研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2015年8月5日水曜日

数式を使わない、クルマの走行安定性の話・14/17


ルマン24時間で見た、ザウバーメルセデスC9の走り方に影響される

クルマの挙動安定性を見極めるポイントはエンジンブレーキ状態で判断できる、と確信を持って気が付くきっかけとなったのは、’91年のルマン24時間でのことである。タイムアタックしている予選のとき、フォードコーナーというクランクが続く最終コーナーで、ザウバーメルセデスC9の走り方が他のマシンと、大きく違うことに気が付いた。

グランドスタンド手前の、クランクがふたつ連続するようなコーナー(確かフォードコーナーという名称だった)で、突っ込みでのブレーキング開始と解除のポイントは他のマシンと同じ。では何が違っていたのかというと、ブレーキを解除して、次に来るコーナリングで、スルリと回頭するのがメルセデス。立ち上がりで、他のマシンがアクセルを踏むような操作をしても、メルセデスは何もしない。続くコーナーで、もちろんブレーキングはしない。

ルマンを走るザウバーメルセデスC9
 
他のマシンはリヤをホッピングさせながらブレーキングして、何とかコーナーを曲がる。立ち上がりではパワーを掛けすぎリヤが大きく流れる。でもメルセデスは何もしない。ただ単にエンジンブレーキ状態で、連続するコーナーを安定して駆け抜け、スムーズに立ち上がっていくのである。

その間のタイムはアクセルを踏みブレーキングする他のマシンと変わらない。なんたることか、このすごさは。これじゃマシンの傷みは少ないばかりか、燃費もいい。当然優勝する。

これは、その年の鈴鹿サーキットで行われた、SWC(その後WSPCに変わる)でも見せつけられた。予選・決勝ともカシオトライアングル(今は名称が違う)の、イン側にある山(コーナーをはみ出すので、その対策)に、一切乗らないのである。他のマシンはことごとく乗り上げて通過する。当然ボディは飛び上がり、タイヤやサスペンション、エンジンなど全てにダメージが加わる。でもザウバーメルセデスC9はインにもアウトにもはみ出ず、実にきれいに曲がっていくのである。

予選が終了した日の夕方、メルセデス広報が「とある場所で、ドライバーとの夕食会がありますから、参加しませんか」、という連絡があり、それはうれしい、というわけで、いそいそと会場へ。

同じテーブルには、その後パリダカなどに自作バギーで出場した、シュレッサーさんが同席。通訳をかってくれたのは、なんと現在のメルセデスジャパン社長である上野金太郎さん。

シュレッサーさんに、ルマンでの走り方、特にコーナリングの素晴らしさ、更に鈴鹿でのカシオトライアングルの走り方など、他のマシンとはまるで違うのだが、あれは何か特別なことがあるのか? という質問を投げかけると「いや、あれはドライバーの腕がいいからだ」と、お茶を濁すので。

そうではないと思いますがと言いながら、C9はエンジンブレーキでの安定性が高いので、アクセルを踏んでいないとドライバーの意とした挙動が生まれないほかのマシンと違って、ハンドリングはやさしく、普通に運転していれば自分の狙ったラインをトレースするからではないのですか、メルセデスC9は、と切り返すと「素晴らしい、そこまで分析しているジャーナリストは貴方だけだ」「まさにその通り、だから我々は常に優勝できる」というお褒めの言葉をいただいた。

その走りのすばらしさは決勝でも見せつけられた。ザウバーチームのメカニックが、ポールポジションを取ったマシンのメンテで、スタート前にミスをし、オイルラインを破損させてしまったのだが、短時間でケミカルを使って修復し、ピットスタートから優勝させてしまう実力に、ただ唖然とするばかりであった。

そして気になるのは、そのケミカルである。破損させた部分はエンジンかミッションオイルのパイプライン(その後ガソリンパイプ周りではという話も出ているが)で、当然オイル漏れが起きていたわけだから、通常のケミカル(接着剤)では漏れ止めにならない。彼らはいったいどんなものを使ったのであろうか。非常に興味が持てる。

