ファインダーのないデジカメなら両目で液晶画面を見、どこに被写体を持ってこようか、どこにピントが合っているのかなど、気にしながらシャッターを押すだろうが(でも画面に映る被写体に視点が集中)、ファインダーがあるタイプで、ファインダーをのぞきながらシャッターを押す場合、片目をつぶってファインダーを覗くのは「写真を知らない、度素人がやること」という風潮があり、テレビのCFでも、此見よがしにファインダーを覗きながら両目を開けてシャッターを押すことを当然のように出している?????
こうやると、素晴らしい写真が取れるの?
そんなことは不可能と思う。というのも、人間は両目に写るものをそれぞれ別なものとして判断することは、いくら訓練しても出来ないからだ。動物では出来るものがある。カメレオンなどがそうだろう。
大切なのは、被写体(人、動物ばかりではなく風景も入る場合がある)の表情。それを的確に判断できなければ良い写真は撮れない。そして、そのためには健常者なら両目で被写体を観察する必要がある。なので、ファインダーを覗きながらでも、両目を開けて・・・なのだろうが、ファインダーを覗いて見えるものと、その反対側の目で見る状況は違う。
左右それぞれの目が、自由にピントが合い、視野も左右それぞれ自由に調整できるとすれば、ファインダーを覗きながら、その反対側の目も開いて、被写体を観察することは出来るが、無理だろう。
ファインダーで覗くほうは望遠状態。対するその反対の目は固定。これを左右両方しっかりと判断し理解して、その視界にある映像を分析しながら、どのタイミングが良いか、どちらがいいか決め、カメラを必要な方向へ変更するなど、到底無理な話。もちろん、望遠レンズを使い、クルマやバイクの走り(レースとは限らない)をアップで撮影する場合には、片目でファインダーを覗く。でも、全体の雰囲気や、全員の素晴らしい表情を狙うとなると、ファインダーで除いていたのでは無理という判断なのだ。
そこで、素晴らしい表情の写真を撮るときには、ファインダー(液晶でも同じ)を覗きながら、カメラのシャッターを半押ししてピントを固定。その状態からファインダーを覗くのをやめ、両目でしっかりと被写体の表情を観察し、これぞと思う瞬間にシャッターを切る。こうすればとても感じの良い写真が取れると判断して、それを実行している。
その経験をしたのは、十数年前のことだが、プロのカメラマンによる集合写真撮影で、そのプロは「こちらに目線をください」とか「もう少しうれしそうな表情をください」などと言って、シャッターを数十枚切っていた。
こちらは抑えの写真を撮っておこうと、片目を閉じてファインダーで構図を決め、シャッター半押しでピントを固定。ファインダーから覗くのを止め、そこにいる方々の表情の良くなる瞬間を狙う。集合している方々はカメラマンの言うことを聞いて、それに合わせているが、全員の表情が一致することはほとんどなく、一致してもシャッターチャンスはファインダーを覗いている限り無理。それはいくら両目で見ていても、被写体となる方々の表情の全てを観察することが不可能だからである。
ところが、こちらは両目の肉眼で観察しているので、そこに集合している方々の表情をしっかりと判断できる。つまり、一瞬の表情を見逃すことがない。なので、後日カメラマンから回ってきた写真と比べると、誰が見ても、抑えで撮った私のほうが良い。
集合写真ばかりではなく、一人の場合にも同様にしてシャッターチャンスを掴むと、この上なく素晴らしい、感情のこもった写真が撮れる。写真撮影を生業としている方でも、一人の写真を撮るときに、その方の素晴らしいしぐさや、表情がしっかりとわかるように、ファインダーを覗きながらシャッターを半押ししてピントを合わせたら、ファインダーから覗くのを止め、両目で確実に被写体を捉え、その表情を見極めながらシャッターを切ることで素晴らしい写真を撮影している。それは相手が人間ではなくペットでも同様だ。
そのように判断すると、セルフタイマーで撮影した写真の、気持ちの入っていない、そして味気なく情けない表情となってしまうのは、なんとなく納得できる。
立体的に被写体の状況を判断するには、両目で見る必要がある(目の不自由な人には申し訳ないが)。だからといって、片方は望遠、その反対は広角、という使い分けの中で、被写体の状況がわかることはない。無理だ。だからピントを合わせたら、そこでカメラをしっかりと固定し、気持ちが入ったときにシャッターを切ればいいのだ。
ま、どうでも良いが・・・この考え方を押し付けるつもりはない。でも、試しにやってみてはどうだろうか。デジカメなら直ぐその場で検証できるのだから。
以下の写真は、ファインダーを覗きながらシャッターを切ったものではない。モトクロスのスタート写真では、被写体が動き始めているので、少しピントがずれ始めている。縦位置で撮影したほうは、被写体が動いていないので、「いいなー」と感じる角度、高さで撮影したもの