研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2015年10月18日日曜日

数式を使わない、クルマの走行安定性の話・16/17


キャスター角の位置がどこにあるか、これとても重要なこと

極限の話になるとF1などのフォーミュラカーでは、ステアリング操作による巻き込み現象を低減したいというリクエストがあるらしい。

キャスター角を小さくし、それに合わせてトレールも減少すれば、ステアリング操作したときに起きる、見かけ上の巻き込み現象は低減できるが、トレールが少なくなるため、直進安定性がスポイルする。これを防止する方法として、キャスター角だけを小さく立てながら、トレールはしっかりと確保する手法がある。

それがナッハラウフという呼び方をするセッティングで、仮想キングピン軸(キャ スター角を形成する直線部分のほう)をホイールスピンドルより前側にすることが キーとなる。それにより、ステアリング操作をした場合、ホイールの後側を押し出す(あるいは引き込む)ことでタイヤにコーナリングパワーが発生するため、ステアリングの巻き込み現象は発生しにくいと考えられる。

このサスペンションセッティングがナッハラウフと呼ばれるもの。キャスター角が小さくてもしっかりとトレールを確保できる。さらに、キングピン軸位置を自由に変更できるため、クルマに合わせた設定も可能
 
ところが、フォアラウフと呼ばれる、仮想キングピン軸をホイールスピンドルより後側(あるいは同軸上)に設定する場合では、トレールをナッハラウフと同じ寸法とした場合、どうしてもキャスター角を大きくしなければならない。その結果、仮想キングピン軸より上側のホイール全体重量が大きく掛かり、ステアリング操作をした場合、仮想キングピン軸より前側の移動距離と質量が大きくなるため、巻き込み現象も強く発生する。さらにトーの設定もデリケートになり、レース前半と後半ではステアリング特性に変化の出ることが考えられる。

ナッハラウフとした場合、ステアリング操作したときのタイヤと路面の軌跡、さらにタイヤの変形については、キャスター角が少ない分タイヤの変形は少ないが、仮想キングピン軸を中心として、後側がせり出す形となる。路面と接している部分に対してのタイヤの動きが強く働くため、ステアリングのレスポンスは良くな る。

そして、ナッハラウフのセッティングをした場合には、ネガティブキャンバーとする必要がある。ネガティブキャンバーとしないと、タイヤのトレッドを十分に使い切ることができない。例えば、右コーナリングではステアリングを切り始めた瞬間から、外側トレッドが強く接地するようになり、コーナリングで重要な内側(この場合には右側タイヤ)のタイヤ性能がスポイルするだけでなく、反対側に切ったときの仕事を受け持つトレッド外側部分が摩耗してしまい、十分に回頭性を得られなくなる。

それに対して、キャスター角を大きくしてトレールを取っているセッティングでは、仮想キングピン軸がフォアラウフとなりステアリング操作によるタイヤのせり出しは少ないものの、タイヤの潰れが大きくなるため、ステアリングの反発が強くなる割には、レスポンスは良くならない。また、ネガティブキャンバーとしなくても、トレッド外側が強く当たることは少ない。それは、タイヤと路面の接している部 分で路面をコジル力が少なくなるからだ。

せめてもの救いは、ステアリングを大きく切ったときに発生するキャンバースラスト(バイクのコーナリングはこれの発生 によってなし得る)を利用できること。ただし、微少舵角ではキャンバースラストが大きく発生することはない。そのため、ステアリングのレスポンスは緩慢になる。

バイクでは一見ナッハラウフが成立しないように思えるが、実は数十年前のトライアルマシンでは、フロントフォークの角度とステアリングヘッドの角度を変える、トライアルセッティングとかスランテッドアングルという呼び方をした方法で、クルマと同様な目的による、フロントフォークの設定があった。現在のトライアルマシンは乗り方が違うことから、この方法は必要なくなった。異常にキャスター角が立っているが、それで良いらしい。

