研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2014年9月13日土曜日

新しいエネルギーが加わりバージョンアップされたスズキ・ワゴンR


ワゴンRがハイブリッド仕様になって登場した、といっても過言ではないシステムを搭載してきた。それは、オルタネーターをモーターにも使う、マイルドハイブリッド方式の採用。ニッサンセレナでは一部の仕様ですでに確立させているが、軽自動車となると、どこのメーカーも「只今考え中・・・」で止まっていた。さすが先を行くスズキ(ゴマ摺りではない)、それをやってのけた。


スティングレーに試乗。明らかに、軽自動車の高級モデル、と言える部類だが、価格が気になるところ

それまでも、エネチャージという名称で、減速時を重点にオルタネーターの発電を、搭載するリチウムイオンバッテリーや鉛バッテリーへ蓄える方式により、加速時のオルタネーター負荷を低減。それによってエンジンの駆動効率を高めて、燃費と動力性能を引き上げていた。

このシステムを更にバージョンアップしたのが、今回のS-エネチャージである。オルタネーターをスターターモーターにも使うことにより、アイドリングストップからの再始動では、セルモーターのピニオンギヤとリンクギヤ、更にギヤからの唸り音など、不快な音がなくなることで、非常にドレッシーなアイドリングストップを実現することとなった。

そして、そのモーター(12V1.6kW)を加速時のアシストに使用し、動力性能をアップするのではなく、燃費アップの方向へ使ったのである。そのことが非常に評価できる。

つまりアシスト力(リチウムイオンバッテリーの電力を使用)をプラスして、中速域の加速性能を大きく高めるには、このモーター特性では能力不足(基本的に小さすぎる。それ以上を求めるにはエンジンルーム内のスペースとコストが問題)。


S-エネチャージシステムは、これから他の機種へも採用する

最大トルクが大きくエンジン始動にも使える能力を持っていても、それがそのまま高回転まで持続しないのがモーターであり、アイドルストップからの始動用として、その性能を発揮させるとしたら、今の状態では両方がうまくいかない。

アシストモーターとしての実力は3000回転で4Nm(50ccバイク並み。プーリー比で見ると1/2ほど減速するので、中速域のアシスト用としては実用性が乏しい)という話であるし、モーターばかりではなく、バッテリーに対しても同様なことは言える。


ベルトは専用としたため2本使用。ISGベルトは強い駆動が加わることから、テンショナーはこれまでとは逆の位置に取り付けている

使用する部品の共通化は当然であり、その中で最大に効率を追求する。その結果、鉛バッテリー(最初の始動ではセルモーターを回し、アイドルストップからの再始動ではISGに電力を与える)とリチウムイオンバッテリーは、これまでのエネチャージシステムと同じもの、ただし、制御系が大きく違い、最大電流値も違うことから、それに耐えるものを新しく開発した。

このオルタネーター・モーターには、インバーターが組み込まれているので、部品として購入すると自作EV用に使える??と考えたのは間違いではないと思うが。

オルタネーターをアイドリングストップからの再始動用モーターとして使うと、その穏やかな始動状態に感動する。雑音がないからである。

更に良いところは、クランキングスピードがセルモーターで回したときの300回転から600回転となることで、走り出すまでのタイムロスを考えた場合、初速が速いことから、エンジン再始動と同時にアイドル回転を大きく立ち上げる必要もない。結果的に穏やかな感じが強くなる。

また、S-エネチャージでも走行中からアクセルを離して停止まで持ってくると、時速13キロほどでエンジン回転計は仕事をやめて、いきなりゼロを指すが、エネチャージを採用したばかりのときのワゴンRと違って、突き出し感(減速の強さが途中から少ないほうへ変化することで起きる)は発生しない。

これは、CVTと副変速機の制御を改良した結果で、同社のハスラー試乗のときに感じたため、開発者にそれとなく聞いてみると「実は、ワゴンRのマイナーチェンジから変更しています」とのこと。

何が変わったのかは、五感を研ぎ澄まして運転するとわかる。

エンジン回転計がゼロを指すか指さないうちに、エンジンからの唸り音と振動を感じる。つまりエンジン回転が上がり始め、エンジンブレーキを効果的に作用させながら、突き出しを発生しない状態を作り出しいるのである。

副変速機とCVTとのやり取りで、一番難しいのは副変速機のギヤをハイからローへダウンシフトして、スムーズにエンジンブレーキ状態を停止寸前まで持っていくことである。

突き出し感があったときには、CVTを最大にローレシオとし、そこまでは効果的に減速させるのだが、副変速機はハイギヤのまま。そのまま停止までやろうとすると、エンジンの回転はとんでもなく低くなってしまい、例えばその状態で再始動が要求されても、トルクコンバーターのロックアップを外し、そしてクランクをまわしての再始動は、どう見ても時間差が多くなって思わしくない。

それでは減速の途中でハイギヤからローギヤへダウンシフトしたらどうなるか。その切り替えを瞬時に行う必要があり、結果として、大きなショックが常に発生してしまう。もちろんトルクコンバーターのロックアップはされた状態でないと突き出し感が出てしまうので、そう簡単な話ではない。

これまでは副変速機をハイギヤのまま、トルクコンバーターのロックアップクラッチを切り離さなければならず、その結果、突き出し感が発生してしまっていたのだ。

それを排除するためには、乗員が違和感を感じないうちに副変速機のギヤをハイからローにシフトすればいいのだが、それがなかなか難しい。でも、スズキはそれをやってのけた。

副変速機をハイからローへシフトしたときにショックを感じないようにすれば良いわけだから、トルクコンバーターのロックアップクラッチを滑らせながら、副変速機のシフトを行うように改良。

ロックアップクラッチが滑っている最中(つまり半クラッチ状態)であれば、副変速機のギヤをハイからローへダウンシフトしてもショックは感じないのだ。ローギヤへのシフトが終了したら、エンジン回転がスムーズに上がるよう、素早くスムーズにロックアップを開始する。ただこれだけのことだが、それの見極めが非常に難しい。

これにより、エンジン回転計が動きを止めても、クランクシャフトは回り続けており、その最中にダウンシフトするので、ショックを感じさせないのだ。エンジン回転計が常に動くような造り方をすれば、ハッキリとわかるのだがな~。


アイドリングストップしている最中の不用意な再始動を防ぐため、ブレーキペダルのにストロークセンサーを取り付けた。これにより、より快適なアイドルストップは、更に安定した

アイドリングストップでも進化が見られた。それは、不用意な再始動を誘発しない制御を加えたこと。何が加わったのかというと、ブレーキペダルにストロークセンサーを取り付け、ペダル位置が決まった高さに戻らないと再始動しないというもの。これで、アイドリングストップした直後に、いきなり再始動したり、再始動したと思ったらストップしたり、などという、チグハグな行動はなくなった。

2014年9月6日土曜日

BMWのX4カタログに出ていた、奇妙なクランクシャフト


BMWが新発売したX4のカタログをしげしげと見ていて、4気筒エンジンなのに見たこともない形のクランクシャフト写真に、目が釘付けとなった。

 
カタログ写真なので、正確に判断するのは難しいが、それでもこれまでの直列4気筒クランクとは明らかに違う

これまでの4気筒クランクシャフトであれば、クランクピンの位置は1番と4番、2番と3番が一緒で180度ずれた位置にある。

しかし、どう見てもそのような造りではない。1番と2番、3番と4番が同じ位置にある。更によく観察すると、その1番と2番(3番、4番も)なんとなく位置(角度)が違うような感じも見える。

これもしかして270度クランク?


