研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2013年6月21日金曜日

充電式ドライバーなどに使うバッテリーを、手軽に入手できるものと交換する

 充電式ドリル・ドライバーやインパクトレンチでの問題は、バッテリーが劣化したときのバッテリー購入コストである。なんとバッテリーパックを定価で購入すると、同じ性能(公称だから確かではないが)の安物が、スペアバッテリーと充電器付のフルセットで購入できてしまう、と言うとんでもない状況が起きる。

メーカーが安売りすればいいと思うのだが、リビルドをやってくれるメーカーであっても、その価格はバッテリー定価の半分ぐらい。当然5000円以上かかる。これじゃ~やってられない。

そこで、同じようなバッテリーを購入して入れ替えてしまう、と言う工作をするが、品切れだったりすることもあり、思うように進まない。
充電式ドリル・ドライバーなどに使用されるバッテリーは、少し前(時間的に今劣化が起きる)のバッテリーはニッカドが主流で、N-1300SCRやKR2000SCなどが多い。これが入手できれば、後はバッテリーパックの分解にチャレンジし、バッテリー間を接続するためのステンレス半田ができれば済むのだが、そう簡単な話ではない。

まず、どのようにバッテリーがレイアウトされているか、そして、その配線はどこを通ってどのバッテリーに接続されているか、しっかりと写真でも撮って記録するか、論理を理解して組みつけに備えることが重要。

また、異状な温度上昇を検出するセンサーも付いているので、それの位置はともかく、バッテリーにしっかりと貼り付けることを計算する。

で、ここからが本題。これらのニッカドバッテリーが手に入らなかったらどうするか。

ハタと気が付いた。同じような長さの単四バッテリーで、ニッカドではなくニッケル水素が使えないかということ。
ニッカドと寸法比較すると、工夫次第で組み込むことが可能と分かる。容量はこれまでのものより多くなる計算だが、3本を並列に繋ぐため、個々の性能差があって計算どおり行かないが、これまでより少なくなることはないはず

単四に限らずニッケル水素バッテリーは、100円ショップで販売されている。これを利用する。

寸法を測ってみると、ニッカドのN-1300SCR(KR2000SCも)ほぼ長さは単四と同じで、ニッカドが42mmほど、単四は44mmだが、プラス側の出っ張りを除けば42mmの寸法だから、ハンダ付けの位置を出っ張りの側面にすれば長さの問題は解決。

肝心の容量だが、KR2000SCで2000mAh、N-1300SCRはかなりの急速充電に耐えるとは言っても1300mAhだから、これらを上回る容量は欲しい。

100円ショップのダイソーブランド単四ニッケル水素の容量は750mAhであるから、これを3本束ねて使用すればこれまで以上の容量となる。計算上は2250mAhだが、それぞれのバッテリーの性能差(公差)があるので、この数字にはならないが、十分な性能は確保できる。

3本束ねて(写真は単四のアルカリだが、ニッケル水素とサイズは同じ)の直径はニッカドより1mm小さいので、ケースの収納は可能だ

さて、3本を束ねたときの直径はどうであるか計測すると、KR200SCなどでは22.5mmで、単四を3本束ねるとその直径は21mm。十分収納可能だ。

ニッケル水素バッテリーやニッカドバッテリーの外装はステンレスなので、それに対応したハンダでないと、瞬時に接続できないのため、専用ハンダは購入する。ニッケル水素に限らず、ハンダ付けで高温となるとバッテリーが劣化するのだ

適当なコード(バッテリーの配置があるので必要最低限の長さが重要)で各バッテリーを接続したら、ショートしないように絶縁体などを使って処理し、バッテリーケースの中に押し込み、無理やりでもいいから蓋を閉めて、場合によってはビニールテープで固定すれば終了。
バッテリーをケースに押し込むときには、必 ず絶縁板などを挟むことは重要
これは、電動ラチェットレンチに使われていたニッカドを、ダイソーブランドの単四ニッケル水素9本で蘇らせたもの。性能はこれまで以上で、とりあえずの問題は何もない

後は充電して、正常に動作するか確認するだけ。なお、充電中の温度と、バッテリー間でのショートには十分以上に注意して、自己責任で改造して欲しい。


2013年6月2日日曜日

試乗会で見つけたとんでもないクルマたち その③

とりあえず今回で終了予定のとんでもないクルマたち。最後となるのは、世界的なメーカーであるT社の有名なコンパクトカーV。

そのVが新しいコンセプトの元に発売されたときの試乗会。1000cc4気筒のエンジンは、ボアピッチなどが同じベースエンジンがあるため、型式からそれとなく分かってしまうと言う状態で、手抜きとは言わないが、「新型エンジンと言うなら、その新型らしさを取材しよう」と言う目的で、案内のあった試乗会場へ出向き、AT仕様を試乗して、戻ってきたときに、そのおかしな行動が目に入った。

当時はまだパワーステアリングの動力にエンジンからベルトで油圧ポンプを作動させ、その油圧によりステアリング操作をアシストすると言うもので、ごく当たり前のシステムだったが、その当たり前のシステムに問題のあることを見つけてしまった。

