研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2020年6月3日水曜日

ロータリーエンジンの構造に口を挟んだ 潤滑のオイルポンプと吸気ポートの機構・仕様だ



3ローターのユーノスが発売になったとき、広島のマツダ本社まで、ロータリーエンジンの取材で出かけた時の話し。疑問に思っていたことをストレートに聞いた。ケチをつけた話

ついでに、ローターハウジング内側の鉄のタガを鋳込んだ部分に対する硬質クロームメッキ・ポーラス処理についても、時代錯誤。なぜニカジル(NiCa-Sil系)や爆射(後に、この技術はカヤバのものであることが分かった)など。また、ヤマハではアルミ部分に直接硬質クロームメッキを施し、耐久性を高めている実績は一番長いわけで、バイクの世界では当然のこととして行われているこのような処理をしないのか聞いてみたが、「現在の鉄のタガを鋳込んだところにクロームメッキという処理で、とりあえず目標とした性能が保てている」と言う返事だった。

しかし、ニカジルなどの表面処理を行えば、鉄のタガ鋳込みによる膨張率違いで発生する歪がなく、燃焼による吹き抜けも抑えられ、潤滑オイルの消費などが少なくて済むので、性能向上に役立つのだが・・・

そして、提案したその表面処理方法を知らなかった。やはり広島と東京は情報でも離れているのか。しかし、爆射についてはカワサキのバイクだから、近いところに情報はあったのだ。

潤滑のオイルポンプは、当時のマツダロータリーの場合、アクセルワイヤーと直接繋がりメカニカルポンプのストロークを変化させると言う、ごくベーシックな制御。これではエンジンの負荷以上にオイルが送られることになり、オイルの消費量も多くなる。

で、当時の高性能2ストロークバイクは、電子制御を使っていた。この制御は、排気タイミングを、アクセル開度とエンジン回転数から自在に変化させ、スロットル開度と負荷に対応を目的として、排気タイミングを変化させる電子制御を使っていた。特に排気ポートに対して、排気タイミングを変化させれば、低速から高速まで、十分なトルクが発揮できるような構造なので、ここに潤滑用のオイルポンプをリンクさせた。

オイルポンプのストローク変化と排気コントロールバルブはワイヤーで結ばれており、その動きによってオイル量を調節したので、必要以上のオイルが供給されることはなく、オイル消費量は非常に少ない。そのため、それらのバイクは煙の排出が少なく、かつ排気臭もほとんどなかった。

この電子制御のオイルポンプを採用したバイクもカワサキにはあったので、それを伝授した。

そして、電子制御のオイルポンプは、その後にマイナーチェンジされたRX7には採用されていた。

また、ローターリーは吸気ポートとの関係で、どうしても排気ガスが吸気側に多く流れ込む。(つまり、自己EGRが非常に多く、それを制御できない)それを防止するのにはリードバルブが有効ではないか、と言う話をすると「おっしゃるとおりリードバルブは有効なのですが、テストすると性能は良くても、リードが割れるのです」というから「使用したリードの材質はスチールですね」「なぜ樹脂のリードバルブを使用しなかったのですか」「今時のリードバルブは樹脂で、レーサーレプリカとなるとカーボンファイバーです」と言う話をしたら、「例えそれを解決できても、まだ吸気ポート内で排気ガスが充満してしまうので・・・」というから、「それは当然ですから、小さなポートを数個つくり、そこにそれぞれリードバルブをつければ、必要以上の排気ガスが吸気側に漏れることは防げると思います」と話したら、「なぜ即答できるのですか、我々は1ヶ月ほど考えた結果でしたが」ということだった。

そのときには、3リーターのロータリーエンジン取材で広島の開発グループに伺ったのだが、その3ローター開発責任者とは非常に親しくなり、マツダがルマン24時間耐久レースで優勝したときのエンジン分解でも、そのエンジン担当者は、3リーローター開発担当者と同じだったので、張り付きでの取材が可能だった。他の雑誌の編集者とは次元の違う話し内容だったため、他の誰も寄り付かなかった。でも、マツダ広報部からは、原稿を頼まれたが、事実を書くので、私がラフに書いた現行の都合の良い部分だけ使ってください、と話をし、そのラフ原稿をFaxした。

