バイク用のバッテリーは、専用に近いということもあって価格が非常に高価である。自動車用に比べたら遙かに小さいくせに、数倍の価格は当然で購入に躊躇することが多い。
しかし、あるとき、バックアップ用の完全密閉式バッテリーの性能が、素晴らしく高いことに気が付いた。気が付いたというより、そのバッテリーを使った自動車用の非常電源ブースターのあることが分かり、その非常電源を使うと1500ccぐらいのエンジンなら、搭載バッテリーが殆ど空でも、セルを回して始動することが可能というのだ。
そこで内部のバッテリーを検証すると、なんと容量は6V5Ah×2(12V5Ah)というもの。これで自動車のセルが回せるのは、バッテリーの内部抵抗が非常に小さく、瞬間的に大きな電流を流せるためだ。調べていくと、なんと自己放電も非常に少なく、周辺温度が低ければ(何度だか覚えていないが15℃ぐらいだったと思う)、1年間放置しても大きく低下していない、という優れもの。
なお、当時は、まだEVなどというものに注目が集まっていなかった時代で、現在「日本EVクラブ」を主宰する館内氏も、このバッテリーに関しては情報を持っていなかった。そこで後日その内容を連絡したぐらいだ。そのバッテリーとは、ブリヂストンが輸入するサイクロンというもので、基本的にはクルマ用ではなく、あくまでも通信機器などのバックアップ用なのだが、その性能は別のところで利用できたのである。
ブリヂストンの場合、このサイクロンを一般市販していなかった(現在は他の会社が輸入して市販)たため、企画として提供していただいたのだが、バイク用として使うには、接続端子を含め使い勝手が悪かった。つまり、大きさや容量が選べないのだ。
そこで次に目をつけたのが、台湾製のLONGという完全密閉バッテリーで、形や容量が多くあり、その中から選べば何とかなるだろうという判断をした。もちろんどのようなバッテリーなのか、素性は知らないが、価格的に求めやすかった。購入先は秋葉原の「秋月電子」。型式はWP8-12(12V8Ah)で2450円(2011年3月現在)。
ただし、このバッテリーもバックアップ用や通信工業用としているので、端子は平型の差込式。これではセルを回すための電流を流すには問題が出るので(新品のうちは良いが)、ここの改造が必要となる。
なお、秋月電子のHPでは「LONGのバッテリーは、通信工業用のためカルシウムが添加されており、内部抵抗が高いので、バイクのセルを回すようなことは不向きです」というようなことが書いてあるし、「完全密閉式とは言っても、ドライバッテリーではないので、横に寝かしての使用は出来ません」と、バッテリーのパッケージにはあるが、これはやってみなければわからないこと。
ところが、秋月電子のHPでバッテリー説明ページの下にある「この資料は参考です」というPDFをクリックしてみると、LONG社の諸元と説明が表示され、その内容は、大きく違っている。
そこには、大電流の流せることが表記されており、30秒間なら160Ah、5秒間なら320Ahとある。これは解釈の違いなのか。また、20℃であるなら6ヶ月間の放置後でも80%の容量を持つとある。ただし、充電で気をつけるのは、他のバッテリーと同じで、充電中に端子間の電圧が15Vを超えないように注意すること(充電電圧ではない)。
LONG社の説明を信じるかどうかは、人それぞれであるが、このような高性能バッテリーを見逃す手はないので、即入手して、端子もボルト&ナットで接続できる丸型になるよう部品専門店(ホームセンターにも同様なものは販売している)で購入し、それを大きな容量の半田ゴテで瞬時に付ける。時間がかかると端子から熱がパッケージの樹脂に伝わり、電解液(希硫酸。といってもかなり濃度が高い)が漏れ出すからだ。
バイクへの搭載方法は自由だが、それは、LONGのバッテリーをバイクへ使用することとあわせて、自己責任でお願いしたい。特に、私の場合には、横に倒して搭載することになり、そのことによるリスク(電解液の漏れ出し)は覚悟する必要があるのだ。
このバッテリーの性能は素晴らしく、最初のバッテリーは9年間使用しているが、まだ性能低下は見られない。6ヶ月間エンジンを始動させなくても、必要なときには極当たり前にセルが回る。さすがに使用期間が長いので、心配になって次のバッテリーを購入したが、いつ交換するか決めかねている。
1.購入したLONGのバッテリー。どちらもバイク用として使う。そのためには接続端子の形を変更しないといけない。ポスト型とする必要はないので、ボルト&ナットでの接続が出来る端子に変更する。
2.ボルト&ナットで既存のハーネスへの接続をするには、このような丸型の端子を付ければ良い。電子部品販売店だけではなくホームセンターなどでも売っている。
3.その丸端子をどのようにして平型端子へ付けるかというと、半田付けに耐えるよう、管状の部分(本来はここにコードを入れて圧着ペンチでつぶす)を楕円に変形させるのだ。楕円にしてもバッテリー側の平型端子へ入らない(幅の問題で)なら、楕円の一部を切り開いてもかまわない。
4.半田の熱がバッテリーへできるだけ伝わらないように、バイスグリップなどを端子へ挟む。半田ゴテにはタップリと半田を付着させ、更に半田ゴテを押し当てると同時に、半田を溶かし込んで、一瞬で終わりとする。濡れ雑巾で冷やせば更に安心。
5.丸型端子が取り付けられたLONGバッテリー。後は、プラス・マイナスを間違えないように取り付けるだけ。
6.このように横に倒して使用しているが、現在のところ問題はない。もちろん販売店の意向は無視しているので、自己責任である。バイクは250ccシングルだ。