研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2013年1月24日木曜日

セミトラ点火装置の1次と2次波形からその良さを検証してみた

セミトラ点火装置は普通点火のポイントを利用し、安定した点火性能を長期に渡って維持できるように造られたトランジスター点火装置と言い切れるだろう。フルトラが当たり前の時代だが、普通点火からフルトラに移行する間、一時的にセミトラを採用するメーカーも有ったのだ。

そのセミトラによる1次と2次波形は、普通点火装置の波形とどう違うのか検証してみた。

使用したセミトラはウルトラのNo.6060。ベーシックなセミトラともいえる製品。

セミトラの波形を見るために使用したウルトラのNo.6060だが、正しい点火コイルとの組み合わせが重要なので、それを理解できないとしたら使用すべきではない。ハイパー・イグニッションNo.8900であるなら、専用の点火コイルと組み合わせてあるので、コレを使うべきだ。No.6060より高性能でもある

1次電圧波形と2次電流波形で普通点火とセミトラを比較検証すると、普通点火の1次波形にはポイントが開いた瞬間からその電流に落ち着きが出るまでの間、何回もの振幅がある。これはポイント接点でのスパークを意味する。その影響は2次波形にも及ぶため、点火エネルギーは小さくなる。これはポイントの接点修整が必要であることを示している。また、1次2次共にピークを示す部分の波形の明るさは、普通点火では流れる電流が多いため、波形もはっきりと見えるが、セミトラでは最大値あたりは霞んで見えない。

普通点火の1次波形ではポイント接点が荒れているため1800回転では余計なものが写る

点火プラグに流れる2次の電流波形にも普通点火では同様な状態が見られる。失火と取れる状況だ

セミトラのように2次波形に余計な波がないということは、それだけ点火エネルギーが大きいと言う判断も出来る。

普通点火と同じ状況で(コネクターを差し替えるだけ。回転数は1800)セミトラに代えると、1次波形でも余計な波形はなく、しっかりと信号を送っていることがわかる

セミトラの2次波形も1次波形と同様に、乱れはなく、確実でしっかりとした火をプラグに飛ばしている

普通点火の場合にはポイントに流れる電流が一般的に最大4~5Ahと言われているが、セミトラでは1Ah(ウルトラの場合には0.4Ah)以下。つまり、ポイントに要求されているものが違うのである。

セミトラの場合ポイントは、点火時期を掌るスイッチのようなものであり、エネルギーを加える普通点火方式と根本的に違う。そのため流れる電流も小さいのである。結果として、ポイント接点の消耗・焼損はなくなるため、長期に渡って(他の機械的な部分の劣化・消耗はあるが)安定した点火火花が確保できる。

波形撮影ではポイントが荒れている状態だったこともあり、普通点火では低回転(1800回転)で点火ミスを示していたが、セミトラとなるとそのような症状は発生していない。これがセミトラの強みでもある。

意地悪テストとしてポイントギャップを大きくしてみたり、コンデンサーを取り外してみたが、波形の変化は見られなかった。ここで確認できたことは、ポイントが単にスイッチの役目に過ぎないと言うこと。

試しに普通点火では重要なコンデンサーを外
して5200回転としてみた1次波形。何も変わっていない 

同じくコンデンサーを外した2次波形。確実にプラグはスパークを行っている。つまり、セミトラにはコンデンサーが必要ないということになるのだろう。取り付けていても支障はなく、単に安全マージン? セミトラのユニットが不良となったときに、簡単に普通点火へ戻せることを考えれば、取り外さない方がいいといえるが・・・

ここからは知識として知っておいたほうがいいこと


専用コイルを持たないセミトラのユニットは、最近巷に使える点火コイルがないので、それを理解していない方は、専用コイルが組みつけられたものを購入した方がいい。価格は少し高いけれど点火性能は高い。

更にオークションでセミトラユニットだけを購入して使用する場合など、特に注意が必要。自身で使用可能な丸型コイルを持っているのならいいが。

例えば、永井電子(ウルトラ)のセミトランジスターNo.6060は、数十年前では普通に汎用として販売されていた丸型のコイルに合わせて開発されたのだが、現在はこのコイルを入手することは不可能。適当なものを組み合わせるとユニットが壊れるので、絶対にダメ。

