FWD車のフロントアライメントで、トーをアウトとする絶対的な理由
ヨーロッパ車における素晴らしく高速直進性のいいFWD車で、なぜそのようになるのか、これまで考えても見なかったが、あるとき、イタリアのフィアットを整備していて、とんでもなくおもしろい状況を発見した。それは、バックするとフロントの車高が低くなる現象である。前進方向では、この逆でフロントは持ち上がる。
なぜこうなるのかを考えながら、ホイールを外してみると、サスペンションアームに秘密があった。ストラットのそのサスペンションは、ロアアームが一見Aアームに見える。しかし、よく観察すると、そのアームは2本が組み立てられており、接合部にはゴムブッシュを使っているため、前後方向への自由度が非常に高い。
加速では前側にスピンドル軸が移動しようとする。しかし、ホイールアライメントのトーを僅かにアウト方向とすることで、タイロッドによりホイールは、トーがそれ以上アウトにならないよう規制を受け、その結果、フロントサスペンションを引き下げるような働きになり、速度を出せば出すほど、フロントは沈み込む力が加わり、高速安定性が高くなる。
この作用を無視して、フロントのトーをニュートラルかイン側にすると、非常にみっともないスタイルで走行することになる。つまり、タイヤの前側がつぼまる力を出すことにより、フロントは大きく浮き上がろうとするからだ。
高速道路で安定しやすい1代目、2代目ゴルフも同様で、アライメント屋で日本車のようなトーに調整されてしまうと、街乗りでは日本車のようにナチュラルでも、高速道路になると、ふらふら状態で、これも当時の日本車のごとくである。さらに、センターコンソールへ入れてある小物が、スタートの加速で手前に滑り出る。つまりフロントが大きく持ち上がっているのである。
ところが、このようになるゴルフでも、フロントのトーを僅かにアウトとすることで、高速安定性の素晴らしいヨーロッパ車へ戻るのである。もちろん、コンソールから小物は滑り出ない。
このようなことから、我が家にあるクルマは全て(息子のクルマも)、フロントホイールのトーを僅かにアウト側にしている。FWDではない、スズキのエブリイでさえ、昨年末の車検時にテスター屋さんでサイドスリップを計測したとき、スリップ量はアウト2mm(規制では±3mm)だったが、これは計算していたこと。
RWDでさえ、僅かにフロントのトーをアウトとすることで、走行安定性が高くなる。もちろん高速走行ばかりではなく、加速、制動時にも同じことが言える。