熱海のトラック事故はブレーキが効かなくなったことからの暴走と言うのだが、その原因追求が少し不足していると感じたので、私なりの見解を述べてみたい。
まず最初にやることは、ドライバーからの聞き取りだが、ブレーキペダルを踏む感触がどのように変化したのか、或いは変化しなかったのか。それによって原因は違うからだ。
ブレーキペダルを踏む感触が普段と変わらないのに、ブレーキが効かなくなったとすると、これはブレーキの使いすぎによるフェードと言う現象で、ブレーキパッドやブレーキライニングの表面が高温となって燃え出し、炭化することで(カーボンだから摩擦が小さい)ブレーキが効かなくなる。
中型トラックではフロントにディスクブレーキを装着していると思うが、ブレーキの冷却性に優れていても、ブレーキパッドのフェードは別の話。
もし、ブレーキペダルを踏む感触がフワフワで、しっかりとした状態でないとしたら、これもブレーキの使いすぎによる、ベーパーロックと呼ばれる現象。ブレーキは使うことで、そのエネルギーは熱となるわけで、使いすぎれば放熱が間に合わなくなり、ブレーキ液が沸騰する。
沸騰した泡がブレーキペダルからの力をダイレクトに伝えることが出来なくなり、俗に言うスポンジー状態で、ブレーキは効かない。
ブレーキ液の沸点が下がる原因は、長期に渡る使用により水分を吸着することによって起きる。そして、ブレーキ液が沸騰した形跡は、冷えることで泡が消えるため、そのままでは検証できない。使用していたブレーキ液の沸点テストをすれば判断材料となるが、断定は難しい。
ディスクブレーキをフロントに装着していれば、それなりに熱に対して強くなるが、それも確実に整備されていての話だ。
ブレーキペダルを深く踏めば何とか制動するが、普段のようなブレーキではないとすると、これはブレーキ系統のブレーキ液を送るパイプやホースに亀裂や緩みが生じて、ブレーキ液が漏れているためだ。
クルマのブレーキは、基本的に2系統であることが義務付けられており、FF車ではX配管で、例えば左前輪のブレーキパイプが破損してしまった場合、右前輪と左後輪にブレーキが作用する。トラックやFR車では前後で2系統となっている。
もちろんこの状態となると、何とか止まれる性能を残すだけで、連続した下り坂を、気にせずにブレーキペダルを踏めば、当然ブレーキは効かなくなる。
ただし、ここでの問題は、どのようにしてブレーキ液が漏れたのかと言うこと。接触事故でも起こさなければ(ブレーキ周りを岩などにぶつけるような)、配管が破損することはない。
だとすると、車検や直前の整備はどうだったのか。メカニックのヒューマンエラーはなかったのか。更にブレーキ液の交換は正しく行われていたかどうかも検証する必要がある。
ブレーキ液を交換しないで使い続けると、耐温度性能が低下し、沸点が下がりベーパーロックに繋がるからだ。かなり前の話だが、バスのブレーキが効かなくなった原因は、ブレーキ液の定期的な交換を怠ったためである、という。
また、このトラックはディーゼル車だろうから、そうなるとブレーキの助勢装置として作動させるブレーキブースターは、ガソリン車(全てではない)のように吸気管に発生する負圧を利用することが出来ないので、別にバキュームポンプを装備していたはず。
このバキュームポンプは正常だったのだろうか。
もし、ブレーキペダルを踏む感触が、まるで石を踏みつけているように硬く、ほとんど踏み込めていないとすると、バキュームポンプの不良が考えられる。
このバキュームポンプがどこに装備されていたか知らないが、小型トラックなどではオルタネーター(発電機)の後部、或いは前部。つまりオルタネーターにビルトインされている。
そのオルタネーターは、ベルトで回されるので、そのベルトが切れれば、負圧が作れず、ブレーキペダルを力いっぱい踏んでもブレーキは効かなくなる。
ガソリン車でも試しに、エンジンを停止させた状態で、ブレーキペダルを数回踏んでみると分かる。踏むたびに踏み込める量が減少し、ついにはペダルがほとんど動かなくなる。つまり、この状態ではブレーキは効いていないのだ。
