研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2015年7月2日木曜日

数式を使わない、クルマの走行安定性の話・13/17


アベレージ120km/h、Dレンジ固定のエンジンブレーキだけで、ターンパイクを駆け下りる

一般では危険なので、やるべきではないが、箱根のターンパイクにおいて、下り坂をエンジンブレーキだけで(ブレーキペダルを踏まない)、100km/hのスピードが保てるクルマがあった。それは三菱ランサーセディアワゴンである。標準でこの性能であれば、ラリーアートエディションは、もっと行くであろうと考え、Dレンジ固定のエンジンブレーキだけで、アベレージを120km/hに上げた。この間、ブレーキは一切踏まず。遅い車がいれば追い越しをするためアクセルを踏み、速度を大きく上げる。140km/h以上にもなることもあるが、コーナーに入りハンドルを切ることで制動力が発生する。

これが当時発売されていた三菱ランサーセディアワゴン・ラリーアートエディション。走行性能の素晴らしさを体験したので、そのことを開発者に話をしたら、「性能の素晴らしさを引き出していただき感謝します」という言葉をいただいた記憶がある
 
そのままコーナリングを開始する。しかし、タイヤは悲鳴を上げることなく、さらにクルマの挙動は乱れることなしに、ドライバーの意志を忠実に表現する。なぜこんなことができるのか、ハンドルを握りながら考えてみた。すると、コーナーの手前では、ドライバーは意識をしない範囲で(構えるような感じで)、ステアリングを曲がる方向へ切っていることがわかった。

切るといっても、曲がる方向に力を加える程度で、実際にステアリングは回しているつもりはない。この、コーナーはどうかな、と思う瞬間の僅かなドライバーの挙動が、クルマの向きを変えるきっかけを作り、さらに これなら十分に曲がってくれる、という安心感を伝えるから、何事もなくコーナリングを開始して、終了してしまうのである。

助手席に乗っていたカメラマンに感想を聞くと「ブレーキを踏まないし、チラリと横目で速度計を見れば100km/hを超えているので、そりゃ、怖かった」という話だ。その感想は正しいが、クルマが悲鳴を上げていないし、急制動させるわけでもないのだから、それほど恐怖感はないと思うのだが・・・

後日、同じことを、T社のブ*ビス・T*D仕様でやってみると、とてもじゃないが 100km/hでも怖い。リヤが勝手に流れ出す。このT*D仕様は、サスペンション回りをガチガチに固めた、サーキット仕様で、マニュアルミッションである。そのようなモデルを持ってしても、三菱ランサーセディアワゴン・ターボ・ラリーアートエディションには対抗できないのである。

2015年6月26日金曜日

スズキの進化したAGS(オートギヤシフト)に乗ってみた。システムはMAGNETI MARELLI(マニエッティ・マレリ)社のものだ


マニエッティ・マレリはFIATの子会社のひとつ。F1などの電子部品を製造することでも有名。当然近年のフィアットAGSにもそのシステムは採用されているが、スズキのもののほうが世代が新しい。つまりドライバーに優しく、改良の融通も利く。

最初にスズキのAGSに試乗したのは、軽トラックのキャリイ。Dレンジでのアップシフトやダウンシフトは、多少違和感があるものの、ナンバーワンの制御だったが、セレクターを操作したときのマニュアルモードで、特にシフトダウンの反応が遅く、下り坂ではエンジンブレーキが効く前に、速度が急上昇して、使いにくかったということを、開発者に話しておいたら、アルトやラパンでは大きく進化していた。

アルトでは、スタートを穏やかにやると、アップシフト時の加速力変化はほとんど感じず、いやな感触はなかった。マニュアルモードでのシフトダウンは、まるでステップATのごとくで、スパスパと減速力に段のない心地良いもの。シフトアップは多少加速力に変化は生じるが、それほど違和感はない。5速からのキックダウンにおいても、スムーズに5⇒3へとダウンシフトした。やれば出来るもんである。

新型アルトでは、AGSの制御が大きく変わった。マニエッティ・マレリ社の方でプログラムをいじってもらうのだが、スズキの方でもこの部分に直接手が加えられるようになると、もっと確実な制御となるだろう。現在のAT制御プログラムの見本は、日本なのだから
 
ラパンでは制御が変わったのだろうか。女性ユーザーをターゲットに開発されたラパンである。

写真のラパンはCVT仕様。AGS仕様は価格的にも安いし、高速道路の巡航をやらないのなら、燃費もほとんど代わらない
 
そのようなことを考えずにアルトと同様に走らせて見ると、マニュアルモードでのシフトアップやシフトダウンでは変化を感じなかったが、Dモードでの走行では、なにやらアルトと違う部分を感じた。それは、アップシフト後のクラッチ接続である。

この感じで、アルトも良いと思うのだが、半クラッチ領域を増やしていると判断。開発者にその点を聞いてみると「確かにその通りです。女性が乗るということで、半クラッチ領域を僅かですが増やしています」という答えが返ってきた。

