研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2020年9月7日月曜日

②面白い画像と写真。何用のエンジンなのかの説明


は、スバルがF1エンジン・コンストラクターをやろうとしたときのもので、シャシーはミナルディを使うことになっていたが・・・このチームには通訳として日本人が居た。でも、幅が広くなるエンジンは空気抵抗が多く、結局ものにならなかった。エンジンの設計はイタリアのキティ博士。

さすがにイタリア、フェラーリと同様の考え方をしているのが分かるだろうか。

12気筒なのにクランクシャフトのジャーナル(支持部分)は、なんと4箇所しかない。スバルの考え方なら13個になる。4箇所のジャーナルではまともに高回転しない。フェラーリのF1エンジンも同様に設計されていたと言う(ホンダがF1から撤退するとき、当時のフェラーリエンジンを分析し、ホンダ流の設計で試作して、その試作エンジンと図面などのデーターをフェラーリに譲渡した)。フリクションが多いなら、そのフリクションとなる部分を減らしてしまえ、と言う、イタリアならではの設計で実に分かり易い考え方が見えていた。
 

そして、水平対向ではない。フェラーリも市販のスーパーカーエンジンは、同様な造り方で、ピストンは対向状態になっていなかった。

V90度エンジンのように、ひとつのクランクピンに対して、左右のコンロッドを取り付けるタイプ。90度Vであると、エンジンの1次振動(エンジン1回転ごとに出る一番大きな振動)がなくなるのでいいのだが、180度Vと言うレイアウトではそれを望むことは出来ない。

ここにもクランクシャフト剛性をどう考えているのか不思議に見える。対向ピストンとすれば大きな問題は片付くのだが。

今ではこんなエンジンは市販車にもない。水平対向となれば、2気筒でも振動は少ない(BMWのバイク)。ホンダのバイクにもある、水平対向6気筒となるとエンジン単体での始動でさえ、固定しない状態で、アクセルを大きく開けても、その場で暴れだすことはないという話も聞いた。

で、キティ博士設計のこのエンジンは、1年後だったかのWSPCにエントリーしていたが、練習、予選で、走行シーンを見ることはなかった。

 

マツダがル・マン24時間耐久レースで優勝したときのエンジン全体図

トルクカーブを力強くするため、インテークには長さを電子制御するテレスコピックのエアホーンが装備された。最初のエアホーンはスロットルと連動だったと思うが、定かではない。
 

 

メルセデスがグループCでのレース用として新しく開発したエンジン。水平対向12気筒である。インテークとエキゾーストが上側にある。吸気効率と排気効率にエンジン搭載の高さを考えたらこのような設計となるが、排気が上側と言うのは、エキゾーストパイプの高温を冷却する効率が悪い。
 
 

カウルの中に高温が溜まるので、トラブルの元。このエンジン搭載のレースは、鈴鹿サーキットで行われたWSPC。ドライバーのひとりはM・シューマッハだったが、ピットでの給油で失敗し、クイックチャックが閉まりきらなかったようでガソリンが噴出し、火が着いたのをシューマッハも気が付き、逆バンクを上がる途中でグリーンに飛び出し、クイックチャックの蓋を閉めようと、火がチョロチョロ着いている状態でいじっていたが火は消えない。

そこにオフィシャルが消火器を持ってきて、火を消そうと言うアクションを起こしたので、シューマッハはそのオフィシャルの行為を止めようとしていた。その理由は知らない。しかし消火器は噴射され、火は消えたがシューマッハはリタイアとなった。レース(正確にはピット作業やマシンの状態とメカニズム)を取材に行っていたので、この状況は肉眼で確認した。

2020年8月23日日曜日

新型エンジンの造り方を見て、これまでにない設計に唖然としてケチをつけた⑮



整備でヒューマンエラーが起きない、起き難いクルマを設計製作していたT社が発表した新型車は、オイルフィルターが交換しづらい場所にあった。

そのメーカーのクルマを数多く取材に使い、「さすがに世界で認めるだけのことはある」といつも感心していたが、あるとき???

それは、定期的に交換しなければならないエンジンオイルのフィルターが、特別な方法でないと見えるような形に取り付けられていないことだった。

オイルフィルターは、ボンネットを開けても見えないし、ハンドルを大きく切っても見えない。

一部のメーカーでは、シリンダーブロックのラジエター側に取り付けられていたり、ハンドルを右にロックまで切って、そこからタイヤハウスの中を覗くと、目の前にフィルターが取り付けられている、と言うほど交換性が良かったのだが、その問題となっているクルマは、シリンダーブロックの後ろ側に取り付けられており、ピット作業かジャッキでクルマを持ち上げ、そのクルマの下にもぐらなければ手が届かない位置にあった。それはまるでFWD初期のモデル(RWDレイアウトのエンジンを流用していた)のような状態だった。

発表会ではT社のエンジン開発担当者が居なかったので、その詳細を聞くことは出来なかったが、試乗会に呼ばれたときにはエンジン開発担当者と会う機会があり、なぜこのようなレイアウトになったのかしつこく聞いてみた。

というのも、そのメーカーのクルマ開発では、整備性が重要項目であり、自社評価の100点主義を旨としていたからだ。

そのことは、これまでの取材の中で、直接整備性を検証する担当重役から聞いていた。「とにかく自社が決めている100点が重要で、他のメーカーと比べた場合、ある一箇所が劣っていたら、設計変更を要求する」と言う厳しいものだった。

この組織は、サービス技術部とは違うもので、あくまでも市場でのメンテナンス時に、ヒューマンエラーが起きない構造であったり、余計な作業を必要としない構造を要求していた。

とにかく扱いやすく、人間(ディーラーのメカニック)のやることを信用していないと言うか、当てにしていないような設計と製造が各所に見られた。

そんなことを重点にしているメーカーから???のエンジンが出現したので、開発担当にしつこく迫ってみたのだ。

「貴方の会社が作るクルマは整備性が優先されていたはずだが、なぜこのような構造となったのか」。整備性評価グループから指摘はなかったのか。

すると、そのうるさい組織は当然知っているわけで、「その組織の担当者の全てがOKの印を押しているのです。当時はコストも関係したと思います」。と言う話だった。

現在は、そのエンジンに対する評価がどうなっているかは知らないが、雑誌の編集をやっているときに、読者からいろいろ質問が来る。その中で、どのメーカー、どのクルマが整備初心者にはお勧めか、と言う問いに対しては、T社のファミリークラスを勧めたほどだ。

