研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2015年9月28日月曜日

ホンダエコマイレッジチャレンジで、これまでにも主催者側に提案してきたこと


それは、車検のときに合格しない、ブレーキ性能不足に対応することで、一般の参加者は認識が深く、制動不良はあまりないが、中学、高校など、これまでの参加があっても、先輩たちからマシンを受け継がず、独自の力で製造するようになると、詰めの甘さが出てしまうことが多い。

ホンダエコマイレッジチャレンジについては、名称が変わる前から全国大会のイベントに、出場、取材などで顔を出しているため、何が問題かの見極めは、その場においでになる関係者よりも深く知っているつもりである。

他に車両規則に問題もあるが(それはおいおい記載したいと思う)、それだけではない。ブレーキが効かないのは、事故の元だが、このブレーキも、実際の制動となると疑問は多い。というのは、ほとんどのマシンは後輪1輪だけにブレーキを持つ。そして、この1輪に制動をかけたところで、細いタイヤ、軽い車重、荷重の移動により後輪は簡単にロック。スリップ音すら出ない(経験上)。

ブレーキテストは傾斜版の上で行なう。スリップ防止パッドが張られた上で、勾配20%(11度)で停止できればOK
 
とは言うものの、基準は大切だから規則を作ったのだ。それでも、ブレーキテストを合格しないマシンとメンバーに対して、主催者側がどう対応するかである。

これまで主催者側に提案してきたこと、それは「日当などいらないから、効かないブレーキに対して、それを回復させる手段があるので、その作業をするためテーブル、ガソリン、リヤを持ち上げる角材、そして作業する場所などを用意してくれないか、その場での改良は私が対応します」。という企画書を数回渡したが、なしのつぶて。

ブレーキテストに合格しないマシンを見てみると、「昨日、学校での制動テストは問題なかったのですが、ブレーキゴムを新品にして会場へ持ち込んだら、制動不足でした」。という話も。

この状態ご覧ください。指定されたピット内は制動不良で対策しなければならないチームでゴッタガエシタ。市販車クラスや二人乗りクラスを除くと、10%近くに問題が発見されたような感じだ
 
そのようなことをやってしまった方に対しての説明では、工業高校の場合「クルマのメンテナンスはやったことがあるでしょう。そのときディスクブレーキのパッド交換直後は、制動不足を感じて、しばらく走らせると、効くようになった、という経験があると思いますが、あれは、当たりが付いていないからです。それは自転車のブレーキにも当てはまるのです」。と説明すると彼らは納得してくれる。

このように、リムとブレーキゴムの当たりが悪い場合には、ウォーミングアップエリアで、ブレーキを掛けながら走らせればいいのだが(ゴムくさくなるまで)、なかなかうまくいかないようだ。

そこで、主催者側が提案するとしたら、決まったエリアでのブレーキチューニング。ひとつは走らせている状態の再現となる。作業を行なうピットは決めているが、アドバイスする人は主催側でない私ぐらい。今年も3チームの方に助言を行い(私が手を汚したほうが確実で早いのだが)、そのチームは無事車検に合格。

中学生となるとせんせいのぎじゅつがものを言うことになるのだが、それがなかなかうまくいかない。その結果、わかり易い制動不良となって現れる。しゃしんの中学生たちは、何とか合格した
 
慣性ダイナモがあれば越したことはないが、それが無理なら、決められたピットの中で、エンジン始動とリヤタイヤを回しながらブレーキを掛け、エンストしないように(オーバーヒートにも注意)しながら数分ブレーキゴムをリムに焼き付ける。ゴムくさくなれば終了。

リムに熱で溶けたゴムが付着するので、制動力は高くなる。そのほかにやる手段としては、野球のバット滑り止め(以前は松脂だったが)を吹き付けること。ただし、これは塗り方が難しい。スプレーなので、闇雲にリムに向けて噴出しても、確実性がない。そこで、いったん滑り止めを容器に移し、それを刷毛でリムに塗る。

そして重要なのは、どの程度の効果があるのか。また、欠点はないのかの検証も必要。なので、そのうちスポーツ用品店で同製品を購入し、試してみたいと思う。

また、リムとブレーキゴムの摩擦が強くなるため、ブレーキロックの発生が懸念される。よって、この対策は十分にデーターを集めてから行うべきである。

50年以上前の話だが、効かないドラムブレーキのオートバイに、松脂を溶かして塗りつけた。効くようにはなったが、ブレーキに熱を持つと、溶けた松脂がブレーキライニングとドラムに張り付き、不都合の出た経験がある。

マシンの製造過程では、正しいブレーキキャリパーの取り付け方、ブレーキレバーの角度、長さなど重要なことを指導する。ホームページにある競技規則の中にアドバイスとして組み込むことは重要だと思う。他の項目にアドバイスとして入れても、それを熟読してくれないからだ。これを間違えると効きの悪いブレーキとなってしまう。

2015年9月13日日曜日

数式を使わない、クルマの走行安定性の話・15/17


タイヤの直進性に関係するのは、キャスター角を付けることで発生するトレールだが、それだけではない

キャスター角について考えると、普通に思うことは、角度を小さくするように立てると、ステアリング操作は軽くなること。最近のスポーツバイク、レーシングバイクは、どれもキャスター角が以前より小さく立っている。

これはコーナリングの限界点を上げるため、フロントにおいても太いタイヤを履くことで生じるハンドリングの向上が目的になる。ところが、これまでのキャスター角ではタイヤに多くの荷重がかかるだけでなく、ステアリング操作したときの路面に対する軌跡が大きく、ハンドリングは軽くできない。太いタイヤを履いてもハンドリングを軽くする(ヒラヒラ感を出す)には、キャスター角を小さく立てることが必要になったからだ。

単純にキャスターを小さく立てると、ハンドリングは軽くなるが、キャスターと関係するトレールが減少する。トレールが減少するとタイヤ(ホイール)のスピンドルに発生する、ホイールを前方に引いていくという力が減少する。これが減少すると直進安定性が悪くなる。

そこで、バイクの場合ではフロントフォークをステアリングヘッドに取り付ける、フォークブラケットのオフセット量を少なくして、必要なトレール量を確保する。或いはホイールスピンドルの位置を手前に持ってきてトレール量を確保する(スクーターなどに見られる)。ハンドルの切れ角は非常に少なくなるが、回転半径をそれほど要求しないスポーツバイクやレーシングバイクでは、ほとんど関係ない状態である。