何が問題かと言うと、Dレンジに入れ、ブレーキペダルから足を離し、ステアリングを切るとエンジン回転が異常に上昇する。

このように、エンジン回転を上げるのは、エアコンなどの負荷が加わったときにも同様なことになるのだが、油圧パワステにおいても、負荷が加わるわけで、エンジン回転が低下しすぎないよう、アイドルコントロールバルブが作動し、回転数を保つようなことは当然行っている。

それが、この新型コンセプトモデルVでは強すぎるようで、クリープ走行しながら、ステアリングを左右に素早く切ることを繰り返すと、そのつどエンジンは回転数を上げ、速度が増していく。

令間時始動の直後ではアイドルアップをさせる必要があるので、回転数は高く保たれて当然だが、試乗会では、常に完全暖機状態であるのは当然のこと。

このことを、エンジン開発者に告げると「いや何かの操作ミスです、そのようなことは絶対にありません」と言うので、「では同じクルマで確認してください」と試乗を促し、20分以上その場で行ったり  来たりを繰り返し、試乗車から降りてきたときには、汗びっしょり。

「おっしゃるとおり、アイドル回転数が高くなりすぎて、暴走に近い状態が生じています」「コントロールプログラムのミスですから、書き換えれば直ります」

で、肝心な「エンジンについての取材をしたいのですが」、と言う申し出に対し「いや、今日は勘弁してください」と別室に逃げ込んでしまった。

気分は完全にブルー

私に指摘されたことが真実であったため、かなりのショックを受けたのだろう。

システム的に理解のできる人間で、いろいろな運転方法も自由にやれる試乗者なら、見つけられる事柄なのだが、これも、左足でのブレーキ操作が自由に使えないと、数十分乗っただけでは発見できないだろう。

そういえば、メーカーは違うが、あるクルマの試乗会で、左足でのブレーキ操作をもっとやりやすくして欲しい、と言う要望に対して、「左足でブレーキペダルを踏んでいると、マニュアルミッション車には乗れないでしょう」、と言ってきたので「でも、サーキット走行ではトゥ&ヒル使うんですがね~」と言ったら、その後何も言わず、話を聞くだけだった

2013年5月23日木曜日

2013年の人とクルマのテクノロジー展は、EVに関する展示と情報が多かった

毎年、5月の20日前後に、横浜の「パシフィコ横浜」で開催される、自動車技術会主催のイベント、それが人とクルマのテクノロジー展で、今年は5月22日から24日まで開催される。

入場料は無料だが、当日申し込みは、申込書にいろいろ書くことが要求されるから、事前にネット上から申し込みをしておいたほうが、当日スムーズに会場入りができるので、来年はぜひ行って見たい、と言う方は、ネット上の事前申し込みを使ったほうがいいようだ。

初日の22日に会場へ出かけてみると、昨年以上に盛況で、展示数ばかりではなく、入場者数も多い。

これは非常にいいことで、クルマに対する興味、開発の意気込み、製品の売り込み、など活発になれば、クルマに対する興味を持つ若者が増え、再び昔のようなクルマ文化が目覚める?と期待してしまう。

そのようなことは、最近のEV(電気自動車)に対するサプライヤーの製品開発が多くなったことからも、なんとなく見て取れる。

NSKが発表したインホイールモータは、ふたつのモーターと遊星ギヤを組み合わせ、モーターの欠点である回転数増加と共にトルクが低下する特性を改良し、常に必要なトルクを発揮できるよう、遊星ギヤでギヤ比を変化させ、モーターへ負荷を連続的に与えることで、エンジンに似た特性を引き出した

マツダデミオが使用するEV用のモーターは、水素吸蔵合金を使った燃料電池実験車時代から付き合いのある、安川電機のスリーコイル。負荷によってコイルを使い分けることで、必要なトルクを瞬時に引き出すと言うもの

ただし、今年の限って言えば、バッテリーに関する情報や展示が少なかったのは、ボーイング787の影響か。

もちろん内燃機関だって無視されているわけではない。まだまだやり残した部分、解析ができていない部分が多くある。それを見つけるのが実験エンジンで、小山ガレージが展示する実験エンジンは、特殊な石英ガラスを用いたシリンダーにより、燃焼そのものが肉眼で直接見えると言うもの。もちろん負荷だってかけられる。これと、毎秒10万シャッターのデジタルカメラを組み合わせると、とんでもない状況が見て取れると言う

機会があったら、この実験エンジンの取材もしてみたい





 


2013年5月12日日曜日

トヨタに有ったはずの熟成グループ 今はどうなっている

トヨタには、ほかの自動車メーカーにはない部署がある。(現在どうなっているのか定かではないが)

それが熟成グループという部署(組織と呼べない訳もある)

その名称を知ることになったきっかけは、昔勤めていたオートメカニック編集部時代に遡る。

熟成グループという言葉を知ることになった時代は、新しいエンジンが開発されると、そのエンジンの構造や作り方を紙面に取り上げるため、トヨタに限らず分解取材の申し込みを常に行っていた。そして、あるときトヨタの新エンジン搭載モデルに白羽の矢が立ったのだが、そのエンジンは注目されていた(クルマ本体と共に)こともあり、取材に対応してもらえるまでに数ヶ月の時間がかかってしまったのである。

発表・発売後に時間がかかってもいいのだが、普通に分解していくだけではなく、その構造説明や何故このような作り方をしたのか、などの質問を開発者に浴びせ、その時点で答えをもらいながら取材していくというのが、我々の方法だったので、分解の時には、エンジン開発担当者の同席が必要だった。

