研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2014年5月28日水曜日

2014年、第24回人とくるまのテクノロジー展で見た


毎年パシフィコ横浜で行われる「人とくるまのテクノロジー展」(自動車技術会が主催し、今年は5月21日から23日までの3日間)。ここでは自動車技術の現在と未来が展示され、非常に興味深い内容があり、今年の来場者数はかなり多かったのではないかと思う。


パシフィコ横浜で行われるイベント。自動車の現在と未来に関するものが展示され、入場料は無料だ

 

その展示内容で、ヤハリと今更を見つけたので、アップしたいと思う。

 

最初は、ヤハリである。それは家電メーカーがEV業界へ積極的に参加し始めたこと。

何を隠そう、三菱自動車がi-MiEVを発売したとき、「これからは家電大型量販店の**カメラ、**電気などがもっと安いEVの販売を行うようになるのではないか。そのためには、自動車メーカーが開発したボディを積極的に販売すべきで、場合によっては、重要保安部品を組み込んだ、街工場でも安全性が高く、高品質なEVの製作ができるような環境作りが必要で、先陣を切ったメーカーはそのようなことを考え、やるべきでだ」、という話を開発者にしたことがある。

何故そのような発想に至ったのかというと、EVの製造コストで高価なものはバッテリーとそのシステム(モーターやインバーターなど)であり、そのふたつのコストが下がれば、EVはもっと買いやすくなる。

エンジンが無いということは、簡単に自動車が造れる、ということなのだ。ただし、衝突安全などの条件も満たそうとすると、街工場では無理。どうしても自動車メーカーが製造したボディが必要となる。

更に、どのように使用するかで、仕様の違うものがあるとしたら、それを選べばいい訳で、そこに1回充電での走行距離が大きく関係する。100キロの走行はしない、せいぜい30キロというのなら、それに合わせられるように仕様違いを作るのである。

一番の問題はバッテリーの製造コストであるから、高価な高性能バッテリーではなく、発展途上国が製造する安価な(密度は小さいが)もので十分となれば、EVの需要に弾みがつくだろう、という考えだった。クオリティが低くてもいいとなれば、モーターやインバーター、駆動ギヤなど、安価なものでまとめられるはず。

ところが、自動車メーカーが躊躇している間に、家電メーカーが参入してきた。バッテリー開発についてはノウハウが多く、これを自社でやるにはリスクが多い。でも、モーターやコントローラーなどは、作ってみれば結果はすぐに出せる。


三菱電機がEV業界へ参入するのか。バッテリーの開発はノウハウが多く、またすぐに結果を出せないが、モーターやコントローラー、駆動システムは造ってみればすぐにわかる。結果が出やすい、参入しやすい、ということなのだろう

衝突安全でもそれをパスさせるデータは多く、心配はないとなればEV事業に参入するのは当然の結果だろう。さて今後が楽しみである。

 
もうひとつは、今更である。

それは、点火プラグのこと。しかし、特別高性能ということではなく、接地電極の向きが悪いと、失火(というほどでもないが)の原因となり、HCの排出量が増えるばかりではなく、アイドリング中の不快な振動(アイドルストップが付いていたら関係ないか)に結びつく。

特に接地電極が吸気バルブ側を向いた状態で締め付けられると、最悪な条件となりやすい。

そこで考え出されたのが、どのような向きに締め付けられても、必ず電極間に混合気を導くための突起を設けた点火プラグ。


これが新しい点火プラグ。発想は新しくなくて、特別優れているとは判断しかねる。つまり、現在の日本車における点火プラグの締め付け後の接地電極位置は、どのエンジンもほぼ問題の出ない状況となるもの造りがされているということ

点火プラグの、スパークする電極間に混合気が入らない限り燃焼が起こらない。条件が悪ければ失火の原因となる。そうならないように考え出されたのが、デンソーの開発した“気流誘導プラグ”。接地電極から少し離れたところに、突起をつくり、そこに当たった混合気を電極に誘導しようとするもの。でもね~なのだが

しかし、最近のエンジンは吸気の最中にスワール(横周りの渦)やタンブル(縦回りの渦)を積極的に使うようになり、点火プラグの電極間には混合気が入りやすい状態で、それほど失火が起きないというのが実状なのだ。それでも吸気バルブが大きくシリンダーボアの大きなエンジンなら効果があるだろう。

また、締め付けたときの接地電極位置が重要である、という話は数十年前から採り上げており、私自身、使用する数より数本多くの点火プラグを購入し、その中からベストな位置になるようなものを選び、実際にクルマやバイクで実施している。

更に、その当時、トヨタ自動車のエンジン開発担当者と話しをし、締め付け後の接地電極の向きについて、どのように考えているか聞いてみると「トヨタの場合、アイドリングの乱れは許されませんから、点火プラグの締め付け後における接地電極の向きについて、神経質になっています。そのため、プラグメーカーと話をして、トヨタのエンジンはこの角度から点火プラグのネジを切り始めるので、そちらもそれに合わせられるような位置に接地電極をつけてほしい、という要望を出しています」という話だった。

そういえば、最近の国産車(クルマもバイクも)は、とんでもない角度に、締め付け後の接地電極が来るものがないように思う。輸入車と海外点火プラグは、どれも思わしくなかった。