研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2012年4月2日月曜日

圧縮比14・マツダの新ディーゼルを考察する

いまや既存のディーゼルは時代遅れ、他のメーカーもこの技術を見習う必要がある

内燃機関に一石を投じることで、これまでにないエンジンの開発・製産を行ってきたマツダが、ディーゼルエンジンにもショッキングな技術を詰め込んだ。それがスカイアクティブ・ディーゼルである。

昨年発売されたガソリンエンジンでは、圧縮比を14あるいは13と言う値にするもので、ノッキングを回避する制御と燃焼を確立し、部分負荷状態では常に膨張比を大きく取れるミラーサイクル(アトキンソンサイクル)として、燃費を向上させたのだが、ディーゼルでも同じ圧縮比の14と言う値での燃焼を可能とした。

これがスカイアクティブ・ディーゼル。排ガス制御では仕方がない、と言う考え方を捨て、最初から高い目標を掲げて開発したら、意外なところにキーがあった。これまでの常識を覆せば、新しいものが見えてくるのだ

圧縮熱を燃焼のタイミングと膨張に使用するディーゼルは、これまで常に高い圧縮比を要求しているかのように思われてきたが、実は違っていた。

重要なのは、冷間時始動で、それに必要な圧縮比が16あるいは18と言うだけのこと。実際に暖気が終了したら、それほど圧縮比が高い必要性はなく、無駄な状態での燃焼サイクルを行なわせていたとも言えるのだ。

圧縮比が高いから、それに合わせてクランクシャフトやコンロッド、ピストンとピストンピン、はたまたシリンダーブロックからシリンダーヘッドまで、ガソリンエンジンとははっきりと違う材料を使って、形状に対しても無骨な状態、つまり頑丈なことが要求されていた。

それなら、圧縮比を小さくしても冷間時始動が可能なディーゼルエンジンを作ったら、いったいムービングパーツ(クランクやコンロッド、ピストンなど)はどうなるのか。これまでよりコンパクトで、材料費も安く軽量なディーゼルが出来るのは当然のこと。それによってエンジン回転には軽さが生まれてくる。

圧縮比が高くないのだからいかにも無骨で重いものは必要ない。手前がスカイアクティブ・ディーゼルのクランク(向こう側はこれまでのマツダディーゼル2.2リッター)。ウエブの厚みや形状など、まるでガソリンエンジンのようである

コンロッドの形状や寸法もこのように大きく違う。ピストンピン径も30mmから26mmと小さくし、ピストンについてもピストンピン径が小さい分短くし、低圧縮とするためにピストンにある燃焼室も大きいので、ピストンの軽量化もなされた


問題は、どのようにしてそれを達成するかであるが、スカイアクティブ・ガソリンでブレークスルーさせたように、マツダはディーゼルでもブレークスルーさせた。

ディーゼルだから・・・と言う考え方をせず、どのようにしたら軽やかで楽しく運転できるディーゼルは出来るのか。基本的な発想を変えることでその目標を捕らえたのである。

ディーゼルの鍵は冷間時始動にあり、特に極冷間でも始動を可能としなければならない。また、排ガスや燃焼音(俗に言うディーゼル音)に対しても、ガソリン以上が望まれる。排ガスに関してはガソリン以上の対策は可能だが、エンジン音に関しては、ガソリン並みに近づけることが精一杯。もちろんシリンダーブロックやシリンダーヘッドを鋳鉄の鋳造で製作すれば、エンジン音低減は可能なのだが、それでは時代錯誤も甚だしいところ。

そこでマツダでは、軽量なオールアルミのエンジンとし、シリンダーブロックはダイキャスト製のオープンデッキ。エンジン音としてはつらいオープンデッキを採用しながら、あの程度の燃焼音とすることが出来たのも、14と言う低圧縮が大いに関係している。

そして、肝心な極冷間時でも始動可能とした技術は、最大圧力2000気圧(最低400気圧)としたコモンレール噴射と10ホールのインジェクター(ピエゾインジェクター)に、高い昇温性能を持つセラミックのグロープラグばかりではなく、セルを回して僅かな燃焼(安定燃焼に結びつかない)が起こった際に、その燃焼した排気ガスを、マツダ独自の排気バルブ2度開きによる吸気工程でのEGRシステムは、熱い排気ガスを再度シリンダー内に取り込み、シリンダー内の温度を上昇させ、その状態から圧縮することで十分な圧縮熱が得られ、自己着火による安定燃焼に結びつく。これを達成できたことで、排ガス改善など次のステップに進むことができた。
これがマツダ独自の排気バルブ2度開きシステム。冷間時始動後の初期では、圧縮熱が十分ではないため、一度燃焼した(或いは燃焼しかかった)排気ガスを、吸気工程で再度引き戻す装置。この機構が出来たことで14と言う圧縮比が成立した

この結果、冷間時始動では当然のこととして行われていたアイドルアップはなく、普通のアイドリング回転800で安定。カリカリと言う燃焼音が小さいばかりでなく、エンジン回転も上がらないと言うことから、早朝の住宅地でも周りのお宅に迷惑を与えることは少ない。

もちろんインジェクターからの噴射はマルチプルで、最大9回の実力を持つが、現在のところ実質8回。その8回は冷間時の燃焼促進と燃焼音の低減だけではなく、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)が煤で詰まったときに焼き切る場合も、触媒へ軽油を送り込む目的で作用させるのだが、暖気後の通常走行では4回の噴射が燃焼1サイクル分となる。

また、これまでのディーゼルエンジンは、NOx対策で(煤が出ても、これを優先してきた)燃焼温度が上がらないように、ピストンが上死点をかなり過ぎた時点で燃料が噴射されていた。つまり、圧縮比は小さい状態だ。これではせっかくの大きな膨張比も宝の持ち腐れ。当然燃費もトルクも十分に発揮できない。

そこでマツダは、上死点燃焼を目標に技術開発した。上死点で燃焼させてもNOxの発生がなく、かつカリカリと言う燃焼音が出なければいいのだが、これが難しい。

ところが、圧縮比を14とすることで、これまでのディーゼルが燃焼させていた上死点後の圧縮比と同じ値となり、EGRもしっかりと冷却し十分に取り込むことで、燃焼温度は抑制されNOxの生成も少ない(ポスト新長期規制でも後処理装置は必要ない)。もちろん、インジェクターの性能や噴射タイミングやパターンの制御も大きく関係する。

これまでのように圧縮比を高くしていると、燃料が噴射されたとき、燃焼室全体(ピストンの凹み部分が燃焼室になる)へ均等に分散せず部分的に濃い状態が存在する。これでは極所的に高温となりNOxを生成し、同時に酸素を求めて燃焼してしまうため、酸素不足状態の部分では煤が発生。更にムラのある燃焼は燃費が悪くなる。ところが低圧縮の場合、内部流動の高いところに高圧で噴射された燃料は、その燃焼開始タイミングが燃料と酸素がよく混ざるまで着火しないようになる。その結果、欠点が解消する、これが低圧縮ディーゼルの優れたところである。