つまり、タイヤ(ホイール/クルマ)の直進安定性(これで全てが決まるわけではない)を保つのはステアリングのセルフアライニング(走り出すことで自然に進行方向にハンドルが戻る現象)に関係するのはキャスター角よりも、それによって発生するトレールが大きく関係しているのである。

キャスターを取ることで、ハンドルを操作してから手放しすると、ハンドルが自然と元の位置へ戻るため、つい勘違いしてしまうが、これは、キャスター角を付けることでトレールが生まれ、ハンドル操作によってタイヤが向きを変えても、走り出すことでホイールスピンドル軸に対して引っ張る方向の力が発生し、自然に進行方向を向くからである。キャスター角によってタイヤが変形し、それが戻ることも関係しているだろう。そのため、タイヤ幅が広いとステアリングはかなり強烈に戻る。

キャスター角がゼロ或いは90度(つまり垂直)で、トレールだけが存在するものとして、スーパーマーケットにあるお買い物カートの転がり部分や、オフィスで使われる椅子の足にある、自在キャスターと呼ばれるものがある。

これの転がり具合をよく観察すると、必ずホイールは進行方向を向く(進行方向にあるわけではない)。上部に乗るものに引っ張られる形となるため、自由に何処へでも向きを変える構造と、オフセットされたホイールの軸は、常に引きずり状態で力が掛かり、結果的にホイールは進行方向を保つことになる。つまり直進安定性がひとりでに起こる。しかも速度を増せば増すほどその傾向が強くなる。

自在キャスターだが、この状態だと右へ移動している。キャスター角がなくても、そこにはバイクやクルマとは違う位置にトレールが出来上がる。そのため安定して転がる
 
ただし、ホイールが小さいと路面の状態をもろに受けて、速度を増せば増すほど首振り現象が多く発生するが、いきなり進行方向が変わることはない。それによりスタビリティは失われるが・・・

     

2015年8月24日月曜日

新幹線のカバー外れは、人為的ミスと断言できるが、それを起こさない物造りや取り組みはは可能だ


新幹線のサイドカバーが外れて、大きな事故になりそこなったのは、防ぐことが出来たのだろうか。もちろん出来た、と断言できる。

俗に言うヒューマンエラーによるトラブルだが、その原因は、ボルトの締め忘れ。しっかりと締めていなかったことが原因である。

トルクレンチなどを使う必要はなく(トルクレンチを過信してはいけない。それは、ネジの渋さもトルクに跳ね返るので、しっかりと部品が締め付けられていなくても、ネジを締めるだけのトルクが出てしまうからだ)、普通にレンチ(種類はあるが、ここではその説明を省く)で、しっかりと締めればいいだけ。

だが、その行為をやる人間は、時として確実性を失う。その原因のひとつは、いつもやっている行為のため、流れ作業が災いしたことによる。

作業の分担化もトラブルの原因。それは、自分は決められたことを集中して行うため、他人が犯しているミスを発見できないのである。

テレビの解説に出てきた人物は、新幹線の整備もやったことがあるそうだが、そのときには締め付けられているボルトに、ペイントマークをして、締まっていることが一目でわかる、また、マークがずれていれば、緩んでいることがわかる、という説明をしていたが、これはかなり古い整備のやり方。

その昔、自動車の下回り整備では、ペイントマークを付けることが当然のように行われていた。そのような規則があったわけではないのだが・・・

すると、締め付けや磨耗の点検を行っていないのに、流れ作業的なペイントマークが当然のように横行。結果として、走行中に大きなトラブルを引き起こすようになり、現在の規制では、ペイントマークをしてはいけないことになっている。

締め付けが確実であるかどうかが問題なので、それを目で見て判断するのは不可能といっても過言ではない。締め付け確認用のペイントマークは当てに出来ないからだ。

クルマの整備でもヒューマンエラーによるトラブルは日常茶飯事(そんなことはない、とお叱りを受けるだろうが、それが事実なのである)。

このようなことはメーカーが主催する試乗会でも起きる。確か以前にもブログに書いたと思うが、サスペンション周りのボルト点検で、締め忘れ部分があった。恐らく、そのボルトに取り組んでいた方は、締め付けを完全に行う前に、関係者から呼び出しを受け、すっかり締め付けを忘れたのだろう。

新幹線事故でも同様なことは考えられる。手だけで締めたところへ「お~い誰か来てくれ~」などの声がかかれば、それまで自分がやっていたことが中途半端な状態でも、つい頼まれたほうへ動いてしまう。

一目見て締め付けが完全に行われていないということを、その場の関係者に知らせる方法としては、取り外したボルトやナットの一部を、その近くに放り出しておく。また、取り付いているはずのボルトやナットがなければ、そこから記憶のヒントが蘇り、ネジを締めていなかったことを思い出す。

 

何だこの部品、と思わせる行為は重要なのである


クルマの場合では、ホイールボルト・ナットの締め付け不良、締め付け足らずが多い。つまり、仮締めによるトラブルである。

この場合も、見ただけで本締めされていないことがわかるように、ボルトやナットを全部取り付けず、一つふたつ仮締めしないで、床に放り出しておく。こうすれば、見ただけで、ホイールにネジがなく、そのネジが床に転がっていれば、本締めしていないことに気が付く。

新幹線で発生した事故を防ぐ、もうひとつのやり方は、セルフロックの付いたボルトやナットを使用することである。これを使えば、しっかりと本締めされていなくても、ボルトが脱落することはない。しかし、振動で部品が破損して、脱落という自体は・・・

セルフロックではなく、渋いネジの組み合わせを使うという方法もある。数十年以上前のメルセデスでは、下回りのネジにおいて、指先だけで軽く回せるような造りをしていなかった。

最初からレンチを使って、それもかなり力が必要で、それは、まるでピッチの違うネジを使っているかのような状態だった。

最初からレンチを使うわけだから、仮締め状態は作れないため、しっかりと本締め状態になる。そして、その締め付けトルクが多少たらなくても、ネジが緩むことはない。

どの方法を使うのがいいのか、コストや手間がかからないのは、関係するボルトやナットを全て取り付けず、一部を床に放り出しておく。これが簡単で一番確かだと思うが・・・ただし、整備をやった人が最終チェックも担当しないとダメ。それはなぜか、わかるだろう。

