研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2010年12月14日火曜日

ポイント式点火装置のメンテナンス その②

その①では、普段定期的に行う必要のあるメンテナンスを含めて取り上げたが、今回は、そのメンテナンスの最中に不都合な部分を見つけた場合どのようにするか、ディスビを分解しながら解説したいと思う。

不都合箇所として出やすいのがポイントの焼損や異常な磨耗。その原因には要求電圧がプラグギャップの磨耗で高くなったことやコンデンサーの不良、各接続端子の抵抗増大などがあるけれど、コンデンサーが取り付けられているとは言っても、ポイントは開く瞬間に僅かなスパークが起きるわけで、少しずつ焼損は起きてくる。これを防ぐには、セミトラ(永井電子などに商品がある)を採用するしかないが、使用する点火コイルは、純正であることを要求される。

ポイントの焼損がひどければ、取り付けられた状態での耐水ペーパーによる磨きは不可能。取り外して接点部分を確認し、オイルストーンで研磨するか、新しいものに交換。オイルストーンによる研磨は、様子を見ながら少しずつ行わないと、傾いたまま研磨することになるが、そうなったらベース側か羽側(カムで動かされる側)をネジって、中心が接するように矯正する。ポイント面の理想は中心が接していることだからだ。

バキューム進角がスムーズでなかったら、バキュームホースの亀裂などないか確認する。もちろんバキュームが作動するダイアフラムは、漏れがないことは重要だが、ダイアフラムから伸びる作動ロッドの先に繋がるベースプレートが、スムーズに回転しなければ意味がない。ポイントの焼損でオイルストーンによる研磨が必要な状態だったら、ついでにベースプレートを取り外して、回転の動きに問題ないか確認したい。

ぎこちない回転であったら、錆やグリース切れなどが考えられるので、十分に洗浄してから、ベアリング部分へ少量のグリース(耐熱グリースかリチウムグリース)を塗布して解決する。

このような症状が出ているときには、遠心ガバナの作動もスムーズではないはず。ベースプレートを取り外した内部を目視すれば、錆とその汚れが付着して、全体の動きに渋さが出ていることを予想できる。ポイントカムと一体となったガバナアッパー部は、中心に見えるボルトを取り外せば引き抜けるが、シャフトとの回転をスムーズにするため、上下に薄いシムが入っているので、扱いには注意が必要。

外したポイントカムは、汚れと錆などを除去するため、400番の耐水ペーパーで周囲を磨き、耐熱グリースかリチウムグリースを少量全周に擦り込む。多すぎるとグリースが飛び散ってポイントを汚し点火不良の原因となる。

ガバナの動きがスムーズではない原因のひとつは、ガバナピンとカムプレートのスリット間の渋さにある。ここのグリースが固着して段付磨耗のような状態を作り出しているため、スリットのピンが当たる側を耐水ペーパーで研磨してやると効果的。仕上げは耐熱グリースかリチウムグリースを少量塗布する。着けすぎると飛散して動きが阻害される原因を作ることになる。

全ての作動を確認して組み付けたら、ポイントのギャップを0.45mmとする。シュクネスゲージを使えばより正確になるが、使い方をマスターしないと不正確この上ない状態となるので、隙間から引き出すときの抵抗がどのくらい必要なのか、あるいは抵抗を感じてはいけないのか、何回も確認・調整して正しい値を求めることが重要。

最後は点火時期の調整だが、点火タイミングマークは見難いので、ホワイトマーカーなどで印を付けたほうが良い。エンジンを始動させて、進角状態の確認でも、最大進角位置にマークをつけておくとハッキリと確認することが出来る。

クランクをレンチで回し、イニシャル点火時期にマークを付けたら、その位置に固定。イグニッションをONにし、ディスビの締め付けボルトを緩めてディスビを左右に回して、コイルコードからスパークがある位置で止める。

コイルコードをディスキャップへ戻し、1番シリンダーのプラグコードへタイミングライトのセンサーをクランプ。センサーの感度によっては隣の点火信号も拾ってしまうので、できるだけプラグ近くで信号を取るようにする。

エンジンを始動し、点火時期を確認すると共に正しい点火時期となるよう、ディスビをゆっくりと動かして調整。進角状態の確認では、スロットルバルブを僅か開いたときに大きく進角し(バキューム進角が最大となる位置)、そこから更にスロットルを開くと、一旦進角が元に戻ってから、エンジン回転上昇と共に進角して行けばOK。


