研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2014年11月24日月曜日

トヨタが発表したFCV(燃料電池車)「MIRAI」は、FCの特性とバッテリーのいいところを先取りしていた


6月に説明会を受けて出した内容は、FCとバッテリー(ニッケル水素は正しかった)によるレンジエクステンダーだと考えたが、実は判断が少し甘かった。

それは当然のことで、大きなバッテリーを搭載するわけではないので、EV走行がメインということはありえない。そうなると、ハイブリッドで、エンジン+発電機の代わりに燃料電池(発電装置)からバッテリーとモーターへ電気を送るシステムだということがわかる。

プリウスのようなハイブリッドとも違って(それは当然。エンジンではないので直接駆動力を生むわけではないのだから)、あくまでもモーターによる走行となる。バッテリーだけでの走行が可能なのはプリウスと同じだ。

では、搭載するニッケル水素バッテリーは何に使うのかというと、発進・加速時など大きな電流を必要とするとき。その要求される電力を燃料電池から一気に取り出すと(発電させると)、負荷変動が大きいため燃料電池にダメージが加わる。

燃料電池の耐久性が損なわれるから、このようにして、直接燃料電池からの発電電流だけを使用して走行していない。数十年前の試作段階では燃料電池からの電流を直接モーターに与える方式を取っていたので、少しアクセルに対する反応も遅かったが、駆動用バッテリーが搭載されれば話は違う。

アクセルを踏んだ瞬間の電流をバッテリーが請け負い、そこに燃料電池からの発電電流を加えることで、更にモーターを回す電力が生まれ、加速力が増す。

搭載するニッケル水素バッテリーは2.5リッタークラスのハイブリッド用を流用しているそうだ。そのバッテリーを効率よく充電するために、FC昇圧コンバーターを取り付け、燃料電池で発電した電気を650Vに昇圧する。

リヤシートとトランクの間に駆動用のニッケル水素バッテリーを搭載する。水素ガスボンベはトランク内とリヤシート下側
 
高電圧によるモーターの小型高速回転型は最新のプリウスと同じ考え。これによって、燃料電池スタックのセル数を少なくすることが出来て、コストの低減が成り立った。

販売価格は670万円(消費税抜き)。消費税込みだと723万6千円。販売台数は2015年末までに400台だが、2014年11月18日現在、確定注文代数は、自治体、大手企業がほとんどで、一般からの注文は少ないという。販売開始は2014年12月15日だ。

全てが手作業での組み立てになるため、生産台数は非常に少ないようだが、これで近い将来、現在のハイブリッド並みに普及させることが出来るのか疑問に感じてしまう。

ところでトヨタが発表会を行う前日の11月17日に、急遽説明会を行ったホンダは、翌日発表されたトヨタのシステムと販売価格について、どのような感想を持っただろうか。ホンダが搭載するバッテリーにこだわって、リチウムイオンを使えば、コストは高い。

そして、燃料電池から駆動バッテリーに充電する方式だとしても、その電圧をどこまで高めるのが高効率なのか、高電圧モーターとして回転数を高くし(回転を高くすると消費電流が少なくなるので、その分トルクは小さくなるのだが・・・)、それをギヤで減速することにより駆動トルクを稼ぐ方式は、ホンダとしては実績が薄い。

トヨタの場合プリウスでの実績は、このようなところにも生かされているが、ここまで来るのにどれほど右往左往したことか。しかし、その右往左往した部分がトヨタの場合でもFCVに全て当てはまるとは限らない。完成形は多数のユーザーの手に渡って、ありとあらゆる使われ方の試練を受け、それからであるような気がする。

また、トヨタは水素ステーションについて、国の方針に沿ったものとしているが、ホンダは違う。スマート水素ステーションを、さいたま市に設置した(これまでアメリカでは太陽光パネルなども使って実験的に行ってきた)。

ホンダ独自のコンプレッサーが不要な高圧水分解システムを採用したもので、圧力は35MPa。車両のボンベ最大圧力の半分ほど。インフラ整備も大事だが、その前にクルマが巷に出なければ、そのインフラは誰のため?