研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2021年7月17日土曜日

アルコールをモータースポーツで使用するのはなぜか 間違った解釈が時々出てくるので・・・

毎月送られてくるjamagazineの内容で、P12にインディカーシリーズで使用される燃料は、バイオエタノールが主流、という。ここまでは確かだが・・・

インディカーを含め、アメリカでは早くからアルコール系燃料を使用してきた。最大の理由は、ガソリンに比べオクタン価が高く、圧縮比を高くできるからだ、という話しで説明している。これ大きな間違い

ここでの間違いは、その昔の事故のことは無視されていること(原稿を書いている方が若くて、昔のインディ500における事故状況を知らないのだろう。当時は燃料は何でも良かった。軽油を使うタービンカーも走った。ただし、トップを独走していたタービンカーは、2年連続ファイナルラップでリタイヤ、と言う結果だった。

燃料に何を使用しても良い。と言うことだが、問題はマシンがクラッシュして火を噴くと、軽油やガソリンでは簡単には消火できない。特にガソリンでは切実で、ドライバーは助からない場合が多い。

これではまずい、と言うことで、簡単に消火できるアルコールが使用されるようになった。アルコールなら、基本的なグループとして水になるので、火が着いているところへ水を掛ければアルコールと水が直ぐに混ざり、消化してしまう。無水アルコールと言う表示があっても、実は無水ではない。ボトルを購入して、説明に目を通すと・・・99.5%などと言う表記がある。

それでアルコールを使用するようになったのだが、そのアルコールは毒性の強いメタノール。簡単に入手できる工業用ということらしいが、このアルコールが曲者。燃焼するとホルムアルデヒドと言う毒物が発生する。

当時のインディカーが暖機運転している場所に行けば、鼻を突く強烈な臭いばかりではなく目が痛くなる。

そして、ヤッカイなのは、メタノールがゴムやアルミを溶かしてしまうと言うこと。そのため、エンジンメカニックは、練習走行後ばかりではなく、暖機運転後にも燃料タンクや、燃料ラインにあるメタノールを洗い流さなければならない。そして、そこで出た廃液は専門の業者(サーキットに来ている)に処理を任せることになる。

このような面倒なことから退避するには、エタノールを使用するしかない。エタノールは飲食しても安全だし、燃焼させてもホルムアルデヒドの発生は少ない。

ただ問題は、飲酒できるアルコールなので、それを求めて飲まれることは問題がある。と言うことで、毒となるガソリンなどを混ぜた。

日本で、エタノール使用のインディカーを走らせるとき、エタノール100%であれば、酒税をかける、と国が言い出したものだから、確か5%ほどガソリンを混ぜたはず。


この散水栓はツインリンクもてぎのスーパースピードウエイのピットに設けられたもの。私のアドバイスで後付けされたので、側溝の蓋をカットして、中に通している水道管と給パイプを繋いでいる。

インディカーに限らず日本以外の国で開催されるモータースポーツでは、エタノールを燃料とする場合が多い。オーストラリアのオーバルダートレースのTV取材記事でもアルコール燃料となったいきさつを放映していた。

アルコールを使用する理由はもうひとつある、それは、気化熱が多いため、ドライバーのレーシングスーツにたっぷりとアルコール(エタノールでもメタノールでも関係ない)を含んでいると、直ぐに火傷しない。

その状態を実験で確認できる。コーヒーを入れるときのサイフォン式で使うアルコールランプ。これを消すときにいちいち専用の蓋をする必要はない。火の着いている芯を指で摘んでしまえば消える。もちろん火傷などしない。