アルトやキャリイでもこのような制御で良いと思うのだが、キャリイは別としても(負荷が多いところで使用する場合があるので、クラッチの耐久性が・・・)、他の車種では、穏やかな感じのギヤシフトは最重要項目であると思う。

AGSについては、スズキに限らず、まだ熟成できていないと思う。クラッチの断続アクチュエーター部分、シフトのアクチュエーターなど、ハードウエアは、ほぼ完成しているだろうが、考え方を変えると、ミッションはシンクロ機構が必要なのだろうか、という考えに行き着く。

トラック(キャリイやエブリイなど)では、負荷の高い状況が持続すると、ミッションにもダメージが来るので、これまでのシンクロギヤは必要かもしれないが、乗用車系ではバイクのミッションのようにドッグクラッチミッションでも十分であるように感じる。

2015年6月12日金曜日

冒険ライダーの風間深志さんが撮影した、懐かしい写真が出てきた。第1回イーハートーブトライアル取材参加で写してもらった写真だ


下のサイトをクリックすると、1977年第一回からの写真ページが出てくる。イーハトーブ歴史観をクリックし、その第1回のスタート場所(ホンダが経営していたアクト牧場)最前列の向かって左から3人目が私である。

http://www.sukaheru.net/~ihatove/photo/index.html

あるときイーハトーブトライアルの企画と進行をやった万沢さんと成田さんがヤングマシン編集部を尋ねてこられ「岩手の山の中で2日間トライアルを開催するので、取材に来て欲しい」という話を持ち込まれた。

イーハトーブトライアルについては、大久保 力さんが著作した「百年のマン島」の497ページに書かれている。

ま、当時のバイク雑誌の中で、トライアルに造詣が深かったのは、1974年にSSDTへも参加した私一人。話が持ち込まれて当然だったかもしれない。

他の雑誌はというと、オートバイ誌であるという。オートバイ誌には親しい方がいたので、電話して取材するかどうか聞いてみると、前日の列車で出かけるという。そこで、ずうずうしくも同じ列車の指定席乗車券を一緒に購入してもらった。

そのオートバイ誌の編集部員は、その後、なんと冒険ライダー(バイクで南極、北極、エベレストなど挑戦で有名。現在、地球元気村というNPOを主宰する)となった風間深志さんである。

彼はレンタカーを盛岡駅前で借りたので、またもずうずうしく、宿泊先である七時雨山荘まで同乗させてもらう。盛岡の市街地を過ぎると、街路灯も一切ない真っ暗な砂利道。ひたすら山のほうへ進むとやっと七時雨山荘に到着した。

その七時雨山荘で、主催者からうれしい提案があった。なんと、成田さんが連絡用として持ってきたホンダのトライアルバイク(イーハトーブだったと思う)で、参加しないか、という話である。多少窮屈ではあるが、装具も成田さんのものを借用することで参加が決まった。

4ストローク125ccならガソリンの心配は必要ない。トルク、出力とも、ハードな走行には無理だが、あくまでもツーリングトライアルが主体だから、その心配はないという。

オフロードツーリングを楽しみながら、山中を駆け巡る。どこに立ち寄るか、どこにセクションがあるかは説明書が配られる。しかし、どのようなルートを走ればいいか、どこを曲がるのかについては、SSDTスタイル。赤いマークがあったら、その先を右に。青いマークがあったら、同様に左へ曲がる、というもの。

MCFAJのトライアルでも、公道を走る場合にはSSDTコースマーク方式を使っていたので、なんら問題ない。

オフロードツーリングを楽しみながら、途中のセクションをトライすることはとても楽しく、一部の緊張もあって、充実したイベントであった。

セクションをクリーンする。撮影はもちろん風間深志さん。トラブルもなく、楽しい2日間のイベントを味わった。これが一番大切なことだと思っている
 
途中のセクションでは、最初に書いたように、オートバイ誌の風間さんが写真を撮影してくれた。これは貴重なワンショットでもある。

右が主催者の成田さん。現在、日本のトライアル界を牽引する、成田 匠さんのお父さんである
 
セクションのある村に近づくと、各家庭からお子さんやお年寄りが道路に出てきて、手のひらタッチ(当時はハイタッチがなかった)、食べ物の差し入れなど、暖かくもてなしてくれたことが走馬灯のように脳裏に浮かぶ。

裕福な農村地帯ではないところでも、同様なもてなしを受けると、なんだか目頭が熱くなる。

第1回から数年にわたって、取材がらみで参加したが、なんだか物足りなくなって、あれから数十年ご無沙汰したまま。

3回目だったか、満を持して持ち込んだのは、SSDTで使用したオッサMAR(ミック・アンドリュース・レプリカ)。確か成績はかなり良かったと思うが、ガソリンが混合方式であるため、途中のGSで給油するときにも混合オイルを入れなければならず、面倒だったので、次回はTY250に決めた
 