.焼損の激しいポイントは取り外して修正するか交換。修正ではオイルストーンで研磨するが、それには慣れが必要。

.オイルストーンでの研磨。平行に研磨できるようになるのは経験が必要。でも、傾いて研磨した場合では、羽側(鉄板が薄い)を曲げて矯正すれば良いだけ。ポイントが合わさっているときに、お互いが平行であれば良いのだ。もちろん、様子を見ながら少しずつ研磨するのは当然。

.取り外したベースプレートの動きを点検。ここは二重のプレートとなっており、ベアリングを挟んで回転する構造。回転と言っても10度ほど動くだけなので、どうしても異物が溜まりやすい。

.ベースプレートの構造には各種あるが、このクルマでは鋼のバネ力によってボールを押し付けているので、どうしてもその部分が汚れやすい。しっかりとパーツクリーナーなどで洗浄し、ボール部分へグリースを塗布して動きをスムーズにする。

.ベースプレートを取り外した内部を見ると、長い間メンテナンスがされていなかったことを物語る光景がある。これではガバナ進角としての役目が、十分発揮されていなかったことは想像できる。点検で、ディスビのローターを握って捻ったときの感触がその状況を物語っていた。

.ポイントカムを取り外したら、とりあえずカム全周の研磨を400番の耐水ペーパーで行う。その後、リチウムグリースなどを擦り込むように塗布する。ガバナピンの入るスリット部分も、固着しているグリースを耐水ペーパーで研磨するように磨き上げる。

.ガバナウエイトの動きやガバナスプリングの状態などを点検し、パーツクリーナーで洗浄した後十分に乾燥させ、問題がなければポイントカムのスリット部分にリチウムグリースなどを少量塗布して組み付けるが、このときに入るシムを忘れないように。

.組み付けたらクランクをレンチで回しポイントが一番開く位置にして、ポイントギャップの調整を行う。0.45mmという数字は、目視で何とかできるともいえないので(出先の現場ではそれで十分だが)、シュクネスゲージを使用するが、ポイント接点から、あるいはカムの谷とポイントヒールの間から、どのくらいの力で引き抜ければ良いのか、何回か調整して正しいギャップを求めること。

.点火時期を確実に調整するには、どうしてもタイミングライトが必要になる。しかし、タイミングライトでタイミングマークを見るのは難しい(特にこのクルマのようにフライホイールにタイミングマークのあるものでは)ため、予めホワイトマーカーを使って印をつけておくことが望ましい。

10.ディスビの締め付けボルトを緩め、イグニッションをONとしてから、コイルコードからのスパークで、イニシャル点火時期を求める。これは、あくまでもエンジンが始動できる状態を作り出すことであり、そこで点火時期を決めるわけではない。

11.タイミングライトのセンサーを1番シリンダーのプラグコードへクランプしてエンジン始動。アイドルでの点火時期を調整してから、エンジン回転を上下して、進角状態を確認する。エンジンを停止しディスビの締め付けボルトを締めて終了。

12.点火時期マーク(正しくは上死点マーク)は一般的にクランクプーリーにある。その場合には、タイミングギヤケース上の角度数字は読めるが、プーリーにあるマークの切り欠きが見えないので、この場合にもホワイトマーカーで印を付けたい。

2010年12月9日木曜日

ポイント式点火装置のメンテナンス その①

簡単な機構で点火プラグへ火花をスパークさせるポイント式点火装置は、メンテナンスが重要で、それを怠るとエンジン始動不能と言う状態にまで発展するが、例えそうなっても、ある程度いじれる人がいれば、簡単な手当で回復させることが出来た。それほど簡単な機構が、長い間使われてきた理由かもしれない。電子点火装置が当たり前となった現在では、現場での回復は不可能である。

その①では快調にしておくメンテナンスなので、火が出なくなったと言う想定はしない。普段から調子良く使うためには、どのあたりに注意して様子を見ておくべきかについて述べてみる。その②では、問題を見つけたときの対処を取り上げたい。

.まずディスキャップだが、取り外して外観の検査。これは、ひび割れやプラグコードの差し込まれている部分に対して行う。ひび割れがあれば交換だが、プラグコードの差込部分に出来てしまった白あるいは青い腐食は、パーツクリーナーで洗浄し、出来れば接点復活剤などを塗布する。内部ではセンターピースの状態を見る。スプリングにより押し出される形にあるので、スムーズに出入りするか、指で押して点検。ローターから電気を受け取るセグメントも破損がないか、異常な磨耗はないかを点検。ギザギザの磨耗は清掃しないでそのままにしたほうが、電気のロスが出ない。

