研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2011年8月13日土曜日

イグニッションコイルに外部抵抗器は何故必要か その1

結論を先に言ってしまうと、高回転まで安定したスパークを得るため、ということになる。

ポイント式普通点火装置では、4気筒以上のマルチシリンダーエンジンが、高回転高出力化できない理由があった。

ポイント式普通点火の時代であるから、この話しはかなり前のことになるのだが、当時はその理由を理解する人が少なかった。多気筒化すれば全てのフリクションが増えるからではない。同じ排気量なら多気筒化することによって燃焼室が小さくなる(シリンダーボアも)ため、エンジンの最高回転を高く設計できるので、それをギヤで減速すれば駆動トルクは上がる。つまり加速はよくなるのだが。

ただし、その条件が整っていなければ高回転を望んでもそれは無理。バルブタイミングや燃焼室形状、バルブの径などだけが関係している訳ではない。

忘れてはいけないのが点火装置である。そして、当時のポイント式点火装置で、ディストリビューターを使用したものでは、エンジン回転が高くなると点火エネルギーの不足が生じてしまう。その結果、不完全燃焼となりHCを多量に放出するだけではなく、エキゾーストマニホールド内で燃焼するため、オーバーヒート現象まで引き起こす。もちろん急速燃焼とならないため、エンジン回転は上がらない。

その理由は、回転上昇によってポイントの閉じている時間が少なくなるからだ。つまりイグニッションコイルに対して、十分な電気エネルギーを送り込むためには、それ相当の時間が必要。多気筒とディストリビューターが合体すると、ポイントカムは気筒数のカム山が必要となり、ポイントカムが高回転となればポイントが閉じて、イグニッションコイルへ通電している時間は回転の上昇と共に少なくなる。結果、点火エネルギーの減衰が起き、吸気量に見合った燃焼とならないのだ。
ディストリビューターを使うポイントでポイントがひとつのものは、気筒数分だけポイント開閉用のカム山がある。カム山の数だけポイントは閉じている時間が少なくなる。エンジン回転を上げると、そのことが問題を引き起こす


点火装置に関わるシステムの話になるのだが、これを知るにはコイルの自己誘導作用について理解しておく必要がある。

コイルに直流の電流を流すと磁界が発生する。ただし、コイルには磁界の発生を妨げる方向に起電力が起きる。

このためコイルに電流を流したとしても、電流は直ぐに最大とはならず、一定の時間後に最大電流となる。この時間はイグニッションコイルの巻き数によって違うが、100分の1秒~1000分の1秒単位である。

また、コイルに電流を流しておきながら、これを急激に遮断すると、コイルには電流を流し続けようとする起電力が一瞬発生する。
直流はコイルに電流を流すと、その瞬間だけ電流が流れる。また、電流を切った瞬間にも電流が流れる。この特性を利用したのがイグニッションコイルである


このようにコイルに対して電流を流し始めるとき、電流を絶つときに、コイルの磁束の変化を妨げようとする現象がコイル自身の中に生ずる。これを自己誘導作用と呼び、そのときに発生する起電力を逆起電力と呼ぶ。

ところで点火装置に使用するイグニッションコイルは、ふたつのコイルを並べた状態で(鉄芯に巻かれている)、入力側のコイルを一次コイルと呼び、そこに流れる電流を変化させると、出力側となる二次側のコイルには、一次コイルの磁界の変化を妨げる方向に起電力が発生する。これをコイルの相互誘導作用と呼んでいる。

つまり、一次コイルに一定の電流が流れているときは、磁界が変化しないので、二次コイルには起電力が発生しない。
これがイグニッションコイルとしての原理。コイルに電流を流すことで、起電力を溜める。一定の電流が流れているので磁界が変化しないため、二次側コイルに起電力は発生しない


しかし、この状態から電流を遮断すると、今まで発生していた磁界が急になくなるので、二次コイルには磁界の消滅を妨げる方向に起電力が発生する。
電流を切ると、その瞬間逆起電力が発生し、電流が流れる


直流電流ではこのように動作するが、交流電流では、周波数(正弦波)の関係で、交互にプラス・マイナスに電流が変化することから、二次コイルには、一次コイルとの巻き数比に合わせた電圧が常に発生する。つまり相互誘導作用が連続的に起きている。一般的なトランスがそれである。
これがトランス。直流では使えないが、交流(発電所が作る電気がそれ)はトランスを使って電圧の上げ下げが簡単に出来る。ただし効率は悪い。最近では、一般家庭でも最終的に直流化して効率を高くする、インバーター制御が当たり前。テレビやPCも直流を使う。そのため、発電所からの電気も直流のほうが効率が高く、変更しようではないかという運動が起き始めている

                                                               以下次回に続く

2011年5月17日火曜日

フィアット500ツインエアってどんなクルマだ

フィアット500に2気筒モデルが戻ってきた。でも、搭載されているエンジンはアッとビックリするツインエアの900cc。ツインエアエンジンは、吸気バルブの開閉に油圧を使うところに特徴がある。

カムシャフトから駆動されるそれぞれのプランジャー式油圧ポンプは、アキュムレーターを持ち、途中に有るソレノイドバルブを制御して吸気バルブの開閉タイミングを自由に取ることができるもので(バルブスプリングは使っている)、バルブとピストンがぶつからない範囲で急激なバルブ開閉も可能であるため、エンジン性能ばかりでなく、排ガス性能にも大きく貢献する優れものだ。

もちろん自由にバルブのリフト量も変更できることから、スロットルバルブを持たない構造として、エンジンレスポンスと燃費の向上に寄与している。

考えてみれば、スロットルバルブを持たないということは、吸気バルブの裏側には常に過給圧か大気圧が掛かっているわけで、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間に、次の燃焼に必要とされる空気が入り込む形となるため、燃料の噴射量に合わせた空気量を瞬時に取り込めることから、HCの発生も少なく燃焼に関して一瞬の遅れも生じないと言うことになる。