研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-
2012年5月19日土曜日
2012年5月7日月曜日
充電式電動ドリル兼ドライバーのバッテリーは何故高い
バッテリーパックを分解すればバッテリーだけ・・・できるかな
便利なパワーツールと言える電動ドリル兼ドライバーは、ホームセンターで購入したときには安く使えても、年月と共にバッテリーがヘタル。そのバッテリーを単体で購入しようとすると、ディスカウントしている同様の電動ドリル兼ドライバーが買えてしまうぐらい高い。
何故なのだろうか?電気剃刀の刃と同様だな。セットだとそこそこ安いのに、一部の部品がものすごく高く、セット購入を促す作戦なのだから。
この際思い切って新しいものを・・・と言う気持ちにはならない。仕事で使っているのなら、モーター自体も効率が落ちているだろうが、年に数回使うか使わないかの状態で、新しいものを購入する気はさらさらない。バッテリーを何とかしたいのである。
セットで購入するとたいていバッテリーパックは2個付属してくる。これは我が家にあるものも同様で、ひとつのバッテリーが完全にダメ状態になってしまったのだ。
メーカーのサイトで調べてびっくりの価格だったので、しばらくあきらめていたが、バッテリーひとつというのは使い勝手が悪い。
あるとき、何気なくバッテリーパックを見ると、ねじで組み立てられていることに気がつく。そこで分解。
特別ややこしいものではなく、中からバッテリー8個と本体との接続端子が取り外せた。
バッテリーを調べると、ニッケル水素ではなくニッケルカドミウムである。ニッケル水素にしようと思ったが、サイズが合わないので、変更は出来ない。ちなみにサイズを測ってみると長さ42mm、直径22mm。これで選ぶとSCサイズ・KR2000SCになる。この情報は、秋葉原の秋月電子で調べ、ついでに購入する。1本250円、8本の9.6Vだから2000円だ。
問題は、外装がステンレスのバッテリーをどのようにして接続するかであるが(一般的にバッテリーパックの接続はステンレスプレートをスポット溶接している)、ステンレス用の糸ハンダを使えばいいのである。
もちろん使用するハンダごては容量の大きなもの。60~100Wを使いたい。容量が小さいと、こてを対象物に当てて置く時間が長くなり、その時間によって対象物が高温の影響を受け、不良になることもあるからだ。つまり、出来るだけ短時間でハンダ付けしたいのである。そのためには大きな容量のハンダごてが必要となる。
まず最初は、購入したバッテリーのプラスとマイナス部分に、ハンダを流すことである。800番ほどの耐水ペーパーで表面の汚れを除去し、ハンダごてを当てながらステンレス(一般のハンダとしても使える)用の糸ハンダをその部分に押し当てる。すると、パチパチという音と共にバッテリーにはハンダが流れる。
ハンダごての方にハンダを流しておいての作業はうまくいかないようだから、同時進行するべきだろう。糸ハンダに含まれるペーストが作用する状態が重要ポイントである。
バッテリー間の接続は配線コードを使う。このコードにもハンダを流しておき、そのコードをバッテリーに押し付けながら、こての先端にもハンダを流した状態にして、できるだけ短時間でハンダ付けを終了させる。
古いバッテリーからモーター側の接続端子などを取り外し、それを再利用する必要があるので、ニッパーなどにより切り剥がす。温度センサーが付いているので、これも元のような状態に接続し直す。
組みなおしたバッテリーがズレないよう、輪ゴムなどを巻いておくと作業性がいい。この状態でバッテリーケースの中に押し込み、更に、内部ショートを防ぐスペーサーがあるので、これをしっかりと両面テープを使って固定してからねじを締めて終了。充電の開始である。
2012年4月12日木曜日
ディスクブレーキのキャリパーが情けない色だとカッコ悪い
100円ショップで解決できるか
鉄ホイールだと見えないから関係ないが、アルミのドレッシーなものではキャリパーが丸見え。無機質で情けない色のキャリパーを何とかしたいのである。もちろん出来るだけ安価でと言うのは基本だ。