.ローター側の点検では、セグメントに配電する先端に異常磨耗がないかを点検。この先端のギザギザ磨耗も、そのままにしておくほうが、電気的ロスを防げる。

.ポイント接点部分の点検を行う。マイナスドライバーで強制的に開き、両方の接点に異常焼損がないか目視する。同時にポイントヒール(カムが当たる部分)の磨耗点検や、カムに僅かなグリースの塗布なども考える。塗りすぎるとポイントの汚れる原因になるので注意する。

.ポイントに焼損があるときには、400番の耐水ペーパーを二つ折りにして磨く。短く持ち往復のストロークを小さくしないとペーパーが折れ曲がる。磨く回数は10回往復をペーパーの位置を替えて2回行う。耐水ペーパーは100円ショップやホームセンターで売っている。

.磨き終わったら、綺麗なボロキレにブレーキクリーナーを染み込ませ、ポイントに挟んで引き抜き磨きカスや油分を除去する。この作業は2~3回やる必要がある。油分が残っているとスパークしない原因となるからだ。

.ポイントのギャップ量も重要項目で、正式にはこのようにシュクネスゲージを使って、0.45mmとするのだが、1.0mmの半分と言う判断でもOK。直接ポイントにシュクネスゲージを差し込むのではなく、ポイントが最大に開く状態としてから、ヒールとカムの低い部分のギャップを測っても良い。この方がポイントを汚さなくて済む。狭すぎるとポイントの開くタイミングで切れが悪くなり、特に始動時ではスパーク性能に影響する。また、広すぎると、高回転ではIGコイルに電気を流しておく時間が短くなるため、スパークエネルギーが低下し、ミスファイアの原因となる。

.ポイントを開閉するカムシャフト(ローターシャフト)は、常に同じタイミングでポイントを開くことが重要となるので、この部分のガタは全ての性能を大幅に低下させる。めったに磨耗するものではないが、360度の方向へ揺すってガタのないことを確認する。

.点火装置にはエンジンの回転上昇に併せて点火時期を早める装置がある。それが遠心ガバナで、ポイントカムの回転方向へねじり、軽い力で数度動いてから手を離したときに、素早くスムーズに元の位置へ戻ることが重要。これがスムーズに作動しないと、素早く正しい点火時期が得られず、燃費や加速性能に影響する。

.点火時期の進角には、エンジン回転数と関係するガバナ進角の他に、エンジンの負荷を検出して、それに併せた進角を行う装置がある。それがバキューム進角とかバキュームアドバンサー、あるいはオクテンセレクターと呼ばれるもので、スロットルバルブの開閉角度とエンジン回転数によるバキューム量で進角幅を決めるもの。上側の写真は進角していない状態(作動確認の小さな突起が突き出している)で、ホームセンターで販売されている工作用の注射器などを使い、キャブに差し込まれているホースを抜き取って、注射器に接続し、注射器のピストンを引いてバキュームを造ったとき、突起が引き込まれればOK。また、その状態が保持できれば内部のダイアフラムに破損はない。口でくわえて同様な確認も出来るが、あまりお勧めできない。この作動はエンジン始動中にアクセルを少し開閉してみると、突起の出入りが確認できるはず。
              

10.ポイントからコイルまでのコードを途中で繋いでいる場合には、その接続部分も磨いて電気のロスを防ぐことが必要となる。意外に忘れられている分部なので、よく注意して観察したい。

11.点検が終わったら点火時期の確認。クランクシャフトを回して、基本の点火時期マークをあわせたら、次にディスビの固定ボルトを緩め、ディスキャップからコイルコードを引き抜き、アースとコード間でスパークの確認できる状態としてからIGキーをONとし、ディスビをゆっくりとローターと逆の方向へ回し、プラグコードからスパークが起きたところで、ディスビの固定ボルトを締めて終了。スパークが起きなければ、すでにポイントが開いていると判断し、ローターの回転方向へディスビを回し、ポイントを閉じてから、逆方向へ回してスパークするところを探す。


フィアット500の点火時期調整

2010年11月21日日曜日

ポイント式点火装置について考える

 現在では新車に使用されているクルマもバイクもない、というものがポイント式の点火装置だ。しかし、フルトランジスター点火装置に取って代わるまでの長い間、全てのガソリンエンジン(ガスエンジンも)では、点火プラグのスパーク用として、重要な点火時期と、高電圧を発生させる手段の役割を持たせていた。

 全てが機械的に作動するため、当然磨耗したり汚れたり、エンジンの燃焼ということからすると、トラブル発生の元になっていたのがポイント式点火装置だった。しかし、ポイント式でもポイントの焼損を防ぎ、安定して長持ちさせるセミトラ(ウルトラ製ばかりではなく自動車メーカーも一時期は採用した)が登場すると、メンテナンスではかなり楽になってきたが、機械的な部分は相変わらずメンテする必要が残っている。