どのようになっているかというと(古いトライアルマシンを見ればわかる)フロントフォークのアンダーブラケット(三叉とも呼ばれる)のフォーク取り付けオフセット量と、アッパーブラケットのオフセット量を変えるだけ。基本的にはどちらかのブラケットのオフセット量を変更するのだが、アッパーであるなら小さくし、アンダーであるなら大きくする。これでナッハラウフ状態となる。オフセット量は5mmほどだ。

実はトライアルマシンばかりではなく、ホンダが出場していたパリダカ。現在はダカールラリーのワークスマシンは、このトライアルセッティングを使っている。パリダカマシンを見たければ、ツインリンクもてぎのコレクションホールに行けば見られる。ダカールマシンは、空力を考えたカウルが付いているので、簡単には見えないかもしれない。

2015年10月9日金曜日

ここはマン島のTTレース・クラシックの会場


ではない。
MCFAJが年間4戦主宰しているロードレースの会場だ。MCFAJ(http://www.mcfaj.org/)のロードレースでは、クラシックバイクのクラスがあり、ライダーの年齢より年を取っている戦前のものから、戦後直ぐのマシンなど、旧車といわれる話題のバイクは外国車が多い。

年間4戦のうち、富士スピードウエイでは1戦だが、つくばサーキットでは3戦ある。

ゼッケン52は1962年式のマチレス。303は1967年式のベロセット

マチレスG50。1961年式

1955年式のロイヤルエンフィールド。インド製ではないイギリス製のマシンだ
 
マチレス、ノートン-マンクス、AJS、ロイヤルエンフィールド、ベロセット、ハーレーダビッドソン、ハーレーダビッドソン・アエルマッキなど、名前を聞いただけではわからない方も多いだろうから、来年はぜひ現地へ出向いてサーキットでの走りばかりではなく、ピット、パドックで、クラシックバイクと対面することをお勧めする。

もちろん国産車だって負けてはいない。250ccの排気量が華々しかった時代のCB72(250cc)・77(305cc)、CB92(125cc)なども走る。昔のヤマハ市販レーサーTD3やTR3。珍しいところではTD1なども参加する。

スポーツカブC110をベースにしたスペシャル。排気量を110ccとし、マフラーはSTD。静かに走ったが、クラス優勝だ
 
要するに、何でもありで自作でも改造でも、安全であるなら出場OK。スポーツカブ(C110)のフレームをベースに、エンジンはOHCにしてタイカブの部品などを組み込んだマシン110ccもあるのだ。

宮城光さん。安定した走りは昔から変わらず。タイムアタックでは7位だったが、決勝レースでは5位を確保。クラス優勝である
 
ライダーには有名どころの顔も見られる。元GPライダーの宮城光さんもその一人だ。借り物のホンダCB72で参加。派手さはなくいつの間にか上位にいるという、宮城さんの走りは変わらず、安定したペースでクラス優勝。

先のスポーツカブC110改造も、STDマフラーを使用しながら、ヒタヒタと走り、この方(黒河さん)もクラス優勝した。

なんとなくアットホームなレースであることは確かだ。

2015年9月28日月曜日

ホンダエコマイレッジチャレンジで、これまでにも主催者側に提案してきたこと


それは、車検のときに合格しない、ブレーキ性能不足に対応することで、一般の参加者は認識が深く、制動不良はあまりないが、中学、高校など、これまでの参加があっても、先輩たちからマシンを受け継がず、独自の力で製造するようになると、詰めの甘さが出てしまうことが多い。

ホンダエコマイレッジチャレンジについては、名称が変わる前から全国大会のイベントに、出場、取材などで顔を出しているため、何が問題かの見極めは、その場においでになる関係者よりも深く知っているつもりである。

他に車両規則に問題もあるが(それはおいおい記載したいと思う)、それだけではない。ブレーキが効かないのは、事故の元だが、このブレーキも、実際の制動となると疑問は多い。というのは、ほとんどのマシンは後輪1輪だけにブレーキを持つ。そして、この1輪に制動をかけたところで、細いタイヤ、軽い車重、荷重の移動により後輪は簡単にロック。スリップ音すら出ない(経験上)。