欧州ブランドの高性能ブレーキは金色とか赤とか、目立つオリジナルの色で統一されているが、それと同じ色を求めてもオリジナル性はない。まねはしたくないのだから、塗る色ばかりではなく塗料そのものも何か見つけなければならない。
カーショップなどで販売されているディスクブレーキキャリパー用の塗料は、高価だし塗りにくい(以前勤めていた雑誌社の別の編集部の連中に手を貸したので)ことが分かっている。まして色が選べない。これではダメ。
そこで、とにかく安価に楽しむことを目標に、100円ショップに出かけると、ありました水性塗料が。水性塗料は乾燥すると水やシンナーなどでも溶けることはなく、適度な粘度で塗りやすい。
刷毛と合わせても210円。キャリパーの汚れはキッチン洗剤を濃い目にして使い、購入した刷毛で洗い落とせばいい。基本的にはそれほど汚れていないので、軽く清掃すればすむはず。
では、水性塗料がキャリパーの温度に耐えるのかどうか。実験として焼入れした薄い銅板(銅は高温で熱してから水などで急令すると、鉄と違って柔らかくなる)に熱伝対を巻きつけ、そこに水性塗料を塗って数日放置した後、アナライザーと接続してからガスバーナーで加熱。
キャリパーはある程度温度が上がるので、どの位上がったらどうなるのか実験する。銅板に塗ったものを乾燥させた後、ガスバーナーで加熱したが、300度を超えても、煙は出ない。しかし、100度を超えると軟らかくなる。この状態なら問題なしと判断
すると意外な高温になっても(300度以上)煙を上げることはなく、焼けるにおいもしない。
そこで、塗った塗料がどのようになっているか確かめるため、ドライバーの先で掻き回してみると、固く乾燥していたはずの水性塗料は軟らかくなっている。何度になると流動性が出るのか確認すると、100度であることが判明した。水性だから当然か・・・
100度で流動性が出てくるが、キャリパーの温度はレースでもなければ100度までは上がらないし、たとえ上がって塗った塗料が垂れてきても、問題がおきることはないので、これは使えると判断していざ刷毛塗りを開始。
水性塗料は適度な粘度があり、また乾燥が遅いのでペタペタと刷毛で塗るのがやりやすい。ましてキャリパーやキャリパーマウントの表面は鍛造したままの状態だから、いくらムラに塗りたくっても粗が出ることはない。
外気温によるが、20度以上であるなら、10分ほど放置してから再度塗りたくるのがよさそうだ。塗料に厚みが出るので仕上がりがきれいに見える。これで終了。
何、キャリパーが初代フィットのものじゃないって・・・。そこに気がついた貴方は素晴らしい。
別のクルマのキャリパーを取り付けたのだ。目的はブレーキのペダルフィーリング改善のためで、大きなキャリパーに交換した。使ったブレーキシステムは同社のモビリオ用。もちろんすんなりそのまま交換できたわけではない。ローターは交換できなかったので、キャリパーとパッドが大きくなっただけだが。
2012年4月2日月曜日
圧縮比14・マツダの新ディーゼルを考察する
いまや既存のディーゼルは時代遅れ、他のメーカーもこの技術を見習う必要がある
内燃機関に一石を投じることで、これまでにないエンジンの開発・製産を行ってきたマツダが、ディーゼルエンジンにもショッキングな技術を詰め込んだ。それがスカイアクティブ・ディーゼルである。
昨年発売されたガソリンエンジンでは、圧縮比を14あるいは13と言う値にするもので、ノッキングを回避する制御と燃焼を確立し、部分負荷状態では常に膨張比を大きく取れるミラーサイクル(アトキンソンサイクル)として、燃費を向上させたのだが、ディーゼルでも同じ圧縮比の14と言う値での燃焼を可能とした。
圧縮熱を燃焼のタイミングと膨張に使用するディーゼルは、これまで常に高い圧縮比を要求しているかのように思われてきたが、実は違っていた。
重要なのは、冷間時始動で、それに必要な圧縮比が16あるいは18と言うだけのこと。実際に暖気が終了したら、それほど圧縮比が高い必要性はなく、無駄な状態での燃焼サイクルを行なわせていたとも言えるのだ。
