テレスコピックスタイルのフロントフォークを採用する日本車では、一部のBMWのような形式のものと違って、走行中におけるフロントフォークの摺動フリクションは多い。
そのため、小さな衝撃では、サスペンションが作動する前に、バイク全体がその衝撃を受けて、ライダーにショックが伝わる。特にフロントブレーキを使うと、軽く制動を与えている場合でも、テレスコピックには捻る力が加わるため、その分フリクションが増える。
オフロード系のバイクであるとサスペンションストロークが大きいため、インナーチューブとアウターチューブ(ボトムケース)の接触間隔が大きい分だけ、制動時のフォークに対する入力が分散される結果、ロードバイクよりもライダーに対する衝撃は少ないようだ。
そこで、この作動フリクションを少しでも低減して、乗り心地を確保する作戦を立てた。
どのようにやるかについては、あるサスペンションメーカーの、広報の方から伺っていた、インナーチューブのバフ掛けである。
硬質クロームメッキがされているので、当然ピカピカで、表面は滑らかに見える。それでも、徹底的にフリクションを少なくするということから、そのメーカーには「名物おじさん」がいて、とことんインナーチューブにバフをかけるらしい。
同様なことをNC700Xに行ってみることにした。万が一失敗(バフ掛けの最中に重要な部分に傷をつけるなど)したときのことを考慮し、オークションで左右のフロントフォークを購入。
ただし、NC700Xには仕様によってスプリングの長さなどに違いがある。私のバイクはローダウンなので、その諸元から同じものであることを確認して購入。
作動油を抜いてからカラーとスプリングを取り出し、さらにインナーチューブ内の作動油を再使用するため、しっかりと容器に移す
バイクから左右のフロントフォークを取り外したら、ボトムケース下にあるフォークソケットボルトを取って、作動油を排出。これでインナーチューブが限界まで引き出せるため、バフ掛けによる有効なストロークが増える。
後は、自宅にある双頭グラインダーの片側をバフに交換(使うので常にバフが付いている。交換したときにはバランスを確実に取らないとグラインダーが暴れて作業性が落ちる)して、研磨剤を塗りつけて作業開始。
見た目にも光り輝いてきたので、これにて終了。バフ掛けに要した時間は1本当たり40分。もっと磨いてもいいのだろうが・・・
双頭グラインダーの片側にバフを取り付け研磨剤を時々塗布しながら、片側40分かけて研磨した
組み立て、作動油の量を確認調節。多すぎると、作動したとき内部の空間が不足し、その分空気圧の反発となって、作動量が低下する。少ない場合には、伸びきったときに減衰力がなくなるのだが、そこまで低下することはない。
組み換え後のテスト走行はまだやっていないが、気候が良くなってきたので、そろそろ・・・。結果が出たときには、またレポートしたいと思う。
NC700Xだけではなく、その後のNC750Xでもフロントフォークのフリクションについては開発側も気になっていたようで、最近マイナーチェンジされた同車では、フロントフォークの作動性を向上させる改良が加えられた。どう変わったのか、機会があれば試乗してみたい。