270度クランクを採用しているクルマは聞いたことがない。バイクではヤマハが10年以上前からこの270度クランクを市販の2気筒や排気量の大きな4気筒(YZF-R1)に採用し、ロードレースの最高峰であるモトGPマシンにもこの270度クランクを採用。ホンダも2気筒バイクのNC700,750には、この270度クランクを採用した。

2011年東京モーターショーに展示された、ヤマハ・モトGPマシンのクランクシャフト。4気筒なのにクロスプレーン型クランク。つまり、クランクピンの位置は90度づつずれた270度クランクとなる
 
では、なぜ不等間隔燃焼となる270度クランクを採用するのだろうか。ヤマハのサイトにはその理由が書かれているので、すでにご存知の方もいるだろう。

性能アップが目的ではなく、高回転まで回したときの素直さ、スムーズさを狙ったとか。それにより、ライダーは高回転を楽しめるので、余裕が出るからだという。

レースのマシンではそれが当然だが、ストリートバイクではどのような利点があるのだろうか。それは、燃焼による鼓動が低速から中速に掛けて味わえるからで、バイクを乗る人間の気持ちに訴える十分な要素を持つ。

確かに、2気筒であると時速100キロからの追い越し加速でも、しっかりと鼓動を感じさせる挙動が見えるのだ。

では、何故そのようなことになるかというと、それは、クランクシャフトの回転位置がどこにあっても、必ず動いているピストンが存在することに要因があるという。3気筒や6気筒では当然のことだが。

普通に180度クランク構造では、上死点、下死点は全てのピストンが同時になるため、必ず停止する状態が出てくる。しかし、270度クランクとすれば、常にどのピストンかは動いており、それが気持ちよさにつながるのである。

こう考えると、2リッター4気筒ターボのX4(それ以前から?)は、とにかくエンジンがスムーズで、とても4気筒とは思えない静けさがあるのはうなずけるのだが。

燃焼間隔が乱れるため、自然吸気エンジンであると重要な、排気脈動を使う性能アップは無理だが、ターボが装備されているので、それも関係ない。

6気筒仕様もあるため、4気筒2リッターであると、エンジンルームの換気性能は高い。更に鼻が軽いため、普通に走らせる中でも、楽しさが味わえる

アイドリング中にマフラー出口で排気音を聞いてみたが、ターボにかき回されるので、特別な音ではなかった。

この点について、日本のBMW広報へ聞いてみたが???という感じ。何故何故問答は、BMWのエンジン開発担当でもなければ無理かもしれないな。でも知りたい。日本の自動車メーカーのエンジン開発担当は、このようなことを知り尽くしているのだろうか。
新型X4。SUVとハッチバックセダンを融合させたような感じ。走行性は非常に自然で、かつ気持ちがいい。この感じでセダンを作って欲しいと思ったのは、私だけではないだろう
 

2014年8月30日土曜日

1972年、アメリカ・デイトナ200マイルレースのプログラムが出てきた


倉庫の片づけをしていたら、こんなものが出てきた。たぶんかなり貴重だと思う。それは、1972年のアメリカAMAシリーズ第1戦となる、デイトナ200のプログラムだ。

実は1972年に会社(八重洲出版モーターサイクリスト編集部)を2ヶ月休職して(当時の社長が「海外を見て来い、休職してもかまわないぞ」と言っていたので)、当時アメリカへ遊学していた実兄を訪ね、アメリカ大陸往復横断(LAから出発してLAに戻る)をクルマで行った。

当時はガソリンもエンジンオイルも非常に安価で、排気量の大きなフルサイズカーでも、燃費を気にする状況にはならなかった。クルマは中古のフォードギャラクシー289(約4800ccで、当時では小さい部類)MTを使用。でかいので、身長180cmの我々でさえ、その中での就寝も可能だった。

余計な話はこれくらいにして。アメリカ大陸を計画なしに横断してもつまらないから、2月のデイトナ500(4輪のストックカーレース)、3月のデイトナ200(バイクのレース)をそれぞれ正式にプレスパスを取得し見に行くことは決めていた。その途中では、かなり面白いことが起きてしまっていたのだが、その話は長くなるので割愛。

アメリカ東海岸ではデイトナ200の前に、ホンダの研究所に勤務し、CB750開発・テストライダーとして活躍した後、アメリカのペンシルベニアへ渡った菱木哲哉氏に会いに行った。菱木さんはアメリカ東海岸のクラウスモーターサイクルにヘッドハンティング(当時はこんな言葉あったかな)され、渡米していたので、そのクラウスを尋ねると、菱木さんはクラウスに不在。

社長は「そんなやつ知らん」と、取り付く島もない。でも社長の奥様が「彼・マイク(当時マイク・ヘイルウッドにあこがれていたので、マイク菱木と改名)はニュージャージーのウイッギーホンダにいる」とのこと。

どうやら、日本での話と、現地アメリカでの話が違いすぎたようで、チャンスを見て家出???したらしいのだ(クラウスの奥様には話をしていたが)。

その菱木さんもウイッギーホンダでメカニックをやりながら、生活しており、そこを尋ねたら、「自分達もデイトナへ行きジュニアクラス100マイルに参加する」とのこと。ただし、菱木さんはメカニックとして同行するという。ウイッギーホンダを選んだいきさつは、長くなるのでこれも割愛。

このデイトナ200マイルでは、エキスパートクラスが200マイルで、ジュニアクラスは100マイル。他にノービスクラスがありこれは76マイル。

そして、このノービスクラスには日本人が出場していた(翌73年には、故隅谷守男氏が200マイルに出場し6位)。ヤマハ市販レーサー250TDⅡでエントリーする尾崎トシヒコさんという方で、マシンコンディションが悪く完走でレースを終わったが、後日、勤務していたバイクショップからの帰りにフリーウエイで交通事故に会い、帰らぬ人となってしまった。