ただ参加するだけではなく、1泊する普代村でチャリティなど、特別なイベントを設けても良いのではないか、という提案もしたが・・・

そして、回を重ねていると、このようなイベントも少しずつセクションが難しく、見ごたえのあるものになってしまう。つまり、参加するライダーの意向を聞いて、それに沿うようなセクションを作ってしまうのだが、それが問題発生の元となる。

有名なSSDTでさえ、一時期は世界選手権のチャンピオンが満足できるようなセクションが造られ、その結果、けが人が多く出てしまい、批判を浴びたので、現在は昔に戻して、誰もが楽しく走れる(といってもかなりタフなコースやセクションもあるが)ようなレベルにしている。クラシックトライアルバイクのクラスもあるようだ。

つまり、イーハトーブトライアルも、初心が大切。2日間での減点がゼロ、というライダーが複数居たってかまわないはず。そのためには、誰もが感激するような、特別な企画が必要ということである。

最後に参加したときには、漫画家の伊藤信(いとしん)さん(すでに故人)のアシスタント役だった。所有していたTY250での参加。いとしんさんはTY125
 
このように、最初がどうだったのか、ここに立ち返れば、大きな事故になるようなこともなかったと思うのだが・・・違うかな~

2015年6月2日火曜日

数式を使わない、クルマの走行安定性の話・12/17


エンジンブレーキ状態での挙動安定性が、ばかばかしい事故を防ぐ

クルマの姿勢安定性を見極める最良の手段は、アクセルを放した瞬間に現れると思 う。足で掻くこと(駆動力を路面に伝える)で安定性は高くなるのが普通。それの反対になれば不安定要素は非常に高くなると考えた。

エンジンブレーキ状態で何も起きなければ、ドライバーは僅かに起き始めるクルマの挙動を感じて(これが大切で、大きく挙動を乱したときにはコントロールは難しくなる)、それに対処するためのドライブテクニックなど必要なくなる。つまりパニックになる限界点がクルマ自身で高くなるようにできれば、例えドライバーが持つところのオーバースピードでコーナリングを開始し、勝手に危険を感じてその途中でアクセルを離しても、クルマが挙動を乱さなければ何事も起きないはず。

例えば、足の速い動物が崖を駆け下りるとき、自身が落下する速度よりも早く足を動かし、常に前進させる力が加わっているから、転倒することなく下まで到達できるが、それでも、崖の高さが高くなれば、疲労と落下速度に足を合わせることができなくなり、転倒することになる。しかし、これは自然界における、足(タイヤではグリップ)のグリップ限界を超えた状態で発生することを、それ以上の早さで動かすことでグリップを回復させることにより生まれる、と考える。とはいうものの、いくら足の速い動物でも、崖の途中で向きを変えることはできない。

それはつまり、前足のどちらかに対して、ブレーキが掛かるように作用させなければ、ベクトルを変化させることが不可能であるからだ。落下に近い状態から、右もしくは左にベクトルを変えるということは、落下速度よりも早く動かしていた足を止めることになり、グリップとコントロールは失われるため、転落に結びつく。これをクルマに例えればスピンになると思う。

では、クルマにおいてはどうなのであろうか。タイヤの持つ物理的なグリップの限界点は、タイヤをどのように動かすかでも大きく変化する。ポテンシャルを確実に引き出せるサスペンションとボディの設計が必要になることは明白。ところがこれが難しい。例えコンピューター上で理想的に動くサスペンションができたとしても、実際にクルマに取り付けて走らせれば、まるで違った動きを見せるからだ。

当然、設計思想どおりにクルマは安定した走行性を得られない。勢いサスペンションを固めてタイヤの動きを抑制したところで、もって生まれた素性は変わらず、クルマの挙動をダイレクトに感じる分、コントロールを失う前に、それをカバーできることで、いかにもクルマが良くなったかのように錯覚してしまう。しかし、実は良くなっていない。サスペンショ ンを固めて、コーナリングでのロールを制御すれば、どのクルマも全てタイヤの性能に依存することになり、クルマに合わせた特性も何も関係なくなる。

コーナリングでの安定性を確認する、最重要項目は、エンジンブレーキ状態で、いかに自然に曲がることができるか、それにつきるわけだ。これを高い次元で完成させることによって、ドライバーの疲労は少なくなり、ばかばかしい事故も少なくなると考えている。このような素晴らしい性能を持つクルマが、日本には存在した。それは2001 5月に発売となった、三菱ランサーセディアワゴン・ターボ・ラリーアートエディションである。標準モデルと同日に試乗会が行われ、標準モデルにおいても素晴らしい操縦安定性は、評価するに十分な性能である。(別に三菱の肩を持つわけではない。真実を伝えるだけである)強烈な真実は次号で・・・