 改めてポイント式点火装置の構造と(構造を知るとメンテも理解できる)メンテナンスについて書いてみたいと思う。

 クルマでは多気筒ということもあり、ひとつのイグニッションコイルから高電圧を分配するディストリビューターがあるけれど、その部分に対するメンテナンスはほとんどない。ポイントカム軸に差し込まれるローターの先端と、ディスキャップ側のセグメントにスパーク(電気の分配では接触するわけではない)による焼損があっても、ヤスリ等で磨いてはいけない。見てみぬふりに止める。

 何故磨いてはいけないかというと、点火プラグに限らずスパークは先のとがった(角になった)部分で行われることが知られている。そして、焼損しているローターとディスキャップのセグメントは、スパークによってギザギザ(つまり先端が無数にできている)に磨耗している。それは、スパークするために必要な要求電圧が少ないことを意味する。よって、せっかく条件が整っているのに、それを放棄してはもったいないからだ。

 定期的にメンテが必要な部分はポイントの接点で、セミトラでなかったら数千キロに一回は接点を点検し、荒れていたら400番の耐水ペーパーを二つ折りにして、ポイントに挟み、20回ほど往復させて磨き、その後ポイント面の油分を落とす。

 大きく焼損していた場合には、ポイントを取り外して、オイルストーンを使って研磨するが、傾かないように研磨することが重要だ。また、ベース側は平らにして、羽側は中央が少し高くなるように研磨すると、長持ちするようだ。

 メンテナンスはポイントそのものだけにとどまらない。遠心ガバナを使用した進角装置が正しく作動するかの点検も重要で、これはローターを持って、回転方向へねじった後、手を離して素早く元に戻ればOK。この作動がスムーズでないと、エンジン回転と燃焼開始のタイミングがベストにならず、パワーや燃費が低下する。

その他にも有るのが、オクテンセレクターというバキュームを利用した進角装置。点検ではキャブ側もしくは別のホースを使って、ディストリビューターに取り付けられているダイヤフラムを口で吸ったとき、ポイントベースがローターの回転方向と逆方向へ移動し、舌でホースを閉じていれば、進角状態が保持できれば問題なし。もちろん作動に抵抗感がなく、スムーズであることは重要。



1.これは単気筒の点火装置でデモンストレーション用として造ったものだが、バッテリーと繋ぎ、ポイントを開閉すれば、点火プラグにスパークが発生する。これを使って基本的な部分の説明をする。
              

2.クルマの(4気筒)ポイント部分。ポイントは一つで開閉するカム山は4個ある。これだけでは点火プラグへ高電圧を配分できないので、ディストリビューターなる分配装置がこの上側に付けられる。
              

3.ディスキャップとローター。ポイントカム軸にローターを押し込み(位置決めの切り欠きがある)、ディスキャップを被せる。ディスキャップ内の4箇所ある突起がセグメント。この部分は荒れていても何もしないことがベスト。
              

4.ポイントが荒れていたら、400番の耐水ペーパーを二つ折りにしてポイントに挟み、折曲がらないように力を加減し、場合によってはポイントを閉じるバネを戻しながら、20回ほど往復させる。ポイント面の焼損がある程度綺麗になったら(磨いたようにはならなくてもOK)油分を除去するため、パーツクリーナーなどを含ませた厚手の紙を挟んで引き出し終了。
              

5.ポイント磨きが終了したらポイントの最大開き幅(ポイントギャップという)の調整をする。これが正しくないと、エネルギーの高いスパークが得られない。ギャップの寸法は0.45mmというのが基本だが、1mmの半分ほど、と覚えておけばいい。最後は点火時期の調整をやる。
              

6.ポイントが大きく焼損し、取り付けられた状態ではどうにも処理が出来ないようなら。ポイントを取り外してオイルストーンで研磨するのだが、これはかなり難しい。というよりコツが必要。自分でやるなら、何回もトライして覚えるしかない。
              

7.ポイントの組み立てでは、羽側は絶縁するという構造をしっかりと理解すること。特にボルトとベースが接触しないようブッシュが入っていること忘れないように。
              

8.これがポイントベースの下側に装着されている遠心ガバナ。回転することでガバナのウエイトが遠心力で開き、カムを回転方向へ回す。この部分での進角幅は大きくないが、クランク軸とは1/2に減速されているので、進角量は2倍となる。ガバナの動きがスムーズで、ガバナスプリングが装着されていること。
              