ノービス76マイルレースに出場したのは、ゼッケン28の尾崎さん。マシンのセットアップがうまくいかず、完走でレースを終わった。後日、交通事故でお亡くなりになると言う、悲劇が・・・
 
そのデイトナ200には、ヨシムラがアメリカ進出を計画し、拠点作りのために初めて正式参加するが、表には出ずクラウスモーターサイクルのバックアップという形だった。

ライダーはロジャー・レイマンとゲーリー・フィッシャー。G・フィッシャーが乗ったマシンはホンダコレクションホールにある。成績は、どうだったか忘れた。
G・フィッシャーが乗ったマシン。ホンダコレクションホール所有。写真は今年のモーターサイクルショーで、ヨシムラのブースに展示されていたもの


このときに200マイルで優勝したのはドン・エムデ(空冷のヤマハ市販レーサー350TRⅢ)。メカニックは60歳は過ぎているだろうと思われる方が一人だけ。レース途中の給油ではヘルパーが付くけれど。

このメカニック氏がやっていた作業は、考えられないこと。それは、燃焼室を削って形状を変える加工。旋盤なんていうものはないから、リューターと回転ヤスリで少しずつ。圧縮比だけを下げるなら、ヘッドガスケットを2枚なんていう方法もあるが、それではダメなのだろう。2気筒だから左右の燃焼室を均等に手で削るのは、神業だが、でもそれをやってのけた。

プラクティスで少し走ってはまたヘッドを外して削る。これを4~5回ほど繰り返していたと思う。

スプリントレースではないので、とにかく乗り易くて燃費がよく、最後まで走ることが重要だから、この方法で改良したのだろう。で、とにかく優勝したのである。すごい

ゼッケン5がR・レイマン。10がG・フィッシャー。優勝したのはゼッケン25のドン・エムデ。メカニックのすごさにはただ脱帽。これほどのことを現場で、しかも自信を持ってやれる方が他にいるだろうか
マイク菱木さんが面倒を見たウイッギーホンダのマシンは、ヨシムラのキットを組み込んだCB750。ライダーはジェームス・クリスチアノ。予選はそこそこだったが、決勝グリッドに並んで最終チェックのとき、ヘルパーをやる同店のマネージャーが、オイルクーラーのパイプをねじ切ってしまい、あっけなく終わり。

ゼッケン19番がウイッギーホンダのジェームス。普段はウイッギーホンダでメカニックをやっている。チョイト頼りないが
そんなこんながあったデイトナ200マイルのプログラムである。

2014年8月11日月曜日

ホンダNC750X・DCTの試乗記で忘れていたこと


その忘れていたことは、アイドルアップとクリープ走行のような現象についてである。

クルマでもそうだが、ツインクラッチの制御は難しい。発売された当初のツインクラッチ(日本ではアウディが最初)では、チグハグな制御が目立っていたのだが、現在ではそれもない。指摘されたことを謙虚に受け止めて、改良を重ねてきたからである
 
700のDCTではこのような状況での走りを体験しなかったので、把握しなかったが、やはり距離が多い状態であると、普段、まず発生しない問題の走りが出てくる。イレギュラーは事故に結びつくので、改良の余地があると思う。

その問題の走りは、エンジンが中途半端に冷えているときに起きた。冷却水の温度は、エンジン始動後のアイドルアップのマップを要求する状況にあったのだろう。走り出して減速しようとアクセルを戻したが、思うように速度は低下しない。もちろん低速状態での話し。

いくらギヤミッションのATであっても、思うように速度調整が出来ないのは、一瞬あせりに。そのときには、「アッアッアッ、速度が落ちない」。いったい何が起きたのか見当も付かない状態だった。

そりゃそうだ、アクセルは完全に戻しているわけだから、ブレーキを使わなくても速度が低下し、最終的には停止にならなければいけない。なのに10~20キロほどの速度を維持したがる。徐行状態からのUターンだったので、慌ててフロントブレーキに手がかかったが、路面がドライであったため事故にはならなかった。

何故このようなことが起きたのか、しばらく考えながら走行したが、そこでの判断は、冷却水温度の低下とエンジンオイル温度の低下がリンクしていないためである、との結論だ。

どういうことかというと、走行後であれば、ラジエターを持つ冷却水の方が冷えるのは早い。再始動のときには、その冷却水温度によって、冷間時始動と同様にアイドルコントロールバルブが開き、燃料が増量され、アクセルを完全に戻していても、その状態に関係なくアイドル回転は上がる。

これが、エンジンオイルも冷えている状態であれば、オイルのフリクションによって勝手な行動が表に出ることはないのだろうが、前記のような症状が出たときには、エンジンオイルはまだ温まっている状態。つまりフリクションは小さい。

エンジン回転が上がっているという条件だけを取れば、バイク側の判断は「ライダーはアクセルを開き、走行を要求している」ことになるため、クラッチは接続を切り離す行為をしなかった。

これを防ぐには、アイドルアップが作動中で1速、2速ギヤで走行中(トップギヤからのダウンシフトでも)、アクセルを全閉した場合は、クラッチを切るという指令が必要で、そのようなことになれば問題も起きない。

また、マニュアルクラッチ仕様と違って、エンジンオイル温度センサーが取り付けられているので、そこからの情報を確実に利用すれば、冷却水温度が低下して、アイドルアップしたい条件であっても、エンジンオイル温度がそれを認めないような制御を組み入れれば、このような「暴走」とも取れることにはならないはずだが。

2014年8月8日金曜日

三年前と何が変わったのだ。津波被害の地を再度訪ねる


3年と3ヶ月前の2011年5月連休明け、大震災と津波の被害に遭った地域で、自治体と関係なく個別に活動する組織、“地球元気村”(主宰、風間深志・冒険ライダー)が立ち上げたベースキャンプを拠点に、延べ10日間ほどのボランティア活動に参加させてもらった。もちろん自給自足、テント生活である。

そのとき、「これから、ここに住む方たちはどのようなことになるのだろうか、気持ちが張り詰めていないと、前に進めないのではないか。その張り詰めている気持ち、心は、いったいいつまで持つのだろうか」、など考えるときが多かった

被災に遭っていない私は、本当に無責任な感情を抱いてしまった。それは、元の街並み、そこに住まわれる方がた、走る自転車や自動車など、ここに住む人たちの、普通の生活というものを知らないからだと思った。
このお宅は海岸から僅か50メートルほど。当然津波の被害に遭われたが、丈夫な家の作り方で、傾きもせずしっかりと建っていたため、ご主人は修理して住みたかったのだが、奥様がここにはもう住めない、ということで引越しの手伝いをした
 
引越しの手伝いをやったお宅を訪ねてみたが、すでに家はなく、倉庫が修理されて使われていた


御用聞きボランティアであるから、そのお宅にお邪魔して、一番やって欲しいことから手を付けるのだが、御歳より夫婦だけが住まいとしている(津波での被害は家屋だけだったとこは、幸いかもしれない)お宅では、お二人ともほとんど口を利かない。そのことに対するケアは残念だが我々では無理だった。

