プラグは電極の向きにも注意する
ガソリンエンジンの燃焼に重要な点火プラグだが、指定のものが取り付けられていれば良い、というものではない
点火プラグとガソリンエンジンの燃焼(爆発と言う定義ではない)については、その要求度が進んで、これまでとは違った形状のものが登場してきたが、それでもそこに要求されることは、経験上それまでと変わりないと思っている。
つまり、そのレベルが高くなっただけのことで、あくまでも目的は、どの回転、どんな負荷でも完全燃焼、つまり未燃焼ガス(HC)の発生を抑制することにある。ただし、そこには大量のEGR投入で、燃焼温度を下げNOxの発生を最小限に止めるため、どうしても燃焼しづらい状況が起きる。
それを少しでもカバーするために、多様な形状の点火プラグ(電極周りだが)が開発されてきたのだが、それだけでは追いつかないと常日頃から思っている。それは、燃焼室内におけるプラグ電極の向きである。
確実に燃焼させようと吸気時には、タンブル(縦の気流回転渦)やスワール(横の気流回転渦)を発生させ、プラグの電極に混合気をぶつけるような事をさせるばかりではなく、混合気を回転させることで、燃焼速度を早くして、性能アップを図ろうという策略も見逃せない項目だから、各メーカー必死に実験を重ねている。
そうは言っても、吸気量が少なく、吸気流速が上がらないアイドル時や、低回転時などでは、タンブルもスワールも設計値通りの状態で発生せず、理想的な燃焼からかけ離れるのは必至。それを少しでもカバーできるのが、点火プラグにおける電極の向きと言える。
この電極の向きに関する研究は、ホンダの初代インサイトエンジン研究で行われたことがあり、そのときには、リーンバーンエンジンであることから、混合気が薄く(空気とガソリンの重量比で、一般的なエンジンでは14.7:1を基本とするが、それを20:1前後まで薄くする)、プラグギャップの間に混合気が流れ込まなければ、燃焼とならない可能性があり、それはどのような条件で発生するか、また、どうしたら回避できるか、と言う目的で、プラグを締め付けたときの電極の向きに着目して研究がなされた。
その結果、ある程度点火プラグで解決できる、と言う結論となって、製作上の手法に手を加えていないが、トヨタでは違った見方をしていた。
トヨタは、アイドリングのバランスのよい燃焼にこだわりを持っており、その回転に乱れが有ることをOKとしない。そこで、プラグ締め付け後の電極の向きに着目し、出来るだけ、吸気バルブ側に電極の開放部(接地電極の反対側)が来るよう、プラグ製造メーカーとネジの切り出し位置を打ち合わせするだけではなく、自分たちも、プラグ穴のネジに対する切り出し角度を決めた。
このように製作したことで、トヨタエンジンについては、点火プラグ締め付け後の電極位置が、とんでもない方向にあることはないので(もちろん日本のプラグメーカー品での話し)、改めてプラグの向きを合わせても、アイドリングはそれ以上変化しないはず。
他のメーカーでは、納得の出来る位置にするためには、気筒数プラス2~3本のプラグを必要とするが、ガンバッテこれをやると、アイドリングの乱れが解消することは多い。
なお、レースの世界では、この電極の向きに対して、重要視しており、目標となる角度を得るため、ガスケットと共にシム(薄いワッシャ)を挟んで、対策している。目的は、アイドリングではなく、アクセルを踏んだ瞬間の、100分の1が勝敗に影響し、それが締め付け後のプラグ電極の向きと関係するからだと言う。
1.点火プラグは、スパークする電極間に混合気が入り込まなければ、燃焼に結びつかないわけで、シリンダーヘッドに締め付けたときの、吸気バルブとの位置関係が重要と考えている。
2.プラグ用のソケットを使用し、そこに使うエクステンションには、プラグの電極開放側の位置が分かるよう、ガムテープを貼り付けたり、エクステンションの上側にヤスリで凹みを造って、ラチェットレンチを外したときに分かるよう細工する。
3.指先だけで締めこんでから、ラチェットレンチを使用して、しっかりと締め付ける。締め付けの要領は、近いうちに説明するが、新品のプラグを使用する場合と、継続使用では、締め付けの感覚が少し違うことになる。
4.ラチェットレンチをエクステンションから外して(絶対にプラグソケットを抜いてはいけない、締め付け角度が分からなくなる)、マーキングした位置から、電極開放位置がどこにあるか確認。吸気バルブ側を向いていればOKとなる。
5.ヘッドの中心から見て90~100度ずれているのはベストではないが、OKの範疇に入れる。ただし、他の気筒のプラグや新品と交換しても、このような角度になってしまう場合に限る。