また、時間差が出来ることで、燃焼の経過とともに燃料は分散するため、燃焼の終盤にはリーン燃焼となり、HCの発生が微少と成るのは当然の結果だ。
圧縮比を小さくするためにはピストンにある燃焼室を大きくする必要がある。燃焼室の径が大きいと、エッグシェイプの形状も自由度が増し、圧縮工程での燃料噴射タイミングを、これまでより手前で行っても、燃料が燃焼室からはみ出すことなく燃焼室に止めておける。その結果、予混合的な噴射を行っても、燃料は酸素と結びつく時間が得られ、ムラな燃焼を回避できるのだ。これ全て、圧縮比が低いからである

つまり、少し早めの燃料噴射で燃焼室全体(ピストンにある凹みの部分)に燃料を分散させておき、そこにパイロット噴射から、上死点近く(場合によってはほんの少し過ぎたあたり)のメイン噴射で最大燃焼(膨張)を行い、穏やかに全体を燃焼させる技術が開発された。3コブ燃焼と呼んでいる。(2コブ燃焼もあるが)

改めてエンジン性能をグラフから見てみると、排気量2188cc、最高出力は129kW(175ps)/4500rpm、最大トルク420N・m(42.8kg-m)/2000rpm。この数字は自然吸気エンジンの4200cc同等のトルクであり、その力強さは見て取れる。シーケンシャル・ツインとしているターボの技術は、マツダがとく意図する分野で、最大過給圧は1.7気圧。また、最高出力回転が4500であるけれど、実のところ5200回転まで一気に上昇してしまう。そのあたりも狙ったところである。

これがスカイアクティブ・ディーゼルのエンジン性能曲線図。2000回転の420N-mを頂点にトルクが山型になっている。その大きなトルクばかりではなく、トルク特性にも注目したい。使いやすく、気持ちのいい特性を引き出したのである。最高出力回転についても同様で、5200回転は簡単に、そして気持ちの良い感触で極普通に回ってしまう

最近のターボはVGT(バリアブル・ジオメトリー・ターボ)が主流。それをあえて使用しなかった理由は、シングルターボであればでコスト的にも有利であるが、低速ではターボチャージャーのレスポンスを良くするため、タービンに当てる排気ガスの流速を上げる目的で、ノズルを絞る形となり、排気ガスの詰まり現象が発生して、エンジン性能的に良くないからだ。
過給機は現在のディーゼルエンジンに絶対必要なアイテム。ただし、最大過給圧を高くすると(スカイアクティブは1.7気圧で欧州車からすると高いほうではない)、ターボチャージャーも大型となる。その状態で実用性を高めるには、タービンホイールに当てる排気ガスの流速を高めてやる必要が生じ、そのためにタービンホイールのハウジング内へ、多数のウイングを装備して、エンジンの負荷状態を検出しながら、ウイングの角度を変えてタービンの回転数を高くするのだが、これをやると排ガスの圧力が高く、つまり分詰まり状態が出来る。当然エンジン性能的には良くないので、マツダでは、RX7で培ったシーケンシャルツインターボを装備した

トルクに関しては、過給との関係で一般的には最大値(過給圧がらみで)からフラットとなるのだが、それでは快適にはならない、と言う思いから、山を作っている。トルクカーブを引っ張り上げて山としたことにより、多少前後のトルクは少なくなる傾向だが、これにより自然で力強い加速力が生まれた。

スカイアクティブ・ディーゼルにはアイドルストップシステムも装備している。ただし、重要な再始動時間はガソリンエンジン並みに小さく、0.4秒である。一般的にはこの倍以上かかるので(バスなどを見れば分かるはず)、乗用車としては歓迎されないロス時間。危険領域になるならやらないほうがいい。

そのため1回の圧縮工程で確実に燃焼させる技術が詰め込まれた。重要なポイントはクランク角度の検出から(ガソリンと同様)再始動しやすい位置にピストンを止めること。目標は上死点前90~108度だが、たとえ72度となっても再始動可能な技術を取り込んだ。それだけではなく、アイドリングストップしている間のコモンレール内における燃料圧力を維持する技術も重要な点。ピストンが止まる直前にはエアバルブ(スロットルバルブではない。EGR制御などにも使用する)を全開にして空気を取り入れることも行う。

そして、再始動時にはピストン位置を検出しながら、燃焼室からはみ出さないタイミングで予混合的に1回噴射し、更にピストン上昇に合わせパイロット噴射からメイン噴射を行って、安定燃焼にしていく。ここもすごい技術である。なお、ディーゼルでもATにはブレーキオーバーライドが装備されている。

2012年3月19日月曜日

ガソリン小型発電機の管理をしっかりとやらないと、いざと言うとき使えない

自治体や商店、或いは個人宅でも小型の発電機を備えるようになってきた。災害時のことを考えると良いことなのだが、ガスエンジンならともかく、ガソリンエンジンではテスト始動後のガソリン管理が正しくないと、いざと言うときにエンジン始動不能に陥る。そのあたりを理解して準備しているのか心配になる。

数十年前から日本各地の区市町村役場では、簡単に持ち運べる小型(1~2kW)の発電機を常備するようになってきた。しかし、年に(或いは数年に)一度ぐらいのペースで、非常時を想定した訓練を行うとき、常備している発電機にガソリンを入れて(或いは入っているかもしれない)、いざ始動させようとしても、エンジンはかからない。

1年前に販売店の方が納入して、テストしたときにはいとも簡単にエンジンは始動したのだが(始動のやり方も教わり)、1年以上経過しての訓練でエンジンはウンともスンとも言わない(セル付ではバッテリーの管理も重要だ)。これではいざと言うときに何の役にも立たない。「やっぱり小型ではダメなんだ」なんていう勝手なことをのたまう連中まで出てくる始末。

何でエンジンが始動しないのかと言うことを考えれば、自ずと答えが出てくる。少し知識のある方なら、点火プラグを外して火花テストをするだろう。ここでは、まず確実に火は飛んでいるはず。昔のポイント式点火方式ならいざ知らず、既にポイントレス点火のCDIになっているから、使わない状態なら経年劣化は起きず、不良となることはない。

点火プラグを取り外して火花テストをするのもいいが、最近はポイントレスのCDIが装備されているので、まず点火装置が不良となることはない。プラグの不良は可能性があるが

すると考えられるのは、ガソリンが燃焼室に来ていないと言うこと。ガソリンタンクは満タンなのに、なぜなのだろうか・・・

答えは簡単、キャブが詰まってしまったのである。インジェクションやディーゼルなら数年放置しても問題ないのだが、ガソリンとキャブはダメ。キャブにあるガソリンが蒸発し、ガソリン成分のカスによってキャブの内部はゴミだらけ。もちろん小さな穴のジェットも詰まって、ガソリンは吸いだされない。