圧縮比が高いから、それに合わせてクランクシャフトやコンロッド、ピストンとピストンピン、はたまたシリンダーブロックからシリンダーヘッドまで、ガソリンエンジンとははっきりと違う材料を使って、形状に対しても無骨な状態、つまり頑丈なことが要求されていた。
それなら、圧縮比を小さくしても冷間時始動が可能なディーゼルエンジンを作ったら、いったいムービングパーツ(クランクやコンロッド、ピストンなど)はどうなるのか。これまでよりコンパクトで、材料費も安く軽量なディーゼルが出来るのは当然のこと。それによってエンジン回転には軽さが生まれてくる。
圧縮比が高くないのだからいかにも無骨で重いものは必要ない。手前がスカイアクティブ・ディーゼルのクランク(向こう側はこれまでのマツダディーゼル2.2リッター)。ウエブの厚みや形状など、まるでガソリンエンジンのようである
コンロッドの形状や寸法もこのように大きく違う。ピストンピン径も30mmから26mmと小さくし、ピストンについてもピストンピン径が小さい分短くし、低圧縮とするためにピストンにある燃焼室も大きいので、ピストンの軽量化もなされた
問題は、どのようにしてそれを達成するかであるが、スカイアクティブ・ガソリンでブレークスルーさせたように、マツダはディーゼルでもブレークスルーさせた。
ディーゼルだから・・・と言う考え方をせず、どのようにしたら軽やかで楽しく運転できるディーゼルは出来るのか。基本的な発想を変えることでその目標を捕らえたのである。
ディーゼルの鍵は冷間時始動にあり、特に極冷間でも始動を可能としなければならない。また、排ガスや燃焼音(俗に言うディーゼル音)に対しても、ガソリン以上が望まれる。排ガスに関してはガソリン以上の対策は可能だが、エンジン音に関しては、ガソリン並みに近づけることが精一杯。もちろんシリンダーブロックやシリンダーヘッドを鋳鉄の鋳造で製作すれば、エンジン音低減は可能なのだが、それでは時代錯誤も甚だしいところ。
そこでマツダでは、軽量なオールアルミのエンジンとし、シリンダーブロックはダイキャスト製のオープンデッキ。エンジン音としてはつらいオープンデッキを採用しながら、あの程度の燃焼音とすることが出来たのも、14と言う低圧縮が大いに関係している。
そして、肝心な極冷間時でも始動可能とした技術は、最大圧力2000気圧(最低400気圧)としたコモンレール噴射と10ホールのインジェクター(ピエゾインジェクター)に、高い昇温性能を持つセラミックのグロープラグばかりではなく、セルを回して僅かな燃焼(安定燃焼に結びつかない)が起こった際に、その燃焼した排気ガスを、マツダ独自の排気バルブ2度開きによる吸気工程でのEGRシステムは、熱い排気ガスを再度シリンダー内に取り込み、シリンダー内の温度を上昇させ、その状態から圧縮することで十分な圧縮熱が得られ、自己着火による安定燃焼に結びつく。これを達成できたことで、排ガス改善など次のステップに進むことができた。
これがマツダ独自の排気バルブ2度開きシステム。冷間時始動後の初期では、圧縮熱が十分ではないため、一度燃焼した(或いは燃焼しかかった)排気ガスを、吸気工程で再度引き戻す装置。この機構が出来たことで14と言う圧縮比が成立した
この結果、冷間時始動では当然のこととして行われていたアイドルアップはなく、普通のアイドリング回転800で安定。カリカリと言う燃焼音が小さいばかりでなく、エンジン回転も上がらないと言うことから、早朝の住宅地でも周りのお宅に迷惑を与えることは少ない。
もちろんインジェクターからの噴射はマルチプルで、最大9回の実力を持つが、現在のところ実質8回。その8回は冷間時の燃焼促進と燃焼音の低減だけではなく、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)が煤で詰まったときに焼き切る場合も、触媒へ軽油を送り込む目的で作用させるのだが、暖気後の通常走行では4回の噴射が燃焼1サイクル分となる。
また、これまでのディーゼルエンジンは、NOx対策で(煤が出ても、これを優先してきた)燃焼温度が上がらないように、ピストンが上死点をかなり過ぎた時点で燃料が噴射されていた。つまり、圧縮比は小さい状態だ。これではせっかくの大きな膨張比も宝の持ち腐れ。当然燃費もトルクも十分に発揮できない。