2015年8月19日水曜日

NC700XのフロントタイヤをNC750Xと同じピレリのSCORPION TRAIL(スコーピオン・トレイル)に変更して思ったこと


人間とは、実にわがままなものである、ということを自分の感情で改めて知る


 
ホンダNC700X(Xだけに限らないと思う)のコーナリング性能は、独特のクセというより欠点があり、それを克服しなければコーナーは不安で、特にタイトな下りでは足を出したくなるほどの巻き込み現象が出る。何も知らずに購入した人は気の毒である、というのが本音。

正直な話、最初は不安で、乗りにくくて、いやになってしまったが、思い切ったライディングスタイルを取ることで、難なくコーナリングが出来ることを発見した。

それは、リーンウイズのツーリングスタイルではなく(ツーリングバイクというコンセプトなのに)、お尻半分を曲がる側の内側に落とし、ハンドルへの腕は突っ張らず、肩から突っ込むように、ひじは軽く曲げるライディングスタイル。これでステアリング周りは自由になる。

ステアリング周りが自由になることで、バイクが持つ本来のスタビリティは確保され、多少フロントが取られても、リヤが滑っても、それすら不安材料とならない安定感が生まれる。それは、まるでレーシングバイクでサーキットを楽しく走らせているような錯覚さえ覚えるのだ。

尻がそれ以上落ちないように太ももの内側でしっかりとガソリンタンクを押さえつけながら(というより、ぶら下がってガソリンタンクを押さえつけてバイクを寝かせる感じ)、同じ外側の足はフットレストを強く踏みつける形になる。

なので、バイクに対するライダーの加重はリヤが滑ったときにリーンアウトと同じになり、そのため滑ってもライダーは置いてきぼりにならず、素直な走りとなる。ここの行為はこのライディングスタイルとすることで、自然に生まれる。

簡単な話、大型バイクのサーキット走行ライディング・スタイルである。両腕を突っ張らなければ、バイクが持っているスタビリティ、或いはタイヤのグリップも自然に確保出来るので、かなり攻め込んでも不安な感じは出ない。

このライディングスタイルを習得してから、コーナリングはかなりオーバーなアクションとはなるものの、不安な感じは微塵もなく、一種の楽しささえ覚え始めていたが、コーナー(小さなカーブ、交差点を曲がるときも)では、常にこのライディングフォームを取らなければならないため、長距離の峠道走行やツーリングでは疲労が溜まる。

つまり、尻を左右にずらす必要があるわけで、その都度、尻を軽く持ち上げ、移動させる行為は???

話しは変わるが、あるとき、峠の頂上で同じNC700Xに乗る若者と会ったので「コーナーは楽しいですか」という質問をしてみた。それの答えは「いや、よくわからなくて、ハンドルが取られて怖いです」、という返事。

そこで、おせっかいなオジサンは、ライディングフォームの話をした後「では、私の後についてきてください、そして、そのライディングフォームを少しでも真似て、習得してください」と話し、その若者を30分以上引っ張った。

下りのコーナーばかりだから、しっかりとしたライディングフォームを取らないと、少しも楽しくNC700Xを走らせられない。

少しは理解してもらえたかな、という距離を走って「いかがでしたか」と聞いて見ると「少しは理解できたような気がします。でも片手ばなしの運転は、当分出来そうにありません」という返事。

片手離し???そういえば、その若者のペースに合わせて走ったため、腰周りが痛くなったので、直線ばかりではなく、コーナリングの最中にも走りながらポンポンと腰を叩いていた気がする。

「いや~そんなつもりではなかったのですが・・・」。我々は、途中から左へ曲がるので、その若者とはそこで別れた。少しでもライディングフォームを習得して、楽しく走らせて欲しいものである。

標準で取り付けられていたブリヂストンは、コーナーを攻める必要が会ったので、かなりリーンさせていたことがわかる。交換したピレリは、そのようなことはないようだ
 
それでも、やはり年寄りには長距離ツーリングでの疲労は多いので、フロントタイヤを思い切って、NC750Xと同じ、ピレリのSCORPION TRAILに交換してみたのだが、しばらくすると、何のことはない、それまで使用していたBSのバトラックスを履いていたときのライディングが懐かしくなってしまった。

確かに、ピレリでは低速でも安定した走りなのだが、バイクを御するということからすると、そこには究極の楽しみがない。もはやわがまま?。

オークションでNC700Xのフロントホイールを購入して、時と場合に合わせて、タイヤを選んで走るか・・・、それはちょっと

2015年8月5日水曜日

数式を使わない、クルマの走行安定性の話・14/17


ルマン24時間で見た、ザウバーメルセデスC9の走り方に影響される

クルマの挙動安定性を見極めるポイントはエンジンブレーキ状態で判断できる、と確信を持って気が付くきっかけとなったのは、’91年のルマン24時間でのことである。タイムアタックしている予選のとき、フォードコーナーというクランクが続く最終コーナーで、ザウバーメルセデスC9の走り方が他のマシンと、大きく違うことに気が付いた。

グランドスタンド手前の、クランクがふたつ連続するようなコーナー(確かフォードコーナーという名称だった)で、突っ込みでのブレーキング開始と解除のポイントは他のマシンと同じ。では何が違っていたのかというと、ブレーキを解除して、次に来るコーナリングで、スルリと回頭するのがメルセデス。立ち上がりで、他のマシンがアクセルを踏むような操作をしても、メルセデスは何もしない。続くコーナーで、もちろんブレーキングはしない。

ルマンを走るザウバーメルセデスC9
 
他のマシンはリヤをホッピングさせながらブレーキングして、何とかコーナーを曲がる。立ち上がりではパワーを掛けすぎリヤが大きく流れる。でもメルセデスは何もしない。ただ単にエンジンブレーキ状態で、連続するコーナーを安定して駆け抜け、スムーズに立ち上がっていくのである。

その間のタイムはアクセルを踏みブレーキングする他のマシンと変わらない。なんたることか、このすごさは。これじゃマシンの傷みは少ないばかりか、燃費もいい。当然優勝する。

これは、その年の鈴鹿サーキットで行われた、SWC(その後WSPCに変わる)でも見せつけられた。予選・決勝ともカシオトライアングル(今は名称が違う)の、イン側にある山(コーナーをはみ出すので、その対策)に、一切乗らないのである。他のマシンはことごとく乗り上げて通過する。当然ボディは飛び上がり、タイヤやサスペンション、エンジンなど全てにダメージが加わる。でもザウバーメルセデスC9はインにもアウトにもはみ出ず、実にきれいに曲がっていくのである。

予選が終了した日の夕方、メルセデス広報が「とある場所で、ドライバーとの夕食会がありますから、参加しませんか」、という連絡があり、それはうれしい、というわけで、いそいそと会場へ。

