研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2014年12月21日日曜日

バイクの駆動系にトーショナルダンパーの硬さアジャストを付ける


クルマでは、トーショナルダンパーのことを、駆動系の捻り振動や曲げ振動低減のために使用されるダイナミックダンパーである、と説明しているが、バイクの場合ではリヤスプロケットばかりではなく、クランクからの1次減速ギヤ(クラッチなどがある部分)の部分に組み込まれることも多い。ただ、クルマのようにダイナミックダンパーとしての目的は無い様に思うのだが。捻り振動はバイクでも目的に入るだろうが、ややこしい話は別として・・・本題に入る。

ダンパーラバーはスプロケットが取り付けられるリヤドリブン・フランジとホイールハブの間に挟みこまれ、加速・減速でのショックを和らげる役目なのだが、経年劣化するとその感触が悪さを発揮する
 
バイクのリヤスプロケット取り付け部分には、ギヤの変速ショックやアクセルの開閉で起きるギクシャク感を低減する目的で、ゴムの挟まれている場合があり、それが災いというか、感触の悪い方向へ劣化する体験をしているのである。

全てのメーカーが、このダンパーゴムを採用しているわけではなく、ホンダ車に多い。

例えば、同じオフロード車であっても、ヤマハTT250Rでは、リヤのハブに直接スプロケットが取り付けられているのが、同年代のホンダのXLR250Rでは、ストロークの大きなゴムダンパーを間に挟む感じで組み立てられる。

もちろん、このゴムダンパーは簡単に交換できるので、シフトショックやアクセル開閉の感触が悪くなったら、交換すればいいのだが、そのダンパーが絶対取り付けなければならないダンパーだとしたら、そのバイク造りは、少し疑問がわく。

ここのゴムが劣化(熱による加硫が進み硬化する。更に摺れて磨耗する)して、ダンパーのストロークが多くなってしまうと、僅かにアクセルを開けたとき(エンジンブレーキ状態の減速中から穏やかにやると)、一瞬遅れて動力(駆動力)が発生するかのように感じてしまう。

どのようになるかというと、エンジンの回転が空転した後となるので、ガツンという軽いショックを伴ってから駆動力が伝わる。実に愉快な感触なのである。

開発実験で、過酷な走行後を長距離、長時間、高温・低温にわたって行わないと、一般ユーザーが感じる経年劣化による不快感は出ないだろうから、それならそのような状態となった(絶対同じではないが)ダンパーゴムを作って、感触を確認すれば済むこと。

で、その確認が出来た後の処理が問題。ただ単純に「ダンパーゴムの耐久性を引き上げる。とか、交換すれば済むこと」とやったのでは、次に進む楽しいバイクは出来ない。

リヤスプロケット取り付け部分にゴムによる緩衝装置として、絶対に必要な状態であるなら、そのダンパーストロークを可変にする装置を組み込めば済むはず。

スプロケット取り付けボルトを利用して、ダンパーゴム側へ突き出している動力伝達部分をカム状にし(挟んだスチールプレートを膨らませるような形でも良い)、これを外部から回しゴムダンパーへ動力を伝える部分の厚さや圧力を可変にすれば、新車のときからライダーの好みに合った、駆動系の伝わり方が選べるはず。

新車の時には、まるでシャフトドライブでもあるような、アクセルの開閉に間髪を入れず反応していた、気持ちの良い感触のバイクが、1万キロ近くなると、「あのときの感激はどこへ」の寂しさも防げる。簡単に出来そうな感じなのだがな~

2014年12月8日月曜日

不定期連載 数式を使わない、クルマの走行安定性の話・6/17


バイクで大切なのはステアリングヘッド

バイクの話をしてみよう。クルマとはコーナリングにおけるスタイルが違い、リーンにおけるタイヤのキャンバースラストが、コーナーを曲がる力となる。では、直進時はどうかというと、これはクルマと同じことが要求される。フレーム剛性と、サスペンション剛性、そこにホイールとタイヤの剛性まで関係し、安定性を出す。

そして、その裏にはキャスター/トレール、タイヤの幅も考えた設計がなされるが、最近のレーサーレプリカのように、キャスター角が立っている設計は、短いホイールベースと合わせ、太いタイヤを使用して、コーナリング性能を上げても、ヒラヒラ感を求めた結果、自然の成り行きであのような設計になったもの。