販売店の方は、当然それなりの説明はしていったはずだが、その説明を理解し、しっかりと実行できる人物がいなかった結果なのだ。そのため、当時はその発電機を製造販売したメーカーが、修理工場の人員をフル動員して、改修に当たったと言う。
小型の発電機。少々古いので2ストロークだが、燃料の管理は同じこと。なお、排ガスのことを考慮して、エキマニからマフラーまでを保温し、触媒の取り付けを行っている
では、どのように管理すればよかったのか、と言うと理想的には、一度始動確認をしたら、ガソリンタンクを完全に空にし、沈殿カップを開けストレーナーも乾燥、もちろんキャブのフロート室からガソリンを抜く(ドレンプラグがある)。

燃料タンクからガソリンを全て抜くのはかなり面倒。タンクのドレンプラグが装備しているものもあるので、それを利用したいが・・・

ガソリンコックの下側には燃料のごみをろ過する沈殿カップが付いている。これを取り外して、中に残るガソリンも排出させる

キャブのフロート室にはドレンプラグがあるので、これを緩めて(取り外す必要はない)確実に排出させる

このようにすれば、次の始動でも、ガソリンを投入して1分ほど待ってフロート室にガソリンが満たされれば始動できる。

ガソリンタンクを空にする作業が面倒であるなら、燃料コックを閉めて沈殿カップの中とキャブのフロート室だけを空にし、ガソリンタンクにはガソリンを満タン状態とする。

燃料タンクの中を空にしなくても、沈殿カップをきれいにし、キャブのフロート室からガソリンを排出させ、タンクは満タンにしておけば、かなりの期間始動に問題は出ない。数年間以上始動させないのなら、やはり燃料タンクは空にしたほうがいい。我が家では空にしている。これはバイクも同様

ガソリンを満タンにする理由は、タンクから空気(酸素)を追い出して、酸化させないようにすることが目的。

この状態で、炎天下に放置しなければ1年後でも始動はできる。もっと雑な扱いとしてでも始動は可能なのだが、それにはリスクを伴う。

リスクを承知でやるなら(あまりお勧めしない)、それは、燃料のコックを開けたままにすること。こうすることで、フロート室から蒸発するガソリンを常に補う形となり、ガソリンカスの発生を抑制できる。

この状態での管理は、実際にバイクで友人がやっており、ガレージの中にあるため、ガソリンコックは開けたままで1年間は放置していても、ごく普通にエンジン始動が出来ることを確認している。

友人は、バイクのガレージ管理で、ガソリンタンクのコックを開けたままにしている。こうすることで、1年経過してもエンジンの始動は普通にできるが、リスクが大きいのでやらないほうがいい

ただし、フロートバルブやホースにトラブルが起きると、ガソリンが漏れ火事の原因となるので、常に保管状態を監視できるのでなければやるべきではない。

こんな心配をしなくてすむのがカセットガスコンロのボンベを使った小型の発電機。カセットガスの使用期間をとやかく言う方がいるけれど、我が家では数十年前に購入したガスボンベを、いまだにガスコンロに使用している。

2012年3月1日木曜日

エンジンオイルの選定をいい加減にしたり交換しないと、とんでもないことが起きる

エンジンオイルなんて入っていれば良いんだ、と言う考え方は通用しなくなっている

「グレードの低いオイルを頻繁に交換したほうが安く上がるし、きれいなオイルになるのでエンジンにも良い」、と言う考え方もダメ。

現代のエンジンはエンジンオイルに頼って性能を出すように作られているので、数十年前に言い伝えられていた「低グレードのエンジンオイルを早めに交換する」と言う話は通用しないし、「そのようなオイルの選択をしているとエンジンは異常に磨耗する」と言う話を、40年以上中古車の販売を行ってきた友人が話してくれた。

指定されたグレード以上のオイルを使い、指定された走行距離までに交換する必要があるのが現代の高性能(パワーだけではなく優れた燃費も)エンジンなのだ。

もちろん、指定された走行距離と言っても、その走り方で数字が変わってくる。一般的な使い方と、シビアコンディションという言い方の使い方に分けられるのだ。そして、高速道路を走る機会が多い、山坂が多い場合にはシビアコンディションとなる。

「オレは高速道路を走らない」と言う方も、一般道で速度を上げて走るなら同じこと。それはシビアコンディションで、一般的な走行指定距離の半分が交換の目安となる(取扱説明書に書かれていない場合もある)。

一般的に交換指定距離の走行数字は、10・15モード、或いはJC08モード走行程度の負荷状態を基準にしていると思ったほうがいい。

また、チョイ乗りが多い場合は、シビアコンディションよりも条件が悪いと考えたい。それは、エンジンが十分に暖まらない状態で停止、また走行して停止ということを繰り返すと、エンジンオイルは十分に温まらず、オイルの中に入り込んだ水分やガゾリン分が蒸発する余裕がないため、次々と溜め込んでしまう結果、冷間時にはオイルがグリース状となり、最悪の結果を招く。低グレードのオイルを使用した場合にも同様なことが起きやすい。

そのような状態となったエンジンを見つけたので、しっかりと見てほしい
どのような管理をしたのか定かではないが、とにかくすごい状態。実験で再現するにもまず不可能だろう。オイルメーカーはこのような画像を欲しがるだろう

オイル、いやグリースとも呼べる状態になっており、ヘッドカバーの中はグジャグジャ。カムやヘッドの締め付けボルトがどこにあるのか分からないほど。

別のエンジンでは、タイミングベルトは破断。普通はベルトの山が歯こぼれして、スリップするのだが、このエンジンはベルトが切れていた。
このように切れるタイミングベルトのエンジンは、エンジンオイルの交換がいい加減であることが多い

オイル交換を必要以上にまめにやる必要はないが、どのような乗り方をしているか、指定グレード以上のオイル(純正である必要はない)を使っているかが重要なポイントだ。

2012年2月21日火曜日

バッテリーの交換をアイドリングさせたままやる、とはとんでもないこと

絶対にやってはいけない作業

最近気になる話を聞いた。それは、バッテリー交換の際に、エンジンをアイドリングさせたまま行うと言うもの。

確かに、オルタネーターには電圧制御のレギュレーターが装備しているので(それもかなり優秀なやつ)、バルブ類が切れることはないのだが、多数あるコンピューターが不良となる可能性は大きい。

特に、電気用品の取り付けをしていると、その用品が不良となる場合もある。雑電流対策がされていないのだから当然だろう。

その原因は、電圧上昇ではなく、バッテリーが外されることで、それまで吸収(収束)していた雑電流の放出が原因と考えられる。
エンジンをアイドリングさせたままのバッテリー交換は、絶対にダメ

なぜこのようなことが行われるのだろうか。それは、バッテリーを取り外すことで、各種電気用品の設定が消えるため(純正用品も含め)、面倒な初期設定が必要となるからだ。パワーウインドウの挟み込み防止の設定も忘れてはいけない。これをやらなければ、その装置も作動しないので重要なこと。