ところが、広報の担当者は、エンジンの準備が整っても、肝心の開発者がどこに移動となったのかわからないという。「今はその車種も“熟成グループ”に引き継がれていますし・・・」

熟成グループ???それなんですか。常に、何故、どうして、という疑問を持ちながら取材したり、話を聞く習慣から、熟成グループという言葉にひきつけられた。

熟成というからには、開発が終わり、発売されたそのクルマを、更に良くするため、またやり残した部分を開発し成熟させるために組まれた、特別な組織なのか、と思ったら、違っていた。そのような、やり残しの部分をやる組織は別にあり、それはそれで進行するという。

では、熟成グループとは、いったい何をする組織なのだろうか

熟成という言葉だけを聴くと、発売されたばかりのクルマを更に良くして、マイナーチェンジやモデルチェンジに生かすのではないかと思ってしまうが、実はまるで目標とすることが違う。

この熟成グループのやることは、宛がわれたクルマを普通に数人で使用し(テストコースでガンガン走らせるという項目はない)、欠点や不具合を見つけ、それを改良し、発展的データを集めること。

また、そこに集められるメンバーは、宛がわれたクルマの開発に一切携わらなかった人達で、クルマによって人員の数は違う。当時カローラクラスでは5名ほどだが、セルシオクラスでは10名以上という。

そして、そこに集められるメンバーは技術者とは限らず、事務系、仕入れ窓口、製造ラインなどありとあらゆる職種から選ばれる。

クルマを一般ユーザーが使うという設定に中で、何が不満となるのか検証するというわけだが、不満が出た部分は、改良を熟成グループが自ら行う。

それはサスペンションの改良などにも及ぶが、寸法などを変えることなく(コンセプトばかりではなく運輸省「国土交通省」へ届けたときと数字が変化するのは非合法ともなるし)剛性変更をブッシュ周りやアームの形状で行うにとどめる。スプリングやダンパー、ボディ周りの剛性バランスなど視野は全体に及ぶ。

更に、何故このような設計・開発をしたかわからないようなことも起きるが、そのようなことを想定して、この熟成グループ(一回限りの集団)には、開発者とコンタクトが取れる人員を1名だけ入れる。

で、一般的には、ここで得られたデータを次のモデルチェンジで有効活用する、と思われるのだが、それが違うのである。

もちろん一部のデータはモデルチェンジで使うこともあるが、大半は新型車を開発するときに、同様な設計をしたらどうなるのか、と言うような基礎的なものとして使われると言う。

やりがいがあるかどうかは知らないが、せっかく得られた貴重なデータが、日の目を見ないことは多いと言うことであった。

このような組織編制がほかの自動車メーカーにもある、と言うことを聞いたことはない。

2013年5月8日水曜日

試乗会で見つけた、とんでもないクルマ達 その②

これもH社のクルマで、日本では一般販売しなかった車種。基本的にアメリカだけがターゲットのEV。ここまで書くと「ハハーン、あのクルマか」と分かる方もいるだろう。

で、どのような欠陥があったのかと言うと、アクセル周りの制御である。

具体的には、アクセルを踏んでいないのに、数十メートル勝手に走る現象。

試乗会は、正式なナンバーが取れるものではなかったので、大磯プリンスホテルの駐車場。

試乗前の説明では、ブレーキを強くかけると回生ブレーキもしっかりと作動すると言うので、思いつくままの走らせ方をしてみた。

その方法は、前進している状態で、アクセルペダルから右足を離し、左足でブレーキを踏み、その瞬間セレクターをリバースとしながらアクセルを踏む。

すると、強い回生ブレーキ状態が2秒ほど続いてから普通に停止、と思いきや、停止した次の瞬間、そのクルマは、アクセルを踏んでいないのにバック走行を開始。

その距離、数十メートル。

バック走行しながら、同様にセレクターをDにして実験すると、停止後に前進を開始する。

アクセルを踏んでいたことで、その記憶が残り暴走するのだろう。

この話を開発者に直接言ってみたのだが「普通のATでも、そのような操作はするのですか」、と、かなりとぼけた返事。思っても見なかった状態だったのだろう。そこで「EVはセレクターがスイッチですから、機械的なダメージはないので、やった結果です」、と話をしたのだが、これは大きな欠陥であることが後日分かった。

ほかのメーカーが試作するEVにおいては、走行中にセレクターを操作すると、電気が遮断され、リセットを要求してくる。

このときにはいったん停止し、イグニッションキーをオフにしてから、再度オンとするだけのことなのだが、操作ミスなどが想定されての制御である。

これができていなかったのはH社がアメリカ向けに開発していたEV。もちろん輸出される前に修正されていたのは言うまでもない。

発想の乏しい人物が開発をやると、常識としてあるべきシステムに気が付かず、このような失敗をしでかす。輸出される前でよかった。

ところで、その後、私のところには、何のお礼の言葉もない・・・・

2013年4月29日月曜日

首相のクルマが追突事故 それを回避できたのでは

先日、阿部首相が乗る車列が首都高の代々木料金所で追突事故を起こしたと言う。

運転手のミスとしては、ETCカードの装着忘れ。それと、たとえバーが開かなかったとしても、それを突き破らなかったことの2点。

そして、いつも言うことだが、AT車に乗る場合には、左足も有効に使ったほうがいい。

つまり、左足でのブレーキ操作ができていれば、少なくても5台まとめての追突は避けられたはず。

ブレーキ操作が必要になるであろうと言う予測ができれば、その時点でブレーキペダルには足がかかっており、緊急状態が発生したときには、間髪をいれずブレーキペダルを踏める。そのためのブレーキオーバーライド制御(ブレーキ優先)なのだから。

