研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2020年8月23日日曜日

新型エンジンの造り方を見て、これまでにない設計に唖然としてケチをつけた⑮



整備でヒューマンエラーが起きない、起き難いクルマを設計製作していたT社が発表した新型車は、オイルフィルターが交換しづらい場所にあった。

そのメーカーのクルマを数多く取材に使い、「さすがに世界で認めるだけのことはある」といつも感心していたが、あるとき???

それは、定期的に交換しなければならないエンジンオイルのフィルターが、特別な方法でないと見えるような形に取り付けられていないことだった。

オイルフィルターは、ボンネットを開けても見えないし、ハンドルを大きく切っても見えない。

一部のメーカーでは、シリンダーブロックのラジエター側に取り付けられていたり、ハンドルを右にロックまで切って、そこからタイヤハウスの中を覗くと、目の前にフィルターが取り付けられている、と言うほど交換性が良かったのだが、その問題となっているクルマは、シリンダーブロックの後ろ側に取り付けられており、ピット作業かジャッキでクルマを持ち上げ、そのクルマの下にもぐらなければ手が届かない位置にあった。それはまるでFWD初期のモデル(RWDレイアウトのエンジンを流用していた)のような状態だった。

発表会ではT社のエンジン開発担当者が居なかったので、その詳細を聞くことは出来なかったが、試乗会に呼ばれたときにはエンジン開発担当者と会う機会があり、なぜこのようなレイアウトになったのかしつこく聞いてみた。

というのも、そのメーカーのクルマ開発では、整備性が重要項目であり、自社評価の100点主義を旨としていたからだ。

そのことは、これまでの取材の中で、直接整備性を検証する担当重役から聞いていた。「とにかく自社が決めている100点が重要で、他のメーカーと比べた場合、ある一箇所が劣っていたら、設計変更を要求する」と言う厳しいものだった。

この組織は、サービス技術部とは違うもので、あくまでも市場でのメンテナンス時に、ヒューマンエラーが起きない構造であったり、余計な作業を必要としない構造を要求していた。

とにかく扱いやすく、人間(ディーラーのメカニック)のやることを信用していないと言うか、当てにしていないような設計と製造が各所に見られた。

そんなことを重点にしているメーカーから???のエンジンが出現したので、開発担当にしつこく迫ってみたのだ。

「貴方の会社が作るクルマは整備性が優先されていたはずだが、なぜこのような構造となったのか」。整備性評価グループから指摘はなかったのか。

すると、そのうるさい組織は当然知っているわけで、「その組織の担当者の全てがOKの印を押しているのです。当時はコストも関係したと思います」。と言う話だった。

現在は、そのエンジンに対する評価がどうなっているかは知らないが、雑誌の編集をやっているときに、読者からいろいろ質問が来る。その中で、どのメーカー、どのクルマが整備初心者にはお勧めか、と言う問いに対しては、T社のファミリークラスを勧めたほどだ。