どこからこのような邪道が行われ始めたのか考えてみると、それは、ディーラーなどでバッテリー交換をするとき、ユーザーがどのような初期設定をしているか不明のため(標準でもいろいろな電気用品を装備しているため)、元に戻す手間を考えたときに、「いいや、アイドリングさせたまま一瞬のうちにバッテリーの交換をすれば何とかなる」「後で文句を言われるのもいやだし」と言う状況があって、このようなとんでもなくリスクの多い作業をしているらしい、と聞いたことがある。

バックアップのバッテリーを接続しなさい、と言う指示があるはずだか。

これを見様見真似でバッテリー交換をユーザーがやるとき、エンジンをアイドリングさせたまま行い、とんでもないトラブルを引き起こしているようだ。
バッテリーのターミナルは、マイナス側から外す。そのほうがレンチをボディに接触させてもショートしないから。取り付けるときにはマイナス側を後にする 

初期設定を再度やるのが面倒だったら、バックアップ電源を作り(販売もしているし、ディーラーや修理工場でも使っているはず)、それをシガーライターソケットから送り込んでやればいいのだ。これで安心してバッテリーを外せる。

重要なのは、バックアップで使うバッテリーのプラス・マイナスを間違えないことと、イグニッションキーをラジオが聞けるACCの位置にしておくこと。

自作する場合、使用するバッテリーは、安全(容量)を考えて乾電池ではなく、鉛バッテリーを使いたい。

推薦するバッテリーは、完全密閉式の小型のもの。例えば、秋葉原の秋月電子で輸入販売される台湾製のLONGと言う銘柄などは、長期保存にも耐える、自己放電が非常に少ないもの。6ヶ月以上でも十分に容量が残っている。これなどお勧めだ。12V8Ahあたりを購入すればいいだろう。
完全密閉式のバッテリーをバックアップ用とする。他に使用していたものだが、性能低下が見られたので、別の用途に使っている。シガーソケットに差し込むプラグはホームセンターで購入

端子は平型の差込タイプであるが、大きな電流を流さない状態での使用であるなら、これを改造する必要はない。

バッテリーの管理としては、6~10ヶ月ごとに充電する。充電器はいらない、クルマのシガーソケットから充電すればいいのだから。普通に走りながら30分も充電すれば十分のはず。
確実に電気の接続が出来たかどうかは、イグニッションキーがOFFの位置で、ラジオやカーナビに電源が入っているかどうかで判断できる。接続不良はバックアップ不良となるので、シガーライターを使っていた場合には特に注意が必要

イグニッションキーはⅠのACC位置とすること。Ⅱのエンジン始動位置では余計な電流が流れるし、その位置とする意味がない。また、イグニッションキーの位置が0(OFF)でも、シガーソケットから電流を流すとラジオなどにも電気が流れるので、バックアップ出来たと勘違いしないこと。必ずⅠのACC位置であることを確認する

このようにしっかりとバックアップ用の電源を確保しておけば、安心してバッテリーの交換が出来るし、設定のやり直しをする必要もないので、間違いを引き起こすことがなくなる

2012年2月19日日曜日

走行音を発生しないクルマのサウンド対策が進むのだが・・・その2

前回は、ウルトラがエンジンサウンドシステムを発売したこところまで説明したが、そのシステムは、販売価格と耐久性ということから、スピーカーに要求されることが重く、どうしてもコーンを持たない、ツイッター(高音専用スピーカー)のようなものとなり、音質としてはいいものではない。
ウルトラのエンジンサウンドシステム、価格10290円。静か過ぎるクルマに装着すると、存在をアピールすることができるが、スピーカーの関係で音質が良くない。ウルトラのHPに掲載されている音よりも、実際にはもっと高音部が強調されている

そこで、何とかならないか、それもお金を掛けないで、と言う基本理念から、数十分でやれる音質改造に取り組んでみた。

金額を無視するなら、秋葉原で低音も出る、防水型のスピーカーを購入すればすむのだが、それでは意味がない。

基本的にはどんな音がするのか、オーディオ用のスピーカーを取り付け視聴する。確かに、それなりの音が焼きこまれていることがわかった。それをどのように引き出すかである。

付属のスピーカーで同様に視聴してみると、高音部だけが強調されて、耳が痛くなる。せめてこの高音部だけでもカットできないだろうかと取り組んでみた。
バッテリーを繋いでサウンドを聞く。やはりオーディオ用のスピーカー(後方右)から流れる音とは程遠い。もちろんこれでも有効ではあるのだが・・・

スピーカーから出た音を、何かで共鳴させ、高音部を減衰させながら、中音部を強調させられればいいので、共鳴ボックスを載せてみると、納得できる音質に変化していることが判明。ただし、使ったのは紙であるし、少し大きく不細工。
何か共鳴する装置はないかと考え、薄い小さなダンボールの箱を利用。音が入るような穴を開け、ふたの片方を開放し、それを付属のスピーカー上に載せると、高音部が減衰し(音の大きさも少し小さくなったが)、耳障りな状態から開放された

そこで、飲料水が入るペットボトルを短く切り、口のほうを上にして載せると、意外にも高音部が減衰して、何とか使える音になっている。
共鳴部分を造ればいいのだろうと判断し、ペットボトルを短く切断してスピーカーの中へ入れてみると、これがなかなかいい具合。アルミのボトルや口の大きなペットボトルも試したが、普通サイズでOKとなった

アルミ製や口の大きなものも試したが、どちらも音質の改善が十分ではなかったので、ごく普通の300ミリリットル入りのものがいい。

排水用の穴も必要で、それを適当に開けてから、100円ショップで売っている水性ペイントを刷毛で塗り、乾燥したら接着剤(これも刷毛とともに100円ショップで)で接続。ただし、排水のことを考えて、下側になる部分には接着剤を塗布しないこと。
排水用の穴を開け、ボトルの口を切り取り、100円ショップで購入した水性塗料を塗る(手元に黒がなかったので・・・)。乾燥したら数箇所に接着剤を塗布して組み立てれば終わり。排水用の穴がどこにあれば有効かを考えて取り付けること

なお、音がどのように変化したか、デジカメでムービーを取ってPCで再生したが、デジカメのマイク特性やPCに内蔵しているスピーカーでは、高音部しか出ないため、音の変化を聞き取れないことが分かったので、ユーチューブにはアップしていない。

2012年2月12日日曜日

走行音を発生しないクルマのサウンド対策が進むのだが・・・その1

EV、PHV、HVなど、モーターでの走行状態では、エンジンとは違う静かな音しか発生しないため、その存在に気づかず事故となることが考えられることから、国土交通省は2010年5月10日に“静音性対策を講じたハイブリッド・EVの体験会”を東京小金井の尾久自動車学校で開催した。