2020年8月15日土曜日

だいぶ前だが、試乗会でブレーキペダルを踏むときに、つま先が何かに当たり・・・と言うケチをつけた⑭



そのクルマは、そのメーカーのトップブランドと言えるクラス。当時から左足でのブレーキ操作をしていたのだが、その問題となるクルマは、緊急的に左足をブレーキペダルに持っていこうとすると、つま先にワイヤーハーネスの太い部分が当たり、一瞬別な行為になったのかと感じて、ブレーキ操作が遅れる。

右足ではそのような問題は出ないが、それでいいというわけにはいかない。

開発者との話で、左足ブレーキのことを強調していたら「それほど左足でのブレーキ操作にこだわるなら、MT車には乗れないでしょう」と言う質問と言うか、言いがかりをつけてきた。

ここで、思いっきり反論しようかと思ったが、数秒時間を置いて「でも、サーキットではトー&ヒール使うんですよ」と言ったらその後は黙り込んでしまった。

ATで左足ブレーキを完璧に使える人が、MTに乗った場合、ろくに操作が出来ない、と言う考え方は間違いである。

それは、試乗会などのイベントで乗るクルマは、ほとんど2ペダルのATだが、マイカーは、なんと5速のMTである。どちらを運転しても、操作でまごつくことはないからだ。

2020年8月10日月曜日

警察官と拳銃の事件が報道されるたびに、アメリカ・ニューヨーク市での拳銃についてのことが思い出される



銃社会のアメリカでは、いくら警察官と言えど直ぐに引き金を引く人物がいるらしい。そこで考えられたのが(だいぶ前のことだが)銃身を短くし、撃鉄を起こせない構造のダブルアクション式リボルバー。

この構造であると、しっかりと目標物に照準を合わせることが難しく、かつ銃身が短い(5cmぐらい)ので、弾はまっすぐに飛ばない。

この短い銃身を持つ拳銃での射撃をやったことがあるが(アメリカで)、ダブルアクションではない構造のものでも、いくら正確に的を狙って引き金を引いたところで、弾はあらぬ方向へ向かっているようで、10m先につるされた的には当たらず、その的をつるす金属にぶつかり、溶けた鉛が跳ね返って熱い思いをするだけだった。普通のブローニング拳銃(自動拳銃)に交換すると、確実に的を射抜いた。

話は戻って、それでもニューヨークにおける警官の拳銃事故はなくならず、次の一手を考えた。それは、弾の材質を金属からプラスチックへ変更した。(日本でも警官の拳銃訓練ではプラスチック弾が使用されていると言う話を聞いたが。それは、金属だとお金がかかるから)

では、なぜニューヨークではプラスチック弾なのだろうか。それは、金属弾であると貫通銃創の場合、場所によっては致命傷とならず、犯人は逃亡することができてしまう。

もちろん痛さは有るが、弾が突き抜けることで出血は少なく、当たった場所によっては、ダメージが少ない。

そこで考えられたのが、プラスチックの弾。軽いので致命傷にはならないが、貫通銃創を起こさないため、その痛さはすごいらしい。人体の骨がない部分に当たれば、いくらプラスチック弾と言っても、内部にめり込んだり、眼球を破壊する(弾が脳に達するだろうから死亡)ようだが、それ以外の場所では、どこに当たっても七転八倒(しちてんばっとう)の痛さで、容疑者はその場から逃げることはできないと言う。

ただし、現在がどうなっているかは定かではない。プラスティックの銃弾であって欲しいが・・・

この方法がいいと思うのだが。日本の警察官が持つニュー南部と言う名前の拳銃は、射程距離が長く命中率も高いと言うが、射程距離が長い必要はどこにあるのだろうか。凶暴な犬1匹に対して、その場に居た警官二人は13発発砲して、処分したと言う????

我が家では、いまだに警官による拳銃の発砲があると、凶暴とは言えども犬1匹に対して、射殺するまでに13発も発射したと言う記事が話題になる(漫画のバカボンに出てくる、お巡りさん状態)。パニックになって、むやみやたらに発砲したのだろうから、その流れ弾が心配。そうすると、プラスチックの弾に行き着く。

プラスチック弾だったら、交番を襲撃して警官の拳銃を奪う、と言う凶暴な行為も少なくなるのではないかと思う。それに、日本の警察では、いまだに45口径(45/100インチ)だから、約11ミリ。殺傷力は高いが、それの必要性はどこにあるのだろうか。

銃を所持して、人を殺そうと構えている犯人に対して発砲するにしても、射程距離が的が見えないくらいの距離を持っていたとして、それがなんの役に立つのだろうか???

2020年8月5日水曜日

ブレーキペダルの応答性と、効きの悪さに疑問を呈した⑬



あるときなんとなく気が付いた(現代ではない)、それは、2リッタークラスのクルマで低速走行しているとき、ブレーキペダルを急激に(急ブレーキ状態)踏み込んだ場合でも、タイヤがロックするような状態にはならないこと。

特に4輪ディスクとなるとこれがひどい。

でも、排気量が小さな(1300cc)クルマとなると、ブレーキペダルに対するブレーキシステムの反応がまるで違う。それは、走行中でなくても検証できる。

どのようにしたかと言うと、駐車場でエンジン・アイドリング始動中、ギヤはニュートラル。その状態でブレーキペダルを力強く、素早く踏み込んでみれば、その反応で判断できる。

排気量の小さなクルマは、ブレーキペダルがフロア近くまで下がるが(タイヤがロックする状態)、排気量が大きなクルマは、ブレーキペダルからの反発が大きく、どんなに力を入れても、踏み込むのに時間が掛かる。つまり、タイヤがロックする状態まで、ブレーキパッドはローターを締め付けていない。その前に停止してしまうし、制動距離は伸びる。

排気量が大きなクルマは、普段使用するときのペダル踏み込み力を小さくするため、ブレーキブースターを大きくしたり、ダブルとしたりの構造だが、これが災いを招いている。

ブレーキブースターの基本的な構造は、大気圧を利用することで、如何にその大気圧を素早くブースター内に取り込むかが重要だが、それが簡単ではない。

大気圧を素早く大量に取り込めばいいのだが、そればかりを目標に製造すると、ブレーキペダルを踏みつけたとたん(どんなにゆっくりとやっても)、ブースターの力によってマスターシリンダーは強く押され、いきなりタイヤはロックする。