そこでマツダは、上死点燃焼を目標に技術開発した。上死点で燃焼させてもNOxの発生がなく、かつカリカリと言う燃焼音が出なければいいのだが、これが難しい。
ところが、圧縮比を14とすることで、これまでのディーゼルが燃焼させていた上死点後の圧縮比と同じ値となり、EGRもしっかりと冷却し十分に取り込むことで、燃焼温度は抑制されNOxの生成も少ない(ポスト新長期規制でも後処理装置は必要ない)。もちろん、インジェクターの性能や噴射タイミングやパターンの制御も大きく関係する。
これまでのように圧縮比を高くしていると、燃料が噴射されたとき、燃焼室全体(ピストンの凹み部分が燃焼室になる)へ均等に分散せず部分的に濃い状態が存在する。これでは極所的に高温となりNOxを生成し、同時に酸素を求めて燃焼してしまうため、酸素不足状態の部分では煤が発生。更にムラのある燃焼は燃費が悪くなる。ところが低圧縮の場合、内部流動の高いところに高圧で噴射された燃料は、その燃焼開始タイミングが燃料と酸素がよく混ざるまで着火しないようになる。その結果、欠点が解消する、これが低圧縮ディーゼルの優れたところである。
また、時間差が出来ることで、燃焼の経過とともに燃料は分散するため、燃焼の終盤にはリーン燃焼となり、HCの発生が微少と成るのは当然の結果だ。
圧縮比を小さくするためにはピストンにある燃焼室を大きくする必要がある。燃焼室の径が大きいと、エッグシェイプの形状も自由度が増し、圧縮工程での燃料噴射タイミングを、これまでより手前で行っても、燃料が燃焼室からはみ出すことなく燃焼室に止めておける。その結果、予混合的な噴射を行っても、燃料は酸素と結びつく時間が得られ、ムラな燃焼を回避できるのだ。これ全て、圧縮比が低いからである
つまり、少し早めの燃料噴射で燃焼室全体(ピストンにある凹みの部分)に燃料を分散させておき、そこにパイロット噴射から、上死点近く(場合によってはほんの少し過ぎたあたり)のメイン噴射で最大燃焼(膨張)を行い、穏やかに全体を燃焼させる技術が開発された。3コブ燃焼と呼んでいる。(2コブ燃焼もあるが)
改めてエンジン性能をグラフから見てみると、排気量2188cc、最高出力は129kW(175ps)/4500rpm、最大トルク420N・m(42.8kg-m)/2000rpm。この数字は自然吸気エンジンの4200cc同等のトルクであり、その力強さは見て取れる。シーケンシャル・ツインとしているターボの技術は、マツダがとく意図する分野で、最大過給圧は1.7気圧。また、最高出力回転が4500であるけれど、実のところ5200回転まで一気に上昇してしまう。そのあたりも狙ったところである。
これがスカイアクティブ・ディーゼルのエンジン性能曲線図。2000回転の420N-mを頂点にトルクが山型になっている。その大きなトルクばかりではなく、トルク特性にも注目したい。使いやすく、気持ちのいい特性を引き出したのである。最高出力回転についても同様で、5200回転は簡単に、そして気持ちの良い感触で極普通に回ってしまう
最近のターボはVGT(バリアブル・ジオメトリー・ターボ)が主流。それをあえて使用しなかった理由は、シングルターボであればでコスト的にも有利であるが、低速ではターボチャージャーのレスポンスを良くするため、タービンに当てる排気ガスの流速を上げる目的で、ノズルを絞る形となり、排気ガスの詰まり現象が発生して、エンジン性能的に良くないからだ。
過給機は現在のディーゼルエンジンに絶対必要なアイテム。ただし、最大過給圧を高くすると(スカイアクティブは1.7気圧で欧州車からすると高いほうではない)、ターボチャージャーも大型となる。その状態で実用性を高めるには、タービンホイールに当てる排気ガスの流速を高めてやる必要が生じ、そのためにタービンホイールのハウジング内へ、多数のウイングを装備して、エンジンの負荷状態を検出しながら、ウイングの角度を変えてタービンの回転数を高くするのだが、これをやると排ガスの圧力が高く、つまり分詰まり状態が出来る。当然エンジン性能的には良くないので、マツダでは、RX7で培ったシーケンシャルツインターボを装備した