2020年5月21日木曜日

クルマの事前説明会で、新しいエンジンが展示されていたが、なぜか納得できない吸気ポート形状が・・・



バイクとクルマのジャーナリズムの世界に40年余り足を突っ込んでから、現在までにケチやアドバイスをつけた項目数十点 その

新型エンジンの(新型車に搭載される)説明会で、そのエンジンを長時間眺めていたら、開発担当者が近寄ってきて「良いエンジンでしょう、時間を掛けて開発しましたから」と言うのだが、そのエンジンはそのメーカーの別の部署で開発・市販されていたものと大きく違う点があった。それは、吸気ポートの立体的形状である。

自然吸気エンジンではこの形状だと、吸気に乱流が多く発生。吸気通路が小さくなったように吸気流の乱れが発生することで、慣性過給がなくなり充填効率が悪くなる。

そうならない吸気ポートの形状は、ハイポートとかストレートポートと呼ばれる形状で、吸気側からバルブを覗くと、燃焼室まで見えてしまうような、ストレート形状がいいのだが。

その話をしつこく述べていたら、その方は「うちにはそんなエンジンはない」と反撃してきたので「しめたそこにきたか」。「そうですか、ではバイクエンジンのこの状態はいかがですか」、と切り替えしたら、いきなり下を向いてしまった。「どうしたら良いのでしょう」というから、広報に話して見たら、と言っておいた。

後日広報部にその話をしたら、4輪の研究所から問い合わせが着たので、2輪の開発者からデータを流してもらったとか。

T社のあるエンジンについても、せっかく十分なスペースがあり、バルブの挟み角も小さく、いくらでもストレートが可能なので、設計変更したらどうですか?と言う話をし、その見本のエンジンはH社のスポーツバイクエンジンですと話したら、後日これもH社の広報部に連絡があり「図面のコピーをくれないか」と言うの「そのバイクは市販していますから、お買い求めください」と返事したようだ。

2020年5月16日土曜日

ハンドル操作に遅れが生じるスポーティなコンパクトカー



バイクとクルマのジャーナリズムの世界に40年余り足を突っ込んでから、現在までにケチやアドバイスをつけた項目数十点 その

クルマの試乗会会場が箱根のターンパイク近くであると、いつもやっていたことがある。それは、ATのDレンジのままでターンパイクを下ること。ブレーキペダルは一切踏まず、遅いクルマが居ればアクセルを踏みつけて加速し、それを素早く追い越す。でも、次に現れるコーナー入り口でTAのセレクターはそのまま、ブレーキペダルも踏まない。ほとんど利かないエンジンブレーキだけで駆け抜ける。

コーナー近くになってもDレンジのエンジンブレーキだけで曲がるので、かなりの度胸が要る。

なぜこのような走り方をしたかというと、それは、ブレーキを掛けずに、コーナリングのためハンドル操作すれば、そのクルマの素性が全て出る、と考えたからだ。

つまり、誰が運転しても傍から見ると、安定した速度で(かなり速いが)コーナーを駆け抜けられれば安心できる。そこには、運転テクニックの必要がないことは当然。また、自分の考えていたカーブよりきつかった場合でも、ブレーキを掛けなくても曲がれるとしたら(限界はあるが)、それは自損事故を起こさないことに繋がるはず。ブレーキを掛けると、サスペンション回りに大きな力が作用するわけで、それによってサスペンションジオメトリー(アンチダイブジオメトリーなんていう構造も組み込まれるので、サスペンションの動きは阻害される)も変化がおき、タイヤの持つ方向性やグリップ力が失われる。

でも、安定したコーナリングが非常に高い速度でも可能となったら、普通にハンドルを操作するだけでそのコーナーを走りぬけることが出来るわけだ。

これが重要!!!