スタート前5分から、メカニックが5人ほどで、1番ピットへ押し戻してからの作業であるから、時間はそれほどない。洗浄剤でオイル分を吹き飛ばしたところで、完全に脱脂することは不可能。染み出るオイル或いはガソリンに対してどう対処したのだろうか。燃料が漏れたとしたところで、同様の問題は起きるわけだから・・・

 

2015年7月15日水曜日

スズキの50ccGPマシン用3気筒エンジンの写真が・・・


私がこの業界に入った年は1967年(昭和42年)で、その年の秋に富士スピードウエイで最後の日本GPが開催された。

最終戦であったが、その中で話題となっていたのが、スズキが持ち込むであろう、50cc3気筒というエンジンを搭載したマシン。

ライダーは当然、伊藤光男さん。しかし、そのマシンが必要ない状態で、すでにチャンピオンが決定していたということなのか、この3気筒エンジンがメディアの前に現れることは無かった。

時は流れ、数十年後に、「オレの手元に当時の3気筒エンジンならあるよ」と、伊藤さんが言ったかどうか知らないが(この写真を撮影した、いわた厳氏は体調不良で入院したまま)、机の中を整理していたら、貴重な写真が出てきたので、紹介してみた。
 
 
 
 
 
 

詳しいことは一切わからないが、あるサイトによる情報だと、エンジン形式はRP、ロータリーバルブ吸入(見ればわかる)で、ピストンの径は28mm、ピストンピン径は6mmであるという。

2015年7月2日木曜日

数式を使わない、クルマの走行安定性の話・13/17


アベレージ120km/h、Dレンジ固定のエンジンブレーキだけで、ターンパイクを駆け下りる

一般では危険なので、やるべきではないが、箱根のターンパイクにおいて、下り坂をエンジンブレーキだけで(ブレーキペダルを踏まない)、100km/hのスピードが保てるクルマがあった。それは三菱ランサーセディアワゴンである。標準でこの性能であれば、ラリーアートエディションは、もっと行くであろうと考え、Dレンジ固定のエンジンブレーキだけで、アベレージを120km/hに上げた。この間、ブレーキは一切踏まず。遅い車がいれば追い越しをするためアクセルを踏み、速度を大きく上げる。140km/h以上にもなることもあるが、コーナーに入りハンドルを切ることで制動力が発生する。

これが当時発売されていた三菱ランサーセディアワゴン・ラリーアートエディション。走行性能の素晴らしさを体験したので、そのことを開発者に話をしたら、「性能の素晴らしさを引き出していただき感謝します」という言葉をいただいた記憶がある
 
そのままコーナリングを開始する。しかし、タイヤは悲鳴を上げることなく、さらにクルマの挙動は乱れることなしに、ドライバーの意志を忠実に表現する。なぜこんなことができるのか、ハンドルを握りながら考えてみた。すると、コーナーの手前では、ドライバーは意識をしない範囲で(構えるような感じで)、ステアリングを曲がる方向へ切っていることがわかった。

切るといっても、曲がる方向に力を加える程度で、実際にステアリングは回しているつもりはない。この、コーナーはどうかな、と思う瞬間の僅かなドライバーの挙動が、クルマの向きを変えるきっかけを作り、さらに これなら十分に曲がってくれる、という安心感を伝えるから、何事もなくコーナリングを開始して、終了してしまうのである。

助手席に乗っていたカメラマンに感想を聞くと「ブレーキを踏まないし、チラリと横目で速度計を見れば100km/hを超えているので、そりゃ、怖かった」という話だ。その感想は正しいが、クルマが悲鳴を上げていないし、急制動させるわけでもないのだから、それほど恐怖感はないと思うのだが・・・

後日、同じことを、T社のブ*ビス・T*D仕様でやってみると、とてもじゃないが 100km/hでも怖い。リヤが勝手に流れ出す。このT*D仕様は、サスペンション回りをガチガチに固めた、サーキット仕様で、マニュアルミッションである。そのようなモデルを持ってしても、三菱ランサーセディアワゴン・ターボ・ラリーアートエディションには対抗できないのである。