2015年5月21日木曜日

コーナリングに強いクセを持つ、NC700Xのフロントタイヤをピレリ・SCORPION TRAILに変更して、問題を解決方向へ


NC700系におけるコーナリング(シビアではなく普通に角を曲がるときにも)の非常に問題となる曲がりこむクセは、これを乗りこなすライディングテクニック(テクニックというより、どう乗りこなせばいいかを気が付くことだが)は、それが出来ない人にとって、コーナーが怖くて、ワインディングがひとつも楽しくない、という現状が露呈する。

ネットで購入したピレリ・SCORPION TRAIL。ビッグエンデューロバイク用として開発したものだという。ドイツ製という表示がある
 
確かに、どのようなライディングスタイルなら、気持ちよくコーナリングを楽しめるのか、これを見つければ済むことなのだが、そう簡単な話ではない。

一言で言うなら、サーキットにおける排気量の大きなバイクを操るときの、半ケツ落しで膝を開き、ひじは突っ張らず、ハンドルを押さえないで、肩から入るスタイル。

このライディングフォームが自分のものになれば、楽しいワインディング走行となるのだが、しかし、それが出来る人は多くない。

先日のツーリングで、峠の頂上駐車場に、NC700Xを乗る若者が着たので「NCのコーナリングは楽しいですか?」と質問してみると、「コーナーでハンドルが切れ込んでくるので、それが怖くて、楽しくないです」という返事。

そこで、半ケツ落しのライディングで、ハンドルを押さえ込まないようにしながら、肩からコーナーに入るようなスタイルで、外側の足の太股でタンク(正式にはBox)を押さえつければ、自然にその足はフットレストを踏ん張ることになり、リヤが少しぐらい滑っても、振り回されることはないし、コーナーが楽しくなりますよ、と話しながら「よろしかったら、私の後ろについてきてもらい、どのようなライディングスタイルとなるか参考にしてください」、ということで、彼を引っ張って峠を下ってみた。

数十分後、止まって印象を聞いてみた。すると「あのような速度で片手運転でのコーナリングは、怖くて出来ません。しっかりと練習して見ます」という感想を述べてくれた。

このように、やはりXC700系のクセを御して乗る方が少ないことは明白。それを簡単に解決する手段は、NC750系に採用されているタイヤ、ピレリ・SCORPION TRAIL(スコーピオン・トレイル)に変更することである。

また、コーナリングばかりではなく、大型トラックが走ることで出来る轍跡の走行でもハンドルが大きくとられて、それを予見しながら走るのは疲れが溜まる。

どのような形でハンドルがとられるのか観察してみると、谷側(つまり低いほう)へ取られる(流れるとも表現する)のである。普通、このような路面状況であると山側に取られるはずなのだが・・・その理由は、タイヤの側面が強く当たることで、キャンバースラストが発生し、それは、山側にハンドルと持っていこうとする力が発生するからだが。

NC700系に標準装着されているBSタイヤは、ヒョットするとショルダー部分が柔らかく、それによる問題を引き起こす要因をNC700系が持っているということなのか。

ピレリ・SCORPION TRAILはドイツ製で、ビッグエンデューロ向けに開発したとある。BMWなどにあるバイクのことを言っているのだろうか。

フロントだけだがとりあえず交換して走らせると、タイヤ全体の柔らかさをハンドルへのショックで感じ取れる。更に、これは当然の用件なのだが、コーナリングでの巻き込むクセは大幅に低減。

更に、轍におけるハンドル流れも非常に少なくなった。普通に走らせられる状態なので、ツーリングバイクとしての性能は向上したと言える。

もちろん、半ケツ落しのライディングにも耐えることは、NC750DCTの1000km以上にわたる走行で確認できているので、疲労の少ないバイクに変更できたのがうれしい。

NC700系をお乗りの方で、コーナリングが不安定で楽しくない、と感じている方は、タイヤ交換の機会にぜひピレリ・SCORPION TRAILを選ぶことをお勧めしたい。ただし、まだ高価である。フロントの120/70ZR17で、ネットで安く購入しても22000円ぐらいはする。

2015年5月4日月曜日

不定期連載:数式を使わない、クルマの走行安定性の話・11/17


FWD車のフロントアライメントで、トーをアウトとする絶対的な理由

ヨーロッパ車における素晴らしく高速直進性のいいFWD車で、なぜそのようになるのか、これまで考えても見なかったが、あるとき、イタリアのフィアットを整備していて、とんでもなくおもしろい状況を発見した。それは、バックするとフロントの車高が低くなる現象である。前進方向では、この逆でフロントは持ち上がる。

なぜこうなるのかを考えながら、ホイールを外してみると、サスペンションアームに秘密があった。ストラットのそのサスペンションは、ロアアームが一見Aアームに見える。しかし、よく観察すると、そのアームは2本が組み立てられており、接合部にはゴムブッシュを使っているため、前後方向への自由度が非常に高い。

加速では前側にスピンドル軸が移動しようとする。しかし、ホイールアライメントのトーを僅かにアウト方向とすることで、タイロッドによりホイールは、トーがそれ以上アウトにならないよう規制を受け、その結果、フロントサスペンションを引き下げるような働きになり、速度を出せば出すほど、フロントは沈み込む力が加わり、高速安定性が高くなる。