どのようなものかと言うことで、事前に申し込みをし、参加したのだが、目の前を走る実験車からは、インバーターが発するような、かすかな金属音がする程度で、とてもじゃないが役に立つとは思えないもの。
高周波の金属音で役に立つとは思えない状態。また、停止するとサウンドも消えるので、それでは視覚障害の方もそこにクルマがあると判断できない

その音に対する評価者として、視覚障害者の方を数十名現場に来ていただいていたが、これが大きな間違いである、と言うことを国土交通省の方々は気がついていないようだった。

視覚障害の方は、聴覚が非常に優れており(健常者より遥かに優れる)、いくら目が見えないからと言って、その方々の意見を参考にするのは大きな間違い。

十分な音か、或いは周波数はどうか、を検証するなら80歳近いお年寄りから意見を聞くべきである。

こんな状態で製造したエンジンサウンドシステムは、使い物にならないと言うことになって、一向に広まらない。

そこで、国土交通省の指針に合わせたものを永井電子(ウルトラ)が製造した。ただし、その指針が音の範囲を狭めているのは確かだ。

指針の内容は、興味本位の音はダメ(F1の排気音など、音の大きさが変化するもの、ブリッピング、人の声)など、つまり変化しない音と言うことになる。この状態でOKとなる音はかなり難しいようだ。

また、最近気がついたことだが、アイドリングストップしていると、当然エンジン音がないわけで、よそ見をしながら歩いてくる人は、そのアイドリングストップしているクルマにぶつかる、と言う事故は起きてしまう。そう考えると、アイドリングストップするクルマにも、擬似的にエンジンサウンドを発生するようなシステムが必要ではないかと思う。

次回は、永井電子製のウルトラ・エンジンサウンドシステムを検証し、もっと音が良くなる手法はないか、実験してみるつもりだ。

2012年2月3日金曜日

トウモロコシは食べるだけではなかったんだ

トウモロコシというと、日本では家畜の飼料かおやつに食べるぐらいにしか考えていないが、実は非常に奥の深い繊維質を持った種で、これをベースにいろいろ出来あがっている。それも日本では思いも寄らない、今でも認識していないような使われ方を、数年前からアメリカやヨーロッパの国では展開している。

ひとつはアメリカでやられていること。目的は日本と同じだが、そこに使われるものがトウモロコシを加工したものか、発泡スチロールを使ったものかの違いだ。当然日本は発泡スチロール。アメリカはトウモロコシ。では何に使われるのかというと、荷物を発送するときの、隙間を埋めるパッキング材。

だいぶ前のことだが、アメリカから送られてきた品物の中に詰められていたパッキングは、なんだかうす茶色で、発泡スチロールのように弾力性は強くない。もちろんビニール(違うかも)製の袋に詰められていることは同じ。そして、その袋には何やらプリントされている。そこには「食べるな危険とか、子供の手の届かないところに置くこと」などと言うことは書かれていなかったように思う。さらに見ると「・・・コーン」とか何とか読めるが、何を言っているのか、当時の英語力では十分理解出来なかったが、コーンはトウモロコシのことであるし「どくろマーク」も付いていない。

指先でつまんでみると、プチッとつぶれて何かを発泡させたものであることがわかる。臭いをかいでみるが、よくわからない。ポップコーンではない。しかし、「・・・コーン」と書いてあるのだから、トウモロコシがベースなのであろう????

数時間後には、一粒口の中に入れていた。すると、マシュマロのごとく、クニャクニャになり、しばらくすると溶けてしまった。これどういうこと。

アッそうか、発泡スチロールでは使用後の処分で環境問題が出るけれど、トウモロコシならその辺に捨てても土の養分になるから、処理は問題ない。そしてもうひとつ気が付いた。それは、幼児の事故である。つまり、発泡スチロール製のパッキング材では、幼児がいたずらして、口に入れた場合、気管に詰まらせて窒息死することがあるのだが、トウモロコシベースのパッキング材は、前記したように、口の中で溶けるし毒性はない。さすが環境やPL法にうるさいアメリカであると思った。

さらにもうひとつ、テレビで見た光景。フランスのあるチョコレートを作る会社でのこと。丸いチョコレートとするため、ベルトコンベア上には、凹みのある型が流れている。日本であったらおそらくこの型はPP(ポリプロピレン)だろう。でもそのチョコレートメーカーは、トウモロコシをベースにして作られた型を使っていた。チョコレートメーカーが型を作っているとは思えないので、規則でそうなっているのかどうか不明であるが、それにしても、日本の環境や安全に対する考え方には、大いに疑問が残る。

2012年1月27日金曜日

ピストンのフリクションをゼロにしたら どうなる?

ピストンのフリクションに対する研究はかなり進んでいると思うが・・・

 エンジンの効率を上げるため、各部のフリクション低減に対して躍起になっている状況は見て取れる。でも、フリクションをゼロにする研究はなされていないようだ。

ピストンのフリクションを低減するため、ピストンのスカート部分にはWPC処理や二硫化モリブデンコーティング(パターンコーティングもある)などやっているが、直接シリンダー壁とピストンスカートが接することを狙っての処理ではなく、オイルが介在するときの引き摺りを少しでも減らすように願うだけ。

言ってみれば、オイルを弾くような表面処理がなされることで、引き摺りを少なくしようと言うのである。

その昔は、条痕仕上げと言う表面加工で、僅かなギザギザ仕上げの部分にオイルを保持させると言うもの。この仕上げはディーゼルエンジンで始まり、数万時間使用された建設機械エンジンのピストンを見たことがあるが、シリンダーとピストンが接したような跡はどこにもなかった。

このようにピストンとシリンダーとのフリクションを低減してきたのだが、低減と言う研究だけで、フリクションをゼロにする、と言う研究はなされていない感じだ。コンピューターでシミュレーションしたくても、ベースとなるデータはない。

試乗会などで、エンジン開発担当の技術者と話しをするときに、ピストンのフリクションをゼロとした実験などやったことがありますか? と聞いてみるが「そんなこと考えてみたこともありません」の返事ばかり。そこで次のようなことを話す。

ピストンとシリンダー間のフリクションをゼロにして研究する方法は簡単。

実験に使用するシリンダーをボーリングする(STDから0.25mmオーバーでいい)。そして使用するピストンはSTD。ピストンリングは0.25mmオーバーサイズ。

これで普通に組み付ける。エンジンを始動してもピストンのサイドノック音は出ない。クリアランスが大きく、ピストンの振れている範囲をピストンリングによって抑えられてしまうからだ。

実験エンジンなので耐久性はなくてもかまわない。トップリングが燃焼熱にさらされて都合が悪いと言うなら、トップランド(トップリング溝からピストン頂面までの部分)だけ0.25mmオーバーサイズの、頭だけ大きなピストンを造ればいい。

短時間の実験が終了して、耐久テストに持ち込みたいのなら、ピストンスカート部分にピストンリングを追加する、サードリング方式を取り込めば解決する。ただしリングとピストンの形状でフリクションは増加してしまうが。