2015年6月26日金曜日

スズキの進化したAGS(オートギヤシフト)に乗ってみた。システムはMAGNETI MARELLI(マニエッティ・マレリ)社のものだ


マニエッティ・マレリはFIATの子会社のひとつ。F1などの電子部品を製造することでも有名。当然近年のフィアットAGSにもそのシステムは採用されているが、スズキのもののほうが世代が新しい。つまりドライバーに優しく、改良の融通も利く。

最初にスズキのAGSに試乗したのは、軽トラックのキャリイ。Dレンジでのアップシフトやダウンシフトは、多少違和感があるものの、ナンバーワンの制御だったが、セレクターを操作したときのマニュアルモードで、特にシフトダウンの反応が遅く、下り坂ではエンジンブレーキが効く前に、速度が急上昇して、使いにくかったということを、開発者に話しておいたら、アルトやラパンでは大きく進化していた。

アルトでは、スタートを穏やかにやると、アップシフト時の加速力変化はほとんど感じず、いやな感触はなかった。マニュアルモードでのシフトダウンは、まるでステップATのごとくで、スパスパと減速力に段のない心地良いもの。シフトアップは多少加速力に変化は生じるが、それほど違和感はない。5速からのキックダウンにおいても、スムーズに5⇒3へとダウンシフトした。やれば出来るもんである。

新型アルトでは、AGSの制御が大きく変わった。マニエッティ・マレリ社の方でプログラムをいじってもらうのだが、スズキの方でもこの部分に直接手が加えられるようになると、もっと確実な制御となるだろう。現在のAT制御プログラムの見本は、日本なのだから
 
ラパンでは制御が変わったのだろうか。女性ユーザーをターゲットに開発されたラパンである。

写真のラパンはCVT仕様。AGS仕様は価格的にも安いし、高速道路の巡航をやらないのなら、燃費もほとんど代わらない
 
そのようなことを考えずにアルトと同様に走らせて見ると、マニュアルモードでのシフトアップやシフトダウンでは変化を感じなかったが、Dモードでの走行では、なにやらアルトと違う部分を感じた。それは、アップシフト後のクラッチ接続である。

この感じで、アルトも良いと思うのだが、半クラッチ領域を増やしていると判断。開発者にその点を聞いてみると「確かにその通りです。女性が乗るということで、半クラッチ領域を僅かですが増やしています」という答えが返ってきた。

アルトやキャリイでもこのような制御で良いと思うのだが、キャリイは別としても(負荷が多いところで使用する場合があるので、クラッチの耐久性が・・・)、他の車種では、穏やかな感じのギヤシフトは最重要項目であると思う。

AGSについては、スズキに限らず、まだ熟成できていないと思う。クラッチの断続アクチュエーター部分、シフトのアクチュエーターなど、ハードウエアは、ほぼ完成しているだろうが、考え方を変えると、ミッションはシンクロ機構が必要なのだろうか、という考えに行き着く。

トラック(キャリイやエブリイなど)では、負荷の高い状況が持続すると、ミッションにもダメージが来るので、これまでのシンクロギヤは必要かもしれないが、乗用車系ではバイクのミッションのようにドッグクラッチミッションでも十分であるように感じる。

2015年6月12日金曜日

冒険ライダーの風間深志さんが撮影した、懐かしい写真が出てきた。第1回イーハートーブトライアル取材参加で写してもらった写真だ


下のサイトをクリックすると、1977年第一回からの写真ページが出てくる。イーハトーブ歴史観をクリックし、その第1回のスタート場所(ホンダが経営していたアクト牧場)最前列の向かって左から3人目が私である。

http://www.sukaheru.net/~ihatove/photo/index.html

あるときイーハトーブトライアルの企画と進行をやった万沢さんと成田さんがヤングマシン編集部を尋ねてこられ「岩手の山の中で2日間トライアルを開催するので、取材に来て欲しい」という話を持ち込まれた。