タイヤが太くなれば、当然路面からの外乱は受けやすくなる。それをキャンセルするにはラジアルタイヤの採用であったり、トレール量の変更であったりしたわけだ。しかし、ここで大切なことはステアリングヘッドである。

バイクにおけるステアリングヘッドの役目は、コーナーを曲がるためばかりでなく、直進性と走行安定性を保つためでもある、と考えたらどうだろうか。このステアリングは感じないぐらいのストロークで、絶えずグラグラしながら、バイクのバランスを保ち続けている。

路面からの外乱は、直進時ばかりでなくコーナリング中にも受ける。つまりスムーズにステアリングヘッドが左右に動くことで、バイクのバランスは保たれることになるわけで、もしこのステアリングヘッドががっちり締め付けられていたとしたら、直進しながら横転するし、コーナリングするために、リーンしても旋回性能は発生せず、ハンドルをライダーが切る、という行為をしなければならない。

一度コーナリングを開始したらそのままの姿勢を保ち続けようとする力が強く、立て直すことは出来ずに転倒する。仮に直進に戻すために、バイクを立て直したらその瞬間反対側へ転倒する。

バイクのステアリングヘッドは、ライダーに感じさせないぐらいのストロークと周波数で、絶えず左右に動いていることは知っておきたい。このことはクルマにもいえることで、タイヤに対し、クルマが安定して走るに足りるストロークで、自由にしてやるのがポイントではなかろうか。

また、ゴムは摩擦が大好きであることを忘れてはいけない。そして、その摩擦は非常に強いもので、縁石に接触した大型トラックをいとも簡単に跳ね上げるほどである。

ゴムは摩擦が大好きで、そこが一番と言うことの証明として次のようなものがある。それは平ベルトと中央が高くなった樽型プーリーの関係である。

一般的には、Vベルトを使うと考えられがちだが、プーリー間の距離があり、テンショナーなどを使えない場合、また、回転方向を右や左に変える必要があるときなど、たすきがけができることから平ベルトの方が融通が利く。

この平ベルトに対するプーリーは、前記したように中央が高くなった樽型である。何故樽型なのかを考えてみると、それはベルト/ゴムが摩擦の多いところを好むからである。平ベルトと樽型プーリーの回転する様は、実にユーモラスで、外れそうになると中央に戻り、またはずれそうになると中央に戻る、という動作を繰り返す。欠点はスリップすると瞬間に外れてしまうことである。

これはタイヤと路面との関係にも似たものがある。何事もなくタイヤが転がっているときには安定しているクルマが、スリップを始めたとたんコントロールを失うのと同じだ。

2014年11月28日金曜日

家の電話、子機のバッテリーをダイソーのニッケル水素で蘇らせる


家で使う電話に子機が付いていると便利だけれど、こいつのバッテリーは4~5年で劣化して、充電していても満足に話ができる状態ではなくなってしまう。

我が家にあるのはブラザーの電話機。

交換は難しくはないので、ホームセンターや電気店で購入すれば復活するが、ネットで安く購入しても1500円ぐらいになってしまう。

性能ダウンしたそのバッテリーをよく見ると「ニッケル水素、2.4800mAhとある。

つまり、普通に市販しているニッケル水素バッテリーの1.2Vをふたつ直列に繋いだだけ?であると判断した。

ダイソーのニッケル水素バッテリーと組み換える。こちらのほうが容量が大きい。ステンレス用の半田が必要となる
 

バッテリーの大きさは単3だから、ダイソーで売っているものが使える。ダイソーの単3ニッケル水素バッテリーは1300mAhであるから、子機専用のバッテリーより容量が大きい。

専用バッテリーから流用するのは、プラグの付いたコード部分とバッテリーを直列に繋ぐステンレスの薄い板だけ。

コード部分とバッテリー端子を繋ぐ部分にもステンレスの板があるので、それもバッテリーからはがし、ダイソーのバッテリーに半田付けする。

ただし、ここで使用する半田は、ステンレス用を使わないとダメ。半田ごては40Wもあれば十分。

バッテリーの端子に半田だけを流しておく。同様に直列とするステンレスの板、コードについている板にも、ステンレス半田を流しておけば、作業が楽。ただし、短時間(2~3秒)で半田の作業を終わらせないと、バッテリーが不良となるので注意が必要。
 