では、こんな馬鹿なことが現実にあるのか、と言うと、実は経験しているのである。

それは今から45年ほど昔の話。大学時代、当時のアルバイトと言うと、もっぱらバイクの修理や再生を頼まれてやることでの金稼ぎ。

エンジンからのオイル漏れ修理で持ち込まれたホンダ・ドリームC72(写真はホンダコレクションホールから)。このエンジンにはサイズ違いのピストンが組み込まれていた。それがとんでもない性能となって現れた。ものすごくダッシュするのだ。オーナーは、しばらく乗っていたがエンジンは非常に快調だった、とのこと。ピストンが小さくても、意外に耐久性がありそうだ。

あるとき、「修理屋に出したバイクだがオイル漏れがひどく直してほしい」と言う依頼があった。持ち込まれたホンダC72を見ると、シリンダーガスケットの不良なのか、オイルがいたるところから噴出していた。

エンジンを降ろしシリンダーヘッドを取ると、ピストンとシリンダーのクリアランスが異常に大きい。

シリンダーを外して確認すると、ボーリングしてあるようで、ピストンリングは0.25という刻印がある。しかし、新品に交換してあるとは言うものの、ピストンはSTDである。

これでは、サイドノック音が出てしまうので、ピストンはオーバーサイズに交換しますか、と言うことをオーナーに伝えると「いや、音は出ていなかったので、そのままでいい」と言うので、部品交換はせずに、ガスケット交換と液体パッキンの使用で修理。これでオイル漏れは完璧に治った。

さて試乗してみる。確かにピストンのサイドノック音はせず、普通のエンジンになっている。しかし、暖機するための空吹かしをやると、やけにレスポンスがいい。そして少しエンジンのメカ音も大きくなる。

ギヤを入れゆっくりと走り始め、バランスの取れる速度(4~5km/hぐらいだろう)を保ってから、アクセルをいきなり全開に。

すると、びっくり仰天の事態が発生した。何と、ドン臭いビジネスモデルのC72は、フロントを大きく持ち上げて数メートルのダッシュ。

そして、フロントが着地したときの衝撃のすごさ。サスペンションがボトムリンクでストロークが小さなバイクでは仕方がないことであるが、まさかの事態を予想できず、ビックリだけが残った。

当時のエンジンではピストンとシリンダーは接触していただろうから、ピストンリングの張力と相殺するのは難しいとしても、いかにピストンがフリクションとしてあるかの証明にはなるし、また、簡単にピストンのフリクションをゼロとした実験ができると言う話。

ここにもブレークスルーはありそうな感じである。

ピストンを取っちゃたらどうなるか、そりゃエンジンとして成り立たなくなる。そこから最低限のピストンの役割について考えると、今までの考え方が正しいのか。単純に、ピストンとシリンダーのクリアランスにこだわっていただけではないのだろうか・・・

2011年12月16日金曜日

CAN-BUSアダプターって何だ

簡単に言ってしまうと、これを使わないとクルマに電気用品が取り付けられない車種に対して、それを解決出来るというアダプター。

最近のクルマは、コンピューターが至る所に使われており、それに関わる配線は膨大なものとなる。さらにステアリング周りには数多くのスイッチが設けられるなど、ますます配線の量が多くなるのだが、これをこれまでと同じ方法で接続したのではトラブルの元。それだけではなく部品コストも増加する。

そこで考えられたのが通信による信号のやり取りで、電気製品の電源を制御したりエンジン制御へ送る信号の伝達として、CAN通信が採用されることになったのだが、これがクルマ好きにとってはうれしくない改良なのだ。

何がうれしくないかというと、エンジンコンピューターなどに入る信号線がなくなって、CAN信号線だけだからである。

これまでのエンジンコンピューターには、カーナビや回転計を取り付けるときに必要な信号として、スピードセンサー、エンジン回転センサーなどの入力線があったのだが、それがない。この状態では、何も取り付けられない。このような車種が軽自動車にまで及んでいるのが現状。

ある回路では電流量も制御に入っているようで、オーディオ回路からカーナビの電源を取ったら、オーディオのスイッチが入らなくなり、もちろんカーナビにも電気が流れない状況が発生するようだ。こうなったときには、その配線をはずして、バッテリーのターミナルを抜き、数十秒たってから接続すれば元に戻せるが、カーナビの電源は別から取る必要がある。しかし、ACCなどからとっても同様なトラブルが起きるので、対策が必要となる。

そこで登場したのが、CAN通信の信号を読んで、その信号を解析し必要な情報を取り出そう、というもので、それがCAN-BUSアダプターというわけだ。

取り付けは簡単で、OBDⅡ(オン・ボード・ダイアグノーシス・Ⅱ)という、トラブルを呼び出すスキャンツールを差し込むコネクター(アメリカが要求したもので世界的に共通したもの)へ差し込むだけのものと、OBDⅡからは電源を取りキャン通信線(HiとLoの2本)へエレクトロタップで接続するだけ。

キャン通信線は、OBDⅡコネクターの付近に(運転席側にありわかりやすい状態であること、という規則がある)クリクリと捻られた線が2本あるのですぐにわかる。

CAN-BUSアダプターから出力されるのは車速信号、エンジン回転信号、常時電源、ACC電源、イルミネーション電源、リバース信号、パーキングブレーキ信号で、リバース信号は最大200mA、ほかの電源は最大500mAであるから、大きな電流が必要なら、この部分を信号として使い、ダイレクトに電源から引いた線をリレーで作動させればいい。
左がアダプター本体。右にあるプラグはOBDⅡ端子に接続する。それによって必要な情報が取り出せる

2011年12月12日月曜日

エンジンルームから配線を室内へ引く方法はこれがいい


クルマに電気用品などを取り付けようとすると、物によってはエンジンルームから室内へ配線を引き込む必要が出てくる。

ところが、これが意外に大変で、メインハーネスのブーツを切り裂いて通したり、ステアリングシャフトの根元にあるブーツの間から引き込んだり、実に大掛かりな作業となる。しかも、失敗するとショートや断線にも結びつく。

そこで我が家では、ドアのウエザーストリップから引き込む方法を取っている。これが一番簡単で早く失敗がない。

どのようにウエザーストリップから通すのかというと、ウエザーストリップの上を通すのではなく、内側を通すのである。

現在のクルマは、ウエザーストリップを接着しているわけではなく、ボディにはめ込んでいる。つまり、いつでも簡単に引き剥がせる状況にある。これを利用する。

やり方は、ボディから引き剥がしたウエザーストリップの内側に配線を入れ、雨が伝わってきても室内へ流れ込まないよう、外側で一旦垂れ下がるように曲げておいてから室内へ入れ、ウエザーストリップで固定すれば終了。

たったこれだけ。もちろん太さが5mmもあるようなコードは無理だが、電流を多く必要とする場合は、細い線数本に分けて使えば済むこと。

太目のコードは、ウエザーストリップと直角に固定するのではなく、斜めに沿わせる形にすると、コードとウエザーストリップの嵌め込み部分にストレスが少なくなるので、浮き上がることもない。