イーハトーブトライアルについては、大久保 力さんが著作した「百年のマン島」の497ページに書かれている。

ま、当時のバイク雑誌の中で、トライアルに造詣が深かったのは、1974年にSSDTへも参加した私一人。話が持ち込まれて当然だったかもしれない。

他の雑誌はというと、オートバイ誌であるという。オートバイ誌には親しい方がいたので、電話して取材するかどうか聞いてみると、前日の列車で出かけるという。そこで、ずうずうしくも同じ列車の指定席乗車券を一緒に購入してもらった。

そのオートバイ誌の編集部員は、その後、なんと冒険ライダー(バイクで南極、北極、エベレストなど挑戦で有名。現在、地球元気村というNPOを主宰する)となった風間深志さんである。

彼はレンタカーを盛岡駅前で借りたので、またもずうずうしく、宿泊先である七時雨山荘まで同乗させてもらう。盛岡の市街地を過ぎると、街路灯も一切ない真っ暗な砂利道。ひたすら山のほうへ進むとやっと七時雨山荘に到着した。

その七時雨山荘で、主催者からうれしい提案があった。なんと、成田さんが連絡用として持ってきたホンダのトライアルバイク(イーハトーブだったと思う)で、参加しないか、という話である。多少窮屈ではあるが、装具も成田さんのものを借用することで参加が決まった。

4ストローク125ccならガソリンの心配は必要ない。トルク、出力とも、ハードな走行には無理だが、あくまでもツーリングトライアルが主体だから、その心配はないという。

オフロードツーリングを楽しみながら、山中を駆け巡る。どこに立ち寄るか、どこにセクションがあるかは説明書が配られる。しかし、どのようなルートを走ればいいか、どこを曲がるのかについては、SSDTスタイル。赤いマークがあったら、その先を右に。青いマークがあったら、同様に左へ曲がる、というもの。

MCFAJのトライアルでも、公道を走る場合にはSSDTコースマーク方式を使っていたので、なんら問題ない。

オフロードツーリングを楽しみながら、途中のセクションをトライすることはとても楽しく、一部の緊張もあって、充実したイベントであった。

セクションをクリーンする。撮影はもちろん風間深志さん。トラブルもなく、楽しい2日間のイベントを味わった。これが一番大切なことだと思っている
 
途中のセクションでは、最初に書いたように、オートバイ誌の風間さんが写真を撮影してくれた。これは貴重なワンショットでもある。

右が主催者の成田さん。現在、日本のトライアル界を牽引する、成田 匠さんのお父さんである
 
セクションのある村に近づくと、各家庭からお子さんやお年寄りが道路に出てきて、手のひらタッチ(当時はハイタッチがなかった)、食べ物の差し入れなど、暖かくもてなしてくれたことが走馬灯のように脳裏に浮かぶ。

裕福な農村地帯ではないところでも、同様なもてなしを受けると、なんだか目頭が熱くなる。

第1回から数年にわたって、取材がらみで参加したが、なんだか物足りなくなって、あれから数十年ご無沙汰したまま。

3回目だったか、満を持して持ち込んだのは、SSDTで使用したオッサMAR(ミック・アンドリュース・レプリカ)。確か成績はかなり良かったと思うが、ガソリンが混合方式であるため、途中のGSで給油するときにも混合オイルを入れなければならず、面倒だったので、次回はTY250に決めた
 
ただ参加するだけではなく、1泊する普代村でチャリティなど、特別なイベントを設けても良いのではないか、という提案もしたが・・・

そして、回を重ねていると、このようなイベントも少しずつセクションが難しく、見ごたえのあるものになってしまう。つまり、参加するライダーの意向を聞いて、それに沿うようなセクションを作ってしまうのだが、それが問題発生の元となる。

有名なSSDTでさえ、一時期は世界選手権のチャンピオンが満足できるようなセクションが造られ、その結果、けが人が多く出てしまい、批判を浴びたので、現在は昔に戻して、誰もが楽しく走れる(といってもかなりタフなコースやセクションもあるが)ようなレベルにしている。クラシックトライアルバイクのクラスもあるようだ。