この作用を無視して、フロントのトーをニュートラルかイン側にすると、非常にみっともないスタイルで走行することになる。つまり、タイヤの前側がつぼまる力を出すことにより、フロントは大きく浮き上がろうとするからだ。

高速道路で安定しやすい1代目、2代目ゴルフも同様で、アライメント屋で日本車のようなトーに調整されてしまうと、街乗りでは日本車のようにナチュラルでも、高速道路になると、ふらふら状態で、これも当時の日本車のごとくである。さらに、センターコンソールへ入れてある小物が、スタートの加速で手前に滑り出る。つまりフロントが大きく持ち上がっているのである。

ところが、このようになるゴルフでも、フロントのトーを僅かにアウトとすることで、高速安定性の素晴らしいヨーロッパ車へ戻るのである。もちろん、コンソールから小物は滑り出ない。

このようなことから、我が家にあるクルマは全て(息子のクルマも)、フロントホイールのトーを僅かにアウト側にしている。FWDではない、スズキのエブリイでさえ、昨年末の車検時にテスター屋さんでサイドスリップを計測したとき、スリップ量はアウト2mm(規制では±3mm)だったが、これは計算していたこと。

RWDでさえ、僅かにフロントのトーをアウトとすることで、走行安定性が高くなる。もちろん高速走行ばかりではなく、加速、制動時にも同じことが言える。

2015年4月24日金曜日

マツダCX-3に採用されたナチュラル・サウンド・スムーザーって何だ?その効果を検証する


CX-3に搭載されるエンジンは、なんと全てディーゼルだけ。そうは言っても、そのうちにガソリンエンジン搭載モデルの出現可能性は否定できない。つまり、マーケット次第だからである。

そのディーゼルだが、少しでも快適に、そして静かなエンジンとするため採用されたシステムが“ナチュラル・サウンド・スムーザー”と呼ばれるもので、ディーゼルに限らずガソリンエンジン(質量の関係で音は小さいから目立たない)でも発生する、コンロッドとピストンの、ある回転数と負荷による共振音を取り去ることが目的。

ディーゼルのノック音とも取れるカラカラ音だが、時と場合によっては騒音状態になるようだが、室内での騒音というより、室外、つまり周りに放射する音に気を遣って、ディーゼルの「うるさい」という悪い評価を、少しでも払拭させることが目的である。

本来、静かな「スカイアクティブ・ディーゼル」の更なる進化を目指したもので、動力性能に関係するものではない。

左はまだナチュラル・サウンド・スムーザーを押し込んでいないピストンピン。中央がナチュラル・サウンド・スムーザーで、これをピストンピンに圧入したものが右になる。わかり易くするため、一部をピンの穴から見せているが、本来はしっかりと入り込む構造
 
ピストンピンの穴の中に組み込むのだが、重量増による影響はどうなのだろうか。せっかく、ムービングパーツを軽く造り、気持ちよく回るディーゼルを造ったのだが、それは達成できているのだろうか。開発者に効くのを忘れた
どのような構造かというと、ピストンとコンロッドが共振するときに、どこかにダイナミックダンパーを取り付け、逆位相の振動を造れば、その造られた振動により、逆の振動はカラカラ音を打ち消すことになって、目的とする回転域と軽負荷時にピストン、コンロッドが暴れる音を軽減できるという発想である。

では、どこにそのダイナミックダンパーとなる装置を組み込むのかというと、それは、ピストンピンの穴部分である。

サウンド・スムーザーの構造は、中央部分が太くなっており、それをプレスでピストンピンに押し込むことで固定され、左右にはバネ鋼を介して、目的とする周波数帯を設定する小さな錘が取り付けられる。この錘がダイナミックダンパーの代わりをするのである。

このような周波数帯でカラカラ音を低減できるというが、その効果が目に見えているとはいえない
では実際にその効果はどうなのだろうか。これがなかなか難しい。当日は雨天ということもあって、走行ノイズが大きく、確認できない。また、完全に同じ仕様でなければ、これも判断が難しい。

そこでやってみたのが、停止してボンネットを開け、ニュートラル状態で、少しずつアクセルを踏み、エンジンからのノイズがどう変化するかテストすると、ある回転を境に(2500~3000)僅かだがエンジンからの音がいきなり消えることを確認できた。

それが、ナチュラル・サウンド・スムーザーの効果であるかどうかは不明だが、装備していない仕様では、そのような発見はなかったことを付け加えておこう。

CX-3は搭載されるエンジンの全てがディーゼルという設定だが、そのうちに・・・・・・
ディーゼルに限らず、エンジンからのカラカラ音は、ピストンコンロッドクランクシャフト、そして、クランクプーリーから放射される、ということを突き詰めた自動車メーカーがあり、それに対する対策を行ったことで、騒音を低減できた、という事例があるので、これを参考にして、更なる騒音対策をしてはどうか?ということをマツダの開発者にアドバイスしておいた。