一日の活動が終わり、そのお宅を後にするときでさえ、ご夫婦は、特別な感情を見せなかった。気持ちがどこかへ飛んでいってしまったかのようだった。或いは、一緒に住んではいないが、子供や孫が、津波の被害で亡くなってしまい、ただ呆然として、今を生きていることで精一杯だったのかもしれないが、そのことに対して、根掘り葉掘り聞くものではないので、知る由もなしである。

子供たちが集まる場所にも出かけてみた。そのときには、楽しそうに振舞う子供の様子を見て、「大人にとっては、清涼剤になるな」と思っていたが、自宅に帰り、数週間たって「ハッ」と気が付いた。

あの、子供たちの振る舞いは、「周りの大人に気を遣っていたのだ」、ということ。この瞬間、思わず涙が自然にあふれた。この原稿を打っているときでさえ、うっすらと涙が出てしまう。

彼らは、精一杯の気持ちと、そして行動で、先の見えない災害に打ちひしがれた大人に、その現実を忘れて欲しくて、気を遣いながら振舞っていたのだ。これに気が付いたのである。けなげな子供たちの振る舞い・・・

ただし、被災地を再び訪れたとき、とんでもない話を、ある方から伺うことになった。それは、当時幼かった子供たちが、被災状況を見て、大人たちに気を遣ったまではよかったのだが、その後、3年以上経過しても、常に大人の顔色を伺いながら行動や、言葉を選んで話をし、子供本来の行動をしなくなってしまった、という内容。

子供は、本来、大人(親)の顔色を伺いながら行動することはなく、自分勝手なわがままとも言える発言などで、周りの大人たちを困らせ、それを正してもらい、また、関係する大人たちも、それによって成長するのだが、それがない。

常に「いい子」状態で、これからあの子達はどうなるのだろうか、という心配をされていた。もちろん国や自治体が、被災地の子供たちの心のケアをやったという話は聞いていない。

心が育っていない大人になったとき、果たして周りを牽引していくことが出来るのだろうか。気になる状況である。
津波で流された志津川の駅。僅かに駅舎が残るだけ
 
その志津川の駅前を訪れた。駅舎はもちろん線路も何も変わっていない。変わったのは雑草がはびこる状態だけ。3年以上が経つのに人が住むという、ごく当たり前の生活が見えない。低くて役には立たないと思われる堤防工事だけは各所で手をつけているが、今回の津波はその堤防の3倍ぐらいの高さだった。低い堤防は何の意味があるのだろうか


2014年7月28日月曜日

NC750X・DCTを切る 700で問題だったコーナリングの癖はどうなった?・・・

コーナリング特性が大きく問題視されていたNC700シリーズに代わり、NC750シリーズが新発売された。果たして、コーナリング時の巻き込む癖は、どのようになっていたのか、1000キロ以上のツーリングに使用し、DCTの変速を含め、様々な道路状況において特性を判断できたので、その走りを分析してみた。

ハンドリングの違いは直ぐに掴めた

NC750X・DCTで1000キロ以上走ってみると、いろいろなことがわかってくる
 
青山のホンダ本社、地下駐車場から出る上りの右コーナーをゆっくりと走る最中に、700とは完全に違ったハンドルの感触を把握できた。

それまでの700であると、上り坂で駆動を与えているのにハンドルは巻き込み状態となって、切れ込まないように腕で突っ張りながら走らせたものだが、それがほとんどない。何がいったい変わったのだろうか?広報部ではタイヤを変更したことで・・・といっていたが。

こちらがピレリのSCOPION TRAIL。名称からしてもエンデューロタイヤだが、ロードの性能もすごい


700シリーズに装備されていたBS。タイヤ形状はピレリと変わらないように見える。パターンは当然違うが・・・

 

では、排気量は何故700から750にしたのか。それは大型バイクの教習車としては750でないといけない、という決まりがあるということで、自動車教習所での使用を考え、急遽750を作ることにしたのだ。ただし教習車として、700のコーナリング特性であると、教習所内での転倒事故が勃発する。これは当然の話で、半尻落(ハンケツオトシ)しで肩から突っ込むようなライディングをしないと、安定してコーナーを走れないからだ。(フロントタイヤのサイドをつぶす、ということらしい)

それは、まるでタイヤの空気圧が極端に低下しているかのようで、当然、交差点の角でも同様なライディングをしないと、速度に関係なく、スムーズに走れず、“オットット”状態となって、おっかなびっくりの連続。これでは使えないわけだ。

ただし、この半尻落(ハンケツオトシ)しで肩から突っ込むようなライディングが出来るライダーにとっては、忙しく右・左へと尻の位置を変えなければならないが、この上ない素晴らしいコーナリング特性を味わえる。

このスタイルを取っていると、フロントが小石や木の葉に乗り上げ、少しぐらい滑りを発生しても「アッそ」てな感じで特に緊張することなく、ハンドリングも乱れない。それは恐らく、ハンドルを押さえつけるようなライディングにならないからだろう。バイクの持つスタビリティが最大限に生かされるライディングスタイルなのだろう。

カメラの都合で走りの撮影が出来なかったが、NC700をこのライディングスタイルで乗れば、素晴らしいコーナリングを味わえる。700でコーナーを楽しめない方は、是非学んで欲しい。内側のひざはもっと開いていいが、この撮影時はツーリングパンツの形状が、ひざを大きく開ける状態ではなかった。もちろん750でも同様なライディングスタイルをとれば、より安定した走りが期待できる

そのようなことも改良項目に採り上げ(最重要項目だと思うが)NC750シリーズを発売した。

で、そのコーナリングの癖がほぼ解消した結果、大型バイクの教習車として合格だ。ただし、タイヤによるハンドル特性が大きく変化するセッティングは疑問が残る。“詰めが甘い”の一言である。

レーシングバイクであるなら尖がった特性は重要であるから、タイヤを選ぶということは必要なのだが、ツーリングバイクで、“タイヤを選ぶ”というのは、根本的に問題を抱えているといえそうだ。ホンダの研究所に長年勤務していた方に話を伺ったら「そりゃ造り方が違うんじゃない」と、一掃されてしまった。なるほど納得である。

フロント周りのアライメント変更は行われていない。代えたのはタイヤであるという。装着されているのは、これまでのBSからドイツ製ピレリSCORPION TRAILという名称のタイヤだ。タイヤの形状はBSと見比べても違いがなさそう。となると内部構造が大きく違うのだろう。

700にこのタイヤを取り付けて確認テストしてみたくなった。どこかのバイク雑誌でやるといいのだが。NC700Xでよければ、私が所有するバイクを貸し出してもかまわないと考えている。