つまり、イーハトーブトライアルも、初心が大切。2日間での減点がゼロ、というライダーが複数居たってかまわないはず。そのためには、誰もが感激するような、特別な企画が必要ということである。

最後に参加したときには、漫画家の伊藤信(いとしん)さん(すでに故人)のアシスタント役だった。所有していたTY250での参加。いとしんさんはTY125
 
このように、最初がどうだったのか、ここに立ち返れば、大きな事故になるようなこともなかったと思うのだが・・・違うかな~

2015年6月2日火曜日

数式を使わない、クルマの走行安定性の話・12/17


エンジンブレーキ状態での挙動安定性が、ばかばかしい事故を防ぐ

クルマの姿勢安定性を見極める最良の手段は、アクセルを放した瞬間に現れると思 う。足で掻くこと(駆動力を路面に伝える)で安定性は高くなるのが普通。それの反対になれば不安定要素は非常に高くなると考えた。

エンジンブレーキ状態で何も起きなければ、ドライバーは僅かに起き始めるクルマの挙動を感じて(これが大切で、大きく挙動を乱したときにはコントロールは難しくなる)、それに対処するためのドライブテクニックなど必要なくなる。つまりパニックになる限界点がクルマ自身で高くなるようにできれば、例えドライバーが持つところのオーバースピードでコーナリングを開始し、勝手に危険を感じてその途中でアクセルを離しても、クルマが挙動を乱さなければ何事も起きないはず。

例えば、足の速い動物が崖を駆け下りるとき、自身が落下する速度よりも早く足を動かし、常に前進させる力が加わっているから、転倒することなく下まで到達できるが、それでも、崖の高さが高くなれば、疲労と落下速度に足を合わせることができなくなり、転倒することになる。しかし、これは自然界における、足(タイヤではグリップ)のグリップ限界を超えた状態で発生することを、それ以上の早さで動かすことでグリップを回復させることにより生まれる、と考える。とはいうものの、いくら足の速い動物でも、崖の途中で向きを変えることはできない。

それはつまり、前足のどちらかに対して、ブレーキが掛かるように作用させなければ、ベクトルを変化させることが不可能であるからだ。落下に近い状態から、右もしくは左にベクトルを変えるということは、落下速度よりも早く動かしていた足を止めることになり、グリップとコントロールは失われるため、転落に結びつく。これをクルマに例えればスピンになると思う。

では、クルマにおいてはどうなのであろうか。タイヤの持つ物理的なグリップの限界点は、タイヤをどのように動かすかでも大きく変化する。ポテンシャルを確実に引き出せるサスペンションとボディの設計が必要になることは明白。ところがこれが難しい。例えコンピューター上で理想的に動くサスペンションができたとしても、実際にクルマに取り付けて走らせれば、まるで違った動きを見せるからだ。

当然、設計思想どおりにクルマは安定した走行性を得られない。勢いサスペンションを固めてタイヤの動きを抑制したところで、もって生まれた素性は変わらず、クルマの挙動をダイレクトに感じる分、コントロールを失う前に、それをカバーできることで、いかにもクルマが良くなったかのように錯覚してしまう。しかし、実は良くなっていない。サスペンショ ンを固めて、コーナリングでのロールを制御すれば、どのクルマも全てタイヤの性能に依存することになり、クルマに合わせた特性も何も関係なくなる。

コーナリングでの安定性を確認する、最重要項目は、エンジンブレーキ状態で、いかに自然に曲がることができるか、それにつきるわけだ。これを高い次元で完成させることによって、ドライバーの疲労は少なくなり、ばかばかしい事故も少なくなると考えている。このような素晴らしい性能を持つクルマが、日本には存在した。それは2001 5月に発売となった、三菱ランサーセディアワゴン・ターボ・ラリーアートエディションである。標準モデルと同日に試乗会が行われ、標準モデルにおいても素晴らしい操縦安定性は、評価するに十分な性能である。(別に三菱の肩を持つわけではない。真実を伝えるだけである)強烈な真実は次号で・・・