このエンジンは、自然吸気ではなく小型のターボチャージャーを装備する。もちろん小排気量エンジンで不足するトルクを補うためであるが、ツインエア機構との協調制御は素晴らしく、過給圧が高まる、ということは微塵も出さずにごく当たり前に鋭い加速性能を発揮する性格だ。

そして、500ツインエアのミッションは5速ギヤAT(セレスピード)である。シングルクラッチを電子制御しながら、シフトチェンジするのだが、新しいモデルとなるたびにシフトアップ時の加速G変化が少なくなり、アクセルペダルを軽く踏んで、そのまま保持するように穏やかな運転では、ギヤのつながりに違和感など変化は見られず、エンジン回転と振動の変化を感じるだけでアップシフトしていく。

アイドリング近辺では少しメカ的な金属音が混じっていたが(クランク後端で1/2逆回転するバランサーのギヤ音かもしれない)、それもほんの少しアクセルを踏んだときから、一切のメカノイズは消え綺麗なエンジンサウンドのみが残る。

特に全開加速を行うと、まるでBMWの水平対向エンジンバイクに乗っているかのような、ズズズズ~ンという穏やかで力強いサウンドと、これまた応えられない振動(いや鼓動といったほうが良いだろう)を味わうことが出来る。BMWのボクサーエンジン(水平対向)を知っているドライバーには、たまらない感触だ。

このフィアット500ツインエアには、アイドリングストップ機構が採用されている。2気筒(等間隔燃焼の360度クランク)ということもあり、停止寸前のときの振動は大きく、再始動時も同様な振動が有るのは致し方ないところだろう。

また、再始動から発進可能な回転までに、僅かだが他の4気筒モデルと比べ、時間がかかるのも止むを得ないことかもしれない。特に左足ブレーキを使用するドライバーでは、ブレーキペダルを離した瞬間からアクセルを踏むので、発進までのギャップに違和感を覚えてしまうことになる。

パワー走行ばかりでなく、最先端の燃費走行用ECOボタンがインパネ上に慎ましく付いているが、これを使うとかなりおとなしい走りと、穏やかなハンドリングになる。例えば、アクセルを少し踏んで、ゆっくりと発進させた場合、1速から2速へのアップシフトは通常より700回転ほど低い。2000回転でアップシフトし、2速になると1200回転ほどだから、2気筒エンジンでは駆動系のノッキング限界。2速へ入った瞬間はドドドドドという排気音と軽い振動を伴っているが、別に悪いことではない。

2気筒モデルだからといって、走行中の騒音を蔑ろにしていないのは、うれしい限りである。エンジン音やエキゾーストサウンドを、ロードノイズで邪魔されないのは、走らせる喜びがいっそう高まる。

ロードノイズが室内へ侵入しないよう、リヤのタイヤハウス内にはインナーフェンダーを装備している。チッピング処理よりインナーフェンダー取り付けのほうがコストは安いとも思えない。最近はコンパクトカークラスとなる日本車でも(スズキのスイフトでは)、リヤのタイヤハウス内へインナーフェンダーを取り付けている。そのため非常に静かである。同様なことが行われているのだろう。


1.外観はこれまでのフィアット500と大きく変わるところはないが、どことなく精悍さが加えられた。

2.お洒落なスタイルは日本車にはない優しさがある反面、一旦アクセルを大きく踏み込むと、その走りはイタリア車そのものに変貌する。

3.エンジンルームには、ターボ付きの2気筒が収まる。900cc2気筒だからと侮れない性能は、魅力がぎっしりと詰まっていた。

4.搭載されるエンジンがこれ。2気筒360度クランクだから等間隔燃焼。アイドリング近辺ではバランサーギヤからと思われるメカ音が出ているが、少しアクセルを踏めばその音は消える。
          
5.ツインエアエンジンの特徴である吸気バルブの駆動方式は、エキゾーストカム側に設けられた、それぞれ専用のカムによるプランジャーポンプが油圧を造り、アキュムレーターに蓄圧させながら、電磁バルブの開閉で吸気バルブを押し開く。バルブスプリングの使用で、自由な開閉タイミングを選べるばかりではなく、開閉量の制御も可能なことから、スロットルバルブレスのシステムも採用している。

6.ダッシューボードの左には、申し訳なさそうにECOボタンがある。これを押すとギヤシフトのタイミングが早くなって、穏やかな走りとなるばかりではなく、ステアリングの操作感も、アシスト量を増やし優しい方向へ変化する。

7.セレスピードのシフトレバーには、オートモードとマニュアルモードがある。マニュアルモードを使用すると、気持ちの良いシフトでそれまでとは打って変わったスポーティな走りが味わえる。

8.走行中の穏やかで力強い振動やノイズの少なさは、一部のエンジンマウントに鋳鉄を使うなど、これまでとは違ったもの造りが大きく関係していそうだ。

一週間ほどボランティア活動に参加した

「とにかくひどい、それ以外の言葉は出ない」。津波でやられた南三陸・志津川の市街地に入ったとき、思わずハンドルを握る手から力が抜けた。

ボランティア活動にもいろいろあるが、私が参加したのは、あの冒険ライダー風間深志さんが村長を務める地球元気村のベースキャンプ。行政からの支援はなく自給自足のキャンプ生活となる。

ユニークなのはバイクを使って、細かな御用聞きを行い、行政では出来ないボランティア活動をすること。

最初のうちは、「訳の分からないバイク乗りが来て走り回っている」、と警察に通報されたこともあったとか。それも今では笑い話になって、彼らの行動が行政を動かし始めた。

そのベースキャンプではボランティア活動の面倒を見る【マサとトキ】はすでに1ヶ月を超えるキャンプ生活。彼らの体力ばかりではなく、気力の強さにも頭が下がる。

ベースキャンプは、神割崎キャンプ場だが、あくまでも一部を使わせていただくだけで、電気は発電機を使い、水は飲料に適する近くの沢から持ってくる。トイレは森の中を数百メートル歩いたところのポットン式。当然電灯はないので夜中は行く気がしない。食事は自分達で作るのだが、ボランティア活動をさせてくれたお宅から時々差し入れがあるのは、地域密着型の活動をしているからだろう。避難所の生活より環境は厳しいが、何とか我慢できる。建物の中を使わせてくれれば良いのだが・・・