トルクに関しては、過給との関係で一般的には最大値(過給圧がらみで)からフラットとなるのだが、それでは快適にはならない、と言う思いから、山を作っている。トルクカーブを引っ張り上げて山としたことにより、多少前後のトルクは少なくなる傾向だが、これにより自然で力強い加速力が生まれた。
スカイアクティブ・ディーゼルにはアイドルストップシステムも装備している。ただし、重要な再始動時間はガソリンエンジン並みに小さく、0.4秒である。一般的にはこの倍以上かかるので(バスなどを見れば分かるはず)、乗用車としては歓迎されないロス時間。危険領域になるならやらないほうがいい。
そのため1回の圧縮工程で確実に燃焼させる技術が詰め込まれた。重要なポイントはクランク角度の検出から(ガソリンと同様)再始動しやすい位置にピストンを止めること。目標は上死点前90~108度だが、たとえ72度となっても再始動可能な技術を取り込んだ。それだけではなく、アイドリングストップしている間のコモンレール内における燃料圧力を維持する技術も重要な点。ピストンが止まる直前にはエアバルブ(スロットルバルブではない。EGR制御などにも使用する)を全開にして空気を取り入れることも行う。
そして、再始動時にはピストン位置を検出しながら、燃焼室からはみ出さないタイミングで予混合的に1回噴射し、更にピストン上昇に合わせパイロット噴射からメイン噴射を行って、安定燃焼にしていく。ここもすごい技術である。なお、ディーゼルでもATにはブレーキオーバーライドが装備されている。
2012年3月19日月曜日
ガソリン小型発電機の管理をしっかりとやらないと、いざと言うとき使えない
自治体や商店、或いは個人宅でも小型の発電機を備えるようになってきた。災害時のことを考えると良いことなのだが、ガスエンジンならともかく、ガソリンエンジンではテスト始動後のガソリン管理が正しくないと、いざと言うときにエンジン始動不能に陥る。そのあたりを理解して準備しているのか心配になる。
数十年前から日本各地の区市町村役場では、簡単に持ち運べる小型(1~2kW)の発電機を常備するようになってきた。しかし、年に(或いは数年に)一度ぐらいのペースで、非常時を想定した訓練を行うとき、常備している発電機にガソリンを入れて(或いは入っているかもしれない)、いざ始動させようとしても、エンジンはかからない。
1年前に販売店の方が納入して、テストしたときにはいとも簡単にエンジンは始動したのだが(始動のやり方も教わり)、1年以上経過しての訓練でエンジンはウンともスンとも言わない(セル付ではバッテリーの管理も重要だ)。これではいざと言うときに何の役にも立たない。「やっぱり小型ではダメなんだ」なんていう勝手なことをのたまう連中まで出てくる始末。
何でエンジンが始動しないのかと言うことを考えれば、自ずと答えが出てくる。少し知識のある方なら、点火プラグを外して火花テストをするだろう。ここでは、まず確実に火は飛んでいるはず。昔のポイント式点火方式ならいざ知らず、既にポイントレス点火のCDIになっているから、使わない状態なら経年劣化は起きず、不良となることはない。
すると考えられるのは、ガソリンが燃焼室に来ていないと言うこと。ガソリンタンクは満タンなのに、なぜなのだろうか・・・
答えは簡単、キャブが詰まってしまったのである。インジェクションやディーゼルなら数年放置しても問題ないのだが、ガソリンとキャブはダメ。キャブにあるガソリンが蒸発し、ガソリン成分のカスによってキャブの内部はゴミだらけ。もちろん小さな穴のジェットも詰まって、ガソリンは吸いだされない。
販売店の方は、当然それなりの説明はしていったはずだが、その説明を理解し、しっかりと実行できる人物がいなかった結果なのだ。そのため、当時はその発電機を製造販売したメーカーが、修理工場の人員をフル動員して、改修に当たったと言う。