外乱を跳ね飛ばすフロントとリヤのタイヤがすごい

1000キロ以上走行すると、ありとあらゆる路面に遭遇する。そこで受けた感じは、とにかく外乱に強いということ。路面に付けられた排水性を確保するグルービング(何本もの縦のみぞ)では、一般的なタイヤであると、小刻みにハンドルが振れ、場合によっては走行ラインさえ乱れる。しかし、このピレリは、グルービングがあるなんていうことを感じさせない。

試しに、グルービングを走行中、わざと走行ラインを乱して、タイヤに外乱負荷を掛けてみたが、走行ラインはもとよりハンドルも振れず、何事もなかったように走るのには、ただ唖然。

当然、道路の端に多くある縦の筋や轍のウネリでも、専門用語だとニブリングにも強い。ニブリングとは路面の状態からハンドルが取られる現象をいい、ハンドルの操作をしていないのに向きが変わることを指す。ところがピレリを履いた750はハンドルの取られる現象が非常に少ないのである。

NC700シリーズにお乗りの方で、ハンドリングに悩まされている方は、タイヤ交換のときにこのピレリを選んでみても損はないだろう。ピレリ日本のHPには、このタイヤを“スポーツタイヤ並みのオンロード性能を発揮する、最新のエンデューロタイヤ登場”とある。BMWのGSシリーズ、ヤマハのスーパーテネレなど、ビッグエンデューロ用のサイズも揃えているそうだ。NC750に装着されているタイヤは、ロードバイク専用ではなくビッグエンデューロバイク用なんだ。

なんと素晴らしいタイヤなのだろうか。とりあえず文句はない

無理に745ccとしなくても730cc辺りではいけなかったのか

ところで排気量を669ccから745ccへと、大きく変更したエンジンは成長したのだろうか。クランクのストロークは同じ80mmで、シリンダーのボアを73mmから77mmに拡大し745ccにしたのだが、正直に言って、あまり自然な状態ではない。トルクは増え(当然だろう)たのだから、加速力が強くなって高速道路などでは追い越し加速に申し分ないが、2000~3000回転での走行や、緩やかな加速において、エンジンのガサツな感触がいただけない。せっかくの270度クランクが死んでいる感じだ。

やはり基本設計が669ccであり、それをボアの拡張だけで745ccとすれば、シリンダーやシリンダーヘッドの剛性が問題になって当然(バランサーの見直しも行われているが)。その影響は、真夏の都内で、緩やかな上り坂を僅かに加速させるようにアクセルを開けているとき、エンジンから出たノッキングでも判断できる。

そして、DCT(ツインクラッチのギヤミッションAT)の制御にかかわる部分だが、気になるところがかなり多い。そこには排気量を大きくし、トルクアップを図り、燃費を考えて、ギヤ比を変更したことが、十分に煮詰められているとは思えない走りがあったからだ。

例えば、Dモードでの走行では、アップシフトが早めで、緩加速状態にあるとギクシャクとした走りをする部分が出る。更に、5速あたりで走行しているとき、急加速が必要で、いきなり大きくアクセルをひねっても、瞬間的にキックダウンしてくれない。6速を狙った状態であることは理解できるが・・・

そのギヤで加速し始め1~2秒後にやっとキックダウンとなる。これでは危険回避が出来ない。同様なことは6速での走行でも発生する。アクセルの角速度と角度を読み取り、素早くキックダウンとすることは重要であるし、アクセルが90%以上の全開状態であるなら、その瞬間から数秒間は自動的にSモード制御とすることが望ましい。やっているとしたら、もっと目立つような制御が必要だ。

何故!と思わせるような状態でハイギヤを堅持したり、あるいは必要以上に下のギヤで走ったり、チグハグな制御も目立つ。例えば、6速での走行中、1級河川の橋を渡り、その先の下りで、アクセルを戻しエンジンブレーキを使った数秒後、いきなり5速にダウンシフト。無理やり6速にシフトアップさせても(エンジン回転数は2000を切る)、直ぐに5速へ戻す。では、その坂を5速のエンジンブレーキで下れるのかというと、アクセルを開けない限り速度は徐々に低下する。下り坂で、その速度を維持するのにアクセルを開ける!!!そんなバカな。

停止するという信号は出していない。停止するにはブレーキを作動させているはずだから、ブレーキスイッチからの信号を取ればいいだろうし、場合によっては、ブレーキ液圧を感知するようなことも必要。最近は、クルマのアイドリングストップから、再始動するときの信号として、このブレーキ液圧信号を使っているので、センサーは安価で手に入るはず。

確かに、2000回転以下で6速というのは厳しいが、それは駆動力を必要としているときで、アクセルを戻しているエンジンブレーキ状態であれば、ギクシャクもなく普通に坂を下れる。おそらくこれは、「停止する」というプログラムのマップを読みに行っているからだろう。

逆にダウンシフトしたほうがスムーズに坂を上れるだろうに、というようなことも起きた。斜度10%になれば、速度が65キロぐらいであると5速に落とすのだが、8%程であると、どういうものか同じ速度でも6速を維持したりする。当然駆動力を出すためアクセルは少し開いているのだが、それにしてもガンバリ過ぎ。

タイトコーナーの続く峠で、それに雨天という悪条件は、このようなギヤの選び方をするのだとすると、それは素晴らしいといえるが、そこまでプログラムを作っているのか。

何故、クラッチ付きのバイクを乗るような制御が出来ないのだろうか

そのほかにも気になるギヤのダウンシフトがある。それは、前方の信号機を見て、減速行動を起こし、アクセルを戻しながらクラッチを切った状態で、場合によってはそのまま停止寸前まで速度を落としてから、1速ギヤもしくはニュートラルまで素早くシフトダウンする、というのがクラッチつきバイクのツーリング走行方法だと思っている。穏やかに停止まで持って行けるからだ。

ところが、NC700S(Xも)DCT程ではないが、まだ教習所スタイルのダウンシフトとクラッチ制御で、ギヤを下げるたびにクラッチを繋いでエンジンブレーキを掛け(良くなったといえるが)、減速状態が段階的に変化する。

これは、タンデム走行の場合、後ろから文句を言われる。それは、身体が前後に何回も揺すられるからである。Sモードなら当然であっても、Dモードは、とにかく穏やかに走らせることが絶対用件であり、大きなおせっかいはいらない。

どんな変化があるのか、何回も確認すると、Dモード走行で1速に落ちたときには、いきなりクラッチを繋げず、半クラッチを維持させながら、実に穏やかに繋ぐ。この感覚が重要であるわけで、何故他のギヤにも、このような感触を入れないのだろうか。