半田付けが終わったら、ショートなどを起こさないことも目的に、ビニールテープで固定する。これはテープ巻きの途中

 
めでたく完成した子機のバッテリー。現在元気に働いてくれている
 
半田付けが終わったら、ビニールテープなどで固定し、子機に収めれば終了。安く出来た・・・

2014年11月24日月曜日

トヨタが発表したFCV(燃料電池車)「MIRAI」は、FCの特性とバッテリーのいいところを先取りしていた


6月に説明会を受けて出した内容は、FCとバッテリー(ニッケル水素は正しかった)によるレンジエクステンダーだと考えたが、実は判断が少し甘かった。

それは当然のことで、大きなバッテリーを搭載するわけではないので、EV走行がメインということはありえない。そうなると、ハイブリッドで、エンジン+発電機の代わりに燃料電池(発電装置)からバッテリーとモーターへ電気を送るシステムだということがわかる。

プリウスのようなハイブリッドとも違って(それは当然。エンジンではないので直接駆動力を生むわけではないのだから)、あくまでもモーターによる走行となる。バッテリーだけでの走行が可能なのはプリウスと同じだ。

では、搭載するニッケル水素バッテリーは何に使うのかというと、発進・加速時など大きな電流を必要とするとき。その要求される電力を燃料電池から一気に取り出すと(発電させると)、負荷変動が大きいため燃料電池にダメージが加わる。

燃料電池の耐久性が損なわれるから、このようにして、直接燃料電池からの発電電流だけを使用して走行していない。数十年前の試作段階では燃料電池からの電流を直接モーターに与える方式を取っていたので、少しアクセルに対する反応も遅かったが、駆動用バッテリーが搭載されれば話は違う。

アクセルを踏んだ瞬間の電流をバッテリーが請け負い、そこに燃料電池からの発電電流を加えることで、更にモーターを回す電力が生まれ、加速力が増す。

搭載するニッケル水素バッテリーは2.5リッタークラスのハイブリッド用を流用しているそうだ。そのバッテリーを効率よく充電するために、FC昇圧コンバーターを取り付け、燃料電池で発電した電気を650Vに昇圧する。

リヤシートとトランクの間に駆動用のニッケル水素バッテリーを搭載する。水素ガスボンベはトランク内とリヤシート下側
 
高電圧によるモーターの小型高速回転型は最新のプリウスと同じ考え。これによって、燃料電池スタックのセル数を少なくすることが出来て、コストの低減が成り立った。

販売価格は670万円(消費税抜き)。消費税込みだと723万6千円。販売台数は2015年末までに400台だが、2014年11月18日現在、確定注文代数は、自治体、大手企業がほとんどで、一般からの注文は少ないという。販売開始は2014年12月15日だ。

全てが手作業での組み立てになるため、生産台数は非常に少ないようだが、これで近い将来、現在のハイブリッド並みに普及させることが出来るのか疑問に感じてしまう。

ところでトヨタが発表会を行う前日の11月17日に、急遽説明会を行ったホンダは、翌日発表されたトヨタのシステムと販売価格について、どのような感想を持っただろうか。ホンダが搭載するバッテリーにこだわって、リチウムイオンを使えば、コストは高い。

そして、燃料電池から駆動バッテリーに充電する方式だとしても、その電圧をどこまで高めるのが高効率なのか、高電圧モーターとして回転数を高くし(回転を高くすると消費電流が少なくなるので、その分トルクは小さくなるのだが・・・)、それをギヤで減速することにより駆動トルクを稼ぐ方式は、ホンダとしては実績が薄い。

トヨタの場合プリウスでの実績は、このようなところにも生かされているが、ここまで来るのにどれほど右往左往したことか。しかし、その右往左往した部分がトヨタの場合でもFCVに全て当てはまるとは限らない。完成形は多数のユーザーの手に渡って、ありとあらゆる使われ方の試練を受け、それからであるような気がする。

また、トヨタは水素ステーションについて、国の方針に沿ったものとしているが、ホンダは違う。スマート水素ステーションを、さいたま市に設置した(これまでアメリカでは太陽光パネルなども使って実験的に行ってきた)。

ホンダ独自のコンプレッサーが不要な高圧水分解システムを採用したもので、圧力は35MPa。車両のボンベ最大圧力の半分ほど。インフラ整備も大事だが、その前にクルマが巷に出なければ、そのインフラは誰のため?

