研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2010年12月14日火曜日

ポイント式点火装置のメンテナンス その②

その①では、普段定期的に行う必要のあるメンテナンスを含めて取り上げたが、今回は、そのメンテナンスの最中に不都合な部分を見つけた場合どのようにするか、ディスビを分解しながら解説したいと思う。

不都合箇所として出やすいのがポイントの焼損や異常な磨耗。その原因には要求電圧がプラグギャップの磨耗で高くなったことやコンデンサーの不良、各接続端子の抵抗増大などがあるけれど、コンデンサーが取り付けられているとは言っても、ポイントは開く瞬間に僅かなスパークが起きるわけで、少しずつ焼損は起きてくる。これを防ぐには、セミトラ(永井電子などに商品がある)を採用するしかないが、使用する点火コイルは、純正であることを要求される。

ポイントの焼損がひどければ、取り付けられた状態での耐水ペーパーによる磨きは不可能。取り外して接点部分を確認し、オイルストーンで研磨するか、新しいものに交換。オイルストーンによる研磨は、様子を見ながら少しずつ行わないと、傾いたまま研磨することになるが、そうなったらベース側か羽側(カムで動かされる側)をネジって、中心が接するように矯正する。ポイント面の理想は中心が接していることだからだ。

バキューム進角がスムーズでなかったら、バキュームホースの亀裂などないか確認する。もちろんバキュームが作動するダイアフラムは、漏れがないことは重要だが、ダイアフラムから伸びる作動ロッドの先に繋がるベースプレートが、スムーズに回転しなければ意味がない。ポイントの焼損でオイルストーンによる研磨が必要な状態だったら、ついでにベースプレートを取り外して、回転の動きに問題ないか確認したい。

ぎこちない回転であったら、錆やグリース切れなどが考えられるので、十分に洗浄してから、ベアリング部分へ少量のグリース(耐熱グリースかリチウムグリース)を塗布して解決する。

このような症状が出ているときには、遠心ガバナの作動もスムーズではないはず。ベースプレートを取り外した内部を目視すれば、錆とその汚れが付着して、全体の動きに渋さが出ていることを予想できる。ポイントカムと一体となったガバナアッパー部は、中心に見えるボルトを取り外せば引き抜けるが、シャフトとの回転をスムーズにするため、上下に薄いシムが入っているので、扱いには注意が必要。

外したポイントカムは、汚れと錆などを除去するため、400番の耐水ペーパーで周囲を磨き、耐熱グリースかリチウムグリースを少量全周に擦り込む。多すぎるとグリースが飛び散ってポイントを汚し点火不良の原因となる。

ガバナの動きがスムーズではない原因のひとつは、ガバナピンとカムプレートのスリット間の渋さにある。ここのグリースが固着して段付磨耗のような状態を作り出しているため、スリットのピンが当たる側を耐水ペーパーで研磨してやると効果的。仕上げは耐熱グリースかリチウムグリースを少量塗布する。着けすぎると飛散して動きが阻害される原因を作ることになる。

全ての作動を確認して組み付けたら、ポイントのギャップを0.45mmとする。シュクネスゲージを使えばより正確になるが、使い方をマスターしないと不正確この上ない状態となるので、隙間から引き出すときの抵抗がどのくらい必要なのか、あるいは抵抗を感じてはいけないのか、何回も確認・調整して正しい値を求めることが重要。

最後は点火時期の調整だが、点火タイミングマークは見難いので、ホワイトマーカーなどで印を付けたほうが良い。エンジンを始動させて、進角状態の確認でも、最大進角位置にマークをつけておくとハッキリと確認することが出来る。

クランクをレンチで回し、イニシャル点火時期にマークを付けたら、その位置に固定。イグニッションをONにし、ディスビの締め付けボルトを緩めてディスビを左右に回して、コイルコードからスパークがある位置で止める。

コイルコードをディスキャップへ戻し、1番シリンダーのプラグコードへタイミングライトのセンサーをクランプ。センサーの感度によっては隣の点火信号も拾ってしまうので、できるだけプラグ近くで信号を取るようにする。

エンジンを始動し、点火時期を確認すると共に正しい点火時期となるよう、ディスビをゆっくりと動かして調整。進角状態の確認では、スロットルバルブを僅か開いたときに大きく進角し(バキューム進角が最大となる位置)、そこから更にスロットルを開くと、一旦進角が元に戻ってから、エンジン回転上昇と共に進角して行けばOK。


.焼損の激しいポイントは取り外して修正するか交換。修正ではオイルストーンで研磨するが、それには慣れが必要。

.オイルストーンでの研磨。平行に研磨できるようになるのは経験が必要。でも、傾いて研磨した場合では、羽側(鉄板が薄い)を曲げて矯正すれば良いだけ。ポイントが合わさっているときに、お互いが平行であれば良いのだ。もちろん、様子を見ながら少しずつ研磨するのは当然。

.取り外したベースプレートの動きを点検。ここは二重のプレートとなっており、ベアリングを挟んで回転する構造。回転と言っても10度ほど動くだけなので、どうしても異物が溜まりやすい。

.ベースプレートの構造には各種あるが、このクルマでは鋼のバネ力によってボールを押し付けているので、どうしてもその部分が汚れやすい。しっかりとパーツクリーナーなどで洗浄し、ボール部分へグリースを塗布して動きをスムーズにする。

.ベースプレートを取り外した内部を見ると、長い間メンテナンスがされていなかったことを物語る光景がある。これではガバナ進角としての役目が、十分発揮されていなかったことは想像できる。点検で、ディスビのローターを握って捻ったときの感触がその状況を物語っていた。

.ポイントカムを取り外したら、とりあえずカム全周の研磨を400番の耐水ペーパーで行う。その後、リチウムグリースなどを擦り込むように塗布する。ガバナピンの入るスリット部分も、固着しているグリースを耐水ペーパーで研磨するように磨き上げる。

.ガバナウエイトの動きやガバナスプリングの状態などを点検し、パーツクリーナーで洗浄した後十分に乾燥させ、問題がなければポイントカムのスリット部分にリチウムグリースなどを少量塗布して組み付けるが、このときに入るシムを忘れないように。

.組み付けたらクランクをレンチで回しポイントが一番開く位置にして、ポイントギャップの調整を行う。0.45mmという数字は、目視で何とかできるともいえないので(出先の現場ではそれで十分だが)、シュクネスゲージを使用するが、ポイント接点から、あるいはカムの谷とポイントヒールの間から、どのくらいの力で引き抜ければ良いのか、何回か調整して正しいギャップを求めること。

.点火時期を確実に調整するには、どうしてもタイミングライトが必要になる。しかし、タイミングライトでタイミングマークを見るのは難しい(特にこのクルマのようにフライホイールにタイミングマークのあるものでは)ため、予めホワイトマーカーを使って印をつけておくことが望ましい。

10.ディスビの締め付けボルトを緩め、イグニッションをONとしてから、コイルコードからのスパークで、イニシャル点火時期を求める。これは、あくまでもエンジンが始動できる状態を作り出すことであり、そこで点火時期を決めるわけではない。

11.タイミングライトのセンサーを1番シリンダーのプラグコードへクランプしてエンジン始動。アイドルでの点火時期を調整してから、エンジン回転を上下して、進角状態を確認する。エンジンを停止しディスビの締め付けボルトを締めて終了。

12.点火時期マーク(正しくは上死点マーク)は一般的にクランクプーリーにある。その場合には、タイミングギヤケース上の角度数字は読めるが、プーリーにあるマークの切り欠きが見えないので、この場合にもホワイトマーカーで印を付けたい。