスサイクルが長くなり、かつ点火プラグへのスパークも安定して強くなるので、旧車には打ってつけの点火装置といえる。
6.点火装置もウルトラのセミトラへ変更したようだ。ポイントのメンテナンスサイクルが長くなり、かつ点火プラグへのスパークも安定して強くなるので、旧車には打ってつけの点火装置といえる。
7.当時のスバルでは、コストを無視した取り組みをしていたことがよくわかる。それは、ブレーキの構造にも見られる。一般的には、ブレーキがホイール側に来る構造だが、スバルは、インボードディスクを採用した。つまり、ブレーキのディスク(ドラムの場合も)はデフ側にあり、メンテナンス性は良くないが、バネ下重量は軽くなって、路面とタイヤの追従性に優れる。現在では、極一部の特別なスポ-ツカーにしか見られないこの構造が、普通のセダンにも使われていたのだ。
8.また、合理的な構造もある。それは、ヒーターとサブラジエターと言う関係。つまり、メインのラジエターに繋がるもうひとつの小さなラジエターがあり、そこには専用のファンを装備。夏は、ダクトを開放してファンを回し、エンジンの熱を放出。そのためメインのラジエターにはファンがない。冬は、サブラジエターのダクトを締めて、ファンをマニュアル操作し、熱を室内に引き込む。素晴らしい発想と言える。
スバル1000、昭和42年のCM