2014年11月15日土曜日

不定期連載 数式を使わない、クルマの走行安定性の話・5/17


サスペンションメンバーを使えば、外力を分断して計算出来る

最近のクルマには、サスペンションメンバーを採用することが多くなってきた。このメンバーを取り付けることで、サスペンション全体の剛性を高められた、という話を聞くが、これに対する考え方は少し違って、剛性だけではない。メンバーを採用すると言うことは、応力をそこで寸断できることを意味する。つまり、サスペンションアームから入り込んだ外力に対する計算を分断できる。

外力を分断できるということは、ねじりや曲げの力に対するボディ剛性とも関係する。それは、ある程度のボディ剛性を持ったものに対して、サスペンションメンバーを高剛性に造り、それに併せてサスペンションアームを造った場合でも、ある一箇所から入った外力をボディに伝えることなくブッシュのストロークと、各アームのたわみで処理し、サスペンションを設計値どおりに作動させることが可能になる。

また、外力を他のサスペンションメンバーに伝えないということは、ボディに対するゆがみや、前後アライメントの狂いは発生しないわけで、クルマは直進安定性が高くなる。つまり、極端にボディ剛性を高めた場合と同じこと。初代ゴルフに見られたボディ設計とその直進安定性からも分かる。もちろん、高速安定性にはそれまでの日本車では考えもしなかった秘密があった。それは、フロントサスペンションの高速走行時に発生するアライメント変化を利用したもので、これについてはあとで説明する。

どれくらいの力が、どのように及ぼすか分からないときには、前記ように分断し、それぞれ独立して設計をする。このようなことは建設、特に橋梁には当然のこととして行われる。それは、橋桁と柱の取り付けに関してである。

一見すると一つの橋梁で、橋桁は1本につながっているかのように見えるが、実は柱間にかかる橋桁を1スパンとした、同じもののつながりなのである。あくまでも柱と柱の間だけにかかる橋桁だけで、どのような荷重が掛かり、その荷重が移動していったとき、どのように橋桁がたわむかの計算を行う。ごく単純な荷重の計算であり、後は地震に対するマージンを上乗せすれば事足りる。そして、造られた橋桁は、落下しないように片側だけ柱に取り付けられるが、あくまでもピンによる取り付けで、たわみを吸収する構造。反対側の柱に対しては、固定するものは何もなく、自由にスライドする。

両側ともにピンのないものもある。そのような構造の場合には橋桁の上に乗る道路や鉄道の道床が、橋桁のずれを防ぐような取り付けを行う。

では何故一つの橋梁で、橋桁を1本につないではいけないのだろうか。それは、一箇所に掛かった荷重が、柱を支点として、そこに掛かっている、全ての橋桁と柱に対し、影響を及ぼし、その結果、上からの単純な荷重ばかりでなく、支点による逆の、下からねじり上げられる力も入るからだ。

当然用件は無限大にある。そして、作用反作用の応力に対する計算はとてつもなく莫大な量でむずかしい。もちろんそれに対する橋桁の構造はとてつもなく巨大なものとなる。柱と柱の間が全て埋め尽くされる構造、言ってみればダムのような形になってしまう。ところが、1スパンだけの構造計算であれば、ごく単純に終わり、構造も単純になる。

この考えを元にしてクルマのボディ構造と、サスペンション構造を設計すれば外力/応力をうまく分散するようなクルマの設計が出来るはずである。そのひとつの現れが、サスペンションメンバーを採用した方法といえるのではないかな。なお、メンバーとボディとの取り付けは、ボルトによるダイレクトな締め付けであっても、あるいはブッシュを使っていても、必要な目的は達せられる。ただし、ブッシュを使った方が、より分割した外力に対する計算がしやすいと思う。

2014年11月8日土曜日

スズキCARRYのオートギヤシフトに乗ってみた


現在、世界最高のギヤミッション・オートマチックだ

軽トラックでもトルクコンバーターを使用したAT(ステップAT)はあるが、どうにも効率は高くないし、駆動力は力強さという点から、現場で酷使される軽トラックとしては魅力が薄い。