ブレーキペダルを踏みつける力を、素早く、かつバランスよくブレーキ・マスターシリンダーに伝えるには、微妙な構造と調整が重要となるのだ。

また、マスターシリンダーに対する助勢力が加わった瞬間には、その助勢力を維持する構造が必要で、更に、それ以上マスターシリンダーを押す力が加わらないようにしないといけない。そこで組み込まれているのがリアクションディスクと言うゴムの板。でもこのゴムの硬さと厚さが重要。これが難しい。さらに、大気圧を取り込むバルブの大きさやそのバルブに作用するストロークも重要となる。

これがブレーキブースターの構造。よく観察しても作動を理解するには時間が掛かる。定圧室と書かれている所は、エンジンのバキューム圧が掛かるところ

 
当時の我が愛車は、1秒ぐらいかけてブレーキペダルを踏み込めば、恐らくロックするであろう位置までペダルは踏み込めるが、時間を掛けてのペダル操作では、緊急ブレーキとして役に立たない。

この応答性が悪いブレーキ、何とかしたいと思い、雑誌編集の企画で改良を考えた。そして、大切なことは、マスターバックの構造を理解すること。構造を理解することで、ブレーキのバージョンアップできるヒントが見つかるかもしれないからだ。

そして、この問題となるブレーキの性能は、ブレーキメーカーはもとより、ブースターを製造するメーカーもかなり前から知っていたということが、取材していく最中に分かってきた。

ついでに述べておくが、現在のクルマでは、ABS装着によって、ABSモジュレーターは、ブレーキペダルの踏み込む力が不足していても、ABS作動を目的にブレーキラインの圧力を一杯まで上昇させる構造なので、昔のような(原稿に出てくる表現)問題は起きない。ABS作動条件も、アクセルペダルから足が離れてブレーキペダルを踏み、ブレーキスイッチがONするまでの時間から、急ブレーキ、タイヤロックの条件として、ABS作動となる。もちろん実際にブレーキロック寸前から(タイヤにあるスピードセンサーの波形を使う)ABS作動は基本だが。

実は、ABSの作動スタンバイ、と言うような状態があるようで、各ホイールのスピードセンサーからの信号が不釣合いとなると、ブレーキ信号に関係なく、ABSは作動していると言う話だ。

そのことを聞いたので、路面が良くない場所(ダートなど)を走行しながら、ABSユニットが本当に作動しているかどうか、アクセルペダルを踏んで、ホイールが空転する状態を作り、ブレーキペダルに軽く足を乗せると「ココココココ」と言う軽い信号のようなものを感じた。これがABS作動中という信号らしい。

このようなことを調べていたら、モーターショーの会場、部品館で「高応答型ブレーキブースター」なるものが展示されていたのを発見。

これは取材したいと思い、ブースに居た方にお願いすると「モーターショーが終わったらOKです」と言う返事をもらった。そして、その部品メーカーと言うのが、東京にあるということで、取材に出かける。

取材当日、その高応答型ブレーキブースターは、ブースターそのものと言うより、大気圧を取り込む部分の構造にあることが分かった。大気圧バルブの構造が2重になっており、ブレーキの踏み込む速度と力によって、大気圧バルブの開くストロークが変化すると言うことで、問題を解決すると言う。

それでは、これまでのブレーキペダルフィーリングについて、そのサプライヤーさんはどう感じていたのだろうか聞いてみると、「急ブレーキ状態のときにブレーキペダルが踏み込めない状況が存在するのはかなり前から知っていたが、その状況を著名な自動車評論家の試乗記を読んでも、問題が指摘されていなかったので、なんとなく無視していた」と言うとんでもない状況を知らされた。

それからは、試乗の度にブレーキペダルとその能力について検証し、問題があると開発者に説明を求めたが、内容をはぐらかすばかりで、肝心なことには行き着かなかった。つまり、行き着かないというより、ブレーキブースターとそこに関係する大気圧バルブのことが、理解されていなかったのだと分かった。

しばらくして、ある自動車メーカーが、当時の谷田部(自動車研究所)で、2種類のブレーキブースターを組み付けたクルマの検証を行いますから、体験と確認をしてください、と言う話が舞い込んできた。

その2種類のブースターとは、1点は先ほどの構造が複雑なタイプで、もうひとつは、リアクションディスクの厚みを変更した、ごくシンプルな改良モデルだった。

そして、実際のブレーキペダル感覚と制動感覚を比較すると、どちらも遜色のないことを確認。その結果、その自動車メーカーは、コストが安く、問題の解決に結びつくリアクションディスク改良型を採用した。

そして、マイカーにある問題点はどのようにチューニングすれば解決するのか・・・まず、ブレーキ周りのオーバーホール。キャリパー周りからマスターシリンダー、そしてブースターについて同様に分解して確認する。

すると、大気圧が流れ込む部分にフィルターが二重で付いていることを発見。ここのフィルターはある程度重要で、ここから入った大気圧(空気)はエンジンに吸引されるので、そのことも計算されている。

ブレーキペダルを踏んだときに出る音消しもあるようだから、その音より性能を重視して、片方のフィルターを取り外す。ただし、このフィルターは音消しよりも、吸い込まれる空気(大気)中のごみを除去することが目的なので、無視してはまづい。

このようは改良を行ったことで、緊急ブレーキ性能は少し改良された。

このブレーキブースターレスポンス問題は、各自動車メーカーも重点的に取り上げ、ブースターの基本的な構造が見直されたものも出てきた(現在ではあたりまえになったが)。それは、インテークに作用するバキューム圧を利用すると言うものではなく、油圧モーターとアキュムレーターの採用で、油圧ブースターとしてきたのだ。

最初にやったのは、矢田部の体験試乗で呼んでくれたメーカー。そのメーカーの最上級モデルに採用された。でも、それほどの感激はなかった。

他のメーカーでも巷からの意見を踏まえて、油圧ブースター方式が取り入れられた。とくにハイブリッドカーでは、エンジンが回転していない状況で、バキューム圧が低下していれば、ブレーキ性能がダウンするので、安定的にブースター性能を確保しようとしたら、モーター駆動による高圧オイルポンプと、その圧力を使うブースターは必須項目だった。