小さな集落の被災者は行政から見放された場所が多くある。そこへ出向いて瓦礫の後片付けを行った。後列左から2番目の青いベストを着用した方がボランティア活動を依頼された佐々木さん。なんとこの中には北九州からボランティア活動に参加した7名(女性6名)がいる。

ボランティア活動は作業に限ったことばかりではない。この日は、近くの避難所にいるお子さんたちを対象に、ご飯を食べるときに使う「箸を作る」工作教室を開催。材料はヒノキ。初めて使うカンナに戸惑いながら、マイ箸を作る子供たちのハシャギ声は、周りの大人達の疲れを吹き飛ばすに十分なエネルギーを放っていた。

海水に浸かってしまったバイクを見てくれないかという依頼があり、各部の点検を行うと、やはり時間の経過と共に海水はシリンダーの中に入り込み、更に配線のコネクターは腐食が発生していた。こうなるとエンジンのOHだけではなく、ワイヤーハーネスの交換やコンピューターの交換など、多額の費用が必要となる。バイクばかりではなく自動車も同様で、特に数多くのコンピューターを採用している現在のクルマでは、どうにも再生できない状態となるだろう。水没、即バッテリーのターミナルを外す、ということが出来たなら、或いは状況がもう少し良かったかもしれない。

2011年4月1日金曜日

通信機器用の完全密閉式バッテリーはバイク用に使えるんじゃないか

バイク用のバッテリーは、専用に近いということもあって価格が非常に高価である。自動車用に比べたら遙かに小さいくせに、数倍の価格は当然で購入に躊躇することが多い。

しかし、あるとき、バックアップ用の完全密閉式バッテリーの性能が、素晴らしく高いことに気が付いた。気が付いたというより、そのバッテリーを使った自動車用の非常電源ブースターのあることが分かり、その非常電源を使うと1500ccぐらいのエンジンなら、搭載バッテリーが殆ど空でも、セルを回して始動することが可能というのだ。

そこで内部のバッテリーを検証すると、なんと容量は6V5Ah×2(12V5Ah)というもの。これで自動車のセルが回せるのは、バッテリーの内部抵抗が非常に小さく、瞬間的に大きな電流を流せるためだ。調べていくと、なんと自己放電も非常に少なく、周辺温度が低ければ(何度だか覚えていないが15℃ぐらいだったと思う)、1年間放置しても大きく低下していない、という優れもの。

なお、当時は、まだEVなどというものに注目が集まっていなかった時代で、現在「日本EVクラブ」を主宰する館内氏も、このバッテリーに関しては情報を持っていなかった。そこで後日その内容を連絡したぐらいだ。そのバッテリーとは、ブリヂストンが輸入するサイクロンというもので、基本的にはクルマ用ではなく、あくまでも通信機器などのバックアップ用なのだが、その性能は別のところで利用できたのである。

ブリヂストンの場合、このサイクロンを一般市販していなかった(現在は他の会社が輸入して市販)たため、企画として提供していただいたのだが、バイク用として使うには、接続端子を含め使い勝手が悪かった。つまり、大きさや容量が選べないのだ。

そこで次に目をつけたのが、台湾製のLONGという完全密閉バッテリーで、形や容量が多くあり、その中から選べば何とかなるだろうという判断をした。もちろんどのようなバッテリーなのか、素性は知らないが、価格的に求めやすかった。購入先は秋葉原の「秋月電子」。型式はWP8-12(12V8Ah)で2450円(2011年3月現在)。

ただし、このバッテリーもバックアップ用や通信工業用としているので、端子は平型の差込式。これではセルを回すための電流を流すには問題が出るので(新品のうちは良いが)、ここの改造が必要となる。

なお、秋月電子のHPでは「LONGのバッテリーは、通信工業用のためカルシウムが添加されており、内部抵抗が高いので、バイクのセルを回すようなことは不向きです」というようなことが書いてあるし、「完全密閉式とは言っても、ドライバッテリーではないので、横に寝かしての使用は出来ません」と、バッテリーのパッケージにはあるが、これはやってみなければわからないこと。

ところが、秋月電子のHPでバッテリー説明ページの下にある「この資料は参考です」というPDFをクリックしてみると、LONG社の諸元と説明が表示され、その内容は、大きく違っている。

そこには、大電流の流せることが表記されており、30秒間なら160Ah、5秒間なら320Ahとある。これは解釈の違いなのか。また、20℃であるなら6ヶ月間の放置後でも80%の容量を持つとある。ただし、充電で気をつけるのは、他のバッテリーと同じで、充電中に端子間の電圧が15Vを超えないように注意すること(充電電圧ではない)。

LONG社の説明を信じるかどうかは、人それぞれであるが、このような高性能バッテリーを見逃す手はないので、即入手して、端子もボルト&ナットで接続できる丸型になるよう部品専門店(ホームセンターにも同様なものは販売している)で購入し、それを大きな容量の半田ゴテで瞬時に付ける。時間がかかると端子から熱がパッケージの樹脂に伝わり、電解液(希硫酸。といってもかなり濃度が高い)が漏れ出すからだ。

バイクへの搭載方法は自由だが、それは、LONGのバッテリーをバイクへ使用することとあわせて、自己責任でお願いしたい。特に、私の場合には、横に倒して搭載することになり、そのことによるリスク(電解液の漏れ出し)は覚悟する必要があるのだ。

このバッテリーの性能は素晴らしく、最初のバッテリーは9年間使用しているが、まだ性能低下は見られない。6ヶ月間エンジンを始動させなくても、必要なときには極当たり前にセルが回る。さすがに使用期間が長いので、心配になって次のバッテリーを購入したが、いつ交換するか決めかねている。


1.購入したLONGのバッテリー。どちらもバイク用として使う。そのためには接続端子の形を変更しないといけない。ポスト型とする必要はないので、ボルト&ナットでの接続が出来る端子に変更する。