早いし、楽だし、取り外すときにも跡が残らないので、この方法が絶対お勧め。
ウエザーストリップは簡単に引き抜けるので、このように配線を引き回す。水切りとして垂らす場所は、もっと上部でもかまわない。やりやすい場所を選んで確実に形を作ればいいだけだ
引き込む配線をボディに沿わせておいて、ウエザーストリップを嵌め込めんで固定すればそれで終了

またやってる、道路運送車両法保安基準違反の推進を


2011年のモーターショーも終わったが、気になるブースの展示を見つけた。それは、これまでにもあったことなのだが・・・

これまでにもあった問題点とは、クルマの前方に照射するライトの色についてである。最初がいつだったかはっきりしないが、確かモーターショーが幕張メッセに移ってから数回後だったと記憶している。

あるライトメーカーの展示ブースで、ヘッドライトの周囲に取り付けたパイプ状の青色リングライトが点灯するデモ機。これは明らかに違反行為なので、担当者を呼び消灯するようにアドバイスをし、一般公開時では点灯することはなかった。

しかし、時が流れ、デイライトの有効性が叫ばれ始めたとき、オートサロンに展示したある自動車メーカーの補助灯が青色になっていることを見つけ、ここでも消灯するようアドバイス。

両方ともショーに展示しているデモカーだから・・・と思われるかもしれないが、これを見た一般の方々は、「自動車部品や自動車メーカーが出しているんだから青色でいいんだ」という認識をしてしまうので、非常に問題だというのが私の見解。

デイライトの色が問題になり始めたとき、国土交通省のサイトには「デイライトの色に関するQ&A」があり、ここでは、「青色をデイライトに使っても違反にならないのか」という問いに対し「青色を禁止する項目はありません」という返事が書かれていた。

ところが、しばらくして「すみません、間違っていました。自動車の前方に照射するライトの色は透明(白色を含む)と淡黄色という道路運送車両法保安基準がありますので、青色は使えません」という訂正文が国土交通省の同サイトに載っていたが、すでに時遅しだった。

なのにまたである。メーカーとしてどうあるべきか、ということの認識を持たないと、同じ過ちを繰り返してしまう。今回は、気がついた時点で一般公開となってしまっていたため、後の祭りだ~~~
自動車の前方を照射するライトの色は法律で決まっているのだが、その認識を持たないと、どんな色でもかまわないことになる、たとえ赤でも・・・

2011年11月25日金曜日

2012年次RJCカーオブザイヤー顛末記


 今年のRJCカーオブザイヤー最終確認テストが、11月15日ツインリンクもてぎ内の周回路を利用して行われ、当日投票して結果が出た。

 当日は、事前に選ばれたシックスベストのクルマや技術が、ツインリンクもてぎのパドックに持ち込まれ、改めて試乗したり、開発者から話を聞いたりするわけだが、そのシックスベスト(6のノミネート)を選ぶにも、会員の気持ちとメーカーやインポーターのヤル気がその結果に繋がるのは当然だ。

 最後の確認試乗が開始される前のパドック。メーカーの関係者がミーティングをする風景も見られる

 そのシックスベストだが、テクノロジー(新型車に採用された新技術)は、マツダ・デミオのSKYACTIV-G 1.3、同じくマツダ・アクセラのSKYACTIV-Drive、日産リーフの電気自動車技術、トヨタ・プリウスαのコンパクトなリチウムイオンバッテリー、フィアット500/500Cに搭載のTwin Airエンジン、ボルボS60/V60に採用された歩行者検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキシステム。以上順不同

 インポート(輸入車)は、フィアット500/500Cツインエア、アウディA1BMW1シリーズ、シトロエンDS4、フォルクスワーゲン・パサート/パサートバリアント、ボルボS60/V60。以上順不同

 カーオブザイヤー(国産車、逆輸入車も含める)は、ダイハツ・ミラ・イース、ホンダ・フィットシャトル、マツダ・デミオ13SKYACTIV、日産リーフ、トヨタ・プリウスα、スズキ・ソリオ。以上順不同

 投票会場前には広報の方々が最後のお願いに集まる。しかし、ここで会員の気持ちが揺らぐことはない。一種のパフォーマンス?
 そして、もてぎでの最終投票の結果、選ばれたのは、テクノロジーがマツダ・デミオのSKYACTIV-G 1.3。インポートがボルボS60/V60。カーオブザイヤーは日産リーフだった。

 この結果は、予想通りというのが会員大半の意見。つまり、メーカーやインポーターの広報活動が影響を与えているといっても過言ではない。

 テクノロジーはマツダデミオのSKYACTIV-G 1.3に決まる。圧縮比14と言う数字を具現化した技術が評価されたのだ。実用燃費も高い

 インポートはボルボS60/V60に決まる。特別強い個性を持たないが、時代を先取りする安全技術などが盛り込まれたことも評価された

 もちろん、問題のある技術やクルマに対して、どこかの国のお役人ではあるまいし、裏取引で票集めをしたわけではない。どうしてもRJCのカーオブザイヤーが欲しいという気持ちが、試乗会や技術の説明会を頻繁に開催する。RJC会員に対して見識を持ってもらいたいがためである。その見識を持って「投票願いたい」、という気持ちの表れが、結果に繋がったのだ。

 まだ未完成(充電インフラや、道路環境など多いと思う)と言われるEV市場で、日産リーフがカーオブザイヤーとなったのは、三菱のi-MiEVが市販されたときにカーオブザイヤーが採れなかったことから、同様なリーフがそれを採るのはおかしい、という批判もあるだろう。しかし・・・

 当然のことだが、私の評価はどちらも同じ。以前のi-MiEVに対しても最高点を入れたし、リーフも同様に最高点を入れた。

 時代を牽引する技術やクルマに対しては「差別なく評価する」。そして、それができる見識は重要であると思っている。

RJCカーオブザイヤーは日産リーフ。三菱i-MiEVから具体的に始まった電気自動車へのシフトは、世界規模へと動き始めた。専用設計のボディによる性能は実用性を高い方向へ導いている

2011年11月6日日曜日

ブレーキ不調の原因は、フルードの混合にあった


知り合いのメルセデス。最近中古で購入したものだが、当初からブレーキの不調を訴えていた。それは、走行中のブレーキングで後輪がいきなり効いたままになったり、駐車場から出そうとすると、走り出しが重かったりという現象。それもしばらく放置するとそのトラブルが消えてしまう。

何が悪いのか、「一度見てやるから自宅に持っていらっしゃい」、という話をしておいたら、やってきました翌日には。
 
エンジン停止の状態で、ブレーキペダルを数回踏んでみると、ブレーキブースターにはバキュームがなくなっているにもかかわらず、踏み応えが優しい。つまり、まるでブースターが作動しているかのように、フワフワした感触がある。これは、ブレーキエアが入っていると判断し、早速エア抜きを開始する。