T社の構造はかなり複雑で、ストロークセンサーと言うものまで取り付けられたが、確かにブレーキ性能と、そのフィーリングは向上していた。現在ではこれが標準装備となっているようだ。



2020年7月31日金曜日

ロードスターNCのハンドリングについてケチをつけた⑫

マツダロードスターが2リッターとなったNC(3代目)だが、筑波サーキットでの試乗会で、特性を確かめられた。それは、左コーナーの第一ヘアピンを走り抜けるときだ。チョイと他の方と違う走り方をすると、とてつもなくタイムを縮められることが分かっている。果たしてモデルチェンジされたロードスターは、これまでのNBよりも優れたコーナリング性能を示すのだろうか。

ワクワクしならが第一ヘアピンに突っ込み、これまでと同様な操作をすると・・・ その走り方は、NBでのレース直前にマスターしたもので、そのレース決勝では大雨でスリップし易い中を(練習時はドライだった)、ドライと同様な走り方が可能だった。

どのような走り方かと言うと、コーナーのクリッピングポイント手前10mぐらいのところで、ハンドルをコーナーに合わせて左に切りながら、2速ギヤで、いきなりアクセル全開に踏み込む。 この目的は、リヤを振り出してカウンターステアを当てながら、走り抜けようとするものだったが、パワーがないロードスターでは、リヤが流れる状態とはならず、逆にフロントがハンドルの向きと反対となるアンダーステア状態が僅かに発生した。

そのときにアクセルを戻すと不安定な状態となるため、リヤが流れ始める。すかさずアクセルを全開にすると同時にハンドルを若干戻すカウンター状態だが、それをすることによってハンドルは直進状態を向いている。そして、このときにはロードスターも進行方向をしっかりと向いており、アクセルに対する反応も良くなり(荷重がバランスよく働いている)、ホイールスピンすることもなく、いきなり奪取する。そして、この状態が右回りとなる第二ヘアピンまで持続した。 この走りの状態をモデルチェンジしたNCでやってみたが、フロントが飛び跳ねてしまい、どうにも楽しくてスピーディーな走りが出来ない。

その点について開発者には意見を述べたが、明確な返事は返ってこなかった。 ロードスターレースのときにマスターした条件を考えてみれば、オープンカーにレース用のロールケージを装備しているので、その分ボディ剛性は高い。それが、コーナリング性能にも影響しているのか? 疑問だらけだったNCのコーナリング特性について、そのことが解決する状況が出てきた。それは、排気量も小さくなったNDが発売されたときである。

新しい開発者に、NCの筑波サーキットでの走りについて、何気なく聞いてみると「NCの場合は、サスペンション周りをロータリーのRX8用を流用しましたから、ボディ剛性などとのバランスが取れていなかったと思います」と言う返事が返ってきた。 つまり、NCでのコーナリング性能で下した評価は、正しかったと言うことが分かった。 

2020年7月23日木曜日

国産初のジェット旅客機は???



ジェット旅客機に話しになると必ず出てくるのが、三菱重工の純国産ジェット旅客機に話し、しかし、テレビでの解説では国産初のジェット旅客機という表現をしているが、国産初のジェット旅客機はYS11と理解しているが違うのだろうか。

YS11は確かにプロペラはついているが、そのプロペラを回す動力はジェットエンジン。ターボプロップと呼ばれるもので、この形式のジェット旅客機は(旅客機に限らず)今でも製造されており、数多くある。なおYS11に使用されていたのはロールスロイス製のエンジン。

なのに、どうして三菱重工が開発する飛行機を国産初のジェット旅客機と言う言い方をするのか理解に苦しむ。

それとも、ジェット推進で飛行する飛行機だけをジェット旅客機と言うのなら別だが。

話は違うが、20年以上前のことだが、茨城県潮来にあるボート製造工場で面白いエンジンを見つけた。それは星型の(何気筒だったか忘れた)エンジンで、工場の床にデンと置かれていた。

「今でもこんなエンジン使っているのですか?」と聞いたところ、「自衛隊の飛行機では、まだ使っていますヨ」とのことだった。

しかし、このエンジンはどんなボートに使用するのか興味があったので、ついでに聞いてみると、「エアボート用」と言う話。霞ヶ浦ではなく、それよりも太平洋側にある北浦。水深は浅くスクリューのボートでは、走る場所が限られるので、非常時などのことを考えると、エアボートが必要なんだそうだ。

現在はそのようなボートがなくても、ジェットスキーなどのボートで、非常時には対応できるだろうから、まだこのようなエアボートを作っているとしたら、完全にレジャー用だろう。

ネットでエアボートと北浦について調べていると、観光用として使用していることが分かった。興味のある方は問い合わせてみるといいかもしれない。

2020年7月16日木曜日

試乗会などでバリアフリーと言う説明に対しケチをつけた⑪



オリンピックが近づくとバリアフリーの話が出てくる。前回の東京オリンピックのときにもそうだった。でも、彼らが言うところのバリアフリー化は達成できていない。

今回の話はオリンピックと関係のないもので、自動車メーカーでも一時期「バリアフリー・・・・」を謳いものにするクルマが発売された。

バリアフリーと言う言葉に違和感を持っていたので、試乗会での説明などで「このクルマはバリアフリーをコンセプトにしました」などという発言を聞くと、その言葉が終わるか終わらないうちに「バリアフリーって何ですか?」「どこかに健常者が区分けの線を引いて、ここからは障害者、その手前は健常者」と言うようなことを言っているから、素晴らしいものや街、物事が先に進まないのではないですか。

あなたたちがバリアフリーと言って差別と区分けをするような発言をしてはいけないのです。という話を数回したら、いつの間にか自動車メーカーの説明から、バリアフリーが消えた。

バリアフリーなんていっているから、バリアを造ることになるのだ、と日頃から思っている人間にとって、この言葉は気になるのだ。

障害者に優しい道路やクルマ、人が動くときだけではなく(駅などの階段もある)全ての事柄に対しても差別無しとしておくこと。自分もいつかはお世話になる事柄だから、これをフリーにしておけば、住みやすく生きやすくなると思うのだが。

