REの実用化で世界ナンバーワンのメーカーであるマツダは、RX8以降のREエンジン開発がどうなっていたか、あまり外部には漏れてこなかったが、開発陣はあきらめていなかったのである。
そのRE技術は、デミオEVの走行距離を大きく引き上げる目的で、搭載の発電機を回すことに行き着いた。デミオEVを俗に言うレンジエクステンダーにしたのである。
その発電機用エンジンとして小型の1ローターREが開発された。排気量は300ccであるというから、かなり小さい。
新しくREを設計するなら、これまでやり残した技術を使って効率の高いエンジンを造り上げてほしいものであるが、話を聞くと既存の実績ある技術にこだわりがあるようなので、「それではマツダとしてブレークスルーにならないのでは」という話から、何をすべきなのか、おせっかいおじさんは、またまた一石ぶち上げた。
13B・REのときから気になっていたのは、ローターハウジングの内面処理。マツダREでは、鉄のタガを同時鋳込みし、その表面に硬質クロームめっきからポーラス処理(逆電流を流し、表面に無数の穴を作る。潤滑オイル保持が目的)をするというのだが、それは時代遅れもいいところ。
鉄のタガを同時鋳込みしたところで、熱による歪違いは処理できないことから、吹き抜け、潤滑不足など、さまざまな問題が発生する。
そこで、バイクメーカーでは既に卒業してしまったシリンダーの表面処理を行うべきである、と助言。
シリンダーが穴だらけで排気ガスもそこを通過する2ストロークエンジンでは、如何に熱歪を最小限にとどめ、耐焼き付き性を向上させながら、更に高性能とするためレーシングバイクでの潤滑オイル混合は200(ガソリン):1(オイル)という状況で使われた。
潤滑オイルが少なくても、熱歪の少ないシリンダーが完成すれば、性能は向上する。そこで採用されたのが、アルミのシリンダー壁面にニッケルとシリコンカーバイトをコーティング処理するというもの。
アルミ地肌に硬質クロームメッキのポーラス仕上げは、ヤマハが45年以上前に完成させていた技術。
その硬質クローム・ポーラス仕上げよりも強固な仕上げが、ニッケルとシリコンカーバイトをコーティングするもので、混合気を薄くして(ガソリンとオイルを混ぜてしまう混合ガスの場合、潤滑オイルも少なくなる)性能アップを狙うと、場合によってはピストンとシリンダーは焼き付を起こしてしまう。
鋳鉄スリーブ同時鋳込みや、硬質クローム・ポーラス仕上げでは、このような状況になると、シリンダーにもダメージが加わり、再使用不可能であるが、ニッケルとシリコンカーバイトをコーティングしたシリンダーは、シリンダー表面にダメージが加わらないほど強固で、焼きついたピストンを無理やり引き出し(ピストンの再使用はできないが)、シリンダーに焼き付いているピストンのカスを、耐水ペーパーで研磨処理すれば、再使用も可能なほどのものなのだ。
このようにタフな表面のローターハウジングが出来れば、オイル消費量を積極的に押さえ、効率のいいREが出来上がるはず。
マツダにとってのブレークスルーを確立させるには、このようなこれまでに経験していない技術の導入も重要。ついでにローターもアルミにトライしてはどうか、ということも述べておいた。REを直接動力として使うことがないわけだから、エンジンに対する負荷は遥かに少ない。それは、十分にアルミローターを使用できる要素があるのではないのだろうか。