アクセルペダルを受け持っている右足でブレーキペダルを踏む場合、どうしても時間差が生じるので、その分進み、車間を十分にとっていなければ、追突して当然だ。

2013年4月24日水曜日

試乗会で見つけた、とんでもないクルマ達 その①

だいぶ前の話だから、ここいらで暴露してもいいだろうと判断して、自動車メーカーにとっては耳の痛い話しをしよう。

そのとしてはH社の2.0と2.5リッターのI

何が問題だったかと言うと、直進性にである。これは試乗会でのことで、高速道路を走行中に100mほど走ると1~2mほど右へずれる症状。

ただし、そのときには「まさか」と言うこともあり、私の運転センサーがダメになってしまったのか、と言う結論を出した。

開発者との話は、TAのシフトゲート形状に終始し、高速直進性には行き着かなかった。

しかし、試乗会後2ヶ月ほどしたときに、フリーのライターが、試乗会で乗ったクルマではない2.0リッターモデルを借用してきた。そして、そのクルマに乗ると、なんと試乗会での出来事を思い出させた。右に行ってしまう現象だ。

広報部に親しい方がいて、クルマの運転にも精通していたので、その方に全ての同型車で走行を確認してもらうと、なんと「ここにあるIは全部、右に行ってしまいます」、と言う返事が返ってきた。

そこで、そのような問題を集めて、改良点を導き出すような組織にいる方に、車種と症状を告げ、何が問題だったのか、調べてもらうと、なんと、フロントサスペンションを取り付けるブラケットを位置決めするジグに狂いがあり、アライメント不良(経験からすると、おそらく右のキャスター角不足)となっていたと言うのだ。

フロントはトーしか調整ができないH社のクルマでは、当然ほかのキャスターやキャンバーなどをチェックするシステムはないわけで、普通に組み立てラインを流れていた。

私の情報から組み立てラインを停止し、修正が行われたのは当然だが、何故このようなことが発生したのか聞いてみると「当時はバブル期真っ盛りで、開発責任者が最終チェックをする暇もなく、そのまま出荷していた」というのだが、果たして、開発責任者が最終試乗しても、この問題点を発見できたか、大いに疑問である。

2013年4月16日火曜日

今年のパイクスピークに日本からサイドカーで参戦しようとするチームが救いを求めている

パイクスピークとは、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムのことで、アメリカのコロラド州で毎年開催される。

このパイクスピークに、日本からレーシングサイドカーでチャレンジしようとするのが、イギリス・マン島TTレースにも出場経験のある「Rising Sun Racing」

ドライバーは渡辺正人さん、パッセンジャーは安田武司さん、メカニック兼サブパッセンジャーは大関政広さん。以上の3名だが、ここのところの円安で、資金不足となり、悲鳴を上げている。

どなたかスポンサーとなる人、企業の方はいませんか、と言うことで動き出しているのだ。

ちなみに、今年(2013年)のパイクスピークは6月15日から30日までだ。

参加の許可はすでに得ており、後は渡米するのみ・・・

左がドライバーの渡辺さん、右はパッセンジャーの安田さん


問い合わせ先は、048-533-3169㈲渡測内Rising Sun Racing
E-mail:watanabe@risingsun-racing.com

2013年4月6日土曜日

トヨタはディーラーメカニックを100%信用していないから、いいクルマ造りになっていたはずだが

トヨタのクルマをいじっているとわかること、それは他のメーカーのクルマに対して、日常メンテナンスを含めた分解・整備が非常にやりやすいのである。

あるクルマなどは、エアクリーナーの交換が僅か数十秒で完了する。工具も必要なく、組み付けミスも出ない。ケースに書いてある操作をするだけで、初めての人でもパーフェクトに交換できる。

何故このような考え方にこだわるのか、それは、トヨタに限らずメカニックにはヒューマンエラーが多く発生するからである。

「ここまでは一般オーナーがやれる部分、ここから先はメカニック」という線引きもしていない。いくらメカニックであっても、気が付かない間違いを起こすからである。しかも、その間違いが自分のものとして返ってこない(フロントで処理されるだけ)。そこに大きな組織としての問題も潜む。街の修理工場は直接お客からの苦情がメカニックに届くので、優秀な人材の育つ土壌があるが。

このヒューマンエラーについては、実際にどのような結果となっているか、追跡調査も行っていた。


そのやり方とは・・・例えば完全にディーラーでメンテナンス管理されたクルマが、下取りとしてメンテをしていたディーラーに入ったとき、ポンコツにされる状態まで使い込んでいたり、あるいは事故車であったりした場合、走行距離、使用年数の多いものを研究所に運び込ませ、整備記録簿に記載されている事柄が正しく行われていたかどうかのデーターを集めたのである。もちろん、全国各地から、出来るだけ数多くを集めたのは言うまでもない。