2020年7月3日金曜日

ツインリンクもてぎがオープンするときにもケチをつけた



クルマやバイクばかりではなく、関係する組織にもケチをつけた

ツインリンクもてぎのスーパースピードウエイのオーバルコースは、ここでアメリカのレースが開催されることになっている。NASカーはガソリンが燃料なので、火災が発生したときにはそれなりの消火方法が必要だが、インディカーとなると燃料はアルコール。

アルコールを使用する理由は、どこかのジャーナリストが「環境に優しい」からだと言う。でも当時のアルコールはメタノール。メタノールはアルミやゴムを溶かす。なので、走るたびにマシンの燃料ラインはクリーニングすると言う、実にヤッカイなものだった。さらに、高速燃焼(内燃機関などの場合)させると「ホルムアルデヒド」と言う毒ガスを発生する。

その毒ガスに変化するメタノールがその後どうなったのかの話は後に取っておいて、燃料として使った場合の火災はどうのように消火するのか、と言うことに行き着く。

アルコール=水であるので、水による消火は可能となる。それを理解していれば、オーバルコースのイン側に、散水栓を常設すれば利用価値が高い。

そこで、ジャーナリスト関係者の下見会に参加し、初代社長(ホンダの広報時代からの知り合い)と2代目社長となる方の3人となったときに、インディカーと燃料についての質問と、アルコールなら消火栓の設置はどうしたか聞いてみた。この質問は、お二人の立場を考えて、私以外の方が、アクティブトレーニングセンタの説明に出かけているときを見計らった。

その結果、消火栓はどこにも設置していないことだけではなく、燃料つまりアルコールなので、水で消火できる、と言う認識もなかった。

コースのイン側に取り付けることは出来ないが、ピットなら側溝が手前に通っているので、その中を水道管が通せること。さらに、中央付近には、グランドスタンド側からピット側に水を流す、太い水道管があることも分かり、それを使うということで、私の提案は受け入れられた。インディカーのメカニック達は、この設計変更には喜んだはずだ。

いくら火の点いていることが分かりにくいアルコールでも、消火に使える水が手元にあることで、アクシデントが発生したときには、慌てずに利用できるからだ。散水用のホースばかりではなく、ドラム缶に入れた水をピットまで運ぶ、と言う作業からも開放された。

オーバルコースのピット内側、排水の側溝から飛び出しているパイプが、私のアドバイスで取り付けられた散水栓
 
ついでの話だが、アルコール燃料は、その後メタノールからエタノールに変更され、ホルムアルデヒドの心配や、ゴムとアルミの溶解はなくなったんだが、100%エタノールであると、それを飲んでしまう人が居るので、ガソリンを5%(だったと思う)ぐらい混合したという。そのため、当初日本でのエタノール使用が、酒税法に抵触するので、「税金をかける」とかの問題が国税庁から出されていたが、それも解決した。

2020年6月25日木曜日

ニッサン・スカイライン32GTRと33GTRの違いに素早く反応した結果は、33GTRは・・・



33GTRにケチをつけた

32GTRの素晴らしさは、菅生サーキットでの試乗会で体感していた。それまで菅生サーキットをクルマで走ったことのないのに、いきなりアクセル全開。前方に走るベテランレポーターがブレーキを掛ける時点を確認したら、「オレは彼よりも10m先からブレーキを掛ける」なんていうことを考えながら、試乗を楽しんだ。

とにかく、運転者の気持ちと技量を32GTRは読み取ってくれているようで、不安な要素はひとつもなかった。そこから「アクセルを踏み込め」なんていう動きの状態まで理解できる。32GTRと意思の疎通がやれているような気持ちを味わった。

もちろん、32スカイラインのフロントサスペンション周りに欠点があるということはこのときに知る由もなかったが。

フロントのマルチリンクサスペンションは、コンピューター解析により生まれたものだが、熟成と詰めは甘かった。サスペンションジオメトリーとそのジオメトリー通りにサスペンションを作動させるには、サスペンション周りのボディ剛性、取り付け点の精度、さらに使用されるゴムブッシュの硬さの均一化が必要となるのだが・・・

それはともかく、33GTRが発売されたときの試乗会は筑波サーキットで行われた。筑波サーキットは走り慣れたサーキットであるし、32GTRでも走っていたので、32GTRの操縦性の素直さや素晴らしさは十分に理解していた。

100Rから90Rに変化する最終コーナーでは、3速エンジンブレーキのアンダーステアとなる状況から、アクセルを全開にするまで踏み込むタイミング。そして、4WDのアテーサETSによるフロントへの駆動力配分もよく、アンダーステアはピタリと止まり、それと同時に気持ちの良い加速力を味わえた。つまりドライバーの気持ちがそのまま反映され、狙ったラインを確実にトレースする素晴らしさは、これまで味わったことのないものだった。

その経験から33GTRはもっとすごいのだろうと言う期待を持って試乗したのだが、見事に裏切られた。

速度が高い最終コーナー。32GTR同様の挙動が帰ってくるのかと期待したが、いくら待っても返答はない。どこからアクセルを踏み込めばいいのか分からないのだ。で、楽しく試乗は出来なかった。

反対に、カウンターステアを得意とする試乗者は、パワフルで思いのままだ、と言う評価であったが、私とは正反対。

この制御ではダメだ、と言う評価をしたのだが、それは、その後の市場が端的に良否の判断をしている。33GTRは販売が伸びなかったのだ。チューニングショップの評価もそうであったし、一般の方が買い替えしたときの評価は、最低だったからだ。

高性能カーは、ドライバーとのコミュニケーションがしっかりと取れていないと、安全で楽しくは運転できないということであると思う。

2020年6月17日水曜日

燃費競技会のホンダエコノパワー(エコマイレッジチャレンジに代わる前だけではなく、現在の運営組織にも)に対してもケチをつけた



ケチをつけは話

数十年に 亘り取材や運営のアドバイスをしていると、他の方では気が付かないことに目がいく。

例えばそれは、走行中にオフィシャルが振るフラッグに対してがまず最初だったように思う。コース上にトラブルで停止している競技車があれば、それを後続のクルマに知らせて、事故などが起きないようにするのだが、その旗を振る位置や高さがベストではないと気が付いた。フラッグの振る位置が高すぎるのである。

これであると、あの狭く窮屈なドライビング状態から、旗の色と振り方から、何を表現しているのか判断に悩むだけではなく、旗が振られていることさえ認識しにくい。

いくら速度が遅いからといって、目の前で旗が振られたのでは、走行ラインを変えるとこは不可能。ましてブレーキを掛けるという行為は、そのイベントからの脱落を意味するのだから。