2015年4月10日金曜日

巷に、まるでラリーカーを運転しているかのようなハンドルさばきが見られるのは何故だ


自動車教習所では、左折について、安全に曲がるには、教習生にどのように教えているのか。巷で見るドライバーの曲がり方からすると、十分でないような場面が多く出くわす。

左折では、出来るだけ道路の左側に寄り、左へ自転車やバイクが入ってこないようにするのが基本だが(それ以前の問題として、ブレーキを踏む前に方向指示器を出す、と言う訓練も十分に必要)、そうすると、素早いハンドル操作と、どの位置からハンドルを切ればいいかを、瞬間的に判断する必要に迫られる。

つまり、左へ曲がろうとする交差点で、どのくらい鼻先を交差点に突き出していれば、素早くハンドルをロックするまで切っても、左側を接触させないか、を知らなければいけない。

しかし、これをマスターするには、教習所内で脱輪、ポールへの接触を納得行くまでやらせる必要がありそうだ。

どのようにハンドルを切っていけば、クルマがどう曲がって、その判断が正しいのか、あるいは間違いなのか、教習生が自分で学習する必要があると思う。

集中できなくて、交差点を左へ曲がろうとすると、せっかく左側に寄って交差点に差し掛かっても、左の接触、脱輪を気にするあまり(特に電柱などが角にあると)、大回り、つまり一度右へハンドルを切って、左角に必要以上のクリアランスを作り、曲がることになる。果たしてそれでいいのだろうか。

自分一人の道路ではないので、曲がれればいいというものではないはず

左折でも交差点が広ければ、素早いハンドル操作は必要ないが、4m道路へ曲がるような場合は、素早いハンドル操作をするか(一度右へ切ってから左へという操作はしない場合)、ゆっくりとした速度で曲がれば、右に切ってから左へ曲がる、というような行為はやらないようだが、少しでも速度があると、どういうものか、一度右へ切ってから左へ曲がる、と言う行為が至るところで見受けられる。

左側を開ければ、そこにバイクや自転車が入り込む、という可能性を教習所で教えられているはずなのに、すっかり忘れる。

バイク乗りでもいろいろいるし、自転車ならなおさら。クルマと歩道の狭い間を走り、窮屈な思いをしてきたところに、広場(前方のクルマが右に寄ったため)が出来れば、ごく自然にそこへ行ってしまう。そして、次の瞬間、右側からクルマが押し寄せることになる。

でも、もし教習所で、どうして、何故を、徹底して教えられ、左折の場合は一度右へ切ってから左へ曲がるようなことをしてはいけない、と、教習所内のコースでも、ことあるごとに教え込んでおいたら、左折でポケット(隙間)など作るようなことはしないし、物理的に、一度右へ切ってから左へ曲がらなければならないような交差点では、十分に周囲(特に左後方)の安全を確かめるような習慣が身に付くはず。

そして、左折する場合、右へ切ってから、左へ切るな、と、息子にもさんざん言っておいたが、教習所を卒業してきたら(つまり免許を手にした)一度右へ切って、それから左へ曲がる、と言う習慣が身に付き、それを直させるのに時間が掛かった。つまり、教習所で矯正されていないということだ。

本人もこの曲がり方で何もいわれなかったと話していた。一度習慣になると、それを直すのは難しい。とにかく本人は、そんな操作をしている、と言う自覚がないのだから始末が悪い。

もっとひどい運転になると右折なのに、一度左へハンドルを切ってから右へ、という状況も見られる。

モータースポーツのラリーでは、コーナーを出来るだけ早く、そしてエンジン回転を保ったまま、ということを目標に、目的とする方向と反対にハンドルを切り、尻(クルマの後部)を振り出すきっかけの行為として行われる。

つまり、これはクルマを不安定な状態としながら、それをコントロールするための高度なテクニックであり、そのような状態での一般的な走行はありえない、というものだ。

そのあたりを十分に理解しないで、無意識の行為としてのハンドル操作を行うと、路面がスリップし易い状況では、クルマの後部が大きく流れ、コントロールが失われて事故を起こす。

さすがに雪国の人には見られない行為。降雪路でこのようなハンドル操作を無意識のうちにすれば、気が付いたときにはスピンして、事故になることは明白なのだから。

バイクに乗って、クルマの後についているとよくわかるのは、走行速度に関係なく、ブレーキを掛ける前に方向指示器を出し、左を開けずに左折をきれいに決めることの出来る人が、非常に少ないということ。

これは何とかしたいと常日頃思っているのだが・・・

2015年3月22日日曜日

不定期連載:数式を使わない、クルマの走行安定性の話・10/17


リヤのロール同位相制御が操縦問題を大きくする

一時期、リヤサスペンションの作動に、ロール同位相コントロールを行うことでコーナリングの安定を図る、というシステムを導入することが流行した。しかし、これには大きな問題点が二つある。ひとつ目は轍を斜めに通過したときに発生するもので、リヤが左右に振られ、まるでパンクでもしたかのような感じ。船が大きな波のうねりにもまれているかのような感じでもある。一瞬安定性を失い、速度によってはコントロールも失う。