2.ボルト&ナットで既存のハーネスへの接続をするには、このような丸型の端子を付ければ良い。電子部品販売店だけではなくホームセンターなどでも売っている。

3.その丸端子をどのようにして平型端子へ付けるかというと、半田付けに耐えるよう、管状の部分(本来はここにコードを入れて圧着ペンチでつぶす)を楕円に変形させるのだ。楕円にしてもバッテリー側の平型端子へ入らない(幅の問題で)なら、楕円の一部を切り開いてもかまわない。

4.半田の熱がバッテリーへできるだけ伝わらないように、バイスグリップなどを端子へ挟む。半田ゴテにはタップリと半田を付着させ、更に半田ゴテを押し当てると同時に、半田を溶かし込んで、一瞬で終わりとする。濡れ雑巾で冷やせば更に安心。

5.丸型端子が取り付けられたLONGバッテリー。後は、プラス・マイナスを間違えないように取り付けるだけ。

6.このように横に倒して使用しているが、現在のところ問題はない。もちろん販売店の意向は無視しているので、自己責任である。バイクは250ccシングルだ。

2011年3月11日金曜日

緊急脱出用ハンマーは正しいところに装備していないと、いざというとき役に立たない

欧州で見た光景。それは観光バスや電車にも緊急脱出用ハンマーが装備されていること。

スイスに出かけたとき、最初に気が付いたのは、あの脱線した世界で一番遅い特急列車の中。次が観光バスの中で、ここでは搭載されていたことに気づくのが遅れた。どちらもベルトカット用の刃物は付いていない。

欧州の観光バスの窓は開閉できないデザインで、特に緊急脱出用ハンマーは必要と思われる。日本では、スライドの窓を使っているから、何かあっても開けられると思いがちだが、ボディが歪んでしまったら、開閉不可能。となると日本でも観光バスには装備するべきだと思う。

事故などでクルマの中に閉じ込められたときに有効活用できるのが、緊急脱出用ハンマーだが、車室内のどこにどのように装備するかで、実際の緊急時に役に立たないことがある。

よく見かけるのが(メーカーの試乗車にも多い)センターコンソール横のカーペットに取り付けるスタイル。

この場合であると、例えば、池や海などに飛び込んでしまったとき、ドアが開かないし(水圧で開かないし開ければ即沈没)、ウインドウも電動であると電気系がショートして作動しない。手回しなら余裕でウインドウを下げることが出来るが・・・

ここでは緊急脱出用ハンマーを取り出し、尖っている方を使って軽くドアのウインドウを叩けば、強化ガラスはバラバラになり、窓から脱出すれば助かる。つまりセンターコンソールのカーペットへ取り付けていても、十分に役に立つ。

しかし、事故や閉じ込めはこのように正立した状態で起きるとは限らない。横転したままであることも多い。となると、シートベルトに縛り付けられた状態の車内から出ることはできない。

「ベルトのバックルを外せば良いじゃないか」、などという軽い気持ちがあるなら、実際に体験すると、シートベルトのバックルが外せないことが分かるだろう。手が届かないわけではなく、バックルは引っ張られているときに、自由にならないようロック機構が装備されているのだ(シートベルトも)。試しに、乗車してシートベルトをしてから、そのベルトを引きながら、バックルを外してみると分かる。ボタンが押せないはずだ。

横転してしまうと、体重がシートベルトを強く引いてしまい、バックルは解除できない。ここから脱出するには、ベルトを切断しなければならない。

そこで、緊急脱出用ハンマー(ベルト切断機能のついたもの)の出番であるが、カーペットに取り付けてあると、横転した場合、見える状態でも手が届かない。クルマが火災でも起こしていたら、焼け死ぬのを待つだけ。

これでは緊急用脱出ハンマーが有っても役に立たない。ここまで説明すれば、どこに取り付ければ良いのか見当が付くだろう。

そう、フロアマットに取り付けておけば良いのだ。そうすれば、横転すると同時にフロアマットは自分の頭のところは落ちてくるはず。もちろん、後席の天井に移動してしまうこともあるだろうが、ハンマー単体でなければ、それほど遠くへ動かないであろうし、多少移動しても手が届く範囲にあるはず。

ワンボックスやミニバンであると、問題が出そうだが、それを想定すれば、緊急脱出用ハンマーを取り付けたフロアマット(或いはハンマーそのもの)と、コンソールボックスあたりを、紐で繋いでおく、という考えで解決できる。

緊急脱出用ハンマーを装備しているのなら、ぜひこのあたりを参考にして欲しい。説明書には書いてないことでもある。


1.スイスの「世界で一番遅い特急列車」に装備される、緊急脱出用ハンマー。気になったのは、説明がないこと。車内アナウンスがあっても、理解できなければ役に立たないので、これは説明書を壁に貼り付けてもらいたいものだ。

2.観光バスの中にも緊急脱出用ハンマーが装備される。事故に対する想定が日本より進んでいるという証だろう。

3.乗用車の中に装備するときには、このようにフロアマットへ取り付ける。そうすれば横転したときにも緊急脱出用ハンマーを手にすることが出来る。なお、装備するなら写真のようにベルトカッターの付いたものを選びたい。

4.話は違うが、ドイツのアウトバーン・サービスエリア有料トイレで見た光景。便器の中に小さなサッカーゴールがあり、その前には紐で小さなボールが釣り下がっている。狙うよな~「ゴール」

2011年2月14日月曜日

リヤシートベルトのバックルが全席共通であってはいけない理由はどこにあるのだ

クルマの開発者に、何故リヤのシートベルトは、3座共通のバックルとして、どこのバックルにもタングプレート(差し込む方)が差し込めるようにしていないのか、と聞いてみると、まるで“神様”でも有るかのような答えが返ってくることが多い。

その答えとは「指定された正しい場所にベルトが来ていないと、シートベルトとしての性能が発揮されない」からだという。これはつまり事故を予見し、どのような形で事故が起こり、どのような形で乗員にダメージが加わるから、ここを押さえておかなければ意味がない、と言うことを知っていての発言? そんな馬鹿なことがあるか、予見なんていうことは不可能であるし、そうだとしたら“神の技”以外にない。なので、これはかなりいい加減な答えである。