そこで、同社では専用コイルを組み合わせた、高性能セミトランジスター点火装置を開発している。

このハイパー・イグニッションNo.8900は専用コイルを使用したことにより、電流制御やドエル角制御を組み込むことが可能となり、高回転まで安定した点火性能を確保できた。当然No.6060よりも高性能な点火装置といえるもの。


2013年1月8日火曜日

14代目トヨタクラウンのサスペンションは進化型か

ReBORN(生まれ変わる)と言うキャッチフレーズを使って発売された14代目の新型クラウンには、これまでとは少し考え方が違うサスペンション(足回り)設計が取り込まれた。

これはステアリングのタイロッドエンド。このようにS字形状をしている。伸び縮みしやすいことを利用して、ステアリング操作から来るタイヤの向きに僅かな遅れを生じさせ、コーナリング時の走行安定性を高くした

それは、フロントで言うとステアリングのタイロッドエンド形状にある。タイロッドエンドは普通ストレートのシャフトなのだが、そこをあえてS字形状とし(軸方向剛性を低減)、ステアリングを操作したときに、このS字が伸びることでタイヤの向きに、僅かな遅れが生じることを期待している。

この僅かな遅れは巻き込み現象を低減し、安定化方向へ導く。もちろん直進時にもステアリング操作に関係なく、タイロッドエンドのS字部分はタイヤに対する路面外乱を受け流し、一瞬起きるトーの変化が反対側のタイヤに伝わらないことを意味し、ここでも高速直進性に影響を与えるはずだ。

これが14代目のクラウン・リヤサスペンション。マルチリンクという形式は変わっていない。このサスペンションにはトーコントロールアームにも工夫がある。ロッドがストレートではなく僅かに湾曲しているのだ。その目的は横力を受けたときにタワミ、引かれたときには伸びることで、カーブなどの走行ではリヤタイヤが同位相することから安定が高くなる。伸び縮みするといっても0.1mm以下の数字だが、それがものを言うのだ

もうひとつは、リヤサスペンションのアーム形状に見られる。一般的には棒状の形か、パイプでもボックスセクションなのだが、新型クラウンでは違っている。

リヤサスペンションアームの断面は下側(水対策)に開口部を持つC型断面構造。捻り剛性を下げて微小作動性を向上させたというが、ショックアブソーバーが高圧ガスを使ったモノチューブのド・カルボン式ということだから、フリクションの多い(特に停止状態から動き出すとき)ショックを使うことへの対策とも取れる

ボックスセクションの下側に開口部を持つC型形状なのだ。つまり、捻り剛性を下げている。

この目的は、乗り心地を向上させるためで、サスペンションの作動が非常に小さいとき、ゴムブッシュの変位が起きる前の動きを、サスペンションアームが捻れることで先行させるもの。

ゴムブッシュだけではなくボールジョイントを採用している部分のサスペンションアームも同様な形状だ。ボールジョイントにおいても、動き出すまでの力は大きく、それを小さくすれば耐久性や位置精度が下がるため、作動としては不利になっても必要以上に強く締め挙げる処理が必要だからだ。

また、ショックアブソーバーは作動レスポンスの高いモノチューブ(ド・カルドンタイプ)で、ガス室との分離にはフリーピストンを使っている。ここの動きの抵抗を低減させるため、減衰力発生ピストンやそのピストンリングなどにはテフロン製を使っている。

と言うことは、ショックアブソーバーそのものの動きにも渋さ(初期作動抵抗)がある。それを少しでも解決するために、サスペンションアームの捻り剛性を小さくして、乗り心地を確保した、と分析するのは考えすぎか?

俗に言うガスショックはガス圧が非常に高く(作動によるキャビテーション防止が目的で10気圧以上)、その分ピストンを押し戻そうとする力も強くなり、いくら作動によるフリクションを低減しても、このガス圧に打ち勝たなければショックアブソーバーのピストンを作動することは出来ない。つまりサスペンションとしての微少作動に障害となる。なので・・・?

バイクの1本サスにもガスショックが使われているが、この場合には非常に強いスプリングと大きなレバー比(減速方向)としているため、ショックのフリクションが及ぼす影響は少ないのだ。