ふたつ目は3車線の高速走行で発生する。たとえば、私を追い越して走行レーンに戻ったクルマが、いきなりブレーキングを行ったので、こちらはハンドルで車線を替える回避をしながらブレーキング。ここまでなら安定した状態を保てるが、私が回避したその車線に、前車(ブレーキングしたクルマ)がいきなり再度のレーンチェンジをしたので、こちらは元のレーンに戻るため、ブレーキングをしたままステアリングを切るといったい何が起きるのか。

何と最初にステアリングを切ったときに作用した(ロールしているので)、リヤサスペンションに対する同相が残り、この時点では逆相の作用となり、リヤの安定性が失われる。リヤのトーインが少しでも強い設定であると、オーバーステアとなりコントロールを失うことで、スピンに至る。こんなバカなことが有ってはいけないのだ。

ロールトーコントロールとブレーキングによるアンチリフトジオメトリーが、合併症を起こしたのである。こんなクルマを知らずに購入したユーザーがかわいそうである。この状態から大事故に至ったケースが有るのではないだろうか。但し、当事者がクルマの挙動を理解していないと、何が起きているのか・・・

このときには、トーの変化とキャンバーの変化が合併している。つまりキャンバースラストが作用するわけで、強烈な横力が発生して、リヤからクルマを振り乱そうとする。その力は非常に強く、ハンドルを軽く押さえているぐらいでは、姿勢を元に戻すことはできない。一瞬のトー変化はなにもクルマに影響を与えないが、そこに、キャンバーが加わると、バイクのコーナリングと同じ、キャンバースラストで、いきなり向きが変わるのである。

この特性を逆利用すれば、ロールしてキャンバー変化が発生したとき、キャンバースラストが起きないような、トーアウト設計するとその作用はでないのだろうが、ロールするたびに、タイヤのトラクションは低下することになるので、これもだめである。

フロントのロワアーム形状にも、クルマとしての資質が隠されている。LアームであろうがIアームであろうが同じことが言える。このアームには、走行中前後方向の力が常に加わる。この力をどこに分散するかである。設計のしやすさからすると、Iアームではフロント側からテンションロッドとすることが多い。回転半径やステアリングのラック取り付け位置などを考えると、フロント側へテンションロッドを取り付けた方がやりやすいのだが、この部分にどのような方向の力が加わり、それがボディに対してどのような力となって作用するかを考えたときには、あまり好ましい作用点とは言えない。

クルマがタイヤより入ってくる外乱をどのように受け、その力をどこへ逃がすかは重要なポイントになるはず。たとえばフロントにその作用点を取り付ければ、クルマの中心に対する力は強く働くことになるが、中心に近いところ、つまりロワアームであるとプッシュロッドスタイルにするか、L型のデザインを後ろへのばす形では、作用点がクルマの中心に近くなるので、そこから加わる力はそれほど大きくならない。その結果、”何か変な動き”を感じることがなくなるはずである。

2015年3月2日月曜日

メルセデスは旧車のパーツについても、積極的にユーザー側に立ったサービスを展開していた


欧州車は古くてもパーツが揃うから維持し易い、という話は旧車マニアから聞くが、メルセデスの場合どの程度なのかを知る機会があった。

我が家に存在したベンツ300(1953年式)の、現在手元にあるパーツは、ヒーターファン(左右にあるので対の2個)とボンネットオーナメント、そしてワイパーアーム1本だけ。後のボディ本体は処分してしまった。今から40年以上前の話である。

そして、これらの部品は、使い道がないのか、ゴミなのか?

メルセデス日本の広報部にメールして、必要なら差し上げますが、ということを、画像と共に送ったのだが、この機種については日本国内での需要がなく、必要ない、という話だった。残念、でもその後に続く内容は、日本の自動車メーカーでも取るべき内容ではないのかな、と思うものだった。

メルセデスは、ドイツ本社で、壊れた部品を回収し、それを再生する(本社ばかりではないと思う、サプライヤーも関係しているだろう)サービスを行っている。

リマン部品と呼び2010年より部品販売の世界戦略の一つとしているようだ。

ATなどはファクトリー・リビルドとして、40年以上前から普通に行われている。

日本でもアイシンAW(トヨタ系)が積極的にATのリビルドを行って、トラブルを起こしているATを下取りで受け取ることにより、安価な再生ATを市場に送り出している。

他の日本自動車メーカーは、このATリビルドに対して、あまり積極的ではない。そのため高価である。

もっと積極的に再生部品の販売を行い、古いものを大事にする文化を根付かせて欲しい。でも、ダメか~。日本政府が古いクルマの税金を高くするようでは。欧州では(全部ではないが)古くなればなるほど自動車税が安く、或いは無料になるという政策を打ち出している。