同じテーブルには、その後パリダカなどに自作バギーで出場した、シュレッサーさんが同席。通訳をかってくれたのは、なんと現在のメルセデスジャパン社長である上野金太郎さん。

シュレッサーさんに、ルマンでの走り方、特にコーナリングの素晴らしさ、更に鈴鹿でのカシオトライアングルの走り方など、他のマシンとはまるで違うのだが、あれは何か特別なことがあるのか? という質問を投げかけると「いや、あれはドライバーの腕がいいからだ」と、お茶を濁すので。

そうではないと思いますがと言いながら、C9はエンジンブレーキでの安定性が高いので、アクセルを踏んでいないとドライバーの意とした挙動が生まれないほかのマシンと違って、ハンドリングはやさしく、普通に運転していれば自分の狙ったラインをトレースするからではないのですか、メルセデスC9は、と切り返すと「素晴らしい、そこまで分析しているジャーナリストは貴方だけだ」「まさにその通り、だから我々は常に優勝できる」というお褒めの言葉をいただいた。

その走りのすばらしさは決勝でも見せつけられた。ザウバーチームのメカニックが、ポールポジションを取ったマシンのメンテで、スタート前にミスをし、オイルラインを破損させてしまったのだが、短時間でケミカルを使って修復し、ピットスタートから優勝させてしまう実力に、ただ唖然とするばかりであった。

そして気になるのは、そのケミカルである。破損させた部分はエンジンかミッションオイルのパイプライン(その後ガソリンパイプ周りではという話も出ているが)で、当然オイル漏れが起きていたわけだから、通常のケミカル(接着剤)では漏れ止めにならない。彼らはいったいどんなものを使ったのであろうか。非常に興味が持てる。

スタート前5分から、メカニックが5人ほどで、1番ピットへ押し戻してからの作業であるから、時間はそれほどない。洗浄剤でオイル分を吹き飛ばしたところで、完全に脱脂することは不可能。染み出るオイル或いはガソリンに対してどう対処したのだろうか。燃料が漏れたとしたところで、同様の問題は起きるわけだから・・・

 

2015年7月15日水曜日

スズキの50ccGPマシン用3気筒エンジンの写真が・・・


私がこの業界に入った年は1967年(昭和42年)で、その年の秋に富士スピードウエイで最後の日本GPが開催された。

最終戦であったが、その中で話題となっていたのが、スズキが持ち込むであろう、50cc3気筒というエンジンを搭載したマシン。

ライダーは当然、伊藤光男さん。しかし、そのマシンが必要ない状態で、すでにチャンピオンが決定していたということなのか、この3気筒エンジンがメディアの前に現れることは無かった。

時は流れ、数十年後に、「オレの手元に当時の3気筒エンジンならあるよ」と、伊藤さんが言ったかどうか知らないが(この写真を撮影した、いわた厳氏は体調不良で入院したまま)、机の中を整理していたら、貴重な写真が出てきたので、紹介してみた。
 
 
 
 
 
 

詳しいことは一切わからないが、あるサイトによる情報だと、エンジン形式はRP、ロータリーバルブ吸入(見ればわかる)で、ピストンの径は28mm、ピストンピン径は6mmであるという。

2015年7月2日木曜日

数式を使わない、クルマの走行安定性の話・13/17


アベレージ120km/h、Dレンジ固定のエンジンブレーキだけで、ターンパイクを駆け下りる

一般では危険なので、やるべきではないが、箱根のターンパイクにおいて、下り坂をエンジンブレーキだけで(ブレーキペダルを踏まない)、100km/hのスピードが保てるクルマがあった。それは三菱ランサーセディアワゴンである。標準でこの性能であれば、ラリーアートエディションは、もっと行くであろうと考え、Dレンジ固定のエンジンブレーキだけで、アベレージを120km/hに上げた。この間、ブレーキは一切踏まず。遅い車がいれば追い越しをするためアクセルを踏み、速度を大きく上げる。140km/h以上にもなることもあるが、コーナーに入りハンドルを切ることで制動力が発生する。

これが当時発売されていた三菱ランサーセディアワゴン・ラリーアートエディション。走行性能の素晴らしさを体験したので、そのことを開発者に話をしたら、「性能の素晴らしさを引き出していただき感謝します」という言葉をいただいた記憶がある
 
そのままコーナリングを開始する。しかし、タイヤは悲鳴を上げることなく、さらにクルマの挙動は乱れることなしに、ドライバーの意志を忠実に表現する。なぜこんなことができるのか、ハンドルを握りながら考えてみた。すると、コーナーの手前では、ドライバーは意識をしない範囲で(構えるような感じで)、ステアリングを曲がる方向へ切っていることがわかった。

切るといっても、曲がる方向に力を加える程度で、実際にステアリングは回しているつもりはない。この、コーナーはどうかな、と思う瞬間の僅かなドライバーの挙動が、クルマの向きを変えるきっかけを作り、さらに これなら十分に曲がってくれる、という安心感を伝えるから、何事もなくコーナリングを開始して、終了してしまうのである。

助手席に乗っていたカメラマンに感想を聞くと「ブレーキを踏まないし、チラリと横目で速度計を見れば100km/hを超えているので、そりゃ、怖かった」という話だ。その感想は正しいが、クルマが悲鳴を上げていないし、急制動させるわけでもないのだから、それほど恐怖感はないと思うのだが・・・

後日、同じことを、T社のブ*ビス・T*D仕様でやってみると、とてもじゃないが 100km/hでも怖い。リヤが勝手に流れ出す。このT*D仕様は、サスペンション回りをガチガチに固めた、サーキット仕様で、マニュアルミッションである。そのようなモデルを持ってしても、三菱ランサーセディアワゴン・ターボ・ラリーアートエディションには対抗できないのである。

2015年6月26日金曜日

スズキの進化したAGS(オートギヤシフト)に乗ってみた。システムはMAGNETI MARELLI(マニエッティ・マレリ)社のものだ


マニエッティ・マレリはFIATの子会社のひとつ。F1などの電子部品を製造することでも有名。当然近年のフィアットAGSにもそのシステムは採用されているが、スズキのもののほうが世代が新しい。つまりドライバーに優しく、改良の融通も利く。