当然、検証に使われたクルマには、メンテナンスをしたことにより発生している問題点が数多く発見できた。それにより、メカニックが陥りやすい構造など、出来るだけ排除する設計を順次取り入れて、現在に至っている。

前記のエアクリーナーがそうであるし、補修部品の段階でも変更が見られる。それは、ブレーキホースとディスクキャリパーの接続部分に使われるガスケット。このガスケットは、片側を入れ忘れないよう、2枚のガスケットがコの字形の一体構造に変更された。2枚バラバラのワッシャではないので、紛失もしにくいし使用してあることが一目瞭然である。

このように徹底したサービス優先のクルマ造りが、いつしか利益優先のクルマ造りに変わった。それが今、問題を引き起こし表面に出てきたのではないかと思う。

2013年3月6日水曜日

POPヨシムラ ゴッドハンドの真実

POPヨシムラが、ゴッドハンドの持ち主だ、と言われるようになった所以は


それは、POPヨシムラ氏が手仕上げしたカムを取り付けたバイクの性能と、そのカムをベースに親カムを造り、量産したカムを取り付けたバイクでの性能に、明らかな差が出ていたからだ。

POPヨシムラ氏を知らない方は、他のサイトで調べてください。ここで経歴を述べていると、文章が長くなりすぎますので割愛します。

POPヨシムラ氏(以後ポップ)は、言わずと知れたバイク(4輪にも手をつけたが)チューニング会の大御所。

そのポップがチューニングしたエンジンは、素晴らしいものばかりだったのは言うまでもない。

私自身はポップと個人的な知り合いでもあった。ただし最初はバイク誌「モーターサイクリスト」の編集記者としての仕事から、個人的な付き合いに発展したのだが・・・

長い間ポップは、バルブタイミングにこだわり、開発では独自にカムシャフトを設計し、手作業で造り出していた。今のような工作機械がない時代であるから、カムを造るとなったら大仕事。

量産する場合には「親カム」という大きなマスターカムを作って、それを研磨機で使えばいくらでも造れるのだが、その親カムを生むためのベースとなるカムを手作業で造ろうというのだから、これは並大抵のことではない。

もちろん最初の荒削りは手動の工作機械を使うが、大切な仕上げはオイルストーンを使う手仕上げで、これまでの感と手で触れるカム面の感触だけが頼りになる。

納得の出来るカムが出来れば、直ぐにバイクへ組み込み富士スピードウエイで走行テスト。十分な性能を確信した状態から量産用のマスターカムを造り、これを使ってカムの研磨をする。

開発で仕上げたベースカムから造る親カムであるから、当然性能は同じとなるはずだが、自分達のところで走らせても、手仕上げベースカムのような性能は出ない。

何故なのだろうか?


はゴッドハンドだと言う噂が広まってしまったのだが、その不思議なことも、疑問に思っていると、あるときいきなり解決する。
 ポップから話だけは聞いていたが、その後このことは頭から離れず、カムを見るたびにポップの仕上げたカムと量産は何故性能が違うのか、不思議儀思っていると、何時しかチューニング関係者の間からはPOPヨシムラ

ジャンプカムと言うのが答えだ


十数年後、当時のグループAと言うカテゴリーで、ラリーへ参加している三菱自動車の岡崎研究所を尋ね、エンジンのチューニング内容を取材しているときに「ジャンプカムで高回転時のバルブ開閉量を多くしています」、と言う答えが返ってきた。

何ですか「ジャンプカムって」と言う問に対して「吸気カムのリフトの途中に、小さな山を設けることです。低回転では、そのカム山の形に添ってバルブは押し開かれますが、回転が高くなると、いくら小さな山でも、その山で弾き飛ばされる形となりますから、バルブの開く量がそこから大きくなり、繋がるカム山に当たるまでの間が、バルブの開口面積の増大となりトルクが増えます」というのである。

ここで、これまでの疑問が解けた。ポップの手仕上げカムも、このジャンプカム状態になっていたこのだ。

 左から普通のカム、三菱が使っていたジャンプカム(赤く塗ってあるところがジャンプ台)、右が、ポップ吉村氏が手仕上げして作ったチューニングカムの表面を誇張したもの(これも赤く塗って)。顕微鏡精度からすると、このように凸凹となるわけで、高速回転になれば僅かな凸凹であっても、ロッカーアームを跳ね飛ばすことによりバルブの開閉量が増え、バルブタイミングも違ってくる。バルブリフト量は増えるのだが、そのときピストンは既に下がっているためバルブが当たることはない

2013年2月25日月曜日

地域起こしに活躍するバイクとその仲間たち

東京近郊地域でも、若者たちが家を出て、跡継ぎが少なくなり、過疎化している農業地域は多い。

少しでも若者たちを呼び寄せ、活性化を図ることは重要なテーマである。それでないと、そのような地域は、いずれ住民がいなくなり、ゴーストタウンと化してしまう。

そんな中で、つくばみらい市の狸穴地区では、個人の持ち物である山林を利用し、オフロードバイクの走行場所を造っている。

その走行場所を管理運営するのはウイリー松浦
ここへアクセスすれば、走公会の予定などのページがある
前方に見える山林の中にオフロードバイクの走行コースがある。初心者用とベテラン用のコースに分かれているので、走りやすい。バイクメーカーも注目するコースと運営方法だ