事故になるかもしれない状況を見ると(実際に事故が起きる手前から事故後まで、全てを見ることもあった)、現場で競技関係者にそのことを伝える。

また、スタート最終チェックでは、燃料が正しい位置まで入っているかを見て、不足している場合だけではなく、レベルが高すぎるときにも、スポイトなどを使用してその燃料(ガソリン)をレベルに合わせるのだが、運営組織が変わってから、その過不足を調整するガソリンが、テーブルのオイルジョッキに入って、無造作に置かれていたことも。

この状態で、誰かが机にぶつかり、ジョッキに入っているガソリンをコース上にぶちまけ、それにビックリした関係者が、持っている工具などを落としたとしたら、そこのこぼれているガソリンの蒸発ガスに簡単に火が点く。

これが想定されたので、そのことを関係者に話したら「ここにいる連中は、こぼれたガソリンに火をつけるようなやつは居ないから、心配ない」と言う
返事。故意に火をつけることはなくても、事故は起きる。
 
運営組織が変わったことで、何が重要なのかがわからなくなり、適当に運営すると、このような大きな事故要素が生まれる。勿論、この現状は直ぐに改善させた。

では、それまでの運営組織はどのようにガソリンの管理をしていたのか、当時の組織に聞いてみると「ガソリンメーカーをスポンサーにしていたので、全てはそのガソリンメーカーのエキスパートが管理して、どこから見ても事故が起きないようにしていた」、と言う話だ。あるほど、昔の画像を見てもそのような危険な状態は発見できなっかた。

またあるとき、車検後の路面に青く広がった痕を発見。これはエンジンオイルが垂れたもので、多量ではないが事故の元になることはある。

なぜこのようなことになっているかと言うと、燃費競技会に使うエンジンは、ウエットサンプ潤滑の状態が必要なく、適当にオイル分が各所にあれば良い。そのため、勿論オイルポンプもない(改造してあるエンジンは)。場合によっては、シリンダーヘッドのヘッドカバー内に、必要最低のオイルを滴下させたエンジンも。そして、当然軽量化と熱量低減のため、クランクケース下は密封されていない。

こうなれば、滴下したオイルの行き先は、走行路面と言うことになる。それを防止するため、どのようなエンジンであっても、クランクカース下にオイル受けを付けるという規則を作った。

また、あるとき燃料の温度についても管理と規制が必要である、と気が付いた。それは、埼玉県桶川にあるホンダのレインボー教習所の直線コースで行われた大会で、関係者が、配給されたガソリンの入ったガラス容器を、ドライアイスで60分ほど冷やす行為。これによりガラス容器のガソリンは体積が小さくなり、ビックリするほどガソリンレベルが低下していた。

これでスタート前チェックでは、レベルの下がったガソリンを補給してくれるわけで、燃費の計算としては有利になる。

ただこの行為をやったマシンは、テレビ局のアナウンサーが乗るもので、乗り方がいい加減だから本来の性能は出ない。そのため、結果に対して文句を言うものは居なかった。

これを思い出したので、最終燃料調整のところで、非接触型(今巷で使用している体温測定と同じもの)の温度計を使って、燃料温度を測るべきだという提案をした。

翌年のイベントでは、全てのマシンに対して、燃料の温度を測定する行為が見られた。

その後の規則には燃料を冷やしてはいけない、と言う条項が追加されたが、エコマイレッジチャレンジと言う開催名に変わってから、この燃料温度の計測がない。

その旨を競技関係者に伝えたら、決勝日になって、どこからか1個だけ借りてきた温度計で、抜き打ち検査をしていたが、抜き打ちではダメで、全車やる必要がある。

その温度測定違反に引っかからなかったラッキーなマシン、チームが出てしまっては、規則が何のためにあるのか分からなくなるからだ。

2020年6月6日土曜日

アイドリングのクリープ走行から、ハンドルを操作すると速度が勝手に上がるファミリーカー



ケチをつけた話

それは、新車の試乗会での出来事だった。試乗車に乗り込み、エンジンを始動し、左足をブレーキペダルに載せながら、アイドル状態のクリープ走行をするが、次の瞬間、これまでにない挙動に自分の操作が間違ったのか、と一瞬あせった。

そこで、再度試乗車の駐車場所にクルマを戻し、そこから、絶対に操作の間違いをしないような行動を取って、同じようにクリープで発進し、ハンドル操作を行うと、その試乗車は速度が上がる。強烈な加速ではないが、左右にハンドルを動かすことを連続すると、ハンドル操作するたびに少しずつ速度は上がる。

ま、左足をブレーキペダルの上に乗せているので、問題が発生したら急ブレーキを十分に利かせられるのだが、一般の方だったら、どうなることか。

このクルマはT社の初代ヴィッツ。以前にもブログに書いたと思う。

おかしな挙動なので、試乗後に開発担当者にそのことを話すと、20分ほど行ったり来たりを繰り返していたが、降りてきたときには汗をびっしょりと掻いていた。

原因は何かと聞くと「・・??」

私が察するに、当時は、ステアリングのアシストが油圧式で、ハンドル操作すれば、当然エンジンに負担が掛かるので、回転が落ちないよう、アイドリング回転数フィードバック制御を使っていたはず。

しかし、そのプログラムが間違っていたとすると、今回のような結果が起きるのではないのか。

しかし、そのときには、その問題の取材ではなく、使用したエンジンに対しての取材だったが、開発担当者は「今日は無理です」といって、扉の向こうに消えていった。

2020年6月3日水曜日

ロータリーエンジンの構造に口を挟んだ 潤滑のオイルポンプと吸気ポートの機構・仕様だ



3ローターのユーノスが発売になったとき、広島のマツダ本社まで、ロータリーエンジンの取材で出かけた時の話し。疑問に思っていたことをストレートに聞いた。ケチをつけた話

ついでに、ローターハウジング内側の鉄のタガを鋳込んだ部分に対する硬質クロームメッキ・ポーラス処理についても、時代錯誤。なぜニカジル(NiCa-Sil系)や爆射(後に、この技術はカヤバのものであることが分かった)など。また、ヤマハではアルミ部分に直接硬質クロームメッキを施し、耐久性を高めている実績は一番長いわけで、バイクの世界では当然のこととして行われているこのような処理をしないのか聞いてみたが、「現在の鉄のタガを鋳込んだところにクロームメッキという処理で、とりあえず目標とした性能が保てている」と言う返事だった。