でも、時々いるんだ「左は左の、中央は中央のバックルにタングプレートを入れるようにしなければ、シートベルトとしての機能が正しく発揮されないから、3座共通と言うのはダメ」、と言う設計者が。しかし、その設計者が言うところの間違った位置へ取り付けていたほうが、被害が少ない可能性は50:50のはず。なのに、決められた位置を主張し、そのために「わが社のクルマでは隣のバックルへの装着は出来ません」、と来た。そこで「貴方は神様ですか」と問いかけたこともある。

このように説明するヤツ(失礼)に限って、フロントのシートベルトは裏表に関係なく、また助手席側に対しても装着できる、と言う使い勝手にこだわっていることを知らない。

日本でもリヤシートベルトの装着が高速道路走行では義務付けられたが、その前にクルマとしてやっておくことが重要。それは、如何に装着しやすく造るかである。しかし、日本車では装着しにくいクルマ(メーカー)が多いのにはあきれる。

装着のしやすさとは、単純な話。バックルとタングプレートが素早くロックできれば良いだけのこと。でも、そうなっていないクルマ(メーカー)のほうが非常に多い。何故だか分からない。「決められたバックルに正しい向きでタングプレートを装着していないと、シートベルトとして機能が確実ではない」、というのだが、何のことを話しているのか、分かる方は、リヤシートベルトの装着で、一言いいたい人ではないだろうか。

何を言いたいのかと言うと、例えばリヤのシートが3人掛けで、中央のバックルが左側に有る場合、あるメーカーのクルマでは、左側に座る人が、シートベルトを装着できるチャンスは、最大4回の行動を取らなければならないような設計があること。

つまり、そのクルマでは左側のベルトバックルが2本出ており、どちらのバックルが左側のベルト用なのか、目視しなければ分からない。と言うことは、シートに腰掛けた状態でそれを確かめることは不可能。

また、そのバックルには裏表があり、ベルト側のタングプレートと合致しなければ装着は出来ないクルマもある。2本有り、裏表が有るので最大操作は4回あることとなる。これじゃベルトを装着しろといっても、素直に行動は難しいし、行動してもその答えが返ってこないのだから、ベルトの装着をしなくなる。

あるとき、妻とタクシーに乗る機会があり、彼女は右側で私は左側に座った。当然我が家ではリヤシートでのベルト装着は数十年前から当たり前の習慣だから、右側に座る妻も私が強制する必要はなく、タングプレートをバックルに押し込んだが「これ壊れている」と言う言葉を発した。そこで「壊れていない、ベルトを裏返しにしてみなさい」とアドバイスをすると、装着完了。

私のほうは、1度目で拒否され、ベルトをひっくり返してヒットした。そのときの運転手さんに「リヤシートのベルト装着は、どんな感じですか」と聞いてみたところ「運転免許を持っている方でも、リヤシートベルトのことは皆目分かっていないようで、最初にうまくヒットしないと、自宅へ到着するまでカチャカチャやっている人が殆どです」、と言う話をしてくれた。つまり自分のやり方が間違っていると言う判断をしてしまうのだ。作る方が間違っているのだが。

運転手がシートベルトを装着するような行動を取ると、セクハラになる可能性があるので、手は出さないと言う。妻の場合には、クルマに興味がなく、我が家のクルマでは、装着しやすくしてあるので「壊れている」と言う結論を出したのだと思う。

装着しやすくするには、どのバックルにでも裏表に関係なくタングプレートが入れられるようにするだけのこと。隣のバックルに入れたところで、シートベルトの機能に違いが出るはずもない。大切なことは、シートベルトをするということであり、正しい(何を基準として言えるのだろう)位置でなければベルトの役目が発揮されない、なんて言うことは誰にも言えないのである。

リヤシートベルトで大切なことは、事故で車外に放出されないことが第一。次いでフロントシートの乗員に危害が及ばないようにすることと同時に、自分へのダメージを最小限に止めることだと思う。全ての席で3点シートベルトも良いが、その前に重要なことは、ベルトの装着をしやすくするということ。

リヤシートベルトで3座とも共通のバックルを使用しているメーカーは、やはり欧州車に多い(日本車にもあるが)。その欧州のクルマでは、座圧センサーとベルトセンサーが装着され、乗員がシートベルトをしたかどうかが、運転手に分かるモニターが装備されている(規則がある)。にもかかわらず、ベルトは装着しやすいのである。

装着しやすくすることを無視して、自分達だけのお仕着せで設計・製造するのは、如何なものだろう。いくら優秀なテクノロジーが有ったところで、基本をしっかりと使っていなければ、何の意味もないと思う。


1.これが一般的な日本車のリヤシート・ベルトバックル。座ってしまったらどれが自分のものか判断は難しい。最初に触れたものにこだわることになり、それが正しくないと「壊れている」という結論を出してしまう。
2.そこで我が家では、中央のベルトをシートの下にしまいこんで使用する。タングプレートは裏表に関係なくバックルへ差し込めるクルマなので、これで間違うことはない。

3.中央以外のベルトはバックルが共通で、裏表もなく差し込める、という構造は日本車に多い。

4.フロントだって、このように左右・裏表に関係なく、ベルトの装着は可能だ。

5.輸入車には、リヤシート・バックルの全が共通であるというものが多い。この写真から判断できるだろう。中央の3点ベルトは右シートのバックルに。左のベルトは中央のバックルに差し込まれている。

6.このようなバックルもある。バックルベルトの内部にスプリングが組み込まれており、常に座る乗員の方向へ向いている。これなら間違えることはない。3座ともバラバラにシートスライド可能で、脱着できるシートなので、このように考えたのだろう。

7.それ以外にも、バックルの取り付けがベルトではなく金属のプレートを使うタイプ。これであると、勝手な位置に移動することもないため、使用するバックルを間違うこともない。