同じ仕様であると販売価格が3ATと同じ。そして、JC08モード走行燃費は5AGSが一番いい。ただし、それが使用時の燃費と結びつくわけではないが、全体的にいい方向へ行くことは確かだ

機械的な精度と、それを働かせる制御がマッチングすれば、ステップATに負けない、ギヤミッション・オートマチックが出来る。それを証明したのがスズキキャリイに搭載された5AGSだ

やはり、ダイレクトに駆動が伝わるMTが求められるのだが、今ではAT限定免許という方が多い時代。

そのような背景もあって生まれてのが、ギヤミッションのシフトをオートマチックにするというもの。

欧州メーカーではかなり前から、このギヤミッション・オートマチックを採用しているが、アップシフトするたびに加速力が大きく抜けるため、身体をドライバーの運転方法にかかわらず、前後に揺す振られ、決して乗り心地がいいものではなかった。

だからといって、軽自動車ならこのようなシフトの悪さが許されるはずも無く、ツインクラッチとはいかないまでも、昔のステップAT(電子制御される前の話)並みか、それ以上が求められる。そして開発されたのが、スズキ・キャリーに搭載された5速オートギヤシフト(5AGS)である。

その結果、さすがに気持ちがこめられている。発進加速の最中でもシフトのたびに発生するはずの、不快な加速力の変化を感じさせないのだ。

アクセルを少し踏んでの発進加速は当然だが、一番変化の出易いアクセル半分踏みでの発進加速でも、非常に素直で、文句のつけようが無い状態。それこそ、一昔前のステップATよりも加速力の変化が無いぐらいである。

今、世界で一番のギヤミッションATがスズキのキャリイに搭載されている5AGSと断言できる。こいつを超えられるメーカーは出るのだろうか、楽しみである。

欲を言わせてもらうなら(開発者には話したが)、マニュアルモードでのシフトは、もっと素早く出来ないのか、それによるショックが出ても当然のこととして受け入れられるので、ドライバーの意思を優先し、スパッとシフトアップ、シフトダウンが望ましい。

このマニュアルモードにおいても、オートモード同様にショックの無いことを重視しているということだったが、それは違うように思う。

MTでのシフトダウンは、エンジンブレーキを重視したいことから、クラッチを繋いだときのショックは出てきて当然であり、スムーズにクラッチを繋ぐようなことをやっていたら、空走時間と距離により速度が速くなって、エンジンブレーキどころではなくなるからだ。そう考えれば、オートギヤシフトのマニュアルモードでも、同様なプログラムは必要と判断した。

そういえば、トヨタが10年以上前に発売していたMRSのクラッチペダルレスでは、ギヤミッションでありながら、クラッチは電子制御であっても、ギヤシフトはマニュアルモードのみ(オートモードは開発していたが完璧ではなかったという)。

アクセルを踏んだままのシフトでも、インジェクターの制御と点火時期の制御で、違和感のある大きなシフトショックは無かったと記憶する。電制スロットルが採用される前でこれが出来たのだから、現在の技術を使えば、MRS以上のマニュアルモードによるシフトが完成できても不思議ではないだろう。

2014年11月7日金曜日

新型マツダ・デミオの1.5リッターディーゼルは、2.2リッターエンジン開発とは違った苦労があった


デミオクラスに搭載されるディーゼルエンジンであれば、1.5リッターとなることは自ずと判断できるのだが、ただ単純に排気量が小さなエンジンを造れば済むようなことではない。それがガソリンエンジンとポスト新長期を目指したディーゼルエンジンの大きな違いである。
新開発の1.5リッターディーゼルエンジン。マーケットは日本ばかりではない。アメリカでは魅力を感じてもらえないので、輸出するつもりはないという話だ
 
当然、Noxは後処理なしで、2.2リッター同様に基準値以下。アメリカ輸出のため2.2リッターではEGRの量を増やして対応しているが、1.5リッターとしてはアメリカ輸出を考えていない。それは、排気量が小さいと(アメリカ人は多少燃費が悪くても、とにかく大きなトルクを要求するので)、いくらディーゼルの燃費が良いからといって、購入する気持ちが働かないからだという。


もちろん先輩である2.2リッターエンジンがあるから、それと同等の燃焼効率で軽いフットワークを望まなければ話は簡単だが、それでは許されない世界をマツダ自身が作り上げてきた。