しかし、ニカジルなどの表面処理を行えば、鉄のタガ鋳込みによる膨張率違いで発生する歪がなく、燃焼による吹き抜けも抑えられ、潤滑オイルの消費などが少なくて済むので、性能向上に役立つのだが・・・

そして、提案したその表面処理方法を知らなかった。やはり広島と東京は情報でも離れているのか。しかし、爆射についてはカワサキのバイクだから、近いところに情報はあったのだ。

潤滑のオイルポンプは、当時のマツダロータリーの場合、アクセルワイヤーと直接繋がりメカニカルポンプのストロークを変化させると言う、ごくベーシックな制御。これではエンジンの負荷以上にオイルが送られることになり、オイルの消費量も多くなる。

で、当時の高性能2ストロークバイクは、電子制御を使っていた。この制御は、排気タイミングを、アクセル開度とエンジン回転数から自在に変化させ、スロットル開度と負荷に対応を目的として、排気タイミングを変化させる電子制御を使っていた。特に排気ポートに対して、排気タイミングを変化させれば、低速から高速まで、十分なトルクが発揮できるような構造なので、ここに潤滑用のオイルポンプをリンクさせた。

オイルポンプのストローク変化と排気コントロールバルブはワイヤーで結ばれており、その動きによってオイル量を調節したので、必要以上のオイルが供給されることはなく、オイル消費量は非常に少ない。そのため、それらのバイクは煙の排出が少なく、かつ排気臭もほとんどなかった。

この電子制御のオイルポンプを採用したバイクもカワサキにはあったので、それを伝授した。

そして、電子制御のオイルポンプは、その後にマイナーチェンジされたRX7には採用されていた。

また、ローターリーは吸気ポートとの関係で、どうしても排気ガスが吸気側に多く流れ込む。(つまり、自己EGRが非常に多く、それを制御できない)それを防止するのにはリードバルブが有効ではないか、と言う話をすると「おっしゃるとおりリードバルブは有効なのですが、テストすると性能は良くても、リードが割れるのです」というから「使用したリードの材質はスチールですね」「なぜ樹脂のリードバルブを使用しなかったのですか」「今時のリードバルブは樹脂で、レーサーレプリカとなるとカーボンファイバーです」と言う話をしたら、「例えそれを解決できても、まだ吸気ポート内で排気ガスが充満してしまうので・・・」というから、「それは当然ですから、小さなポートを数個つくり、そこにそれぞれリードバルブをつければ、必要以上の排気ガスが吸気側に漏れることは防げると思います」と話したら、「なぜ即答できるのですか、我々は1ヶ月ほど考えた結果でしたが」ということだった。

そのときには、3リーターのロータリーエンジン取材で広島の開発グループに伺ったのだが、その3ローター開発責任者とは非常に親しくなり、マツダがルマン24時間耐久レースで優勝したときのエンジン分解でも、そのエンジン担当者は、3リーローター開発担当者と同じだったので、張り付きでの取材が可能だった。他の雑誌の編集者とは次元の違う話し内容だったため、他の誰も寄り付かなかった。でも、マツダ広報部からは、原稿を頼まれたが、事実を書くので、私がラフに書いた現行の都合の良い部分だけ使ってください、と話をし、そのラフ原稿をFaxした。

2020年5月21日木曜日

クルマの事前説明会で、新しいエンジンが展示されていたが、なぜか納得できない吸気ポート形状が・・・



バイクとクルマのジャーナリズムの世界に40年余り足を突っ込んでから、現在までにケチやアドバイスをつけた項目数十点 その

新型エンジンの(新型車に搭載される)説明会で、そのエンジンを長時間眺めていたら、開発担当者が近寄ってきて「良いエンジンでしょう、時間を掛けて開発しましたから」と言うのだが、そのエンジンはそのメーカーの別の部署で開発・市販されていたものと大きく違う点があった。それは、吸気ポートの立体的形状である。

自然吸気エンジンではこの形状だと、吸気に乱流が多く発生。吸気通路が小さくなったように吸気流の乱れが発生することで、慣性過給がなくなり充填効率が悪くなる。

そうならない吸気ポートの形状は、ハイポートとかストレートポートと呼ばれる形状で、吸気側からバルブを覗くと、燃焼室まで見えてしまうような、ストレート形状がいいのだが。

その話をしつこく述べていたら、その方は「うちにはそんなエンジンはない」と反撃してきたので「しめたそこにきたか」。「そうですか、ではバイクエンジンのこの状態はいかがですか」、と切り替えしたら、いきなり下を向いてしまった。「どうしたら良いのでしょう」というから、広報に話して見たら、と言っておいた。

後日広報部にその話をしたら、4輪の研究所から問い合わせが着たので、2輪の開発者からデータを流してもらったとか。

T社のあるエンジンについても、せっかく十分なスペースがあり、バルブの挟み角も小さく、いくらでもストレートが可能なので、設計変更したらどうですか?と言う話をし、その見本のエンジンはH社のスポーツバイクエンジンですと話したら、後日これもH社の広報部に連絡があり「図面のコピーをくれないか」と言うの「そのバイクは市販していますから、お買い求めください」と返事したようだ。

2020年5月16日土曜日

ハンドル操作に遅れが生じるスポーティなコンパクトカー



バイクとクルマのジャーナリズムの世界に40年余り足を突っ込んでから、現在までにケチやアドバイスをつけた項目数十点 その

クルマの試乗会会場が箱根のターンパイク近くであると、いつもやっていたことがある。それは、ATのDレンジのままでターンパイクを下ること。ブレーキペダルは一切踏まず、遅いクルマが居ればアクセルを踏みつけて加速し、それを素早く追い越す。でも、次に現れるコーナー入り口でTAのセレクターはそのまま、ブレーキペダルも踏まない。ほとんど利かないエンジンブレーキだけで駆け抜ける。

コーナー近くになってもDレンジのエンジンブレーキだけで曲がるので、かなりの度胸が要る。

なぜこのような走り方をしたかというと、それは、ブレーキを掛けずに、コーナリングのためハンドル操作すれば、そのクルマの素性が全て出る、と考えたからだ。

つまり、誰が運転しても傍から見ると、安定した速度で(かなり速いが)コーナーを駆け抜けられれば安心できる。そこには、運転テクニックの必要がないことは当然。また、自分の考えていたカーブよりきつかった場合でも、ブレーキを掛けなくても曲がれるとしたら(限界はあるが)、それは自損事故を起こさないことに繋がるはず。ブレーキを掛けると、サスペンション回りに大きな力が作用するわけで、それによってサスペンションジオメトリー(アンチダイブジオメトリーなんていう構造も組み込まれるので、サスペンションの動きは阻害される)も変化がおき、タイヤの持つ方向性やグリップ力が失われる。

でも、安定したコーナリングが非常に高い速度でも可能となったら、普通にハンドルを操作するだけでそのコーナーを走りぬけることが出来るわけだ。

これが重要!!!