ブレーキテストは傾斜版の上で行なう。スリップ防止パッドが張られた上で、勾配20%(11度)で停止できればOK
 
とは言うものの、基準は大切だから規則を作ったのだ。それでも、ブレーキテストを合格しないマシンとメンバーに対して、主催者側がどう対応するかである。

これまで主催者側に提案してきたこと、それは「日当などいらないから、効かないブレーキに対して、それを回復させる手段があるので、その作業をするためテーブル、ガソリン、リヤを持ち上げる角材、そして作業する場所などを用意してくれないか、その場での改良は私が対応します」。という企画書を数回渡したが、なしのつぶて。

ブレーキテストに合格しないマシンを見てみると、「昨日、学校での制動テストは問題なかったのですが、ブレーキゴムを新品にして会場へ持ち込んだら、制動不足でした」。という話も。

この状態ご覧ください。指定されたピット内は制動不良で対策しなければならないチームでゴッタガエシタ。市販車クラスや二人乗りクラスを除くと、10%近くに問題が発見されたような感じだ
 
そのようなことをやってしまった方に対しての説明では、工業高校の場合「クルマのメンテナンスはやったことがあるでしょう。そのときディスクブレーキのパッド交換直後は、制動不足を感じて、しばらく走らせると、効くようになった、という経験があると思いますが、あれは、当たりが付いていないからです。それは自転車のブレーキにも当てはまるのです」。と説明すると彼らは納得してくれる。

このように、リムとブレーキゴムの当たりが悪い場合には、ウォーミングアップエリアで、ブレーキを掛けながら走らせればいいのだが(ゴムくさくなるまで)、なかなかうまくいかないようだ。

そこで、主催者側が提案するとしたら、決まったエリアでのブレーキチューニング。ひとつは走らせている状態の再現となる。作業を行なうピットは決めているが、アドバイスする人は主催側でない私ぐらい。今年も3チームの方に助言を行い(私が手を汚したほうが確実で早いのだが)、そのチームは無事車検に合格。

中学生となるとせんせいのぎじゅつがものを言うことになるのだが、それがなかなかうまくいかない。その結果、わかり易い制動不良となって現れる。しゃしんの中学生たちは、何とか合格した
 
慣性ダイナモがあれば越したことはないが、それが無理なら、決められたピットの中で、エンジン始動とリヤタイヤを回しながらブレーキを掛け、エンストしないように(オーバーヒートにも注意)しながら数分ブレーキゴムをリムに焼き付ける。ゴムくさくなれば終了。

リムに熱で溶けたゴムが付着するので、制動力は高くなる。そのほかにやる手段としては、野球のバット滑り止め(以前は松脂だったが)を吹き付けること。ただし、これは塗り方が難しい。スプレーなので、闇雲にリムに向けて噴出しても、確実性がない。そこで、いったん滑り止めを容器に移し、それを刷毛でリムに塗る。

そして重要なのは、どの程度の効果があるのか。また、欠点はないのかの検証も必要。なので、そのうちスポーツ用品店で同製品を購入し、試してみたいと思う。

また、リムとブレーキゴムの摩擦が強くなるため、ブレーキロックの発生が懸念される。よって、この対策は十分にデーターを集めてから行うべきである。

50年以上前の話だが、効かないドラムブレーキのオートバイに、松脂を溶かして塗りつけた。効くようにはなったが、ブレーキに熱を持つと、溶けた松脂がブレーキライニングとドラムに張り付き、不都合の出た経験がある。

マシンの製造過程では、正しいブレーキキャリパーの取り付け方、ブレーキレバーの角度、長さなど重要なことを指導する。ホームページにある競技規則の中にアドバイスとして組み込むことは重要だと思う。他の項目にアドバイスとして入れても、それを熟読してくれないからだ。これを間違えると効きの悪いブレーキとなってしまう。