2011年2月4日金曜日

新型ヴィッツに試乗してきたぞ 上級車にも迫る作りこみ

リコール問題が取沙汰されているトヨタだが、新型はそのようなことが起きない作り込みをしていると確信したいところ。

ところでプリウス以外の売れ筋はヴィッツだろうから、思いの高さを高くして開発したに違いない。そのヴィッツの新型に試乗したので、インプレッションを書いてみた。最初に乗った1.3リッターのアイドルストップ搭載モデルで、クオリティの高さを感じてしまった。何のことはない、作り込みが上級モデル並みで、走り出す感覚や他のクルマと同列に並んで走るときの気持ちの安らぎは、これまでにないコンパクトカーといえるだろう。アイドリング時の振動が殆ど感じない処理にも敬服した。

走行音は静かで、特に新開発した1.3リッターはエンジン騒音の減垂性がよく、アクセルを大きく踏み込んでも、小気味良い唸り音を感じるだけ。それにも増して、新エンジンを搭載するなら、IQのプラットフォームをベースにしてストレッチすれば、ホイールベースの延長と前後重量バランスの最適化が出来たと思うのだが。

何故そのようにしなかったのか開発者に聞いてみると「確かに、IQのプラットフォームであれば、ミッションとデフの位置がこれまでのクルマのレイアウトと違って、前方になりますから、重量配分的には優れているため、初期の段階では検討したのですが、製造のコストなどを考えたときに、現行のプラットフォームで不都合な点を改良すれば十分という結論になったからです」、という話だ。

IQの駆動系やプラットフォーム、ステアリング周り、リヤサスペンションなどはヴィッツ以上にコストが膨らむようだが、それ以上にユーザーに対してのメリットは大きいように思うので、それを使わなかったのは残念である。

もちろん良いことばかりではない。この燃費狙いの仕様にはタイヤも燃費重視のものを装着してあり、それが気になる走行性を示した。緩い下り勾配のコーナリングで、アクセルペダルを半分ほど踏み込みながら走ろうとすると、有ろうことかオーバーステアのように、フロントが回り込んでしまうのである(フロントホイールアライメントのトーが影響するので原因は定かでない)。1.5リッターモデルではニュートラル。RSでは更に速度を10km/h高くしても、何も起きない。

また、スポーティなサスペンションとしてバネなどが硬いRSであるが、こいつのほうが道路の継ぎ目を連続して走行する場合、はるかに快適だ。言ってみれば下から突き上げられたときに“お釣りが来ない”のである。

何が違うか開発者に聞いてみると「バネとショックが違います。ショックは単に減垂力のことだけではなく、内容も違うのです」、という話である。でもそのショックを他の仕様にも採用するつもりはないようだ。

1.3リッターモデルではアイドルストップを装備しているが、このシステムはすでにIQの1300で採用していたもの。トルコンのドライブプレートにオーバーランニングクラッチを組み込み、リングギヤとセルのピニオンギヤは常時噛み合ったまま。セルとリングギヤが噛み合う音がしないから、ドレッシーな感じで再スタートする、というのだが、とてもそうは感じない。

確かにセルのピニオンがリングギヤに噛み込むときの音はしないが、その音はたいしたものじゃない。なのでピニオンギヤとリングギヤが噛み合って回る音のほうがうるさく、他社の廉価版システムとの違いを感じることは出来なかった。

このオーバーランニングクラッチを使うセルモーターの方法は、すでにバイクでは当然のものとしており、セルのギヤからリダクションのギヤまで、綺麗にシェービングされているため、ギヤが噛み合って回る音は感じない。バイクのセルを勉強しておけば、ヴィッツでも少しはドレッシーな始動になっただろうに、と思う。

アイドルが一旦停止し、再始動する条件は各社違いがあるようだが、ヴィッツはステアリングを左右に動かしても再始動しない。他のメーカーでは、右左折時の発進遅れを考慮して、一時停止状態から、ブレーキやアクセルの操作をしなくてもハンドルに手をかけたとたん再始動させるのだが。

この点について開発者は「ブレーキペダルから足を離した瞬間、0.35秒後には再始動が完了しますから、ステアリングのトルクセンサーから信号を取っていません」ということだったが、左足でブレーキペダルの操作をしている場合、同時進行的にアクセルを踏むタイミングもあり、やはり再始動に遅れを感じる。再始動条件にはブレーキスイッチとブレーキ液圧検知を採用しているということだが、少しストローク的に鈍感すぎることが、他社のそれとは再始動時間の差が出ているようにも思う。

ただ、アイドルストップした後に少し前進させるようなとき、他のクルマでは時速20キロ以上とか、数十メーター走行しないと、など再始動の条件は厳しいが、ヴィッツの場合5m程クリープ走行させると、再びエンジンは停止する。距離を計測してアイドル停止の条件としているのか、と聞いてみると「そうではなく、時速2キロで走れば停止の条件となります。たぶん、クリープ走行で5mは、それに合致したのでしょう」という話だった。


1.これがアイドルストップ後に再始動させるとき、セルモーターからの力を伝えて、再始動後はエンジンからセルモーターへは回転が伝わらない、ATのドライブプレートに組み込まれたオーバーランニングクラッチ。特別新しいものではなく、バイクではこれがスタンダード。ドレッシーな始動音を求めたという話だが、そんなことは感じなかった。ピニオンギヤとリングギヤの噛み合う音が汚らしいからだ。

2.アイドルストップが付いたクルマには、非常に大きな容量のバッテリーが搭載される。表示を見ると85Ahとある。以前2.4リッターのディーゼルターボを乗っていたが、それに使われていたのは75Ahだった。汎用性が低いバッテリーなので、ディーラーで交換するときに高価だろう。

3.こちらは1.5リッターのエンジンルーム。バッテリーは極普通のサイズ。

4.1.5リッターのエンジンはこれまでのものを流用。全部の仕様でいえることは、ゆっくりと走らせている限り、上級モデルに匹敵する走行フィーリングを持ち、挙動が穏やかに造られていること。特に新エンジンとした1.3リッターは、バランスが良いのか、エンジンの負荷を大きくしても、綺麗なエンジン音を発する。