では、どのように管理すればよかったのか、と言うと理想的には、一度始動確認をしたら、ガソリンタンクを完全に空にし、沈殿カップを開けストレーナーも乾燥、もちろんキャブのフロート室からガソリンを抜く(ドレンプラグがある)。
このようにすれば、次の始動でも、ガソリンを投入して1分ほど待ってフロート室にガソリンが満たされれば始動できる。
ガソリンタンクを空にする作業が面倒であるなら、燃料コックを閉めて沈殿カップの中とキャブのフロート室だけを空にし、ガソリンタンクにはガソリンを満タン状態とする。
燃料タンクの中を空にしなくても、沈殿カップをきれいにし、キャブのフロート室からガソリンを排出させ、タンクは満タンにしておけば、かなりの期間始動に問題は出ない。数年間以上始動させないのなら、やはり燃料タンクは空にしたほうがいい。我が家では空にしている。これはバイクも同様
ガソリンを満タンにする理由は、タンクから空気(酸素)を追い出して、酸化させないようにすることが目的。
この状態で、炎天下に放置しなければ1年後でも始動はできる。もっと雑な扱いとしてでも始動は可能なのだが、それにはリスクを伴う。
リスクを承知でやるなら(あまりお勧めしない)、それは、燃料のコックを開けたままにすること。こうすることで、フロート室から蒸発するガソリンを常に補う形となり、ガソリンカスの発生を抑制できる。
この状態での管理は、実際にバイクで友人がやっており、ガレージの中にあるため、ガソリンコックは開けたままで1年間は放置していても、ごく普通にエンジン始動が出来ることを確認している。
ただし、フロートバルブやホースにトラブルが起きると、ガソリンが漏れ火事の原因となるので、常に保管状態を監視できるのでなければやるべきではない。
こんな心配をしなくてすむのがカセットガスコンロのボンベを使った小型の発電機。カセットガスの使用期間をとやかく言う方がいるけれど、我が家では数十年前に購入したガスボンベを、いまだにガスコンロに使用している。
2012年3月1日木曜日
エンジンオイルの選定をいい加減にしたり交換しないと、とんでもないことが起きる
エンジンオイルなんて入っていれば良いんだ、と言う考え方は通用しなくなっている
「グレードの低いオイルを頻繁に交換したほうが安く上がるし、きれいなオイルになるのでエンジンにも良い」、と言う考え方もダメ。
現代のエンジンはエンジンオイルに頼って性能を出すように作られているので、数十年前に言い伝えられていた「低グレードのエンジンオイルを早めに交換する」と言う話は通用しないし、「そのようなオイルの選択をしているとエンジンは異常に磨耗する」と言う話を、40年以上中古車の販売を行ってきた友人が話してくれた。
指定されたグレード以上のオイルを使い、指定された走行距離までに交換する必要があるのが現代の高性能(パワーだけではなく優れた燃費も)エンジンなのだ。
もちろん、指定された走行距離と言っても、その走り方で数字が変わってくる。一般的な使い方と、シビアコンディションという言い方の使い方に分けられるのだ。そして、高速道路を走る機会が多い、山坂が多い場合にはシビアコンディションとなる。
「オレは高速道路を走らない」と言う方も、一般道で速度を上げて走るなら同じこと。それはシビアコンディションで、一般的な走行指定距離の半分が交換の目安となる(取扱説明書に書かれていない場合もある)。
一般的に交換指定距離の走行数字は、10・15モード、或いはJC08モード走行程度の負荷状態を基準にしていると思ったほうがいい。
また、チョイ乗りが多い場合は、シビアコンディションよりも条件が悪いと考えたい。それは、エンジンが十分に暖まらない状態で停止、また走行して停止ということを繰り返すと、エンジンオイルは十分に温まらず、オイルの中に入り込んだ水分やガゾリン分が蒸発する余裕がないため、次々と溜め込んでしまう結果、冷間時にはオイルがグリース状となり、最悪の結果を招く。低グレードのオイルを使用した場合にも同様なことが起きやすい。
そのような状態となったエンジンを見つけたので、しっかりと見てほしい
オイル、いやグリースとも呼べる状態になっており、ヘッドカバーの中はグジャグジャ。カムやヘッドの締め付けボルトがどこにあるのか分からないほど。