リヤが流れ出す感覚をマスターする必要もなく、勿論カウンターになることもない。要するに、ベテランの運転感覚は必要なく、初心者の感覚で十分。タイヤが滑り出して強烈な音を発することもないのだから。

この状況を要求すると、ほとんどのクルマはアウト。今ではそのような緊張するテスト走行はしないが、当時はそれをやってしまった。

以前別のブログでも書いたが、これまでの最高記録は三菱のランサーセディアワゴン・ラリーアートエディション(2001年5月発売)で、なんと平均時速は120km以上。コーナーに突入するときの速度は140kmである。そこからブレーキも掛けずにハンドルを操作することで、タイヤに掛かるストレスがブレーキ作用となるので、速度は落ちる。

このような走り方を普通にやっていたある日、コンパクトスポーティなクルマの試乗会で、同様な走り方をしようと、いつもの速度まで上げてハンドル操作した瞬間、一瞬遅れて向きが変わる。何があったのか理解できない。何回か違うコーナーで試したがその都度動きが違う。それも、その動作は速度によって反応・・・。

この状態では、ハードな試乗は無理なので、早々に基地まで引き上げ、足回りの責任者と話をすると「それ感じましたか。我々もその症状が出ることを理解していて、フロントサスペンション周りの補強などやったのですが、解決していません」と言う話だった。

実務的な話をかなり長くやって、お互いの分析力を確認できたおかげで、その方とは非常に親しくなった。その方は後のモデルチェンジ開発責任者となり、しばらくすると海外に移動となってしまった。

その問題のクルマは、スズキ・スイフトスポーツ2代目の2005年発売モデルだ。

2020年5月9日土曜日

新型バイクを借り出して、1泊2日のツーリングへ中間達と出かけたときにその問題は発覚した



バイクとクルマのジャーナリズムの世界に40年余り足を突っ込んでから、現在までにケチやアドバイスをつけた項目数十点 その

エンジン特性は、低速・中速トルクが不足して、標高の高いところを走っていると、アクセル操作に対してエンジンの反応が遅れる。鈴鹿サーキットで行われた試乗会のときにも、なんとなくそのあたりは感じていたが、条件が悪くなるといきなり特性の良し悪しが出るようだ。

それ以外にも問題が発覚した。仲間と風呂に入っているとき「会長、その尻どうしたのですか?まるでおサルの・・・」と言う状態で笑われた。

そういえば、なんとなくヒリヒリする。鏡で見ると、確かにおサルのお尻状態。

この原因は、シートのベース部分に開いた空気抜きの穴から、ラジエター(そのバイクは水冷だった)の高温冷却風が吸い込まれ、シートの座面が低温状態となり、長時間それに座っていたことで低温やけどを起こしたのである。
 
そのバイクは1986年に発売となったCBR400R
 
このことを、広報部を通して開発責任者にレポート提出。返事は直ぐに来た。返事の内容は「大変貴重なレポートありがとうございます。これまでのテスト項目には、シートベースの空気抜き穴から冷却風が取り込まれ、その結果、ライダーのお尻が低温やけどになる、と言うことを考えませんでしたので、これからは、テスト項目にそれを入れます」と言うことだった。この結果、その後のバイクにはこのようなことは発生していないようだ。

2020年4月29日水曜日

速度が限界近くになるといきなりハンドルが振れ出す、軽量な750ccバイク 現場でのセッティングで直せる状況ではない

バイクとクルマのジャーナリズムの世界に40年余り足を突っ込んでから、現在までにケチやアドバイスをつけた項目数10点 その②

当時としては軽量な750ccの試乗会。テストコースの試乗会なので、速度無制限。直線路の終わりぐらいにある少し出張った部分をアクセル全開(200キロ以上)で通過した瞬間にハンドルが左右にブレ始める。そのまま速度を維持していても、一向に収まる気配はない。
一度振れだすと速度を少し落としたぐらいでは収まらない。

どうやら、エアロダイナミクスが不良で、出張ったところを通過した瞬間の突き上げで、カウルの下に空気が入り込み、浮き上がるせいだと判断。

現場に居たジャーナリストで体が小さいライダーは、カウルの中にすっぽりと入り込めるため、そのようなことは起きないと言う。

そして、なぜ突き上げが発生するのか考えてみた。その結果、非常に軽量に作られていたのに、フロントフォークの減衰力がこれまでのバイクと考え方が同じ、と言う開発者からの話。これでわかった・・・圧縮側の減衰力が強すぎるのだ。バイクが軽量なのだから、それに合わせて減衰力も小さくていいはずだが、当時としては最高速度が高くなる。そして、その状態での安定性を確保したいということから、圧縮側の減衰力をこれまで同様にした。都合の悪いことにその実績もあったし。