日本では、古いものは「悪」的な考えが政府、自治体にはあるようで、貴重な建造物を取り壊し、そこに新しい建物を建てるという図式が普通だから、このような考えを払拭しない限り、住みやすい日本など実現しないだろうと思う。

自動車のポンコツや(解体屋)に行けばわかるのだが、事故車ではない、まだ十分に走行できるクルマが解体を待っている。このような状況は、世界中を探しても日本だけである。何故こうなるのか、使い捨てが絶対優先の文化か?そうじゃないだろう。

2015年2月22日日曜日

不定期連載 数式を使わない、クルマの走行安定性の話・9/17


リヤサスが作動しなくても問題を感じなかったレーシングマシン

FWDにおけるフロントWウイッシュボーン・サスペンションの採用は、リスクが多すぎる。構造上で考えると、設計値どおりに長年にわたり作動させることが不可能である。ブッシュの劣化、ダンパーの劣化、ボールジョイントの磨耗、アームの劣化などによってジオメトリーが狂う。

いくら等長のドライブシャフトであっても、加速、減速によってエンジンの傾きが発生すれば、等長なんて関係なく、ジョイントの左右角が変化し、トルクステア(どのような状況でトルクステアが発生するかの分析が出来ているので、今では死語)が加速時でも、減速時でも発生する。これは前記のことと関係し易い。

Wウイッシュボーンでも、アンチダイブやアンチスクオート、ダイブダイブによるキャスターの増加など、複雑な動きに対する設計を追加しないなら、このような状態は発生しにくと考えるのだが。

クルマの自然な動きに反する作用をさせれば、当然その反撃に遭うわけで、正しい動きを持続するのが難しくなって当然。特にアッパーアームの強度と剛性、取り付け点における強度、剛性、精度も問題になる。

クルマの荷重をどこで受けるかも問題となる。サスペンションのアームで受けることはさけるべきである。考えてみれば当然のことで、荷重に対抗してサスペンションアームは曲げや捻りの外力が入る。サスペンションとして作動する以外の外力が加わり、ブッシュは思わぬ方向に変形し、ダイナミックアライメントばかりでなく、ジオメトリーまで悪い方向へ変化する。

こうなればブッシュのヘタリも早い。さらに、アームのボールジョイントにもクルマの荷重が加わることになり、摩耗が起きやすい。ただしWウイッシュボーンやマルチリンクでも、ストラットのような形で、ナックルに対してショックとスプリングを付けることにより、直接荷重を受けることができるし、プログレッシブに作動させることも可能だ。足回りの耐久性を考えて、このような設計を施したクルマもある。

日本車におけるサスペンションの非常に悪い点を見たことがある。それは、'89年のルマン24時間でのこと。ルーティングでピットに入ってきたマツダ・ロータリー。ドライバーチェンジ後に、スタートのOKを出そうと思ったメカニックが、なにげなくリヤフェンダーを見ると、何かで擦れた穴があることを発見した。

ピットの上からマツダチームを24時間張り付きで取材していた私も(実際には24時間ではなくレース当日早く起きてサーキットへ行き、レースが終わってホテルに帰って、メディア関係者と打ち上げだから40時間以上)、同時にそれを発見していた。タイヤで擦れて穴が開いたのだ。なぜそうなったのかというと、ダンパー&スプリングの取り付けボルトが脱落したからだ。ただそれだけ、と見てしまう人もいるが、そこには大きな問題が他にあったのである。

サスペンションのアームがどこかにぶつかって、ボディが路面を擦るようなことはなかったが、サスペンションとしての機能は果たしていないわけだ。にもかかわらずドライバーからは何もコメントがでていないのである。

つまり、このクルマにはリヤサスペンションは必要なかったのである。非常に情けないことだが、サスペンションスプリングは、ただの車高調整用のスペーサーでしかなかったわけだ。サスペンションが有ろうが有るまいが、クルマの操縦・走行安定性に変化がないなら、とてつもなく金と時間をかけてサスペンションを開発する必要はない。

このような状態を経験したマツダは、改良に成功し'91年のルマン24時間に見事優勝したのである。

ボディ剛性のなさがサスペンションとして機能していたとしたら、これほど情けない話はないが、たぶんそのとおりであると思う。あるいは、現在のF1のように、フロントサスペンションの動きを各チームごとに計算し制御して、タイヤやシャシー構造の特性から、一時期は作動させないで(年月によって変わっているので決め付けられない)、リヤのみに作動ストロークを造ることにより、バンピーな路面でのステアリング安定性と正しいダウンフォースを確保していることから、マツダREも、もしかすると、リヤの代わりをフロントが作動を受け持っていたのかもしれない。

グラチャン(グランドチャンピオンシップレース)をフジスピードウエイのバンクを使ってやっていた頃、現・筑波ガレージの社長・堀氏は、当時のサスペンションセッティングを見て、これなら、サスペンションなど必要ないと、自分でシャシーをサスペンションなしで造り、見事に優勝したのである。