これが各ギヤで行われ、ダウンシフトのたびに穏やかにクラッチを繋いでくれれば、ギクシャク感はなくなり。スムーズな走行が可能となるはず。それよりクラッチを切ったままダウンシフトだけを行い、停止状態まで行けば問題ないのだが。

また、このような減速の途中でアクセルを大きく開ける行為が起きたときには、ショックが大きくてもかまわないから、クラッチはガツンと繋ぐべき。そのタイミングによっては、エンジンが悲鳴を上げるだろうから、そのようなときには半クラッチをほんの少し使えばいい。これ、クラッチつきのシングル、ツインでは当然の行為であり、これをやることで、危険回避行動が成立する。

燃費だが走行距離1087キロ走って35.11リッターのガソリンを消費したので、平均燃費は30.95キロになる。750になって新しく組み込まれた燃費計での平均燃費は29.7キロだった。ここに表示される燃費は計算値なので、実燃費とは少し違うようだが、走行条件が高速、雨天(かなりの時間)、街中、一般道、峠(ほとんど雨天だったので速度は上げられない)という状況からすると、十分に納得の出来る数字である。NC700S・DCTとさほど変わらないのである。さすがに最新技術を使って開発したツーリングバイクだ。
何故にホーンボタンが下から3段目にあるのか意味不明。シフトダウンさせる行為が最も優先させる必要があるなら納得するが、それはないはず。配線図を見るとホーンボタンもシフトダウンボタンも、アースを使っていない独立した構造なので、私が購入したら、即二つのボタンの役割を入れ替える
 

2014年7月20日日曜日

三角停止板と紫色の回転灯は同じように使えるはずだが、勝手に法律を作った交通機動隊員がいた


10年以上前の話だが、しばらくぶりに思い出したので、この際再認識のつもりで書いてみた。

それは、息子が一人でドライブに出かけたときのとこ。夜の9時ごろ、携帯電話が鳴った。「エンジンオイルが漏れ出して、佐久の手前の高速道路上にストップした」という話。

これはこれで、レスキューに出かければいいので、思い当たる部分の部品と工具を載せて出かけた。

もちろん息子には「JAFを呼んで近くのインターまで牽引してもらいなさい」と伝えておいたが、少し走ったところで、息子から電話が鳴った。

内容は「交通機動隊が来て、三角停止板を出しなさいというので、紫の回転灯ならあります」といったら「そんなもの、三角停止板の代用として認められるか」と拒否されたとか。

三角停止板と紫回転灯。今はLEDを使って、もっと認識しやすいものが出来ているかもしれない。三角表示板にもLEDを組み込み、自発光と反射を兼ね備えれば、確認率が上がるだろう
おまわりさん、勝手に法律を作ってはいけません。なぜなら、紫の回転灯で認定されたものは、三角停止板の代用として認められているし、作っているメーカーは、あなたたちが乗るパトカーの屋根にある回転灯を製造する“㈱パトライト”なんですから。
このように、国家公安委員会型式認定も取得している製品なのだ。パ社が製作している。パトライト社はパトカーの屋根に乗っている回転灯を作る会社なのだ
 
それに、三角停止板はライトの明かりを当てなければその存在がわからないのに対し、自分で発光する回転灯は、真夜中の高速道路であるなら1キロ以上も手前から、その存在を確認することが出来るので、私は当然搭載しているし、バッテリーが弱くなったことを考えて、三角停止板も搭載している。
 
息子に難癖をつけた交通機動隊の隊員だが、直ぐにJAFが来て、彼が乗る車を牽引することとなったため、その後は何も言わずに立ち去ったとか。本部に無線連絡して、紫の回転灯が三角停止板と同等である、ということを知ったのかも。
 
もし、ここで間違って違反切符を切っていたら、高機隊はどのような処理をするのだろうか。「すみません・・・」、では済まされないし、ことを大きくして当然だと思う。当時は自動車雑誌の編集部に身をおく立場にあったから、もし、間違って違反切符を息子に切っていたら、テレビや新聞に採り上げさせることのできるコネクションと立場にあったので・・・
 
クルマのオイル漏れトラブルは、直ぐに解消し、オイルを注入して帰宅。その後、ジムカーナの練習会でも走らせたが、問題の発生はなかった。

2014年7月4日金曜日

JRの駅ホーム放送で聞く「お客様を御案内中」の言葉に疑問を感じるのはオレだけ?


これは何を意味する言葉かというと、車椅子の方を乗車させるため、駅員の補助について放送したもの。

車椅子だけではな、手助けが必要な方を称して「お客様」なのだろうが、我々健常者だって「お客様」だろうに。

障害者イコール電車に乗るための手助けが必要な方ではないので、ここは、ハッキリと「車椅子の方を補助しています」という放送にすべきである。

また、英語ではhandicapped person(略してハンディキャッパーと呼ぶ場合が多い)で、言葉の響きはいいが、日本語の障害者という表現はあまりにも不仕付けすぎないかと思って、障害者の友人に、何かいい日本語はないか、と問いかけてみたことがある。

すると、思いも余らぬ答えが彼から返ってきた「障害者でいい。適切だし、それが全てでもあるから」。え・・・

こう言われると、返す言葉はなかった。健常者が考えているほど、障害者は気にしていないということらしいので、ここはひとつ、駅ホームでの表現も「車椅子の方を補助しています」に改めたほうが、聞いている乗客は素直に納得できると思うのだが。

2014年6月27日金曜日

トヨタが700万円で今年度に発売するという燃料電池車は、EVのレンジエクステンダーだった?


先日(2014年6月25日)トヨタ・メガウエイブで燃料電池車の開発説明会が行われた。

日本では今年度中に正式発売するというトヨタのFCV。水素ステーションの整っている地区での販売だけだが、順次拡大方向にある
 

発売時期は、国内が最初で今年度中。その価格は700万円を目標にするというのだから、これはかなり安い。他の自動車メーカーは、果たしてこの価格帯に参入できるのか気になるところ。

質疑応答のときに、2点ほど質問をしてみた。一つ目は2次電池のこと。

「2次電池の諸元をお知らせください」という質問に対し、「まだ内容がハッキリと決まらないので申し上げられません」「ただ、トヨタはこれまでのハイブリッド技術を出来るだけ多く使い、新規に全てを開発したのは燃料電池スタックと高圧ボンベだけです」「もちろん、制御にかかわるソフトなどは別ですが、出来るだけ多くの部分を流用することによって、販売価格を抑えることが出来ました」「このあたりから判断してください」。

という内容。この回答の途中で、アッ、やっぱりそうか、当初のFCVは2次電池を搭載し、そこに充電しながら、そこから電気を取り出す、という考えはなく、燃料電池で発電した電気を直接モーターに与えて走らせていたのだが、この状態であると、燃料電池への負荷変動によるダメージが大きく、実用性が乏しい、という評価が多かった。