最初にスズキのAGSに試乗したのは、軽トラックのキャリイ。Dレンジでのアップシフトやダウンシフトは、多少違和感があるものの、ナンバーワンの制御だったが、セレクターを操作したときのマニュアルモードで、特にシフトダウンの反応が遅く、下り坂ではエンジンブレーキが効く前に、速度が急上昇して、使いにくかったということを、開発者に話しておいたら、アルトやラパンでは大きく進化していた。

アルトでは、スタートを穏やかにやると、アップシフト時の加速力変化はほとんど感じず、いやな感触はなかった。マニュアルモードでのシフトダウンは、まるでステップATのごとくで、スパスパと減速力に段のない心地良いもの。シフトアップは多少加速力に変化は生じるが、それほど違和感はない。5速からのキックダウンにおいても、スムーズに5⇒3へとダウンシフトした。やれば出来るもんである。

新型アルトでは、AGSの制御が大きく変わった。マニエッティ・マレリ社の方でプログラムをいじってもらうのだが、スズキの方でもこの部分に直接手が加えられるようになると、もっと確実な制御となるだろう。現在のAT制御プログラムの見本は、日本なのだから
 
ラパンでは制御が変わったのだろうか。女性ユーザーをターゲットに開発されたラパンである。

写真のラパンはCVT仕様。AGS仕様は価格的にも安いし、高速道路の巡航をやらないのなら、燃費もほとんど代わらない
 
そのようなことを考えずにアルトと同様に走らせて見ると、マニュアルモードでのシフトアップやシフトダウンでは変化を感じなかったが、Dモードでの走行では、なにやらアルトと違う部分を感じた。それは、アップシフト後のクラッチ接続である。

この感じで、アルトも良いと思うのだが、半クラッチ領域を増やしていると判断。開発者にその点を聞いてみると「確かにその通りです。女性が乗るということで、半クラッチ領域を僅かですが増やしています」という答えが返ってきた。

アルトやキャリイでもこのような制御で良いと思うのだが、キャリイは別としても(負荷が多いところで使用する場合があるので、クラッチの耐久性が・・・)、他の車種では、穏やかな感じのギヤシフトは最重要項目であると思う。

AGSについては、スズキに限らず、まだ熟成できていないと思う。クラッチの断続アクチュエーター部分、シフトのアクチュエーターなど、ハードウエアは、ほぼ完成しているだろうが、考え方を変えると、ミッションはシンクロ機構が必要なのだろうか、という考えに行き着く。

トラック(キャリイやエブリイなど)では、負荷の高い状況が持続すると、ミッションにもダメージが来るので、これまでのシンクロギヤは必要かもしれないが、乗用車系ではバイクのミッションのようにドッグクラッチミッションでも十分であるように感じる。

2015年6月12日金曜日

冒険ライダーの風間深志さんが撮影した、懐かしい写真が出てきた。第1回イーハートーブトライアル取材参加で写してもらった写真だ


下のサイトをクリックすると、1977年第一回からの写真ページが出てくる。イーハトーブ歴史観をクリックし、その第1回のスタート場所(ホンダが経営していたアクト牧場)最前列の向かって左から3人目が私である。

http://www.sukaheru.net/~ihatove/photo/index.html

あるときイーハトーブトライアルの企画と進行をやった万沢さんと成田さんがヤングマシン編集部を尋ねてこられ「岩手の山の中で2日間トライアルを開催するので、取材に来て欲しい」という話を持ち込まれた。

イーハトーブトライアルについては、大久保 力さんが著作した「百年のマン島」の497ページに書かれている。

ま、当時のバイク雑誌の中で、トライアルに造詣が深かったのは、1974年にSSDTへも参加した私一人。話が持ち込まれて当然だったかもしれない。

他の雑誌はというと、オートバイ誌であるという。オートバイ誌には親しい方がいたので、電話して取材するかどうか聞いてみると、前日の列車で出かけるという。そこで、ずうずうしくも同じ列車の指定席乗車券を一緒に購入してもらった。

そのオートバイ誌の編集部員は、その後、なんと冒険ライダー(バイクで南極、北極、エベレストなど挑戦で有名。現在、地球元気村というNPOを主宰する)となった風間深志さんである。

彼はレンタカーを盛岡駅前で借りたので、またもずうずうしく、宿泊先である七時雨山荘まで同乗させてもらう。盛岡の市街地を過ぎると、街路灯も一切ない真っ暗な砂利道。ひたすら山のほうへ進むとやっと七時雨山荘に到着した。

その七時雨山荘で、主催者からうれしい提案があった。なんと、成田さんが連絡用として持ってきたホンダのトライアルバイク(イーハトーブだったと思う)で、参加しないか、という話である。多少窮屈ではあるが、装具も成田さんのものを借用することで参加が決まった。

4ストローク125ccならガソリンの心配は必要ない。トルク、出力とも、ハードな走行には無理だが、あくまでもツーリングトライアルが主体だから、その心配はないという。

オフロードツーリングを楽しみながら、山中を駆け巡る。どこに立ち寄るか、どこにセクションがあるかは説明書が配られる。しかし、どのようなルートを走ればいいか、どこを曲がるのかについては、SSDTスタイル。赤いマークがあったら、その先を右に。青いマークがあったら、同様に左へ曲がる、というもの。

MCFAJのトライアルでも、公道を走る場合にはSSDTコースマーク方式を使っていたので、なんら問題ない。

オフロードツーリングを楽しみながら、途中のセクションをトライすることはとても楽しく、一部の緊張もあって、充実したイベントであった。

セクションをクリーンする。撮影はもちろん風間深志さん。トラブルもなく、楽しい2日間のイベントを味わった。これが一番大切なことだと思っている
 
途中のセクションでは、最初に書いたように、オートバイ誌の風間さんが写真を撮影してくれた。これは貴重なワンショットでもある。

右が主催者の成田さん。現在、日本のトライアル界を牽引する、成田 匠さんのお父さんである
 
セクションのある村に近づくと、各家庭からお子さんやお年寄りが道路に出てきて、手のひらタッチ(当時はハイタッチがなかった)、食べ物の差し入れなど、暖かくもてなしてくれたことが走馬灯のように脳裏に浮かぶ。

裕福な農村地帯ではないところでも、同様なもてなしを受けると、なんだか目頭が熱くなる。

第1回から数年にわたって、取材がらみで参加したが、なんだか物足りなくなって、あれから数十年ご無沙汰したまま。

3回目だったか、満を持して持ち込んだのは、SSDTで使用したオッサMAR(ミック・アンドリュース・レプリカ)。確か成績はかなり良かったと思うが、ガソリンが混合方式であるため、途中のGSで給油するときにも混合オイルを入れなければならず、面倒だったので、次回はTY250に決めた
 
