自治体や商店、或いは個人宅でも小型の発電機を備えるようになってきた。災害時のことを考えると良いことなのだが、ガスエンジンならともかく、ガソリンエンジンではテスト始動後のガソリン管理が正しくないと、いざと言うときにエンジン始動不能に陥る。そのあたりを理解して準備しているのか心配になる。
数十年前から日本各地の区市町村役場では、簡単に持ち運べる小型(1~2kW)の発電機を常備するようになってきた。しかし、年に(或いは数年に)一度ぐらいのペースで、非常時を想定した訓練を行うとき、常備している発電機にガソリンを入れて(或いは入っているかもしれない)、いざ始動させようとしても、エンジンはかからない。
1年前に販売店の方が納入して、テストしたときにはいとも簡単にエンジンは始動したのだが(始動のやり方も教わり)、1年以上経過しての訓練でエンジンはウンともスンとも言わない(セル付ではバッテリーの管理も重要だ)。これではいざと言うときに何の役にも立たない。「やっぱり小型ではダメなんだ」なんていう勝手なことをのたまう連中まで出てくる始末。
何でエンジンが始動しないのかと言うことを考えれば、自ずと答えが出てくる。少し知識のある方なら、点火プラグを外して火花テストをするだろう。ここでは、まず確実に火は飛んでいるはず。昔のポイント式点火方式ならいざ知らず、既にポイントレス点火のCDIになっているから、使わない状態なら経年劣化は起きず、不良となることはない。
すると考えられるのは、ガソリンが燃焼室に来ていないと言うこと。ガソリンタンクは満タンなのに、なぜなのだろうか・・・
答えは簡単、キャブが詰まってしまったのである。インジェクションやディーゼルなら数年放置しても問題ないのだが、ガソリンとキャブはダメ。キャブにあるガソリンが蒸発し、ガソリン成分のカスによってキャブの内部はゴミだらけ。もちろん小さな穴のジェットも詰まって、ガソリンは吸いだされない。
販売店の方は、当然それなりの説明はしていったはずだが、その説明を理解し、しっかりと実行できる人物がいなかった結果なのだ。そのため、当時はその発電機を製造販売したメーカーが、修理工場の人員をフル動員して、改修に当たったと言う。
では、どのように管理すればよかったのか、と言うと理想的には、一度始動確認をしたら、ガソリンタンクを完全に空にし、沈殿カップを開けストレーナーも乾燥、もちろんキャブのフロート室からガソリンを抜く(ドレンプラグがある)。
このようにすれば、次の始動でも、ガソリンを投入して1分ほど待ってフロート室にガソリンが満たされれば始動できる。
ガソリンタンクを空にする作業が面倒であるなら、燃料コックを閉めて沈殿カップの中とキャブのフロート室だけを空にし、ガソリンタンクにはガソリンを満タン状態とする。
燃料タンクの中を空にしなくても、沈殿カップをきれいにし、キャブのフロート室からガソリンを排出させ、タンクは満タンにしておけば、かなりの期間始動に問題は出ない。数年間以上始動させないのなら、やはり燃料タンクは空にしたほうがいい。我が家では空にしている。これはバイクも同様
ガソリンを満タンにする理由は、タンクから空気(酸素)を追い出して、酸化させないようにすることが目的。
この状態で、炎天下に放置しなければ1年後でも始動はできる。もっと雑な扱いとしてでも始動は可能なのだが、それにはリスクを伴う。
リスクを承知でやるなら(あまりお勧めしない)、それは、燃料のコックを開けたままにすること。こうすることで、フロート室から蒸発するガソリンを常に補う形となり、ガソリンカスの発生を抑制できる。
この状態での管理は、実際にバイクで友人がやっており、ガレージの中にあるため、ガソリンコックは開けたままで1年間は放置していても、ごく普通にエンジン始動が出来ることを確認している。
ただし、フロートバルブやホースにトラブルが起きると、ガソリンが漏れ火事の原因となるので、常に保管状態を監視できるのでなければやるべきではない。
こんな心配をしなくてすむのがカセットガスコンロのボンベを使った小型の発電機。カセットガスの使用期間をとやかく言う方がいるけれど、我が家では数十年前に購入したガスボンベを、いまだにガスコンロに使用している。