リヤが流れ出す感覚をマスターする必要もなく、勿論カウンターになることもない。要するに、ベテランの運転感覚は必要なく、初心者の感覚で十分。タイヤが滑り出して強烈な音を発することもないのだから。

この状況を要求すると、ほとんどのクルマはアウト。今ではそのような緊張するテスト走行はしないが、当時はそれをやってしまった。

以前別のブログでも書いたが、これまでの最高記録は三菱のランサーセディアワゴン・ラリーアートエディション(2001年5月発売)で、なんと平均時速は120km以上。コーナーに突入するときの速度は140kmである。そこからブレーキも掛けずにハンドルを操作することで、タイヤに掛かるストレスがブレーキ作用となるので、速度は落ちる。

このような走り方を普通にやっていたある日、コンパクトスポーティなクルマの試乗会で、同様な走り方をしようと、いつもの速度まで上げてハンドル操作した瞬間、一瞬遅れて向きが変わる。何があったのか理解できない。何回か違うコーナーで試したがその都度動きが違う。それも、その動作は速度によって反応・・・。

この状態では、ハードな試乗は無理なので、早々に基地まで引き上げ、足回りの責任者と話をすると「それ感じましたか。我々もその症状が出ることを理解していて、フロントサスペンション周りの補強などやったのですが、解決していません」と言う話だった。

実務的な話をかなり長くやって、お互いの分析力を確認できたおかげで、その方とは非常に親しくなった。その方は後のモデルチェンジ開発責任者となり、しばらくすると海外に移動となってしまった。

その問題のクルマは、スズキ・スイフトスポーツ2代目の2005年発売モデルだ。

2020年5月9日土曜日

新型バイクを借り出して、1泊2日のツーリングへ中間達と出かけたときにその問題は発覚した



バイクとクルマのジャーナリズムの世界に40年余り足を突っ込んでから、現在までにケチやアドバイスをつけた項目数十点 その

エンジン特性は、低速・中速トルクが不足して、標高の高いところを走っていると、アクセル操作に対してエンジンの反応が遅れる。鈴鹿サーキットで行われた試乗会のときにも、なんとなくそのあたりは感じていたが、条件が悪くなるといきなり特性の良し悪しが出るようだ。

それ以外にも問題が発覚した。仲間と風呂に入っているとき「会長、その尻どうしたのですか?まるでおサルの・・・」と言う状態で笑われた。

そういえば、なんとなくヒリヒリする。鏡で見ると、確かにおサルのお尻状態。

この原因は、シートのベース部分に開いた空気抜きの穴から、ラジエター(そのバイクは水冷だった)の高温冷却風が吸い込まれ、シートの座面が低温状態となり、長時間それに座っていたことで低温やけどを起こしたのである。
 
そのバイクは1986年に発売となったCBR400R
 
このことを、広報部を通して開発責任者にレポート提出。返事は直ぐに来た。返事の内容は「大変貴重なレポートありがとうございます。これまでのテスト項目には、シートベースの空気抜き穴から冷却風が取り込まれ、その結果、ライダーのお尻が低温やけどになる、と言うことを考えませんでしたので、これからは、テスト項目にそれを入れます」と言うことだった。この結果、その後のバイクにはこのようなことは発生していないようだ。

2020年4月29日水曜日

速度が限界近くになるといきなりハンドルが振れ出す、軽量な750ccバイク 現場でのセッティングで直せる状況ではない

バイクとクルマのジャーナリズムの世界に40年余り足を突っ込んでから、現在までにケチやアドバイスをつけた項目数10点 その②

当時としては軽量な750ccの試乗会。テストコースの試乗会なので、速度無制限。直線路の終わりぐらいにある少し出張った部分をアクセル全開(200キロ以上)で通過した瞬間にハンドルが左右にブレ始める。そのまま速度を維持していても、一向に収まる気配はない。
一度振れだすと速度を少し落としたぐらいでは収まらない。

どうやら、エアロダイナミクスが不良で、出張ったところを通過した瞬間の突き上げで、カウルの下に空気が入り込み、浮き上がるせいだと判断。

現場に居たジャーナリストで体が小さいライダーは、カウルの中にすっぽりと入り込めるため、そのようなことは起きないと言う。

そして、なぜ突き上げが発生するのか考えてみた。その結果、非常に軽量に作られていたのに、フロントフォークの減衰力がこれまでのバイクと考え方が同じ、と言う開発者からの話。これでわかった・・・圧縮側の減衰力が強すぎるのだ。バイクが軽量なのだから、それに合わせて減衰力も小さくていいはずだが、当時としては最高速度が高くなる。そして、その状態での安定性を確保したいということから、圧縮側の減衰力をこれまで同様にした。都合の悪いことにその実績もあったし。

減衰力の調整は、フロントフォークにもリヤショックにも装備されているが、我々の試乗会数日前に、海外から来たジャーナリスト達(彼らは日本の皆さんと違って、非常に走り方はエキサイティング)も、身体が大きいので私と同様な症状が出て、開発者が制止するのも振り切り、いろいろとアジャストしたが(しまいにはスプリングも交換したとか)、一向に解決しなかった、という話を欧州に住みモータージャーナリストをしている親しい日本の方から聞いた。

そのバイクは、1985年に発売されたスズキGSXーR750。初の油冷エンジンとしてデビューしたもの。その後はどのように改良したかは知らないが、欧州にも輸出したので、改良されたはずだ。