減衰力の調整は、フロントフォークにもリヤショックにも装備されているが、我々の試乗会数日前に、海外から来たジャーナリスト達(彼らは日本の皆さんと違って、非常に走り方はエキサイティング)も、身体が大きいので私と同様な症状が出て、開発者が制止するのも振り切り、いろいろとアジャストしたが(しまいにはスプリングも交換したとか)、一向に解決しなかった、という話を欧州に住みモータージャーナリストをしている親しい日本の方から聞いた。

そのバイクは、1985年に発売されたスズキGSXーR750。初の油冷エンジンとしてデビューしたもの。その後はどのように改良したかは知らないが、欧州にも輸出したので、改良されたはずだ。


2020年4月23日木曜日

バイクとクルマのジャーナリズムの世界に40年余り足を突っ込んでから、現在までにケチやアドバイスをつけた項目数十点 その①


大学を何とか卒業してからモータージャーナリズムの世界い入り、評価・提案・ケチなど、数多くの異論を唱えてきたのだが、ケチをつけたことで親しくなった開発者もいる。その結果トップシークレットの情報を交換できるまでの信頼性を得たのも事実だ。

思い出すままに書いてみたので、あえて番号を振り、その内容を解説することにした。何回かに分かれての記事となる。

 

評価の悪い言い方がケチだとしたら、そうなのかも知れないが、そこに正しい評価と問題点を指摘されたことで、それをケチだと言う感覚で捕らえるとしたら、その方の進歩はそこで止まる、と思っているが、いかがなものだろうか?

ケチをつける、これそのものは良いも悪いも評価すると言うことに尽きることで、その評価は真摯に受け取らなければいけないと思う。勿論、その内容がいい加減なものであってはならないが、なぜそのようなケチ(評価)を付けたかと言う、「なぜ」「どうして」が存在したら、これは開発者として聞いていた方がいいし、出来上がったものを煮詰めていく場合に、特になるのだと思う。なぜ特になるかというと、これまで自分達が長い期間かけて開発してきたものを、一瞬にしておかしな状態を発見したわけだから、ものすごく価値があるはずだ。

バイク雑誌の編集者は大学卒業後から行ってきたが(リタイヤするまでの間に自動車のいじり系雑誌に人事異動)、現在までの間にそのクルマやバイク、更にイベントの規則に対してもレポートと共にケチをつけてきた。そのケチの内容を思い出すまま書いてみた。順番はいい加減であることをお許しいただきたい。また、その内容はかなり前になるので、その当時を思い出しながらの話となるため、途切れ途切れとなることを了承して欲しい。

数多くのバイクやクルマ、そしてイベントに対してケチをつけてきたが、そのケチを糧に改良されたものも多くある。そして、他のジャーナリストの方と違うのは、自分で手を加えて改良できそうだと判断したら、実際に行動を起こす技術力を備えていた点だろう。

ではまず始めにこんなことから・・・

1、アイドリングが安定しているのに、アクセルを少し開けた瞬間に回転が低下し、場合によってはエンジンが停止する125ccのシングルロードスポーツを借り出して試乗していたが、このような調子で楽しく試乗できない。キャブのアイドル調整をやるが結果はでない。アトマイザープレート!!!などと言う変なものを吸気通路に取り付けたからなのだろうか。何が悪いのか、エアクリーナーを外し、スロットルバルブが見える状態に、エンジンをアイドリングさせながら、スロットルバルブを指で軽く押すとエンストした。指で軽く押した状態でエンストしないようキャブを調節し、安定したアイドルからスロットルを開けるときれいに回転は上昇する。

