NISSAN360会場には、特別なクルマも用意されていた。それが、リーフの動力系を流用して作られた「リーフRC」だった。
パワートレインは同じだからモーターの出力は80kW(107hp)。トルクは280N・m。バッテリーも同じものを使用しているので24kWhと言うことになるが、そのほか全てが違うのは当然のこと、と言っても過言ではない。
ボディ周りはレーシングカーであるから、目的志向は強く、サーキットでの走行しか計算していないので、大きなリヤウイングを装備し、全長は20mm長い4465mm。全幅は172mm広い1942mm。全高は333mm低い1212mm。そして車重は595kg軽い925kg。
また、前後重量配分と重心位置を理想なものとするため、バッテリーパックはシート後部のミッドシップへ。インバーターとモーターなどの駆動系はリヤに配置している。ここまでやってポテンシャルを引き上げていれば、ドライバー次第で、性能は十分に引き出せることは請け合いだ。
実は、このリーフRC、2011年のEVフェスティバルに展示されており、会場の筑波サーキットで広報の方に「乗せて」と、冗談半分に話をしていたのだが、それが現実になったことに若干興奮していた。
リーフRCに乗り込むには、着脱できるステアリングのおかげでそれほど難しいことではないが、レーシングシートのバケットは、しっかりと腰回りをサポートしてくれるようになっているため、そこに滑り込ませるには、多少の無理を強いられる。
フルハーネスのシートベルトは、アメリカ日産の方が装着を手伝ってくれるため、手間がかかることはない。ベルトを引き締めてから、更にシートスライドを前方へ移動させることにより、確実にシートに固定される。これで準備万端。
もちろん2ペダルで、左足でのブレーキ操作がしやすいように設計されているのは、ATのブレーキペダルを、基本的に左足で踏む私にとってはうれしい限りである。
そして、万が一のことを考えて、助手席には関係者が同乗。更に、テクニカルなコースでは、ナビ的に曲がる方を指し示してくれる。シート高が低く、コースは白線を引いたところもあるため、何処が走行ラインなのか、見えないこともあるからだ。
ゆっくりスタートラインに着くと、すぐさま“GO”のサインが出る。
ここぞとばかりにアクセルは床まで踏みつける。するとタイヤは、ズズズッと言う摩擦音を発し、ホイールスピンに近い状態を作り出しながら、完全トラクションでダッシュ。
ところが車重が標準のリーフより600kg近く軽いこと、重心が低くタイヤとレッドの広いことが十分に効いて、ハンドリングは強烈に反応する。また、サーボを持たないブレーキの初期制動に一瞬戸惑うものの、強く踏みつける状態でもコントロールのしやすさを理解できると、以後は限界までブレーキを遅らせて、僅かに出るアンダーステアは左足のブレーキで、それを収め、すぐさまアクセルはベタ踏み。
次の瞬間、リヤが流れるような挙動を見せるが、そこはそれ、モーターの特性から、回転が増すとトルクが低下するため、マシン自体が自然にトラクションを回復させ、アクセルコントロールもステアリングの修整もほとんど必要なく、しっかりと押さえ込んでいれば、確実に狙ったラインをトレースする。
あっという間に1周が終了。同乗してくれた現地の方からは「パーフェクト」と言うお褒めの言葉を頂戴、自分でも納得の出来る走りだった。