製造コストもそうであるが、小さなエンジンルーム内に収めるには、2.2リッターエンジンでやってきたことの一部を大きく変更しなければならなくなる。それがインタークーラーの取り付け場所と形状である。

すでに欧州メーカーでは取り入れているが、吸気コレクターの容積を上げ、そこに水冷式のインタークーラーを取り付けるという方法を採用した。排気量の大きなエンジンでは効率が悪くなる状況でも、1.5リッターであるなら、十分高い冷却効率とスペース効率、充填効率を確保できたのである。

吸気コレクターの中に納められた水冷式のインタークーラー。コンパクトであるだけではなく、過給パイプも短くなり過給遅れが小さいのも特徴
 
また、吸気マニホールドとターボコンプレッサーを繋ぐパイプが短くなるため、過給圧の上昇が早く、過給遅れの症状が小さくなることも見逃せない。

最大過給圧は2気圧でインジェクターの最大噴射圧力は2000気圧。これは2.2リッターエンジンと同じ。ただ大きく違うのはインジェクターの駆動がピエゾ素子からマグネット式に変更されたこと。それによるコストダウンはかなりあるというが、求める性能は十分で、インジェクターとしての作動インターバルはピエゾが0.1mmS(ミリ・セカント)であるが、新開発のマグネット式は0.2mmS。これまでのマグネット式では0.4~0.5mmSであったことからすると、大きな飛躍であり、噴射パターンを少なくしても排気ガス問題も起こらず、燃焼音も小さいので問題は出ていない。

下が1.5リッター用に開発したマグネット式のインジェクター。作動インターバルはピエゾに及ばないが、目的の噴射パターンには対応している
 
インジェクターの作動は大半が5パターンで、DPF再生の時には6パターンとなる。通常の噴射パターンはパイロット・プレ・プレ・メイン・アフターである。

ターボチャージャーは2.2リッターのようなシーケンシャルツインではなく、シングルで、それにVG(バリアブル・ジオメトリー)採用とした。

タービンに排気ガスが当たる角度を自由に調整できるVGターボの利点を生かし、冷間時始動ではVGを全閉とし、部分燃焼した排気ガスが行き場を失い、これをシリンダーに押し戻すことで、初期の圧縮温度を高め、始動を確保している。2.2リッターのような排気バルブを一時的にリフトして、吸気行程でその排気ガスを引き込むというような機構は採用していない。

VG付きのシングルターボ。バルブを完全に閉めることで、冷間時の始動性を確保した
 
また、排気量の関係で冷却損失が大きいため、圧縮比は2.2リッターの14よりも高い14.8にせざるを得ない状況になっている。

さらにシリンダーボアが小さくなることで、これまでの技術では追いつかない状態が出たため、ピストン頂面の形状を変更することによりこれを改善。

何が起きていて、それをどのように改善したのか

燃焼室(ガソリンエンジンとは違ってピストン側にある凹み)の形状こそ2.2リッターエンジンからの踏襲したエッグシェイプだが、マツダのSKYACTIV-Dは上死点燃焼を目標としている関係で、燃焼室上部端面からシリンダー壁面までの距離が小さいと、ピストンが下がる前に燃焼ガスの初期火炎がシリンダー壁に当たり、シリンダー壁面熱損失が発生するため、燃焼室に近いピストン頂面の一部を削り、段付きとしてこれを抑制。

右が1.5リッターディーゼルのピストン。ピストン頂面を見れば、段付きの形状がわかるだろう。これで効率を高めている。左が2.2リッターのもの
 
また、インジェクターからの噴霧を出来るだけ小さく飛ばし、燃焼初期の高温ガスを、出来るだけ燃焼室壁面から離すことで壁面熱逃げを抑制し、燃焼効率を高いものとした。

これによるトルク特性は、2.2リッターのような山型ではないものの、5200回転まで気持ちよく回るエンジンにより、十分に楽しめるエンジン特性を得ている。
1.5リッターディーゼルエンジンの上にカバーが付くとこうなる。エンジン音の低減だけではなく、見た目にもバランスがいい

カバーを取り外すとこのように。ゴムのグロメットに押し込まれているだけの固定なので、引き上げれば簡単に取り外せる