町興し、地域おこしでバイクの力を使うことが多くなってきた。そのいい例は埼玉県の小鹿野町である。

小鹿野町では、町を上げて“バイク集まれ”をスローガンとし、食堂などのお店を経営する方々は、ツーリング途中で立ち寄ってくれたライダーをもてなすため、無料でコーヒーやデザートを振舞うなど、積極的にバイク乗りが居心地のよい環境を作っている。このような扱われ方をされると、人間と言うものは、不思議に親近感が沸いて、小鹿野町の中を速度超過で走る気持ちがなくなる。当然交通事故も減少した。

つくばみらい市の狸穴地区にあるオフロードバイク走行場所でも、地域の皆さんから支援を受け、平日はもとより休日ともなると数十人が集まり、楽しくバイクで走り回っている。
坂を上っていくとオフロードバイクのコースがある。既に多くのライダーとファミリーが走行を楽しんでいる。騒音も小さく側で話が出来ない状態はない。トイレや水(井戸だがポンプ付き)なども完備。女性用には更衣室も用意されている

勿論、排気騒音には特別気を使い、管轄の警察署も認める大きさに規制して、住民に騒音公害を与えない配慮は最優先。

そこに集うバイク乗り達は、平日はバイクの好きな仲間だけで来るのだが、休日ともなると家族連れがほとんどで、自ずと走行会はそこに居る子供が主役になり、同じコースを走行する場合でも、優しく見守るような配慮があちこちで見られる。実にほほえましい限りである。
実に楽しそうに、そして安全に良い汗をかいている。そろそろ昼休み・・・

また、昼ごろになると、近くの農家の方が収穫したばかりの野菜や、卵、漬物などを持っての販売に訪れる。
日曜日限定だが、近くの農家の方が採れたての野菜や卵などを販売にやってくる
見てコレ、軽バンの後ろには行列が、早くしないと売り切れ御免だ 

あっという間に人垣が出来、男女を問わず欲しいものを買い求める。勿論若い奥様達もバイクライダーとして、ご主人や子供さん達と楽しんでいるので、当然、本日の夕食のおかずは、狸穴地区で収穫した野菜と卵が主役だろう。

いあや~実に素晴らしい光景を目にした。


2013年2月10日日曜日

ホンダエコノパワー“ホンダエコマイレッジチャレンジ2012第32回全国大会”で見た問題を取り上げる

30年以上に渡り、参加したり、取材したり、運営事務局にアドバイスしたりしていると、普通の人には見えないものが見えてくる。今回は、競技の詳細ではなく、気がついたものについて書いてみたいと思う。

「用意」“ドン”のレースではない。だとするとライバルは隣のマシンではないはず

 

長年会場に顔を出していると、この燃費競技会は他のイベントと大きく違うことに気がつく。燃費競技会は、隣のマシンがライバルではないと言うこと。ライバルは、人間が住んでいるこの地球の環境(引力や大気など)なの。地球上の環境からどれひとつを取り去っても、燃費競技会は成立しない
エコマイレッジと言うのだから、参加者が持ち込む発電機にも触媒を付けさせるべき(カセットガスボンベを使うものは除いて)。私は自身が持っている発電機は、十年以上前から触媒を取り付けて使用している

そして、この偉大な地球環境に、ドライバーひとりが立ち向かっても、納得のいく結果が出ないことがあ。それは、マシンの造り方、走らせ方に不備が出た場合で、それを可能な限りオフィシャルやプレス(実力があれば)がアドバイスや、手を貸してやること(積極的に手を出すのではなく、道具を貸してやったり、カウルの脱着を手伝う、供回りするネジを押さえてやるなど)で、何とかそのドライバーとマシンをゴールへ導いてもいいはず。トラブルを起こしているマシンが、入賞する可能性はないし、それよりも、何とかゴール出来たと言うことで、次のマシン製作に励みが付くのではないかと思。ライバルは隣のマシンと思っていると、このような優しい考え方は出ないだろうが、それでいいとは思わない。

レギュレーション違反と言うが


2012年の最高記録は、水曜クラブが出した3242.784km/L(ガソリンの消費重量から計算する)だったが、それは素晴らしい記録として、別なことに集中したい。
 
毎回、前日の車検、練習走行から現場に入っている。今年、最初に目に入ったのは、市販車クラスへの出場バイク。「ホイールが・・・」で出場は認めるが、記録は出さないと言う。

何でもめているのか、詳細を聞いてみると「標準の鉄リムからアルミリムへ変更しているので規則違反」と言うのである。
ホイールを標準の鉄からアルミに変更していると言うことで、車検を不合格にされたマシンとチーム。レギュレーションからすると、フェンダーを切断して全長を変えること違反だが、そのようなマシンは堂々と合格している。これはおかしい
ところが、車両規則を見てみると、原則として、認定時の型式(市販車の状態)を変えてはならない。本項に記載した変更のみ認める。とあるのだが、市販車の状態を変えてはならない、と言いながら、リヤフェンダーの取り外しは可能と言う。バイクによるのだが、切断しないと取り外せないものや(スーパーカブ)、取り外すことで全長が短くなり(スーパーカブ)、認定時の型式から外れるものもある。