2015年5月21日木曜日

コーナリングに強いクセを持つ、NC700Xのフロントタイヤをピレリ・SCORPION TRAILに変更して、問題を解決方向へ


NC700系におけるコーナリング(シビアではなく普通に角を曲がるときにも)の非常に問題となる曲がりこむクセは、これを乗りこなすライディングテクニック(テクニックというより、どう乗りこなせばいいかを気が付くことだが)は、それが出来ない人にとって、コーナーが怖くて、ワインディングがひとつも楽しくない、という現状が露呈する。

ネットで購入したピレリ・SCORPION TRAIL。ビッグエンデューロバイク用として開発したものだという。ドイツ製という表示がある
 
確かに、どのようなライディングスタイルなら、気持ちよくコーナリングを楽しめるのか、これを見つければ済むことなのだが、そう簡単な話ではない。

一言で言うなら、サーキットにおける排気量の大きなバイクを操るときの、半ケツ落しで膝を開き、ひじは突っ張らず、ハンドルを押さえないで、肩から入るスタイル。

このライディングフォームが自分のものになれば、楽しいワインディング走行となるのだが、しかし、それが出来る人は多くない。

先日のツーリングで、峠の頂上駐車場に、NC700Xを乗る若者が着たので「NCのコーナリングは楽しいですか?」と質問してみると、「コーナーでハンドルが切れ込んでくるので、それが怖くて、楽しくないです」という返事。

そこで、半ケツ落しのライディングで、ハンドルを押さえ込まないようにしながら、肩からコーナーに入るようなスタイルで、外側の足の太股でタンク(正式にはBox)を押さえつければ、自然にその足はフットレストを踏ん張ることになり、リヤが少しぐらい滑っても、振り回されることはないし、コーナーが楽しくなりますよ、と話しながら「よろしかったら、私の後ろについてきてもらい、どのようなライディングスタイルとなるか参考にしてください」、ということで、彼を引っ張って峠を下ってみた。

数十分後、止まって印象を聞いてみた。すると「あのような速度で片手運転でのコーナリングは、怖くて出来ません。しっかりと練習して見ます」という感想を述べてくれた。

このように、やはりXC700系のクセを御して乗る方が少ないことは明白。それを簡単に解決する手段は、NC750系に採用されているタイヤ、ピレリ・SCORPION TRAIL(スコーピオン・トレイル)に変更することである。

また、コーナリングばかりではなく、大型トラックが走ることで出来る轍跡の走行でもハンドルが大きくとられて、それを予見しながら走るのは疲れが溜まる。

どのような形でハンドルがとられるのか観察してみると、谷側(つまり低いほう)へ取られる(流れるとも表現する)のである。普通、このような路面状況であると山側に取られるはずなのだが・・・その理由は、タイヤの側面が強く当たることで、キャンバースラストが発生し、それは、山側にハンドルと持っていこうとする力が発生するからだが。

NC700系に標準装着されているBSタイヤは、ヒョットするとショルダー部分が柔らかく、それによる問題を引き起こす要因をNC700系が持っているということなのか。

ピレリ・SCORPION TRAILはドイツ製で、ビッグエンデューロ向けに開発したとある。BMWなどにあるバイクのことを言っているのだろうか。

フロントだけだがとりあえず交換して走らせると、タイヤ全体の柔らかさをハンドルへのショックで感じ取れる。更に、これは当然の用件なのだが、コーナリングでの巻き込むクセは大幅に低減。

更に、轍におけるハンドル流れも非常に少なくなった。普通に走らせられる状態なので、ツーリングバイクとしての性能は向上したと言える。

もちろん、半ケツ落しのライディングにも耐えることは、NC750DCTの1000km以上にわたる走行で確認できているので、疲労の少ないバイクに変更できたのがうれしい。

NC700系をお乗りの方で、コーナリングが不安定で楽しくない、と感じている方は、タイヤ交換の機会にぜひピレリ・SCORPION TRAILを選ぶことをお勧めしたい。ただし、まだ高価である。フロントの120/70ZR17で、ネットで安く購入しても22000円ぐらいはする。