この状態を分析すると、スロットルバルブの径が小さく、アイドリング状態ではスロットル・ストップ・スクリューに、組み込まれたリターンスプリングによってスロットルバルブが当たることで、スロットルバルブの自由度はなくなり、スロットルバルブとシリンダーにクリアランスが生じ、そこから必要以上にエアが吸われると判断した。その吸われるエアの量に合わせるためには燃料を多く供給しなければならない。しかし、スロットルを少し開けた瞬間に、スロットル・ストップ・スクリューの規制から解放されたスロットルバルブは、エンジンのバキュームによって燃焼室側に引かれるため、スロットルバルブの下を流れる空気の量が変化し、そのときにはガスが濃くなるので、不調・エンストとなる。

このバイクは1975年に発売されたCB125JXで、キャブレター製造か設計不良。スロットルバルブがスルットルシリンダーに対して、小さすぎたため、スロットルバルブとスルットルシリンダーのスライド部分から空気を吸う事で、アイドルから少しスロットルを開けたときの空然比が変わり、エンストする。

これの原因を究明した結果は、広報部を通じて開発責任者に連絡してもらった。後日、その方からお礼の連絡が届いたのはいうまでもない。

 

 

2020年2月27日木曜日

新型ハスラー試乗記 新型ハスラーは旧型以上に上質な走行感を醸し出していた



新型となったスズキハスラーだが、ライバルをどこに設定したのか、なんとなく分かった。それは、ホンダNワゴン!!!?。

ターボ仕様の新型ハスラー
新エンジンが搭載されたNA仕様
なぜかと言うと、運転席に座ってドアを閉めたときに「これまでとは違う閉まり音」を聞いたからである。

ただしこれで上質に出来ているとは判断できない。次に試したのはドアのガラスを少し下げて、内部のシステムに緩みをもたせたときにどのような閉まり音を発するかである。もし、ドアガラスを完全に閉めたときと変わらないドアの閉まり音であるなら、これは素晴らしいと言うことになるのだが(あるメーカーでは軽自動車でもドアの閉まり音には特別開発時間を掛けて造っており、条件を変えても不快な音は発生しない)、残念にも運転席右後方から聴きたくない音が出る。ストライカーに接するときの音なのか不明だが、開発者にもそのことは分かっているようだった。でも、だからどうだということでもない。

NA仕様のエンジンルーム。なんとなくまとまりがいいのは、CVTの副変速機付きを変更し、それによる油圧ポンプの変更や構造物の改良などが関係しているのだろう
スズキで評価できるのはアイドリングストップからのエンジン再始動で、他社のようにセルモーターではなく、オルタネーターをアシストモーターとして使用する、マイルドハイブリッド方式を取り入れていること。ただし、少し気になることは、停止時からのエンジン再始動で、僅かに「キュルキュル」と言う音が発生することだった。これは気になり始めると・・・アシストモーター(オルタネーター)とエンジンのクランクシャフトを繋ぐVリブドベルトが、僅かにスリップすることで発生しているとしたら、耐久性が気になるところ。

プラットフォームはやっと乗用車らしいものに変更された。新型アルトから使用されているHEARTECTで、それにボディ剛性を高める環状骨格構造と構造用接着剤の採用である
当然のことだが、新しいハスラーを造るとき、プラットフォームは現在販売しているアルトと同じことになるのは予想できた。と言うより、もっと早くアルトと共通のプラットフォームにしないのか、疑問に感じて、関係者にも話をしていたのだが、やっとそれが実ったと言えるだろう。

なぜ、アルトと共通のプラットフォームが必要かというと、まずひとつは共通とすることで、クルマの製造コストや製造時間が短縮できる。それだけではなく、ハスラーを走らせたときの挙動に大きく関係するのである。

走行感が上質になることは、いくら軽自動車と言っても無視したのでは、ライバルたちに大きく水を開けられる。ところが、これまでのハスラーは、リヤサスペンションの構造が、エブリイなどと同じようなコイルスプリングとトレーリングアームからなり、横方向の力を抑えるため、ラテラルロッドを設ける必要があった。このラテラルロッドは、サスペンションが大きく作動すると、左右方向へボディが動く状態で、乗り心地は悪い。特に乗用車のようにサスペンションが柔らかくストロークも大きい仕様では、不愉快な走行をリヤシートに座る乗員は感じることになる。