9.青色のホースがオクテンセレクター作動用のバキュームホース。ここへのバキュームは、スロットルバルブが開き始めてから作用するようになっている。つまり、スロットルバルブとキャブのベンチュリー部分で起きるバキュームを利用する。目的は、エンジンの負荷に合わせた点火時期を得ること。スロットルが大きく開けばバキュームは低下するので、この部分での進角がなくなりノッキングを防ぐ。軽負荷ではバキュームが強く働き、進角幅を最大にする。これで燃費を稼ぐ。
              


ウルトラのポイントレスキット組み付け方法。対応車種がある。また、これだけで点火装置が完成するわけではない。他に専用のイグニッションシステムが必要

 

2010年11月7日日曜日

プラグコードの抵抗値を測る、ついでに点火プラグの抵抗値も

プラグコードと点火プラグには、雑音防止と言う観点からある抵抗値を負荷している。ただ、プラグコードにカーボンコードと称するものを使用していると、長さによって抵抗が違うため、その値はバラバラ。

その抵抗を、長さに関係なく一定としたものが、ウルトラのシリコンコードで、プラグキャップとディスビ側ブーツ部分にそれぞれ1kΩ、トータル2kΩの抵抗を取り付けている(ブルーポイント・パワーコードは0.5kΩ)ため、安定した点火エネルギーを供給できる構造。さらに純粋のシリコンゴムを使っているため耐候性に優れ、経年劣化が少ないことも特徴。

カーボンコードでは長さ1mで約20kΩ程の抵抗を負荷しているので、長さによる違いが、プラグのスパークエネルギーに、微妙な影響を与えている、と考えても不思議ではない。

「流れる電流地が非常に小さいので、抵抗は関係ない」と考える方もいるが、少しでも性能を阻害するファクターを排除したいと考えるなら、一定の抵抗のほうが望ましいはず。ちなみに、点火プラグに掛かる電圧は普通点火方式で15000V(CDIであると45000V)程だが、実際にはこの電圧に達する前にスパークが開始されるため、最大電圧は電流に置き換えられ、点火エネルギーが増大する。

現在では点火プラグも抵抗付きが標準で、以前は抵抗無しや、ギャップ内臓と言うものも有ったが、ギャップ付はプラグのスパークエネルギーが大きくなる反面、要求電圧が高くなる(=コイルの発熱なので、高くならない程度とメーカーでは言っていたが)ばかりでなく、雑音が多く発生するため、現在では製造されていない。

 
1.ウルトラのシリコンコード抵抗を測ってみると2.01kΩ(ファンクションスイッチは20kΩ)。0.01kΩオーバーは接触誤差と判断して差し支えない数字。プラグキャップ部分に1kΩ、ディスビ側ブーツに1kΩを加えている。


2.手元にあったカーボンプラグコードの抵抗を測ってみると10.41kΩ。長さは約50cmだった。


3.約30cmの短い方を測ると7.13kΩで、3kΩ以上の差がある。この差がどう出るのかは、判定が難しいけれど、誤差のないほうが良いに決まっているのは確かだ。


4.プラグに負荷している抵抗を測ってみると、意外なことが分かった。旧タイプの日立製は抵抗無しの000Ω。


5.同様な時期に造られたNGKでは、導通なしであることから、ギャップ内蔵型であることが分かる。目的から考えると、おそらく抵抗は負荷していないだろう。


6.使い古した白金のR(抵抗)付では4.04kΩ。相場は5kΩと言うことになっているが、どうやら違うようだ。使用状態を考慮したものなのか。


7.新品のバイク用R付きタイプでは5.82kΩの抵抗。点火方式がCDIと言うことを考慮したのか、何かの機会に聞いてみたい。



ウルトラのシリコンコードについて、永井電子より

2010年11月3日水曜日

ノーマルのポイント式点火装置をセミトラに改造するときはここに注意

1970年代後半まで当然のように使われていた点火方式はポイント式だった。ベーシックなポイント式点火装置において、点火タイミングとイグニッションコイルに誘導発生させる接点は、そのポイントが開く瞬間に数百ボルト(閉じている間は12V4Aほど)の電圧がかかり、コンデンサーを取り付けても、常にスパークが発生し、ポイント接点を劣化させ、強いては点火エネルギーの低下ばかりではなく、点火時期が狂って性能悪化からエンジン始動不能まで、あらゆるトラブルの引き金になっていた。

現在では当たり前になっているポイントレスのフルトラ点火方式だが、旧車をポイントレスのフルトラやCDIに改造することは出来なくても、ポイントを保護し強力で安定したスパークを維持させることが出来る。それが、ポイント接点を有効活用したセミトラと称する点火方式だ。