ただ参加するだけではなく、1泊する普代村でチャリティなど、特別なイベントを設けても良いのではないか、という提案もしたが・・・

そして、回を重ねていると、このようなイベントも少しずつセクションが難しく、見ごたえのあるものになってしまう。つまり、参加するライダーの意向を聞いて、それに沿うようなセクションを作ってしまうのだが、それが問題発生の元となる。

有名なSSDTでさえ、一時期は世界選手権のチャンピオンが満足できるようなセクションが造られ、その結果、けが人が多く出てしまい、批判を浴びたので、現在は昔に戻して、誰もが楽しく走れる(といってもかなりタフなコースやセクションもあるが)ようなレベルにしている。クラシックトライアルバイクのクラスもあるようだ。

つまり、イーハトーブトライアルも、初心が大切。2日間での減点がゼロ、というライダーが複数居たってかまわないはず。そのためには、誰もが感激するような、特別な企画が必要ということである。

最後に参加したときには、漫画家の伊藤信(いとしん)さん(すでに故人)のアシスタント役だった。所有していたTY250での参加。いとしんさんはTY125
 
このように、最初がどうだったのか、ここに立ち返れば、大きな事故になるようなこともなかったと思うのだが・・・違うかな~

2015年6月2日火曜日

数式を使わない、クルマの走行安定性の話・12/17


エンジンブレーキ状態での挙動安定性が、ばかばかしい事故を防ぐ

クルマの姿勢安定性を見極める最良の手段は、アクセルを放した瞬間に現れると思 う。足で掻くこと(駆動力を路面に伝える)で安定性は高くなるのが普通。それの反対になれば不安定要素は非常に高くなると考えた。

エンジンブレーキ状態で何も起きなければ、ドライバーは僅かに起き始めるクルマの挙動を感じて(これが大切で、大きく挙動を乱したときにはコントロールは難しくなる)、それに対処するためのドライブテクニックなど必要なくなる。つまりパニックになる限界点がクルマ自身で高くなるようにできれば、例えドライバーが持つところのオーバースピードでコーナリングを開始し、勝手に危険を感じてその途中でアクセルを離しても、クルマが挙動を乱さなければ何事も起きないはず。

例えば、足の速い動物が崖を駆け下りるとき、自身が落下する速度よりも早く足を動かし、常に前進させる力が加わっているから、転倒することなく下まで到達できるが、それでも、崖の高さが高くなれば、疲労と落下速度に足を合わせることができなくなり、転倒することになる。しかし、これは自然界における、足(タイヤではグリップ)のグリップ限界を超えた状態で発生することを、それ以上の早さで動かすことでグリップを回復させることにより生まれる、と考える。とはいうものの、いくら足の速い動物でも、崖の途中で向きを変えることはできない。

それはつまり、前足のどちらかに対して、ブレーキが掛かるように作用させなければ、ベクトルを変化させることが不可能であるからだ。落下に近い状態から、右もしくは左にベクトルを変えるということは、落下速度よりも早く動かしていた足を止めることになり、グリップとコントロールは失われるため、転落に結びつく。これをクルマに例えればスピンになると思う。

では、クルマにおいてはどうなのであろうか。タイヤの持つ物理的なグリップの限界点は、タイヤをどのように動かすかでも大きく変化する。ポテンシャルを確実に引き出せるサスペンションとボディの設計が必要になることは明白。ところがこれが難しい。例えコンピューター上で理想的に動くサスペンションができたとしても、実際にクルマに取り付けて走らせれば、まるで違った動きを見せるからだ。

当然、設計思想どおりにクルマは安定した走行性を得られない。勢いサスペンションを固めてタイヤの動きを抑制したところで、もって生まれた素性は変わらず、クルマの挙動をダイレクトに感じる分、コントロールを失う前に、それをカバーできることで、いかにもクルマが良くなったかのように錯覚してしまう。しかし、実は良くなっていない。サスペンショ ンを固めて、コーナリングでのロールを制御すれば、どのクルマも全てタイヤの性能に依存することになり、クルマに合わせた特性も何も関係なくなる。

コーナリングでの安定性を確認する、最重要項目は、エンジンブレーキ状態で、いかに自然に曲がることができるか、それにつきるわけだ。これを高い次元で完成させることによって、ドライバーの疲労は少なくなり、ばかばかしい事故も少なくなると考えている。このような素晴らしい性能を持つクルマが、日本には存在した。それは2001 5月に発売となった、三菱ランサーセディアワゴン・ターボ・ラリーアートエディションである。標準モデルと同日に試乗会が行われ、標準モデルにおいても素晴らしい操縦安定性は、評価するに十分な性能である。(別に三菱の肩を持つわけではない。真実を伝えるだけである)強烈な真実は次号で・・・

2015年5月21日木曜日

コーナリングに強いクセを持つ、NC700Xのフロントタイヤをピレリ・SCORPION TRAILに変更して、問題を解決方向へ


NC700系におけるコーナリング(シビアではなく普通に角を曲がるときにも)の非常に問題となる曲がりこむクセは、これを乗りこなすライディングテクニック(テクニックというより、どう乗りこなせばいいかを気が付くことだが)は、それが出来ない人にとって、コーナーが怖くて、ワインディングがひとつも楽しくない、という現状が露呈する。

ネットで購入したピレリ・SCORPION TRAIL。ビッグエンデューロバイク用として開発したものだという。ドイツ製という表示がある
 
確かに、どのようなライディングスタイルなら、気持ちよくコーナリングを楽しめるのか、これを見つければ済むことなのだが、そう簡単な話ではない。

一言で言うなら、サーキットにおける排気量の大きなバイクを操るときの、半ケツ落しで膝を開き、ひじは突っ張らず、ハンドルを押さえないで、肩から入るスタイル。

このライディングフォームが自分のものになれば、楽しいワインディング走行となるのだが、しかし、それが出来る人は多くない。

先日のツーリングで、峠の頂上駐車場に、NC700Xを乗る若者が着たので「NCのコーナリングは楽しいですか?」と質問してみると、「コーナーでハンドルが切れ込んでくるので、それが怖くて、楽しくないです」という返事。

そこで、半ケツ落しのライディングで、ハンドルを押さえ込まないようにしながら、肩からコーナーに入るようなスタイルで、外側の足の太股でタンク(正式にはBox)を押さえつければ、自然にその足はフットレストを踏ん張ることになり、リヤが少しぐらい滑っても、振り回されることはないし、コーナーが楽しくなりますよ、と話しながら「よろしかったら、私の後ろについてきてもらい、どのようなライディングスタイルとなるか参考にしてください」、ということで、彼を引っ張って峠を下ってみた。

