研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2018年10月16日火曜日

思い出したぞ、やってもらわなければ良かった初回点検


数十年前のことだが、あるイベントの現場でトラブルに巻き込まれ、それを人脈と技術で克服した話をしてみる。

そのイベントとは、今でこそメジャーになったイーハトーブトライアルである。

公道、林道、ハイキングコースを走りながら、そこここに点在する(主催者側が人工的に或いは自然に地形を利用して)セクションと呼ばれる障害物的な場所に専用のバイクでトライし、そこを如何にスムーズに走り抜けられるか、的な評価で勝敗を争うイベント。詳しく言うのは面倒なので割愛。

そのイーハトーブトライアルに、当時同僚だった人間が取材を兼ねて参加するので、経験の有る私が同行し面倒を見ることとなった。私が乗るバイクはスペインのオッサMAR(ミック・アンドリュース・レプリカ)で、その問題の出た同僚が乗るのは、当時再販したホンダのTL125(イーハトーブ)。

新車で購入し、意気揚々と会場に集合。前日には当時のホンダ・サービス拠点の中枢であるSFに持ち込んで、初回点検を済ませてきたと言う。この点検をやると言う話は事前に聞いていたので「止めとけ、今現在問題のない状態なら、一部でも手を付かないほうがいいぞ」と助言したのだが、聞く耳を持たない彼は、その拠点にバイクを持ち込んで、初回点検(何をしたのかは不明)をやってもらった。コレが大失敗。

イベントの前日にクルマから降ろしたバイク(イーハトーブ)のエンジンを始動させようとしたが、いくらキックペダルを蹴飛ばしても始動しない。そこで点火プラグにスパークがあるかどうか確認したところ、何も起きない。これはやばい・・・

そこで、何が不具合なのかわからないので、とりあえずシリンダーヘッド左側にある、点火タイミングを決めるパルサーがどうなっているか点検したが、見るだけのことしか出来ないので、結果は不明。

このままでは問題を発見できないので、クランクケース左側に取り付けられているフラマグ(ダイナモ)のカバーを外すと、なんと中から6mmのボルトが1本出てきた。そして、更にそのボルトが何をしたのか見ると、点火発電用のコイルを切断していた。フライホイールは磁石になっているので、それによりガチャガチャに掻き回されたのだろう。

だが、こんな山奥に部品はない。そこで、このイベントを積極的に応援し裏方で動いている盛岡のホンダディーラーの方に相談すると、「まだメンバーはバイクショップにいるので、新車から取り外して持ってくることは可能」というが、その取り外した部品を補充しないといけないのだが、そのトラブルを起こした原因は、SFのメカニックであるので、バイクのオーナーがそれを負担するのはおかしい。

そこで、ホンダ広報に電話をかけると、責任者で親しい方がまだ会社にいた。経緯を話して、部品の補充を盛岡ホンダへやってもらうことの約束を取り付ける。

盛岡ホンダから届いた部品を組み付ければ問題解決。2日間にわたるイベントは無事終了。

さて、何でこのようなトラブルが起きたのか考えてみると、サービスの現場があまりにも整いすぎていたからとしか言いようがない。(必要な部品は常に多数保管して有る)つまり、意味もなくエンジン左のカバーを開け、なにやら増し締めみたいなことをやったのだろう。そのとき、カバーの締め付けネジはどのように管理していたかである。近くには強力な磁石がある。それを無視すると・・・

1本見つからない。探したのだけれども(恐らくすでにフライホイールの磁石に張り付いていただろう)見つからないので、部品庫に出かけ同じボルトを探して組み付けたと思われる。表面的には問題解決だが、その奥に爆弾が仕掛けられたことを知る由もない。

そして、イベントの前日にその爆弾が爆発した。

で、この初回点検だが、私は「問題がなければヤルナ」と口を酸っぱくしてその同僚に話していたのだが、聞く耳を持たなかったため、メカニックのヒューマンエラーに巻き込まれたと言う話。

人間がやることに対しては、常に「大丈夫かな?」と言う気持ち、疑いの目を持つことは重要と思っている。