研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2014年9月13日土曜日

新しいエネルギーが加わりバージョンアップされたスズキ・ワゴンR


ワゴンRがハイブリッド仕様になって登場した、といっても過言ではないシステムを搭載してきた。それは、オルタネーターをモーターにも使う、マイルドハイブリッド方式の採用。ニッサンセレナでは一部の仕様ですでに確立させているが、軽自動車となると、どこのメーカーも「只今考え中・・・」で止まっていた。さすが先を行くスズキ(ゴマ摺りではない)、それをやってのけた。


スティングレーに試乗。明らかに、軽自動車の高級モデル、と言える部類だが、価格が気になるところ

それまでも、エネチャージという名称で、減速時を重点にオルタネーターの発電を、搭載するリチウムイオンバッテリーや鉛バッテリーへ蓄える方式により、加速時のオルタネーター負荷を低減。それによってエンジンの駆動効率を高めて、燃費と動力性能を引き上げていた。

このシステムを更にバージョンアップしたのが、今回のS-エネチャージである。オルタネーターをスターターモーターにも使うことにより、アイドリングストップからの再始動では、セルモーターのピニオンギヤとリンクギヤ、更にギヤからの唸り音など、不快な音がなくなることで、非常にドレッシーなアイドリングストップを実現することとなった。

そして、そのモーター(12V1.6kW)を加速時のアシストに使用し、動力性能をアップするのではなく、燃費アップの方向へ使ったのである。そのことが非常に評価できる。

つまりアシスト力(リチウムイオンバッテリーの電力を使用)をプラスして、中速域の加速性能を大きく高めるには、このモーター特性では能力不足(基本的に小さすぎる。それ以上を求めるにはエンジンルーム内のスペースとコストが問題)。


S-エネチャージシステムは、これから他の機種へも採用する

最大トルクが大きくエンジン始動にも使える能力を持っていても、それがそのまま高回転まで持続しないのがモーターであり、アイドルストップからの始動用として、その性能を発揮させるとしたら、今の状態では両方がうまくいかない。

アシストモーターとしての実力は3000回転で4Nm(50ccバイク並み。プーリー比で見ると1/2ほど減速するので、中速域のアシスト用としては実用性が乏しい)という話であるし、モーターばかりではなく、バッテリーに対しても同様なことは言える。


ベルトは専用としたため2本使用。ISGベルトは強い駆動が加わることから、テンショナーはこれまでとは逆の位置に取り付けている

使用する部品の共通化は当然であり、その中で最大に効率を追求する。その結果、鉛バッテリー(最初の始動ではセルモーターを回し、アイドルストップからの再始動ではISGに電力を与える)とリチウムイオンバッテリーは、これまでのエネチャージシステムと同じもの、ただし、制御系が大きく違い、最大電流値も違うことから、それに耐えるものを新しく開発した。

このオルタネーター・モーターには、インバーターが組み込まれているので、部品として購入すると自作EV用に使える??と考えたのは間違いではないと思うが。

オルタネーターをアイドリングストップからの再始動用モーターとして使うと、その穏やかな始動状態に感動する。雑音がないからである。

更に良いところは、クランキングスピードがセルモーターで回したときの300回転から600回転となることで、走り出すまでのタイムロスを考えた場合、初速が速いことから、エンジン再始動と同時にアイドル回転を大きく立ち上げる必要もない。結果的に穏やかな感じが強くなる。

また、S-エネチャージでも走行中からアクセルを離して停止まで持ってくると、時速13キロほどでエンジン回転計は仕事をやめて、いきなりゼロを指すが、エネチャージを採用したばかりのときのワゴンRと違って、突き出し感(減速の強さが途中から少ないほうへ変化することで起きる)は発生しない。

これは、CVTと副変速機の制御を改良した結果で、同社のハスラー試乗のときに感じたため、開発者にそれとなく聞いてみると「実は、ワゴンRのマイナーチェンジから変更しています」とのこと。

何が変わったのかは、五感を研ぎ澄まして運転するとわかる。

エンジン回転計がゼロを指すか指さないうちに、エンジンからの唸り音と振動を感じる。つまりエンジン回転が上がり始め、エンジンブレーキを効果的に作用させながら、突き出しを発生しない状態を作り出しいるのである。

副変速機とCVTとのやり取りで、一番難しいのは副変速機のギヤをハイからローへダウンシフトして、スムーズにエンジンブレーキ状態を停止寸前まで持っていくことである。

突き出し感があったときには、CVTを最大にローレシオとし、そこまでは効果的に減速させるのだが、副変速機はハイギヤのまま。そのまま停止までやろうとすると、エンジンの回転はとんでもなく低くなってしまい、例えばその状態で再始動が要求されても、トルクコンバーターのロックアップを外し、そしてクランクをまわしての再始動は、どう見ても時間差が多くなって思わしくない。

それでは減速の途中でハイギヤからローギヤへダウンシフトしたらどうなるか。その切り替えを瞬時に行う必要があり、結果として、大きなショックが常に発生してしまう。もちろんトルクコンバーターのロックアップはされた状態でないと突き出し感が出てしまうので、そう簡単な話ではない。

これまでは副変速機をハイギヤのまま、トルクコンバーターのロックアップクラッチを切り離さなければならず、その結果、突き出し感が発生してしまっていたのだ。

それを排除するためには、乗員が違和感を感じないうちに副変速機のギヤをハイからローにシフトすればいいのだが、それがなかなか難しい。でも、スズキはそれをやってのけた。

副変速機をハイからローへシフトしたときにショックを感じないようにすれば良いわけだから、トルクコンバーターのロックアップクラッチを滑らせながら、副変速機のシフトを行うように改良。

ロックアップクラッチが滑っている最中(つまり半クラッチ状態)であれば、副変速機のギヤをハイからローへダウンシフトしてもショックは感じないのだ。ローギヤへのシフトが終了したら、エンジン回転がスムーズに上がるよう、素早くスムーズにロックアップを開始する。ただこれだけのことだが、それの見極めが非常に難しい。

これにより、エンジン回転計が動きを止めても、クランクシャフトは回り続けており、その最中にダウンシフトするので、ショックを感じさせないのだ。エンジン回転計が常に動くような造り方をすれば、ハッキリとわかるのだがな~。


アイドリングストップしている最中の不用意な再始動を防ぐため、ブレーキペダルのにストロークセンサーを取り付けた。これにより、より快適なアイドルストップは、更に安定した

アイドリングストップでも進化が見られた。それは、不用意な再始動を誘発しない制御を加えたこと。何が加わったのかというと、ブレーキペダルにストロークセンサーを取り付け、ペダル位置が決まった高さに戻らないと再始動しないというもの。これで、アイドリングストップした直後に、いきなり再始動したり、再始動したと思ったらストップしたり、などという、チグハグな行動はなくなった。