2011年2月1日火曜日

改造プラグから始まった着火性に優れる点火プラグを考察する

20年以上の前だが、改造プラグの流行った時期がある。きっかけは、当時の読者がアイディアを出して実験した“スラントプラグ”という名称のものだった。このようなことから、当時は私もいろいろな形状の改造プラグを作り、紙面展開した。

改造はエスカレートし、接地電極を二つに切り開きV字の電極にしたものまで造ったが、熱負荷が心配だったので高負荷で使うことはしなかったが、当時はそれなりに効果があったように記憶している。このような経緯からスピリットファイヤーの切り開いた接地電極は、当時私が考えて誌面に発表したため、日本では私以外特許申請できない状態にある。

その後プラグメーカーはいろいろな形状の電極を開発したが、真似のできるのは、日立のクロスカット。中心電極に十字の切込みを入れただけのものだったからだ。直ぐに自作したが、結果は不明だった。

点火プラグがこのままで行き着くところにきているのかと思っていたら、どうやらそうでもなさそうな気配だ。これまでの考え方や求められることは、安定したスパークを長期に渡って確保することに主眼が置かれていたのだが、最近では、単に燃焼させれば良いのではなく、より確実に燃焼させることに目標を変えてきた感じで、燃焼室内に対する電極の向きがどのような影響を持つのか、あるいは、その向きによって失火が起きる可能性はどのくらいなのか、などの研究が行われ、どのような形状の電極が理想的なのかの研究も行われ始めた。

電極を細くする理由は、エッジや細い部分からのスパークが自然であり、耐熱金属では磨耗するために、白金やイリジウムと言う金属を使用している。また、細くすることで、熱引きが小さくなるため、スパークによる火炎核が小さくなりにくく、点火エネルギーに繋がるため、失火が少なくなることも細い電極を使う理由だ。

最近の研究課題は、高効率を目指した小排気量の高出力エンジンに対する、厳しい温度環境と振動などに耐え、ヘッドへ取り付けられたときの電極の向きが理想的ではなくても、失火が起きにくい形状などが求められている。また、どのような方向から混合気が電極の間を通過するかは、エンジンの造り方で変わってくるため、一概に方向を決められないこともある。

基本的な実験では混合気が電極の間に入ってくる角度を0度、90度、180度などで確認すると、0度と90度は理想的だが、180度は失火が起きやすいということになっており、これは実験などしなくても空気の流れを考えればおのずと分かる。そのため、私は気筒数以上のプラグを用意し、締め付け後の電極の向きを整え、アイドリング時の失火改善に役立てている。


1.これがスラントプラグと命名された改造プラグ。中心電極を斜めにヤスリで削り、それに沿わせるように接地電極をねじっている。どのような理屈でこの形になったのか説明はなかった。

2.混合気がプラグの下から迫って来たときでも、接地電極が邪魔をしないよう、ふたつ割にして、接地側のどちらからでもスパークが起きるよう考慮した。条件の良いほうでスパークすることにより、要求電圧は下がり点火時期は安定するばかりではなく、点火コイルの発熱も少なくなるので、安定する。と考えて造った改造プラグ。

3.日立のクロスカット。中心電極に十字に切り目を入れただけ。エッジを多く造りスパークしやすくしたのだろう。これならまねは出来そうだ。

4.接地電極の位置から本物のようには行かないが、45度ずれた位置にクロスカットを作る。金属用の糸鋸を使えば可能だ。ただし、いずれの改造プラグも削りカスの除去に十分な注意が必要。また、接地電極を曲げ伸ばしするので、劣化による折れも十分に考慮する必要がある。

5.これらが高着火プラグと呼ばれるもので、現在の主流だが、やはり締め付け後の電極角度によって、失火の原因を作り出しやすい。

6.失火の原因を作り出しにくい電極形状と、熱・振動耐久性をこれまで以上に高めたプラグ。右の電極形状は失火のリスクを少なくするらしい。着火性としては僅かだが左の形状という結論。いつごろ販売が開始されるのだろうか気になる。

2011年1月4日火曜日

左足でブレーキを踏むことを前提とした、ブレーキ優先制御とAT限定免許との関係がおかしい

AT車の暴走に端を発したブレーキオーバーライド(ブレーキ優先制御)だが、国土交通省の方向としては、積極的にこのブレーキオーバーライド制御を採用して欲しい、と言うことなのだが、何かおかしくないか。

そして、そのことを具現化させる会議なるものを立ち上げたが、そこに加わっているメンバーは、一体どこまで左足ブレーキのことを理解しているのだろうか。どこの自動車メーカーがどのような経緯で取り入れたのか、そのことも分かっているのだろうか。

それにも増して、唯一(世界でといっても良いかもしれない)「左足でのブレーキ操作がしやすいペダル配置や、ブレーキブースターの機構からシート、左の膝位置なども考慮した」、と開発責任者が言うクルマがあるのだが、そのクルマがどこのなんと言うクルマなのか知っているのだろうか。この会議には、何名かの著名な自動車評論家が加わっていたはずだから、彼らは試乗会で十分知る機会があり、開発責任者に話も聞けたはずだ。でも、常に左足ブレーキの感触を気にしていない方であれば、気がつくことはないだろう。そのようなことが頭に入っていないで、会議をやったところで、先進的な意見など出るはずもない。

このような経緯を知って、現在どのような制御がその先輩たち(クルマと開発者)は行っているのか、十分に理解した上での話し合いが重要だと思う。上っ面な情報だけでの会議では間違った方向へ導きかねない。そして、先輩たちは第2世代(バージョン2)の制御となっているのだが、どのように進化させたのか、ご存知だろうか。

また、日本の自動車教習所におけるAT限定免許や、運転講習では「ブレーキペダルを右足で踏むこと」、となっており、万が一にも左足で踏もうものなら、教官から大目玉を食うという。なのに、国土交通省は「左足でブレーキを踏んだ場合に、もし右足で踏んでいるアクセルペダルを戻し損ねても、しっかりとブレーキが効くように」というのである。何か変だと思うのは私だけだろうか。つまり「左足ブレーキが前提での制御を取り入れろ」、と言うのだから。