取り外しとは、ボルト&ナットなどで組み合わされているものの脱着可能な部分のことで、スポット溶接されているような部分の取り外しは、切断と言うのだが、これをどう判断するのだろうか。2013年以降の規則に手が加えられなかったとしたら、非常にチグハグで、車検委員の判断で決まるとしたら、とんでもないことである。
これがレギュレーション原文。これに従えば、リム交換(サイズはダメ)はOKのはずで、リヤフェンダーを切断したスーパーカブは違反と言うことになるのだが、それがまるで逆に解釈されたのにはあきれる
であるのに、認定時の型式から外れることのないリムの材質変更を、とやかく言うのはおかしい、と言うクレームを私から出した。まして、昨年はこの状態で出場していたと言うのだから。

競技委員長を交えて、擦った揉んだを30分ほど繰り返したが、競技規則の不備は認めるものの(来年は正しく書き換える?)、参加車両はリムの変更を余儀なくされた。振り回された参加者がかわいそうである。
 

競技進行時間の考え方


一般的なレースの考え方を適用すると、少しでも集合時間に遅れたチームは強制的に排除。つまりリタイヤさせられる。

これを適用しようと言うのはいかがなものかと思う。つまり、手作りマシンであり、素人が製作するのだから、直前トラブルがあってもそれは仕方がない。

ライバルが隣のマシンでないということがオフィシャルの頭に入っていれば、少しぐらいの集合時間遅れは「早く集合してね、・・・」で済ませるべき。僅かな時間を気にして、いい加減な状態で出場し、事故を起こせば元も子もない。
参加集合エリアへの時間は各クラスごとに決められていて、進行をスムーズにしているのだが、自作のマシンでは、時として突然のトラブルが発生する。当然集合時間には間に合わない場合もあるが、それは臨機応変に対応すべき。いきなり強制的なリタイヤは問題。ひどい場合には走行持ち時間と相殺すればいいのではないかと思う
せめて、集合時間に遅れた分を(トランスポンダーを装備しているので、集合エリアに入った時間は分かる)、走行時間の39分20秒11からマイナスする(2乗り、市販車クラスは16分29秒67)、と言う処置などはどうだろうか、と言うことを、の場を管理するオフィシャルに提案しておいたが、どうなることやら。

相変わらずブレーキ不良で車検を通らないマシンが多かった


毎度のことなのだが、ブレーキ性能不足で、車検に合格しないマシンが多い。ブレーキに対するシステムの不備、構造の理解度不足などがほとんどで、これを解消してやることによって、合格する。

今年も(毎年だが)ある高校のマシンに口出し、手出し(工具は握らないが)して、何とかブレーキのテストを合格させたら、そこにいた先生が「またお世話になりました」と言うのだ???

実は、昨年も同様にアドバイスをして、車検を合格させたらしい。その先生は、機械いじりがダメ。昨年とは違うマシンなので、理由を尋ねると、別の高校に移動されたとか。いや~まいりました。

と言うわけで、何か方策を講じてブレーキが効くような状態にしたいと思うのだ。ピット・パドックにそれなりの場所と道具を整えれば、ある程度解決できる目星はある。松脂スプレーなどと言うものが昔存在したが、今でもあればそれは有効に使えそうだ。
ブレーキ不合格で、整備に入るマシンでパドックは満員御礼状態。ここで有効なアドバイスが出来る人員を配置すべき。適当にごまかして合格させることも出来るので、事故を想定すると、しっかり管理できる状態が好ましい
ブレーキ性能不足のマシンは、大半のリムがキラキラ・つるつる状態だからだ。リムを回転ヤスリで研磨すると言うのも有効だろう。それにはその工具などを、オフィシャル側で用意しなければいけないが。

車検時の大きなミスが発覚


これは土曜日の練習走行、スタート前燃料微調整エリアでのこと。
 
あるマシンからエンジンオイルが漏れている。エンジンを始動すると、クランクケースからダラダラと垂れる。
 
レギュレーションでは、オイルが垂れても撒き散らさないよう、オイル受け(容量は規定がない)をエンジン下に装備するように義務付けされているのだが。

レギュレーションに従ってオイル受けを装備していれば、オイル漏れを発見できなかった可能性もあるが、それより以前の問題として、オイル受けが装備されていないマシンに、車検の合格ステッカーが貼られてしまったことに問題がある。

では、車検エリアで、それらを確認する場所に、人員不足があったのかというと、そんなことはなく、昨年以上に人を増やして対応していた。
オイル漏れ、ガソリン漏れは各所に見られる。ホースのクリップにタイラップはダメである。しっかりと全周を締め付けることが出来ない構造だからだ。何本締めてもダメ(ホース抜け防止には役立つが)。細いステンレスの針金を2周巻いて締めるか、或いは純正部品のホースバンドを使用するように指導しなければ、これも事故につながる
このようなことが出てしまうのは、人間として自然のことであるが、こと安全に関する項目は、出場者に配られる車検チェック表だけではなく、オフィシャルが再度、特別にチェックする機会と、細かな項目を設けるべきである。

何故、危険を知らせる旗振りの人数が足らないのか

 

競技が始まると、グランドスタンド前のストレートに、旗振りがいない。レースで言うところのポストになるのだが、停止車両などが出た場合、後続のドライバーに黄旗を振ってそれを知らせる役目をする。
旗振りのオフィシャルが何処にも見えない。かろうじてゴールライン近くに数人。重要なのは、直線部分のコンクリートウォール側。せめて200m置きに二人の旗振りが必要。以前は十分に配置されていたのだが
当然止まるマシンは出るわけで、それに対してどうするのか、事故が誘発されないよう、少しハラハラしながら見ていると(側にオフィシャルがいれば注意を喚起できるが、それは出来なかった)かなり遠くの、ゴールラインから、ノコノコ小走りで歩いてきた。