数十分後、止まって印象を聞いてみた。すると「あのような速度で片手運転でのコーナリングは、怖くて出来ません。しっかりと練習して見ます」という感想を述べてくれた。

このように、やはりXC700系のクセを御して乗る方が少ないことは明白。それを簡単に解決する手段は、NC750系に採用されているタイヤ、ピレリ・SCORPION TRAIL(スコーピオン・トレイル)に変更することである。

また、コーナリングばかりではなく、大型トラックが走ることで出来る轍跡の走行でもハンドルが大きくとられて、それを予見しながら走るのは疲れが溜まる。

どのような形でハンドルがとられるのか観察してみると、谷側(つまり低いほう)へ取られる(流れるとも表現する)のである。普通、このような路面状況であると山側に取られるはずなのだが・・・その理由は、タイヤの側面が強く当たることで、キャンバースラストが発生し、それは、山側にハンドルと持っていこうとする力が発生するからだが。

NC700系に標準装着されているBSタイヤは、ヒョットするとショルダー部分が柔らかく、それによる問題を引き起こす要因をNC700系が持っているということなのか。

ピレリ・SCORPION TRAILはドイツ製で、ビッグエンデューロ向けに開発したとある。BMWなどにあるバイクのことを言っているのだろうか。

フロントだけだがとりあえず交換して走らせると、タイヤ全体の柔らかさをハンドルへのショックで感じ取れる。更に、これは当然の用件なのだが、コーナリングでの巻き込むクセは大幅に低減。

更に、轍におけるハンドル流れも非常に少なくなった。普通に走らせられる状態なので、ツーリングバイクとしての性能は向上したと言える。

もちろん、半ケツ落しのライディングにも耐えることは、NC750DCTの1000km以上にわたる走行で確認できているので、疲労の少ないバイクに変更できたのがうれしい。

NC700系をお乗りの方で、コーナリングが不安定で楽しくない、と感じている方は、タイヤ交換の機会にぜひピレリ・SCORPION TRAILを選ぶことをお勧めしたい。ただし、まだ高価である。フロントの120/70ZR17で、ネットで安く購入しても22000円ぐらいはする。

2015年5月4日月曜日

不定期連載:数式を使わない、クルマの走行安定性の話・11/17


FWD車のフロントアライメントで、トーをアウトとする絶対的な理由

ヨーロッパ車における素晴らしく高速直進性のいいFWD車で、なぜそのようになるのか、これまで考えても見なかったが、あるとき、イタリアのフィアットを整備していて、とんでもなくおもしろい状況を発見した。それは、バックするとフロントの車高が低くなる現象である。前進方向では、この逆でフロントは持ち上がる。

なぜこうなるのかを考えながら、ホイールを外してみると、サスペンションアームに秘密があった。ストラットのそのサスペンションは、ロアアームが一見Aアームに見える。しかし、よく観察すると、そのアームは2本が組み立てられており、接合部にはゴムブッシュを使っているため、前後方向への自由度が非常に高い。

加速では前側にスピンドル軸が移動しようとする。しかし、ホイールアライメントのトーを僅かにアウト方向とすることで、タイロッドによりホイールは、トーがそれ以上アウトにならないよう規制を受け、その結果、フロントサスペンションを引き下げるような働きになり、速度を出せば出すほど、フロントは沈み込む力が加わり、高速安定性が高くなる。

この作用を無視して、フロントのトーをニュートラルかイン側にすると、非常にみっともないスタイルで走行することになる。つまり、タイヤの前側がつぼまる力を出すことにより、フロントは大きく浮き上がろうとするからだ。

高速道路で安定しやすい1代目、2代目ゴルフも同様で、アライメント屋で日本車のようなトーに調整されてしまうと、街乗りでは日本車のようにナチュラルでも、高速道路になると、ふらふら状態で、これも当時の日本車のごとくである。さらに、センターコンソールへ入れてある小物が、スタートの加速で手前に滑り出る。つまりフロントが大きく持ち上がっているのである。

ところが、このようになるゴルフでも、フロントのトーを僅かにアウトとすることで、高速安定性の素晴らしいヨーロッパ車へ戻るのである。もちろん、コンソールから小物は滑り出ない。

このようなことから、我が家にあるクルマは全て(息子のクルマも)、フロントホイールのトーを僅かにアウト側にしている。FWDではない、スズキのエブリイでさえ、昨年末の車検時にテスター屋さんでサイドスリップを計測したとき、スリップ量はアウト2mm(規制では±3mm)だったが、これは計算していたこと。

RWDでさえ、僅かにフロントのトーをアウトとすることで、走行安定性が高くなる。もちろん高速走行ばかりではなく、加速、制動時にも同じことが言える。

2015年4月24日金曜日

マツダCX-3に採用されたナチュラル・サウンド・スムーザーって何だ?その効果を検証する


CX-3に搭載されるエンジンは、なんと全てディーゼルだけ。そうは言っても、そのうちにガソリンエンジン搭載モデルの出現可能性は否定できない。つまり、マーケット次第だからである。

そのディーゼルだが、少しでも快適に、そして静かなエンジンとするため採用されたシステムが“ナチュラル・サウンド・スムーザー”と呼ばれるもので、ディーゼルに限らずガソリンエンジン(質量の関係で音は小さいから目立たない)でも発生する、コンロッドとピストンの、ある回転数と負荷による共振音を取り去ることが目的。

ディーゼルのノック音とも取れるカラカラ音だが、時と場合によっては騒音状態になるようだが、室内での騒音というより、室外、つまり周りに放射する音に気を遣って、ディーゼルの「うるさい」という悪い評価を、少しでも払拭させることが目的である。

本来、静かな「スカイアクティブ・ディーゼル」の更なる進化を目指したもので、動力性能に関係するものではない。

左はまだナチュラル・サウンド・スムーザーを押し込んでいないピストンピン。中央がナチュラル・サウンド・スムーザーで、これをピストンピンに圧入したものが右になる。わかり易くするため、一部をピンの穴から見せているが、本来はしっかりと入り込む構造
 
