研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2022年6月16日木曜日

水素エンジンは今始まったことではない。トヨタ以前にマツダのほうが先んじていた

 

地球に優しい燃料として水素が話題となって、トヨタはその水素燃料で耐久レースに出場し、完走したことで話題を集めたため、水素自動車=トヨタと言う図式があたりまえのようになっているが、日本で水素を使ったクルマの実験や走行をやったメーカーはマツダで(それ以前にBMWが水素ガスで燃焼させる実車事件をやった。またその後、液体水素を使って燃焼させる実験もやったが、水素を液体で貯蔵することの難しさがあって中止)、燃料電池車としての開発が盛んに行われていた時代、その水素を如何に貯蔵するかは各メーカーのテーマで、今では高圧タンクを使用することで一件落着してしまったが、マツダの場合は『水素吸蔵合金』なる物を開発し、これに水素を溜めて使用することにした。

ただし、当時の水素吸蔵合金は、吸蔵させるのに高温高圧状態が必要で、実用性が乏しかったのだが、最近はこの条件も緩くなりかなり低い温度と圧力での吸蔵ができるようになったらしい。

さらに、同社のロータリーエンジンは、水素との相性がよく、バックファイアと言う、ピストンエンジンでは問題となる現象も起きず、非常にマイルドで、力強い走りが可能となった。

実際に水素ロータリーの試作車を運転させてもらったときには、静かでスムーズな走りに感心した。直ぐにでも実用か出来そうにも思うが、そのロータリーエンジンを、直接動力として使用するのではなく、レンジエクステンダーの発電機エンジンとして使用するような話をしていた、その後どうなったのだろうか。ニッサンのeパワーなどのシステムのほうが実現性は高く感じる。

一時期は、排気量の小さなRE開発を重点的に行っていたはずだが、その後どうなったのだろうか?

小型REの試作エンジンを見せておらったが、ローターが鉄で以前のRE同様。さらに、ソーターハウジングも、内側にはこれまでのRE同様、鉄のタガを鋳込み、そこに硬質クロームメッキを施し、メッキ後に逆電流を流し、多硬質状態として、潤滑オイルを確保すると言う、これも旧態依然。つまり、単に排気量を小さくしただけで、技術的発展は見られない。

ローターを軽いアルミ合金とするだけではなく、ハウジングの内面に対する加工も、これまで多くの2ストロークエンジンが採用してきた、ニカジェルメッキ(ニッケル・シリコン・カーバイト)などを使用すれば、耐摩耗性が向上するだけではなく、耐焼き付き性も格段に向上するので、排気ガス中に含まれる環境汚染も低減できる。

また、数十年前には、武蔵工大、日野自動車、岩谷産業がシステムを共同開発し、ディーゼルエンジンをベースに(点火の関係でスパークプラグを取り付けている)、液体水素での実験走行に成功している。

但し、液体水素は極低温での貯蔵が条件であるため、燃焼が可能となる水素ガス状態とするのに手間がかかるという説明を聞いた。ガスバーナーで水素が通るパイプを加熱し、ガス化を促進する必要があり、水素ディーゼルとしての実験は成功したが、いざ実用化するにはまだハードルが高いらしい。

何回も言うが、液体水素は非常に安全で、これを燃焼させようとすると、いくら着火させようとしても、簡単には液体からの水素が蒸発して、酸素(空気)と混ざる時間がないうちに、水素は軽いのですごいスピードで上昇してしまい、その間にとどまらないため、着火には至らないらしい。

例え、無理やり着火させたとしても、着火している火の熱カロリーは、液体水素を素早くガス状態にするには無理という。液体水素を容器に入れ、ガスバーナーで加熱したところに着火させても、チョロチョロと穏やかに燃焼するだけ、と言う話だ。