アースの重要性を、ある高級車で身近に体験したことにより、そのことへのこだわりを強く持つようになった
クルマのアースと言えば、 バッテリーのマイナスターミナルから、ボディやエンジンに太いコードを使って接続するのは当然で、太いコードを使う理由は、セルモーターを回す瞬間に大電 流(数百アンペア)が必要になり、それに対応させるためだ。当然プラス端子からも、セルモーターにはマグネットリレーまで、同様に太いコードが繋がってい る。
ここまでは当たり前のことであり、どのクルマも当然のように配線が行われるのだが、バッテリーをリヤのトランクに取り付けていた、問題のRR(ロールス・ロイス)ベントレーは、問題のトラブルを見つけるのに数週間かかってしまった。
あるとき知り合いの修理工場に大きなクルマが入っていた。それがRRベントレー。トラブルと言うのは、セルは何とか回るのだが、エンジンが始動しない。始動するときもあるが、その次には不能。翌日は一発で始動する。これの繰り返し。
始動しそうで、連続しない。セルを回すことをやめた瞬間だけ数回燃焼する。そこでOBDⅡソケットに(トラブルコードを出力するソケットがある)スキャンツールを取り付けて、どのようなトラブルが有るのか検証するが、問題は発見できない。
点火システムなど交換したが、解決の糸口がつかめない。そのうちに、バッテリーは元気でも、セルが回る気配さえなくなってしまう現象も起きる。
そ こで次のステップとして点検したのは、バッテリーからのアース。前述したように、このクルマはバッテリーがリヤのトランクにある。そして、そこからのマイ ナスは、トランクフロアからボディの下にコードを出して、太い端子をボルトでボディに固定している状態。つまり、完全に露出しており、周りの環境をもろに 受けてしまう設計だ。
このあたりがおかしいのではないか、と言う判断は、ある現象にヒントがあった。それは、なんとなく変な臭い(イオンの臭いで、電気がスパークすると発生する)を感じたことに端を発する。
そ の臭いの場所をたどると、なんと、アースコードとボディの接続が、トラブルを引き起こしているところに行き着いた。新車のうちならこのようなことは起きな いだろうが、数年間使う間に端子とボディの間に腐食が生じ、セルを回すときの大電流は何とか都合をつけても、インジェクションや点火装置を作動させる電流 は、セルに食われ十分ではなかった、と考えられる。
ボルトを取り、接続状態を点検すると、ボディ側だけではなく、端子側にもスパークによる腐食が見られ、緑青(ロクショウ)が発生していた。これをディスクサンダーで削り、導電グリースを塗布して、しっかりと締め付ければ終了のはずだったが、もうひとつ問題を抱えていた。
そ の残る問題点は、セルモーターのマグネットスイッチからプラス電源を取るのはいいとしても、そこに使われるコードの太さが十分ではなく、大型のオーディオ や補助ランプなどの追加で、設定以上の電流が流れ続けた結果、発熱し、コードに使われる銅の腐食が発生、抵抗が増していたことも不調の原因だった。
パワーアースの取り付けで、電位差が大幅に小さくなり、始動直後のアイドリングが安定した
このようなことから、電流の流れを自由にすることは非常に重要で、ただ単純にバッテリーのマイナス端子とボディが繋がっていればいいというものではない。
特に、端子とボディやエンジン回りとの接続に、接続抵抗と言うものが発生するとしたら、あまりうれしくないことの起きる可能性がある。それはセンサーからの信号に遅れが生じたり、大電流が必要なときにも一瞬の遅れとなって現れたりする。単純な話だが、ホーンの鳴るときの立ち上がりにも差が出てくることすら見受けられる。
このような経験からバッテリーにおけるアースはいつも気に掛けている項目。つまり、これを解決するには、アーシングの取り付けは重要と考えて、初代フィットにウルトラのパワーアースを実装してみた。もちろんバッテリーを消費しているときの電位差を計測し、パワーアースを取り付けることで、それがどのように解消されたかの検証もする。
ウルトラのパワーアースの特徴は、ターミナルブロックやそこに使われるボルトとナット、コードの端子、付属のボルトなどに金メッキを施していることで、安定した接続状態を長く保つことを狙っている点だろう。
取り付け説明書には、ある程度詳しくその取り付け位置が書かれているが、クルマによってはバッテリーのマイナス端子だけではなく、バッテリーそのものを取り外す必要があるので(フィットなど)、よく観察してから作業にかかることが重要だ。
取り付けを終了させてから、再び同じ条件で電位差を測定すると、その差は6分の1に低下していた。もちろん取り付け前の電位差64mmVでも問題となる数字ではないが、使われる電子・電気パーツが、ストレスなく作動する条件は、確実に確保できたと言うことは言えそうだ。
なお、アーシングはマイナス側に電流センサー(最近はバッテリーの管理を正しく行って、オルタネーターの負荷を減らし、燃費に貢献させるため、このような装置の取り付けが多い)の付いたクルマは、取り付けができない。無理に取り付けると、バッテリー上がりが発生する。
そして、取り付けが終了し、バッテリーを元に戻したら、時計やラジオのチューニングばかりではなく、それより重要な項目がある。それは、パワーウインドウのオートに組み込まれている、挟み込み防止機能の回復である。ホンダ車のように、その設定がなされていないと、オートにならなければ、事故は発生しないのだが・・・
1.ウルトラのパワーアースセット。端子やターミナルブロック、付属のボルトやナットに金メッキを施して、耐腐食性を大幅に向上させているのが特徴。もちろん、追加のケーブルを接続する場所は、時間をかけて探し出した部分だ。
2.バッテリーのマイナス端子とシリンダーブロック間の電位差を計測すると、64mmVだったが、ヘッドライトとキーをONとした関係で、HIDが安定するまでに少し時間がかかったのか、数字の変化が大きかった。ヘッドライトを点灯した瞬間は100mmV近い電位差があった。
3.ボディなどへの追加部分では、既存のボルトを使うわけだが、塗装を剥がして、金メッキされた端子がしっかりと密着するようにする。当然、錆を防止したいので(防錆鋼板が使われているとは思うが)、浸透性潤滑剤などを吹き付けてからボルトを締める。
4.組みつけが終了し、付属のタイラップでたるんだコードをまとめる。特にエキゾーストマニホールドへ接触させないように取り回すこと。バッテリーを載せてから、再度同じ部分での電位差を測定すると、ビックリする値に・・・
5.9mmV、これがパワーアースを取り付けてからの電位差。もちろんヘッドライトとIGキーをONとしているが、ほとんど電位差の変化はなく、ヘッドライトを点灯させた瞬間は10mmVだったが、直ぐに9mmVとなり、安定した。
6.忘れてはいけないのが、パワーウインドウのオートシステムの挟み込み防止機能を復帰させること。ウインドウを全開にしてから、軽くスイッチを引き、ウインドウを閉めてからも3秒間、そのスイッチを保持すればOK。もちろん、挟み込み機能は正常か、のテストをしておくことは大切。
ULTRA 永井電子機器株式会社
ウルトラパワ−アースー, ULTRA POWER EATH