何がって、245/35R19と言う幅広いタイヤを履きながら、なんら違和感を覚えない、普通のセダン感覚の走り。更に、サスペンションの作動にストレスが無いのだろう。路面の荒れたところでも細かい振動はあるものの、ドタバタ感はない。
そして、ここまでくれば当然のことなのだろうが、走行ノイズが、また少ない。245/35R19と言うサイズのタイヤを装着していれば、パターンノイズと称する騒音が、室内まで響き渡って当然なのだが、それがないのである。
シートを通しての上下動、細かい振動がドライバーに伝わらない(レーシングシートのようなバケットタイプを標準装着しているが)ので、年寄りドライバーが長時間、長距離高速走行をしても、疲労は驚くほど少ないだろう。(経験上)
ルノーが5ドアのハッチを具現化した背景には(これまでは3ドアだったのだが)現在のトレンドが、5ドアであると言う状況から考え方を切り替えた結果だ。
もちろん乗り味を最高のものとするため、サスペンション周りにも手が加えられている。初代メガーヌ ルノー・スポールから採用されているものを更に熟成。ダブル・アクシス・ストラット・サスペンション(DASS)と呼ばれるもので、ステアリングアクシスがストラットに頼らない構造。そのため、サスペンションの構造に制約を受けることなく、理想的な作動アライメントを引き出せる。もちろん作動中の変化も、ドライバーが必要と感じる状態で、素直にタイヤが向きを変え、更に素直なキャンバースラスト効果によって、気持ちの良い高速コーナリングが、コーナーの大小に限らず体験できるのには、完全に脱帽である。
この素晴らしいコーナリング性能には、4WS方式が大いに関係している。方式としてはルノー メガーヌGTに搭載されているもので、更に熟成度を高くしているのは当然の話。レースモードを選択しなければ、時速60キロで変化する。60キロ以下であるとリヤは逆位相になるが、それも速度によってその角度は最大1度。また、60キロ以上では同位相制御で、最大2.7度の角度変化が起きる。ステアリングホイール操作の角速度から、どのようにRSを走らせているか、走らせたいのかを検出し、作動角度を割り出すのだ。
日本でもこれまで4WSを積極的に採用(日産自動車)されていたが、特殊なクルマを除いてあまり謳い文句にしなくなった。でも、ルノー・スポールでは違う。
扁平率が高いタイヤながら、その悪さを出さないための工夫として、ショックアブソーバーがある。ショックアブソーバー底部に組み込まれた機構で、そのオリフィス変化によりフルストローク時の減衰力を高くしようというもの(日本の萱場製だと聞いた)。バイクのフロントサスペンションに採用されるテレスコピックフォークの構造は正にこれで、バンプストッパーを取り付けられない構造のため、ボトム付近での減衰力を高くすることで、金属同士が当たる底突きを防いでいる。ルノー・スポールはその構造を更に高めたものであると判断した。
そして、エンジンについても見直しが図られ、これまでの2リッターターボから、1.8リッターターボに変更。排気量が小さくなっても、パワフルで扱いやすく、必要以上に振り回されることがない。常にアクセルペダルと一体と言う感触が沸きあがる。
変速機はもちろんツインクラッチ方式の6EDCでゲトラグ社との共同開発であるという。機構的に素晴らしいのは当然だろうが、問題はそれに関わる制御。このことも素晴らしく、常にドライバーの意思を繫栄させるプログラムを選び出す。更に、走行モードが5個あり(ルノーはこのようなことが好きで、それに長けているとも言える)ドライバーの好みで選べるが、コンフォーとかニュートラルで十分だ。
パドルシフトを思いのままに使用でき、つながりの良いギヤチェンジはまるでCVTを操作しているかのように反応する。もちろん自動でのギヤシフトでも十分に走行を楽しめることは確かである。