取り付け方式は非常に簡単で、説明書通りに接続すれば良いのだが、その前に重要なことを整える必要がある。それは、使用するイグニッションコイルについてだ。純正のコイルか、あるいはセミトラに改造する前から使用し、ポイント焼けなどのトラブルを起こしていないコイルなら問題ない。でもやりがちなのが「この際だから強力なコイルに交換しておこう」、と言うパターン。

まずこれはダメ。と言うのは、強力なコイルとセミトラが電流的にマッチングしていないということが多いからだ。イグニッションコイルには1次側にも2次側にも内部抵抗があるのだが、1次側ではその抵抗値が外付け抵抗と合わせて、3Ω前後必要とされている(外付け抵抗なしの場合も3Ω)。

もちろん1次抵抗をテスターで計測し、3Ω前後あることを確認出来ればそのコイルを使用することに問題ないが、閉磁型(モールド型)と呼ばれるコイルでは1Ω程しか1次側に抵抗値がないので、ポイントに流れる電流は15A近くとなり、ポイントが焼けてしまう。

セミトラに改造したときに、このようなコイルを使用すると、コイルが大きな電流を要求する形となり、取り付け直後は問題なく始動できても、短期間でポイントではなく、イグナイターユニットが不良となる。

点火系のエネルギーを高くすれば、エンジン性能は上がるが、クルマによっては不具合なども発生するので、取り付けるクルマがどのように造られているか、十分に理解しておくことは重要。

例えば、タコメーターが動かなくなったり、キャブのアイドルカットソレノイドに通電できず、アイドリングしないと言うことも事例としてある。タコメーターに関しては回転感知方式がいろいろあるので、どこに繋げば良いのか、あるいはその対策はないのか、ということは不明だが、アイドルカットソレノイドを装備しているクルマでは、その構成を理解していれば、簡単に対策出来るはずだ。

なお、ポイント仕様の純正イグニッションコイルが入手できないのなら、イグナイターとイグニッションコイルが一体となった、ウルトラのNo8900などを入手して、それを取り付ける。これなら安心してセミトラ点火方式に変更できるだけではなく、点火エネルギーも純正コイルを使用するより高いため、エネルギー効率に優れる。

1.ポイント式点火装置をトランジスター点火装置に変更するウルトラのセミトラ。この点火装置を使用するときに注意したいのは、イグニッションコイルの1次側抵抗値である。


2.抵抗を計測すると、このコイルの場合(純正品)3.0Ω。外付けの抵抗を合わせてであるが、トータルの抵抗が重要なので、これで十分。


3.輸入品のコイルでももちろん対応しているものはあるが、純正のイグニッションコイルを使用することが大原則なので、そのことはしっかりと頭に入れておきたい。

4.手元にあるコイルに装着されている外付け抵抗は1.2Ωの刻印がある。ほとんどの外付け抵抗には抵抗値が刻印されている。抵抗が小さいため、計測するときの接触抵抗で誤差が大きくなるからだ。


5.抵抗や電位差を計測するにはデジタルテスターが便利。クルマ専用のアナライザーでなくても、ホームセンターで購入できるもので十分。計測できる抵抗最小値は200Ωぐらいが便利。1000Ω(1kΩ)では小数点以下が表示されないため、僅かなところで、確認できないことがある。



6.使ってはいけないイグニッションコイルが、この閉磁型と呼ばれるタイプ。

            

7.もし手元に純正のイグニッションコイルがないのなら、このように、セミトラのイグナイターと一緒になった物を選ぶしかない。ウルトラのハイパー・イグニッション・システムNo8900は、イグナイターとコイルをベストマッチングさせているので、強力な火花が得られる。



ニッサン・TSサニーのシェイクダウン

2010年10月28日木曜日

電装用品取り付けで理解しておきたいACC、B、IGとは何?

カー用品店などで販売されているカーナビや、各種メーターなどの電装用品では、必ず作動させるための電気配線が必要で、取り付けるクルマに引き回されている配線から、それらを分岐して取り出す必要があるのだが、作動させる用件に合ったものを何箇所かから取り出すことが必要になる。

その部分と言うのがACCであったり、あるいはIGと言うことになるのだが、この言葉(略語)の意味を理解していないと、配線を間違えてクルマのコンピューターを破損させたり、バッテリー上がりを起こしたりのトラブルや、せっかく購入した用品が使えなかったりして、クルマいじりが楽しくなくなる。

もちろん自分で取り付けるのでなければ心配は要らないが、人任せでは納得できなかったり、装着手数料をかけたくない、となったら、リスク承知で自分でやるしかない。そこで知っておきたいのが、ACCIGと言う文字だ。