別のエンジンでは、タイミングベルトは破断。普通はベルトの山が歯こぼれして、スリップするのだが、このエンジンはベルトが切れていた。
オイル交換を必要以上にまめにやる必要はないが、どのような乗り方をしているか、指定グレード以上のオイル(純正である必要はない)を使っているかが重要なポイントだ。
2012年2月21日火曜日
バッテリーの交換をアイドリングさせたままやる、とはとんでもないこと
絶対にやってはいけない作業
最近気になる話を聞いた。それは、バッテリー交換の際に、エンジンをアイドリングさせたまま行うと言うもの。
確かに、オルタネーターには電圧制御のレギュレーターが装備しているので(それもかなり優秀なやつ)、バルブ類が切れることはないのだが、多数あるコンピューターが不良となる可能性は大きい。
特に、電気用品の取り付けをしていると、その用品が不良となる場合もある。雑電流対策がされていないのだから当然だろう。
その原因は、電圧上昇ではなく、バッテリーが外されることで、それまで吸収(収束)していた雑電流の放出が原因と考えられる。
なぜこのようなことが行われるのだろうか。それは、バッテリーを取り外すことで、各種電気用品の設定が消えるため(純正用品も含め)、面倒な初期設定が必要となるからだ。パワーウインドウの挟み込み防止の設定も忘れてはいけない。これをやらなければ、その装置も作動しないので重要なこと。
どこからこのような邪道が行われ始めたのか考えてみると、それは、ディーラーなどでバッテリー交換をするとき、ユーザーがどのような初期設定をしているか不明のため(標準でもいろいろな電気用品を装備しているため)、元に戻す手間を考えたときに、「いいや、アイドリングさせたまま一瞬のうちにバッテリーの交換をすれば何とかなる」「後で文句を言われるのもいやだし」と言う状況があって、このようなとんでもなくリスクの多い作業をしているらしい、と聞いたことがある。
バックアップのバッテリーを接続しなさい、と言う指示があるはずだか。
これを見様見真似でバッテリー交換をユーザーがやるとき、エンジンをアイドリングさせたまま行い、とんでもないトラブルを引き起こしているようだ。
初期設定を再度やるのが面倒だったら、バックアップ電源を作り(販売もしているし、ディーラーや修理工場でも使っているはず)、それをシガーライターソケットから送り込んでやればいいのだ。これで安心してバッテリーを外せる。
重要なのは、バックアップで使うバッテリーのプラス・マイナスを間違えないことと、イグニッションキーをラジオが聞けるACCの位置にしておくこと。
自作する場合、使用するバッテリーは、安全(容量)を考えて乾電池ではなく、鉛バッテリーを使いたい。
推薦するバッテリーは、完全密閉式の小型のもの。例えば、秋葉原の秋月電子で輸入販売される台湾製のLONGと言う銘柄などは、長期保存にも耐える、自己放電が非常に少ないもの。6ヶ月以上でも十分に容量が残っている。これなどお勧めだ。12V8Ahあたりを購入すればいいだろう。
端子は平型の差込タイプであるが、大きな電流を流さない状態での使用であるなら、これを改造する必要はない。
バッテリーの管理としては、6~10ヶ月ごとに充電する。充電器はいらない、クルマのシガーソケットから充電すればいいのだから。普通に走りながら30分も充電すれば十分のはず。
確実に電気の接続が出来たかどうかは、イグニッションキーがOFFの位置で、ラジオやカーナビに電源が入っているかどうかで判断できる。接続不良はバックアップ不良となるので、シガーライターを使っていた場合には特に注意が必要
イグニッションキーはⅠのACC位置とすること。Ⅱのエンジン始動位置では余計な電流が流れるし、その位置とする意味がない。また、イグニッションキーの位置が0(OFF)でも、シガーソケットから電流を流すとラジオなどにも電気が流れるので、バックアップ出来たと勘違いしないこと。必ずⅠのACC位置であることを確認する
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