旗振りオフィシャルの人数が足らないようだが、車検のところには多人数がいたはず。そして、車検はほとんど終了している状態であるのだから、人は余っている。この人員を何故旗振りに回さないのだろうか。事故が起きてからでは遅いと思う。

これ、このような状況。ストップしたマシンに対して、後続ドライバーへ黄旗の合図がない。近くはスタートラインで、そこには旗振りがいるはずなのだが、無視しているのか、気がつかないのか、事故の心配が募る

2013年1月24日木曜日

セミトラ点火装置の1次と2次波形からその良さを検証してみた

セミトラ点火装置は普通点火のポイントを利用し、安定した点火性能を長期に渡って維持できるように造られたトランジスター点火装置と言い切れるだろう。フルトラが当たり前の時代だが、普通点火からフルトラに移行する間、一時的にセミトラを採用するメーカーも有ったのだ。

そのセミトラによる1次と2次波形は、普通点火装置の波形とどう違うのか検証してみた。

使用したセミトラはウルトラのNo.6060。ベーシックなセミトラともいえる製品。

セミトラの波形を見るために使用したウルトラのNo.6060だが、正しい点火コイルとの組み合わせが重要なので、それを理解できないとしたら使用すべきではない。ハイパー・イグニッションNo.8900であるなら、専用の点火コイルと組み合わせてあるので、コレを使うべきだ。No.6060より高性能でもある

1次電圧波形と2次電流波形で普通点火とセミトラを比較検証すると、普通点火の1次波形にはポイントが開いた瞬間からその電流に落ち着きが出るまでの間、何回もの振幅がある。これはポイント接点でのスパークを意味する。その影響は2次波形にも及ぶため、点火エネルギーは小さくなる。これはポイントの接点修整が必要であることを示している。また、1次2次共にピークを示す部分の波形の明るさは、普通点火では流れる電流が多いため、波形もはっきりと見えるが、セミトラでは最大値あたりは霞んで見えない。

普通点火の1次波形ではポイント接点が荒れているため1800回転では余計なものが写る

点火プラグに流れる2次の電流波形にも普通点火では同様な状態が見られる。失火と取れる状況だ

セミトラのように2次波形に余計な波がないということは、それだけ点火エネルギーが大きいと言う判断も出来る。

普通点火と同じ状況で(コネクターを差し替えるだけ。回転数は1800)セミトラに代えると、1次波形でも余計な波形はなく、しっかりと信号を送っていることがわかる

セミトラの2次波形も1次波形と同様に、乱れはなく、確実でしっかりとした火をプラグに飛ばしている

普通点火の場合にはポイントに流れる電流が一般的に最大4~5Ahと言われているが、セミトラでは1Ah(ウルトラの場合には0.4Ah)以下。つまり、ポイントに要求されているものが違うのである。

セミトラの場合ポイントは、点火時期を掌るスイッチのようなものであり、エネルギーを加える普通点火方式と根本的に違う。そのため流れる電流も小さいのである。結果として、ポイント接点の消耗・焼損はなくなるため、長期に渡って(他の機械的な部分の劣化・消耗はあるが)安定した点火火花が確保できる。

波形撮影ではポイントが荒れている状態だったこともあり、普通点火では低回転(1800回転)で点火ミスを示していたが、セミトラとなるとそのような症状は発生していない。これがセミトラの強みでもある。

意地悪テストとしてポイントギャップを大きくしてみたり、コンデンサーを取り外してみたが、波形の変化は見られなかった。ここで確認できたことは、ポイントが単にスイッチの役目に過ぎないと言うこと。

試しに普通点火では重要なコンデンサーを外
して5200回転としてみた1次波形。何も変わっていない 

同じくコンデンサーを外した2次波形。確実にプラグはスパークを行っている。つまり、セミトラにはコンデンサーが必要ないということになるのだろう。取り付けていても支障はなく、単に安全マージン? セミトラのユニットが不良となったときに、簡単に普通点火へ戻せることを考えれば、取り外さない方がいいといえるが・・・

ここからは知識として知っておいたほうがいいこと


専用コイルを持たないセミトラのユニットは、最近巷に使える点火コイルがないので、それを理解していない方は、専用コイルが組みつけられたものを購入した方がいい。価格は少し高いけれど点火性能は高い。

更にオークションでセミトラユニットだけを購入して使用する場合など、特に注意が必要。自身で使用可能な丸型コイルを持っているのならいいが。

例えば、永井電子(ウルトラ)のセミトランジスターNo.6060は、数十年前では普通に汎用として販売されていた丸型のコイルに合わせて開発されたのだが、現在はこのコイルを入手することは不可能。適当なものを組み合わせるとユニットが壊れるので、絶対にダメ。

そこで、同社では専用コイルを組み合わせた、高性能セミトランジスター点火装置を開発している。

このハイパー・イグニッションNo.8900は専用コイルを使用したことにより、電流制御やドエル角制御を組み込むことが可能となり、高回転まで安定した点火性能を確保できた。当然No.6060よりも高性能な点火装置といえるもの。