それを一掃させたのが他のメーカーではかなり前から採用していた、トーションビームサスペンションで、左右のサスペンションをプレス構造でまとめることにより、リヤサスペンションに加わる前後・左右の動きをコントロールできる。更にスタビライザーの装着も可能となる。

これによって、乗り心地は格段に向上する。早くプラットフォームの変更をやるべきだ、と唱えていたことはここにある。勿論乗り心地ばかりではなく、コーナリング性能も一段上のものとなって、安定性は大きく向上するのは当然だ。

NAエンジンは新開発で、環境性能を高めるために変更された

こちらはターボ仕様
新型ハスラーでもNA仕様とターボ仕様がある。違いはNAか過給かの違いだけではなく、シリンダーのボア・ストロークが違うのである。

変更したのはNA仕様の方で、目的は環境、特に燃費向上を狙ったものだと言う。大きくロングストロークとし、更にインジェクターをデュアルとするシステムに変更。ロングストロークによるピストンスピードの向上と合わせ急速燃焼を実現できた。また、圧縮比を高くしたが(トルク、出力、燃費も良くなるが)ノッキングが発生する前に素早く燃焼させることで、熱効率を上げた。

NAのエンジンは新設計となったが、旧エンジンよりも出力・トルクとも下がっている。出力は52ps⇒49ps、トルクは6.4kgm⇒5.9kgmなのだが、この数字をそのまま性能差と判断してはいけない。最大トルクだがその最大値を発生する回転数が違う。4000rpm⇒5000rpmに変わったことは性能として大きい。さらに、最高出力に関しては、最大値の数値ではなく、その回転までどの位の時間で達するかが重要。例えば、100psエンジンが有ったとして、その性能を発揮するまでに10秒掛かるエンジンと、80psのエンジンは5秒でその回転まで達するとしたら、80psのほうが速いということになるわけだから、一概に数字だけで性能判断は出来ない、ということ。更に過渡特性も重要であることを付け足しておきたい。

副変速機の採用を取りやめたCVT。これにより全体としてコンパクトとなり、更に伝達効率もアップした
CVTも変更された。これまでは副変速機つきとして、ワイドレンジを売り物にしていたが、今回から、すでに昨年から発売されているニッサン三菱(NMKV)の軽自動車で採用されているもので、副変速機を取り外したことにより、伝達効率が上がり変速時の不快な感じからも開放され、スムーズに加速・減速ができる。これも上質を感じさせる一因だろう。

また、スタートダッシュの速さにおいても、NA仕様はこれまでにない性能を発揮した。0⇒50km/h加速を普通にアクセル踏み込みでターボ仕様と感覚的に比較しても、NAのほうが速くないか?と感じさせる節もアル。これはスズキ特有のマイルドハイブリッド効果がかなりあるようで、使用されるISGと高性能リチウムイオンバッテリ-搭載により、モーターのアシスト範囲は大幅に向上。

これまでは85km/hまでだったものが、100km/hまでに拡大したことは、運転する上で、余裕と静粛性を期待できる。

逆に、アクセルの踏み込み量より、感じる加速感は強いようで、スロットルを開く角速度制御が(電子制御スロットルは当然で、フライバイワイヤーである)少し敏感すぎる結果かもしれない。もう少し穏やかでもなんら問題はないはず。

書き忘れていたことが2点有ったので追加します。
ひとつはハンドル操作が走行中でも重さを感じること。軽快感がなくなる感じで、狭いところをスイスイ走り抜けるのは、慣れが必要。これまでのスズキ車では感じなかった点である。そのため開発者から、「ハンドリングはいかがでしたか?」と言う質問に対し、ハンドリングを確認するまでに至らなかったことを伝えた。
もう1点は、クルマの幅をこれまで以上に感じること。走りながら、何がそれを感じさせるのか検証すると、ボンネットの左先端位置だけではなく、左右バックミラーの位置や形状も関係することが分かった。この2点については開発者もなんとなく分かっていたようで、もしかすると変更されるかもしれない。