フロントはブレーキペダルを踏むたびにブレーキ液がブリーダープラグから(少し足らない感じだが)排出される。

ところが、リヤにおいては一向に排出されない。バキュームポンプを使って引き抜き作戦を試みたが、それでもブレーキ液が吸引される気配はない。試しにブリーダープラグを締めて、ブレーキの踏み応えを確かめると、なんと感触ゼロ。踏み代がひとつもないのである。 これこの通り、目
の前にマスターシリンダーがあり、ブレーキパイプのフレアナットを緩めるにも、ブースターからマスターシリンダーを取り外すにも、苦労はしない。

そのときの状態をリザーバータンクの液面で見ると、ブレーキペダルを踏んだときには液面が下がり、ペダルを放すと元の液面に戻る。つまり、ブレーキ液はマスターシリンダーとブレーキパイプ、ブレーキキャリパーまでの間を行ったり来たりしているということになる。

ここで思い当たるのは、息子のハーレーでブレーキパッドを交換したとき。リヤブレーキのパッドを交換し、いざブレーキペダルを踏んで踏み代を出そうともがいたが、一向にパッドはローターに当たらない。よく見ていると、ブレーキペダルを踏むとパッドが押されるが、ブレーキペダルを放すと、パッドが元の位置に戻る。

これは、ヒョットするとブレーキ液の混合があったのかもしれない、という判断の元、マスターシリンダーを分解してみると、ピストンのカップは膨潤して大きくなり、カップの役目をせずリングの作動となっている。

本来ならピストンが戻るときにカップとシリンダーの間をブレーキ液が通過しなければならないわけだが、それが出来ていない。更に、ブレーキペダルを放したときに必要な、ブレーキラインの残圧を逃がす、コンペンセーティングポート(リターンポートと解釈して良い)もカップで塞がっていた。

この原因は、ブレーキ液の品質違いを混ぜたこと。ハーレーはシリコン系を純正としているが、日本国内で普通に流通しているのはグリコール系。このふたつが混じるとゴムは膨潤してトラブルを起こす。

 マスターシリンダー分解では、スナップリングにスナップリングプライヤーを引っ掛ける穴がないので、シリンダーの一部を削り、小さなマイナスドライバーを差し込んで、こじり出した。分解考えていないのかな~。

市販のブレーキ液には「このブレーキ液はグリコール系。シリコン系や鉱油系との混合は禁止」と表示してある。更に、「自動車用非鉱油系ブレーキ液」と書いてあるはずだから、これをしっかりと守ることが重要。

ブレーキクリーナーなどで洗浄すれば、シリコン系のブレーキ液を使用していたものに、グリコール系を使っても膨潤は起きていないことから、変更するために専用のカップやシールの必要性はないようだ。

以上の経験から、メルセデスも同様な状態にあるのではないかと、マスターシリンダーを取り外し(国産車よりもやりやすい)分解してみると、ピストンにはめ込まれているカップは3個とも、フニャフニャで使える状態にない。リヤのオイルシールも膨潤し、まともな状態ではない。
 この通り、すべてのゴムカップは膨潤してフニャフニャ。カップ状態とならず、シリンダーの中ではどちらからの圧力も受けるリング状態となってしまう。これではブレーキ液を送っても、引き戻す作用が起きて、使い物にならない。

マスターシリンダーの構造がこれまで分解したものとは違うので(国産車ばかり。ハーレーのブレーキも日本製)、ブレーキ液の流れや作動状態を把握するのに時間がかかったが、ブレーキペダルを放した後の残圧を逃がす、コンペンセーティングポートの構造が大きく違っていることに気が付いた。

日本製は、ピストンのカップが通過するシリンダーに、リザーバータンクと繋がる小さな(1mmぐらい)穴があり、ブレーキペダルを踏むとカップはその穴を通り越して油圧が発生し、ペダルを放すとカップとシリンダーの間をブレーキ液が流れて、キャリパーから戻るブレーキ液の遅れ分を補う。ペダルが完全に戻る瞬間、コンペンセーティングポートとリザーバータンクが繋がり、マスターシリンダーの残圧はリザーバータンクへ戻る。
 問題はカップだけではなかった。コンペンセーティングポートの作動が壊れていた。
国産車で使われているものでは、写真のようなところにあるのがコンペンセーティングポートで、この図は少しブレーキペダルを踏んだ状態。ポートはカップが通過することでリザーバータンク繋がりがなくなり、油圧を発生させる。ピストンが戻るとコンペンセーティングポートとリザーバータンクは繋がるので、残圧をリザーバータンクへ戻す。

このコンペンセーティングポートが正しく作動しなければ、ブレーキラインの残圧は残り、ブレーキが効いたままとなってしまう。

ブレーキトラブルのメルセデスは、シリコン系とグリコール系のブレーキ液が混合されたことで、ゴムが膨潤した。それにより、パッドが摩耗しても必要なブレーキ液は送られず、まるでエアを吸い込んだ状態となったばかりではなく、ブレーキペダルを踏んで出来た液圧の開放ラインが閉ざされてしまい、リヤのブレーキが効いたままとなる状態が発生していたのだ。
 メルセデスに使われていたピストンをよく見ると、なにやら見慣れぬ構造がある。リヤ側(手前)ピストンには、直角に開いた穴にグラグラ動く四角い棒が取り付けられている。フロント側のスリットは、ピストンの動きに対応するものだが、その中を見ると、何か出張っている。ドライバーで押してみると、ピコピコ動き出たり入ったりする。弱いスプリングが組み込まれているようだ。リヤ側も同様な作動なのだろうが動きは渋い。これがコンペンセーティングポートの役目をする部分で、ピストンが押し戻されたときに、この細い棒が押し込まれ、通気状態になり減圧されるのだ。この作動がトラブルを起こしており、どの状態としても通気しなかった。


リヤのブレーキに関わる部分の膨潤がひどかったのは、リザーバータンクの構造が関係する。つまり、フィラーキャップの位置が、リヤブレーキを受け持つ側(後方)に付いていたため、ブレーキ液補給のとき主にリヤ側に混ぜてはいけないブレーキ液が入り込んだからだ。

部品を注文しようと近くの部品商へ電話してみると「本国オーダーとなり一ヵ月半かかります」との返事。さーどうしようか、と思案していると、メルセデスのオーナーは「自宅に別のメルセデスから取り外したマスターシリンダーがあるので、それが使えるかどうか調べます」という。

ネットで注文した中古品は形が違って使えず(かなりいい加減な業者だ)。「そういえば・・・」で思い出したマスターシリンダーがピタリと合って、翌日にはブレーキトラブルは解消した。

ガソリンに浸すと大きく膨潤するので、内部のシリコン系ブレーキ液が排出されないかと、数分浸けてから天日干ししたが、完全に元へは戻らなかった。


 メルセデスのW202Cクラス。V6エンジンを搭載する。ボンネットが直角に開くため、ブレーキのマスターシリンダー脱着はとてもやりやすい。