そのため、「燃料電池を実用化するなら、家庭用の電源とするか、地域発電所のようなものがいい」、ということを科学者連中が発言していた。TVで見るエネファームは都市ガスなどから水素を取り出して燃料電池を家庭用として使っている。

そこで、比較的大きな2次電池(これまでの実績からニッケル水素か)を搭載し、燃料電池(発電機だから)からの電力をここに貯める。そのため、使用するモーターの効率から(これもハイブリッド技術)、燃料電池の発電電圧を昇圧させる装置も装備。

2次電池や昇圧コンバーターが装備されるということは、積極的にバッテリーの電力を活用し、電力がなくならないように燃料電池を作動させる。急速充電状態とはならない制御を加えれば、2次電池も燃料電池にも優しい状態となり、耐久性が高く、また燃料電池の製造コストも抑えることが可能となる
 

2次電池がバッファーとなるわけだから、燃料電池の負荷変動は少なく、耐久性にも影響が少ない。そればかりではなく、急加速の時にはバッテリーと燃料電池からの電力を足すことで、より強い動力が得られる。

もちろん、回生ブレーキなども有効利用できるわけだから、そこにはトヨタがこれまで培ってきたハイブリッド技術が、大いに活用できている。

そうかんがえると、EVながら、自家発電装置として燃料電池を搭載する、レンジエクステンダーであるとの結論に達するのだ。これなら、販売価格が思った以上に安くなる事実もうなずける。

もうひとつは、燃料代、つまり充填する水素の値段についてである。どの単位で、どのくらいの税金がかかるのかによって、正式販売価格が決まるわけだが。

例えとして、このような話をしてみた、それは天然ガスを自動車の燃料にするときの、その税金が当初は決まっていなかったので、登録されたカードを天然ガスステーションで提示することにより、天然ガスの料金は無料だった、という内容。

何故そのような処置がとられていたかというと、天然ガス自動車は当時、まだ普及の段階にあり、自動車燃料として使った場合の税金の基準となるものが決まっていなかった。つまり決まっていないので徴収できない。結果として、当時、自動車に注入する天然ガスは無料、という図式である。

このようなことから、水素を自動車の燃料として使う場合の税金が決まっていなければ、当分は無料ではないのか?

また、「トヨタとしては、いくらぐらいを予想しているのか?」という質問に対して「JC08のモード走行であるとガスを満タンに(700気圧)した場合700キロ走行が出来ますから、それを踏まえて、プリウスの燃費から計算し、同等な値段がいいのでは、と思っています」との答えが返ってきたが、水素を自動車燃料とした場合の、どれを基準に税金を掛けるかは、直に決まらないだろうから、たぶんしばらく後になりそうだ。つまり、また無料?期間が出そう。

2014年6月23日月曜日

ストレスを感じない場所での、ニッサン・スカイライン200GT-t試乗記


一般道を走らなかったので、周りからのストレスや注意する方向などが違うため、いいことばかりを感じてしまったが、これが全てではないことをお断りしておきたい。
テストコースにはわくわくするスカイラインが待っていた
これがダイムラー製の2リッター4気筒ターボ。エンジンルームに余裕があるため、パイプ類の配置や取り回しにもストレスがない。当然過給率は高く安定する
 

こりゃ、最近のハイブリッド・スカイラインとフィーリングがまるで違うぞ


ハイブリッド装備で発売・話題になっているスカイラインに、ダイムラー製の2リッターターボエンジン搭載モデルが追加された。それも、ただ単に追加されたのではなく、エンジン特性に見合った足回りの改良で、重厚な感じを強く前面に出さず、奥にしまいながら、必要なときにはそれが表面に出る、そんな感じでまとめられていた。

試乗はニッサン追浜工場内にあるテストコース。指定されたコースは直線が少なく、最高速はせいぜい120km/h程度。周りからのストレスを受けない状態なので、ほんの触りだけの感じを書いてみたい。

運転席に滑り込みシートとステアリングの位置を合わせる。助手席には関係者がいるので、コースの案内はしてくれそうだが・・・

多少緊張気味でATのセレクターをDポジションに。強いクリープはなく、ブレーキペダルを放しても直ぐに動き出さない。

ゆっくりアクセルペダルを踏みつけると、4気筒とは思えないほどの奥ゆかしさでスルスル走り出すのだが、そこから更に大きくアクセルを踏み込めば、気持ちのいいエンジン唸り音と背中に感じる僅かで気持ちがいい振動に癒させながら、速度は思った以上に高まる。

ダイムラー製のエンジンながら(失礼)4気筒とは思えないスムーズな回転上昇とその鼓動と振動は心地よい、と表現しても言い過ぎではないだろう。

もちろんターボの装備はエンジンのネガティブな部分を削除するように働くのは周知の事実。アクセルを踏み込んだときの負荷振動ばかりではなく、エンジンが出すノイズについても、ターボを取り付けることで穏やかになる。その効果がスカイライン200GT-tでは大きいということ。相性がいいとも言えそうだ。
本来V6を搭載するように作られたエンジンルームは、レイアウトに余裕が出来たため、換気性能にも優れることで、性能は安定する
ステアリングにATのパドルシフトが装備されていることを忘れて、運転を楽しんでしまった。それでも思ったような反応を示した
 
テクニカルなニッサン追浜のテストコースであるから、ハンドリングに関しては、素性が出てしまう。

で、その素性はというと、これまた、たまらく素晴らしい。サスペンションは柔らかくても(一般道ではわからないがテストコースで感じた範囲)ステアリングをコーナーの出口に向けながらアクセルを踏み込むと、引き込まれるような感覚で、期待以上の走りを見せる。クイックではないくせにタイヤの粘りはスポーツカーのごとくであるが、その感触は穏やかなスポーツカー???かもしれない。

ラック&ピニオンの取り付け位置、タイロッドの取り付け角度など、ロールステアが微妙に効いているようで、そこにキャンバースラストがバランスよく加わっている感じだ。

 とにかくガサツさがなく、素直で気持ちがいい。

最高速は抑えたが(初めての走行で1周限り)、120キロから突っ込むブラインドコーナーでも、アクセルはゆっくりと踏み込みつつ、速度が上がってトレースラインからずれるようなときにも、左足でブレーキペダルをス~ス~と、軽く踏みつけてやれば、確実に狙ったラインをキープする。
運転席に座りGoの合図を待つ。助手席には関係者が乗っているけれど、特別アドバイスがあるわけではなかった
 
これが可能なもの、素晴らしいブレーキ性能と、素晴らしいブレーキペダルの踏み込み感触があるからで、全てのクルマに使える話ではない。

7速ATの素晴らしさだけではなく、エンジン特性についても優れたものがある。ターボが装備されているのだから、当然のことであるが、最大トルクが自然吸気エンジン3.5リッター並ある(350N-m)。しかも、その最大値が1250~3500回転という範囲の、日常で一番使用頻度が高いところに持って来れたのも、走りの素晴らしさに結びついているといえよう。

