研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2018年6月13日水曜日

ニッサン・セレナe-POWERの回生制御で、バッテリー充電重視の快適とはいえないプログラムに疑問


ニッサンは、エンジンで発電機を回し、そのエネルギーによりバッテリーへの充電や走行用モーターを駆動することで、クルマを走らせるシステムを構築し、手始めにノート(ノートe-POWE)でそれを達成。燃費性能と動力性能、クルマ購入のコストバランスの点からかユーザーが増えた。

確かに結果としてはそうなるのだが、果たして快適にドライブが楽しめる穏やかな回生状態なのかと言うと、とてもそうは思えない。特に最新のセレナe-POWEの回生制御がすごいことになっていると感じる。

何がすごいと言うのかと言うと、アクセルを戻したときのクルマの慣性力を利用する回生(この力をバッテリーの充電に使う)ブレーキである。ベーシックなガソリンエンジン・マニュアルミッション車のエンジンブレーキに相当する減速状態で、確かにクルマを減速させることについては、非常に有効で、慣性力を生かしたことはハッキリとわかる。しかし・・・その強い減速状態が乗員を不快な思いにさせる、と言っても過言ではない。

この制御にはノーマルモードとe-POWEドライブと言う2つがあり、さらにe-POWEドライブには加速力の異なるSモードとECOモードがあり、希望走行状態を選べることになっているが、問題は加速力などではなく、減速時(アクセルを離したとき)の回生ブレーキがどのような強さで、更にその回生状態がどの時点で作用し始め、最大となるのは何時なのか?である。

e-POWEドライブを選択すると、アクセルから足を離したとたんに急減速。体が前のめりになるほどに強い。バッテリーへの充電を重視してのプログラムなのだが、いくら燃費を良くしても、快適性が失われたのでは意味がない。

どのような感じなのか例えを考えてみたら、例えばMT車で2速走行しながら速度を高め、60キロぐらいになっていきなりアクセルを離したときの強いエンジンブレーキ。これで不快に感じない乗員はいないだろう。

そして、このような状態になることを嫌うドライバーは、その強い減速が起きないようにドライブしようとすると、アクセルペダルを踏み込むときには、いつものクルマと同じでいいのだが、アクセルペダルから足を離すときには、それこそサーボモーターでの制御のように、スムーズにバランスよく右足の向うずねに神経を集中させながら(この操作はかなり足が疲れる)力を抜いていかないと、乗員(運転手も)を不快な思いにさせてしまう。

では、普通のCVTエンジンモデルと同じような制御だ、と言うノーマルモードではどうなのだろうかというと、バッテリー残量が少ない状態だと(メーターがあるので判断できる)回生制御が、強くはないが働いて、アクセルペダルから足を離したとたん体が前方へ持っていかれる。それでも、バッテリーの残量が80%以上になると、さすがにオナカ一杯になるようで、回生制御はほとんどなくなり(普通のドライバーだと、その違いには気付く人は少ないだろうが・・・)、これなら合格の制御と言える。でもこれだとバッテリーへの充電が思うようにならないのである。

ノーマルモードでは、恐らくバッテリーへの回生充電が十分ではなく、燃費に大きく影響するのだろう。だからといって、アクセルを離したとたんに最大に回生充電が開始されるのは、快適とはかけ離れた状態。走行速度とバッテリー残量、クルマの総重量(その時々で変化する)により、どの減速タイミングから回生量を大きく立ち上げ、それによりスムーズに減速させることで(例えばMT車であればいきなりクラッチを接続させるのではなく、エンジンブレーキを有効に使う場合でも、エンジン回転の上昇具合と減速の状態を考え、クラッチを繋ぐのだから)、ドライバーに負担をかけないような制御が求められる。燃費さえよければそれで良いんだ、と言う人にはどうでも良い話だが。

また、走行性能には関係ないが、走行時の静粛性が高いことは賞賛に値する。ただしその理由の解説をしているレポートがどこにもない。防音材を多用したからという言う話だけではなく、大きな点は、ボディの床下に配置したモーター駆動用のバッテリ-によるものであると言うこと。バッファーが大きくなったので、走行騒音と振動はここで減衰するのである。
一部の騒音対策みたいな状態となり、そこばかりが静かでも、もぐらたたき状態で、別なところからの騒音が目立つので、対策が大変だったと言うが、エンジンからの騒音(特に加速騒音)対策から比較したらたいした話ではないと思う。