AT車を乗る場合、遊んでいる左足を有効に(健常者として)使わない手はない。増して、基本的な動作として、ブレーキを左足で踏むことによって、アクセルとブレーキの踏み間違いによる暴走事故はなくなる。これ当然の話。なのに、絶対に右足だと言うのはおかしい。右足でないと力が入らない、と言う人物もいるが、腕の筋肉とは違い、両足とも同じ力を持っているはずだから、この方の考えはあまりにも時限が低い。

左足だと、急ブレーキの場合、しっかりと踏ん張れず運転姿勢が乱れるとか何とかの言いわけもあるが、フットボードを踏みつけていれば、しっかりと体を押さえられるとでも思っているのだろうか。急ブレーキ時の運転姿勢や体重を支えてくれるのはシートベルトである。それより制動による減速力をブレーキペダルの踏む力にしたほうが、よほどましだと思う。左足でのブレーキ操作が、如何に安全で事故となる状況が起き難いか、と言う話はしないが(考えれば分かるはず)、正しい運転姿勢を取っていれば、何も問題は出ないし、出たことはない。

そして、パニックブレーキでは両足に踏ん張る力が入るため、左足でブレーキを踏むと、同様に右足でアクセルを強く踏みつけるので、制動距離が伸びる、と言う話しをする方がいるけれど、それは経験したことなのだろうか、それとも憶測の話なのか。私自身、実際にそのようなことを経験したことはないが、そうならないために組み込まれるのが、ブレーキ優先制御(ブレーキオーバーライド)でもある。

AT車の暴走事故は単純そのもので、少しのパニック状態からブレーキペダルのつもりで、アクセルペダルを思いっきり踏みつけ、大きなパニックに陥ってしまうことで起きる。本人はブレーキのつもりだから、自分が間違っていると言う自覚はない。その結果、事故が起きる。

このAT車によるアクセルとブレーキの踏み間違い事故は、何も一般ドライバーに限ったことではない。関係者からの情報では「救急車はかなりやってます。緊張からだと思います」、と言うことなのだが、更にビックリしたのは警察車両で特にパトカーであると言う。どの事故も大きくない状態なので、内部での処理としているようだが、これも左足でのブレーキ操作が出来れば、何も起きないはず。

もちろん誰でもが絶対に左足でブレーキペダルを踏め、なんて言うことは言わない。それは個人の自由だからだが、せめて教習所ではAT限定免許を取る場合「左足での教習にしますか、それとも右足ですか、教習の途中で逆の選択をしてもかまいません」、ぐらいのことはあってもしかるべきだと思う。でも、このような教習をやるには、教官がどちらの足でもブレーキペダルを踏めるように訓練していないと成立しないが。

またアメリカ人はAT車の運転で、左足ブレーキを使う人が多いと聞く。そして、ある日本の自動車メーカーの人がアメリカに赴任したとき、一番最初に言われたことは「左足でブレーキが踏めないのなら、1週間時間をやるから、その間にマスターせよ」と業務命令が出たとか。何故そこまでこだわるのかと聞いてみると「研究・開発に対して、自分たち(つまりアメリカ人)と同じ生活・行動のパターンを持たない連中の話は聞かない」という気質があるからだと言う。なるほど・・・

左足でのブレーキ操作も慣れてくると、両足でのブレーキ操作が出来るようになる。もちろん右足でのブレーキ操作がしっかりとやれての話ではある。パニックブレーキを両足で、と言うのはチョイと無理のような気もするが、渋滞路での長時間走行では、意識的に両足でペダルを踏むと、力が要らない。というよりも足の重さで十分停止しておける。

また、バイクの話だが、昔のイギリス車は左足ブレーキで、極最近までインド製のイギリス設計バイク(ロイヤルエンフィールド)は左足ブレーキだった。もちろん日本製のバイクでも、その昔には左足ブレーキがあったし、あのハーレーでさえ一部の車種に左足ブレーキがあったのだ。


1.開発責任者が「左足で踏みやすく、使いやすいブレーキを作りました」と言うクルマのペダル周り。今でこそたいした評価とならないだろうが、その当時(8年ほど前)はその素晴らしさにビックリした。試乗会で、「左足でのブレーキ操作が素晴らしいのですが、何かあったのですか」と開発責任者に尋ねると、「そうでしょう、分かる人には分かるんです。良くぞ感じてくださいました」と、身を乗り出してきたのだ。

2.左足でのブレーキ操作がやりにくかったので、少し大きめのペダルパッドを取り付けた。もちろん高さが上がらないように、ペダルのゴムを取り、間にスリップ止めを挟んでいる。自然の操作感が重要であるのだ。また、左足でブレーキペダルを踏ことに違和感をなくすには、右足とは評価基準が違うところにある。それは、左足では構えている状態からペダルを比較的ゆっくりと踏む機会が多く、マスターシリンダーから油圧が高まり、パッドを押し当てるまでのフィーリングを中心にチューニングする必要があるというが、右足であると、いきなりペダルを踏みつけるので、パッドが制動を開始してからのフィーリングを評価することが多いからだという。

3.もちろん右足でもブレーキペダルを踏める。間にツイタテを入れて・・・なんていう話ではない。重要なのは、左足でのブレーキ操作が出来る人に対して、使いやすいペダルの設計をしてあること。また、左足でブレーキペダルの操作が出来れば、バカバカしい事故から大きな事故へ結びつくこともなくなる。

4.慣れると、両足でのブレーキ操作も出来る。普段使うと言うより、渋滞で足が疲れたときに、両足で踏むと、踏むと言う力が必要なく、足の重さだけで停止しておける。
5.左足の位置が重要となるので、このようにスポンジパッドを貼り付けて解消。本来は膝を当てるようにしたいのだが、その位置にコンソールなどがないので、ここで我慢。それでも、左足の位置が決まるため、はるかに踏みやすくなっている。