取り付け説明書にある言葉としては、例えば「橙線をACC回路に(あるいはACC電源に)」、「赤線を端子に(あるいは常時電源に)」、「黄線をIG回路に」、「黒線をグランドに(あるいはアースへ)」、と言うような書き方をしている。グランドやアースは分かりやすいが、これとてボディに配線する場合、既存のボルト(クルマメーカーが電気配線用として使っている)に締め付けることを選択する方が確実。

話が少しずれてしまったが、ではACCとは何か。これはACCESSORY(アクセサリー回路)のことで、イグニッションキーを一段階ひねったときに通電する回路のこと。一般的にラジオやカーナビ、シガーライターなどが作動する。つまり、イグニッションキーと連動した回路となる。エンジンは始動しない回路だが、この状態で長時間止めとくとバッテリーは上がる。

ACCのないクルマも過去にはあったが、最近はそのようなクルマはない。これも過去の話だが、エンジンが始動する位置にキーを回さなければラジオが聞けなかったり、キーの位置とは関係なくラジオが聞けたりしたクルマも。このクルマでは、ラジオを消し忘れると、バッテリーが上がった。特に、地下の駐車場へ入れたときには要注意のクルマだった。

端子(あるいは常時電源)とはBATTERY(バッテリー)のプラスへという意味で、これは、常に電気がほしいと言うことを表している。電装用品の設定を記憶させておく電気となるので、ACCに繋ぐと、作動は正常であっても、キーをひねるたびに初期設定が必要となってしまうから、使いにくいのは当然だ。

IG回路とはIGNITION(イグニッション回路)のことで、エンジンが始動しているときに通電する配線を意味する。IG回路では当然ACCも繋がった状態となる。ただしセルを回す回路では、ACCやヘッドライトに関わる部分の通電を切って、エンジン始動にバッテリーのエネルギーを全部使うように設計されているので、一時的にヘッドライトが消えたり、カーナビやラジオがリセットされたりするが、トラブルではない。

では、電装用品の電気はどこから取るのが良いか、という話になると、これはかなりややこしい。それは、クルマによって違うからだ。ヒューズボックス(室内側にある)から取れる場合もあるし、ステアリングのコラムカバーを外し、イグニッションキーの根元から取らなければならない場合もある。

しかし、最新のクルマで制御関係を通信(この条件が成立しなければ意味がない)で行うものでは、ウルトラのCAN-BUSアダプターなるものを装着すれば、そこから簡単に信号や電気を取ることが出来る。

メーカーごとの専用となるが、その信号取り出し場所は、OBDⅡ(オン・ボード・ダイアグノシス・バージョンⅡ)カプラとCAN通信線。OBDⅡはアメリカの基準だが、大半のクルマには、このカプラが装備されている。なおOBDⅡについては、ここでの説明を割愛する。

もちろんOBDⅡカプラが付いているからといって、全てのクルマにCAN-BUSアダプターが装着できるわけではない。自分のクルマで使用できるかどうかは、ウルトラ(永井電子)に直接聞いたほうが良いだろう。

電装用品取り付けにおいて国産車ばかりではなく、配線を理解しにくい輸入車では、カーナビなどの取り付けを行う場合、どこを分解して、どこに配線を接続すれば良いか苦労するが、このCAN-BUSアダプターを装備できるクルマなら、そこから全ての信号と電気を取ることが可能となるので、電装品の取り付けが非常に楽になると言えそうだ。

1.イグニッションキーのシリンダー部分には、このように0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの刻印がある。0はキーが抜ける位置、ⅠはACCでラジオなどを聴くことが出来る、Ⅱはエンジン始動状態(IG回路が繋がる)のとき、Ⅲがセルを回す位置で、手を離すとⅡの位置まで自然に戻る。



2.ウルトラのCAN-BUSアダプター。クルマの制御にCAN通信を使っている最近の車では、このアダプターを取り付けることで、電装品の装着がとても簡単になる。電気回路ばかりではなく、信号も取り出せるのだ。



3.CAN-BUSアダプターはOBDⅡのカプラとCAN通信線に取り付ける。そのOBDⅡカプラがこれ。運転席側の手が届くところで、露出して取り付けなければならない、と言う規制があるので、簡単に探せる。



4.基本配線図を見ると、クルマの電装用品を取り付けるときに要求される、全ての信号と電気が、ここから取り出せるようになる。また一部のメーカーは、OBDⅡカプラへの接続だけで、CAN通信線への接続なしで要件を満たすことが出来る。