ピストンピンの穴の中に組み込むのだが、重量増による影響はどうなのだろうか。せっかく、ムービングパーツを軽く造り、気持ちよく回るディーゼルを造ったのだが、それは達成できているのだろうか。開発者に効くのを忘れた
どのような構造かというと、ピストンとコンロッドが共振するときに、どこかにダイナミックダンパーを取り付け、逆位相の振動を造れば、その造られた振動により、逆の振動はカラカラ音を打ち消すことになって、目的とする回転域と軽負荷時にピストン、コンロッドが暴れる音を軽減できるという発想である。

では、どこにそのダイナミックダンパーとなる装置を組み込むのかというと、それは、ピストンピンの穴部分である。

サウンド・スムーザーの構造は、中央部分が太くなっており、それをプレスでピストンピンに押し込むことで固定され、左右にはバネ鋼を介して、目的とする周波数帯を設定する小さな錘が取り付けられる。この錘がダイナミックダンパーの代わりをするのである。

このような周波数帯でカラカラ音を低減できるというが、その効果が目に見えているとはいえない
では実際にその効果はどうなのだろうか。これがなかなか難しい。当日は雨天ということもあって、走行ノイズが大きく、確認できない。また、完全に同じ仕様でなければ、これも判断が難しい。

そこでやってみたのが、停止してボンネットを開け、ニュートラル状態で、少しずつアクセルを踏み、エンジンからのノイズがどう変化するかテストすると、ある回転を境に(2500~3000)僅かだがエンジンからの音がいきなり消えることを確認できた。

それが、ナチュラル・サウンド・スムーザーの効果であるかどうかは不明だが、装備していない仕様では、そのような発見はなかったことを付け加えておこう。

CX-3は搭載されるエンジンの全てがディーゼルという設定だが、そのうちに・・・・・・
ディーゼルに限らず、エンジンからのカラカラ音は、ピストンコンロッドクランクシャフト、そして、クランクプーリーから放射される、ということを突き詰めた自動車メーカーがあり、それに対する対策を行ったことで、騒音を低減できた、という事例があるので、これを参考にして、更なる騒音対策をしてはどうか?ということをマツダの開発者にアドバイスしておいた。

2015年4月10日金曜日

巷に、まるでラリーカーを運転しているかのようなハンドルさばきが見られるのは何故だ


自動車教習所では、左折について、安全に曲がるには、教習生にどのように教えているのか。巷で見るドライバーの曲がり方からすると、十分でないような場面が多く出くわす。

左折では、出来るだけ道路の左側に寄り、左へ自転車やバイクが入ってこないようにするのが基本だが(それ以前の問題として、ブレーキを踏む前に方向指示器を出す、と言う訓練も十分に必要)、そうすると、素早いハンドル操作と、どの位置からハンドルを切ればいいかを、瞬間的に判断する必要に迫られる。

つまり、左へ曲がろうとする交差点で、どのくらい鼻先を交差点に突き出していれば、素早くハンドルをロックするまで切っても、左側を接触させないか、を知らなければいけない。

しかし、これをマスターするには、教習所内で脱輪、ポールへの接触を納得行くまでやらせる必要がありそうだ。

どのようにハンドルを切っていけば、クルマがどう曲がって、その判断が正しいのか、あるいは間違いなのか、教習生が自分で学習する必要があると思う。

集中できなくて、交差点を左へ曲がろうとすると、せっかく左側に寄って交差点に差し掛かっても、左の接触、脱輪を気にするあまり(特に電柱などが角にあると)、大回り、つまり一度右へハンドルを切って、左角に必要以上のクリアランスを作り、曲がることになる。果たしてそれでいいのだろうか。

自分一人の道路ではないので、曲がれればいいというものではないはず

左折でも交差点が広ければ、素早いハンドル操作は必要ないが、4m道路へ曲がるような場合は、素早いハンドル操作をするか(一度右へ切ってから左へという操作はしない場合)、ゆっくりとした速度で曲がれば、右に切ってから左へ曲がる、というような行為はやらないようだが、少しでも速度があると、どういうものか、一度右へ切ってから左へ曲がる、と言う行為が至るところで見受けられる。

左側を開ければ、そこにバイクや自転車が入り込む、という可能性を教習所で教えられているはずなのに、すっかり忘れる。

バイク乗りでもいろいろいるし、自転車ならなおさら。クルマと歩道の狭い間を走り、窮屈な思いをしてきたところに、広場(前方のクルマが右に寄ったため)が出来れば、ごく自然にそこへ行ってしまう。そして、次の瞬間、右側からクルマが押し寄せることになる。

でも、もし教習所で、どうして、何故を、徹底して教えられ、左折の場合は一度右へ切ってから左へ曲がるようなことをしてはいけない、と、教習所内のコースでも、ことあるごとに教え込んでおいたら、左折でポケット(隙間)など作るようなことはしないし、物理的に、一度右へ切ってから左へ曲がらなければならないような交差点では、十分に周囲(特に左後方)の安全を確かめるような習慣が身に付くはず。

そして、左折する場合、右へ切ってから、左へ切るな、と、息子にもさんざん言っておいたが、教習所を卒業してきたら(つまり免許を手にした)一度右へ切って、それから左へ曲がる、と言う習慣が身に付き、それを直させるのに時間が掛かった。つまり、教習所で矯正されていないということだ。

本人もこの曲がり方で何もいわれなかったと話していた。一度習慣になると、それを直すのは難しい。とにかく本人は、そんな操作をしている、と言う自覚がないのだから始末が悪い。

もっとひどい運転になると右折なのに、一度左へハンドルを切ってから右へ、という状況も見られる。

モータースポーツのラリーでは、コーナーを出来るだけ早く、そしてエンジン回転を保ったまま、ということを目標に、目的とする方向と反対にハンドルを切り、尻(クルマの後部)を振り出すきっかけの行為として行われる。

つまり、これはクルマを不安定な状態としながら、それをコントロールするための高度なテクニックであり、そのような状態での一般的な走行はありえない、というものだ。

そのあたりを十分に理解しないで、無意識の行為としてのハンドル操作を行うと、路面がスリップし易い状況では、クルマの後部が大きく流れ、コントロールが失われて事故を起こす。

さすがに雪国の人には見られない行為。降雪路でこのようなハンドル操作を無意識のうちにすれば、気が付いたときにはスピンして、事故になることは明白なのだから。

バイクに乗って、クルマの後についているとよくわかるのは、走行速度に関係なく、ブレーキを掛ける前に方向指示器を出し、左を開けずに左折をきれいに決めることの出来る人が、非常に少ないということ。

これは何とかしたいと常日頃思っているのだが・・・