インパネ外しは大変だ

2010年10月24日日曜日

レストアした昭和43年式スバル1000スポーツ?!を見に出かけた

富士重工のスバルには、1000cc水平対向エンジンを搭載したセダンと、そのエンジンをベースにした(ソレックスのツインキャブ)2ドアのスポーツが存在した。

中学校時代からの友人が、このスバル1000スポーツを、後生大事に所有していて、60歳を過ぎてからレストアに出し、走れる状態にしたと言うので、見に出かけた。(と言うより、ケチを付けに出かけた)

そういえば、そのスバル1000スポーツは、エンジンが調子悪くなったとかで、数十年前、その後乗っていた1300Gのエンジンに乗せ換えたはず。オリジナルのエンジンは、どうしたのだろうか、そのあたりも聞いてみたい。

友人宅を訪ねると、ガレージに入っているスバル1000スポーツは、風雨の被害がなかったため極めて状態が良い。錆の発生や色あせなどもほとんどなく、磨いたらきれいになったとか。もちろん全てを整備して、車検を取り、走れる状態である。ま~ここまでよくやるな~という感じだ。

ボンネットを開けてエンジンを確認すると、やはり1300Gのエンジンが載せられている状態。クラシックカーミーティングなどにも参加しているため(もちろん自走して会場に入る)、点火系には気を使っており、プラグコードはウルトラのシリコンコードに交換してあった。

1000スポーツにも使えるように、標準より1mm細い7mmのコードとしながら、1300Gで使うディスキャップへの差込部分のダストブーツを特別に取り寄せたそうだ。点火装置もウルトラのセミトラを取り付けている。確実に燃焼を行わせるだけではなく、ポイントの劣化を防ぎ、長期に渡って安定した性能を期待できることから、本気でこれからも乗る気であることを想像できる。

では、肝心の1000スポーツ用のエンジンは、というと、さすがにオーバーホール(というよりリビルド)をしなければならない状態となっているため、知り合いのレストア屋に出しているそうで、自宅では見ることが出来なかった。次のクラシックカーイベントでは、リビルドした1000スポーツのエンジンを、エンジンスタンドに取り付けて、展示しようかと言う目論みもあるそうだ。

 
1.友人宅のガレージに収まっている昭和43年式のスバル1000スポーツ。ボディ周りには手を加えていないようで、特別光り輝いていないのが、歴史を物語っていて親近感を覚える。



2.フロントグリルには、スポーツであることを証明するエンブレムが、しっかりと取り付けられている。


3.メッキ部分などには錆もなく、もちろん再メッキした様子もない。全体的になんとなくくたびれているが、それが時代を生き抜いてきた証拠でもある。今の尺度で見ると、恐ろしくこじんまりとして「当時はこんなものだったのか」、と改めてドライブに行ったときを思い出した。


4.でも、確かエンジンは載せ換えたと聞いている。ボンネットを開けてエンジンはどうなっているか見た。すると、やはり1300Gのものが載っていた。1000スポーツなら、ツインキャブのはずだし。エアクリーナーは、1300Gオリジナルであると「でかくてみっともないから」、適当なものに変更したらしい。


5.点火系には手を入れたようで、赤いプラグコードから、ウルトラのシリコンコードであることが分かる。よく見れば、プラグコードは太さ8mmではなく7mmを使っている。7mmは1000スポーツ用のプラグコードだが、ディスキャップ構造が違うため、どちらにも使えるようにダストブーツを特別に付けてもらって、1300Gのディスキャップにも使えるようにしたらしい。



6.点火装置もウルトラのセミトラへ変更したようだ。ポイントのメンテナンスサイクルが長くなり、かつ点火プラグへのスパークも安定して強くなるので、旧車には打ってつけの点火装置といえる。


7.当時のスバルでは、コストを無視した取り組みをしていたことがよくわかる。それは、ブレーキの構造にも見られる。一般的には、ブレーキがホイール側に来る構造だが、スバルは、インボードディスクを採用した。つまり、ブレーキのディスク(ドラムの場合も)はデフ側にあり、メンテナンス性は良くないが、バネ下重量は軽くなって、路面とタイヤの追従性に優れる。現在では、極一部の特別なスポ-ツカーにしか見られないこの構造が、普通のセダンにも使われていたのだ。


8.また、合理的な構造もある。それは、ヒーターとサブラジエターと言う関係。つまり、メインのラジエターに繋がるもうひとつの小さなラジエターがあり、そこには専用のファンを装備。夏は、ダクトを開放してファンを回し、エンジンの熱を放出。そのためメインのラジエターにはファンがない。冬は、サブラジエターのダクトを締めて、ファンをマニュアル操作し、熱を室内に引き込む。素晴らしい発想と言える。


スバル1000、昭和42年のCM