2014年6月21日土曜日

おじいちゃんはモトクロスライダー


歳を取っても好きなことに取り組んでいる方はとても元気である。そのいい例が、運動能力が必要なバイクのオフロードレース、モトクロスである。見に行くのではなく、実際に自分の体力を考えたクラスに参加するのだ。

MCFAJが主催するモトクロス。アマチュアのバイクレース団体だから、オフィシャルも会員がやる。レース出場を兼ねて楽しむ方も多い
 
MCFAJ(全日本モーターサイクルクラブ連盟)が主催するモトクロスには、セニアクラスというものがあり、これはテクニックではなく“シニア”なのである。そのセニアクラスは、セニア50、セニア60、セニア70というクラス分けがある。

そう、この数字は年齢を表すのだ。セニア70は70歳以上というクラス。それにエントリーしたのは野田ジュニアレーシングの斉藤城太郎さん70歳。

一番手前のゼッケン71が斉藤さん。楽しむレースだから、怪我をしないように、余裕を持ってアクセルを開けたいが、いざスタートとなると、それを忘れるのが玉に傷
 
使用するマシンに排気量制限はない。斉藤さんはヤマハのYZ85(85cc2ストローク)で参加したが、同時に出走するセニア60クラスでは、ホンダの4ストロークマシンCRF450R(450cc)を乗りこなす方もいる。
 
 

当然、若い方々は成績はいいが、成績を気にしながらレースをやるわけではない。楽しみが最優先で、それで更に成績がよければそれに越したことはないのだ。

セニア60クラスで総合優勝した芹沢さんは64歳。マシンはホンダのCRF450R。2位の赤松さんは68歳。マシンはホンダのCRF150R(150cc)。

いやはや参った。元気そのもの“おじいちゃんは元気でモトクロス”。斉藤さんのご家庭は、お孫さんまで3代に渡ってモトクロスライダーなのだそうだ。これが家庭円満の秘密か!!!
斉藤さんクラス1位。やった~表彰台。でもセニア70クラスは出走台数が1台だったため、賞典外
 

2014年6月16日月曜日

初めて得た情報が間違っていても、それに疑問を持たない限り、その情報が市民権を得る悲劇


いろいろなところで、このような状態が起きている。最近では原発事故に関する放射能被害についてだが、我々の得意分野でも10年経ってやっと真実が一人歩き出来るようになることは起きている。

それは、アメリカ最大のレースであるインディ・シリーズに使われる燃料についてである。

インディ・シリーズに限らず、アメリカでは(オーストラリアでも)アルコールを燃料にすることが義務図けられているレースは多いのだが、なぜアルコールなのかを正しく報道するメディアやジャーナリストは存在せず、数十年が過ぎてしまった。それを正しい情報(それほどではないが)にしたのは、私が日本のツインリンクもてぎで行われることになった、CARTシリーズの取材と、記者発表を記事としたときからである。

そもそも、ツインリンクもてぎに造られたオーバルコースは、アメリカのCART(その後インディとなる)レースを招致することが目的。その当時からマシンの燃料はアルコール。それを使うわけだから、アルコールに対応した火災消火対策が装備されて当然のはず。

そのことについて、まだツインリンクもてぎが正式オープンしていない時期に、当時の初代社長・Kさんと2代目社長のSさんにお会いしたとき、「何故CARTやインディでは燃料がアルコールなのかご存知ですか」という質問をした。

 

その答えは「・・・・・・」で、回答なし。

そこで「アルコール(当時は毒の強いメタノールだがその後エタノール+数パーセントのガソリンに変更)は水の仲間ですから、火災の消火は水でOKなのです」。「インディ500のレースは見に行かれていますね。そのとき給油後にピットで、なにやらドライバーに吹きかけているシーンは見ていると思うのですが、それが何かはご存知ですか」と問い詰めると、「・・・???」で、これも回答なし。

「あれは水を吹きかけているのです」「給油中にこぼれたアルコールを限りなく水にすれば、火災は起きませんから」と説明。

「ということは、ツインリンクもてぎのオーバルコース(スーパースピードウエイ)のアルコール燃料に対する消火用の散水システムは、当然設計されていないのですね」、の質問に対して「水で消火できるという認識を持っていなかったので、何もありません」という返事。

しかし、その後の言葉は、非常に前向きだった。それは、「今からコースの内側に散水栓を取り付けることは出来ないが、スーパースピードウエイのピットには、雨水排出用の側溝があり、グランドスタンド側からパドックまで、太い水道管が引かれているので、そこから側溝の中に水道管を通せば、ピットに散水栓を造ることが可能なので、すぐにやります」という返事を得た。

 

その結果が、見ればわかる、後付けの散水栓である。

これが私のアドバイスにより後付けされた散水栓と蛇口。スーパースピードウエイのピットウォール内側排水側溝の中に水道管を無理やり通しているので、仕上がりは悪いが、メカニック達は喜んだ。消火用の水が手元にある。パドックから運ばなくていいし、いざとなればコックをひねって消火用に使えるからだ
 
何故このようになってしまったのか。それまで、ホンダは数多くのジャーナリストたちをインディ500に招待してきた。しかし、彼らはそこからレース場として必要な情報を何も得てこなかったからである。疑問を持っていなかったのだから仕方がないかもしれないが・・・

ま、インディ500を見に行かなくても、燃料にアルコールが使われ、それは日中に火が付いても見えないけれど、水と同化するので消火は水でいい、ということはわかっていたはず???

それより以前の話として、何故ガソリンや軽油からアルコールになったかの経緯を知っていれば(私のように)、当然、ツインリンクもてぎのスーパースピードウエイに消火用の散水栓は設計図の中に入る。

燃料をアルコールに変更した理由は、クラッシュの多いインディ500で、いったんマシンから火を噴くと、簡単には消火できず、それまでには多くのドライバーが悲しい事故死を遂げていたからである。

更に、アルコールは気化熱が大きいので、アルコールをたっぷりと含んだ状態であるとやけどし難い。コーヒーメーカーに使われるアルコールランプは、親指と人差し指で火の付いた芯をつまんで消火できる。芯も綿である。これが灯油ランプ(芯はアスベスト)だったら“ジュ”といって火は消えず火傷するだけ。実験結果から明らか。

さ、そこからCARTやインディレースで、使われる燃料がアルコールである理由の間違い報道。ある著名なジャーナリストがインディ500解説のテレビ中継(録画)の中で「アルコールを使う理由は、環境にやさしいからです」と発言。

毒性の強いホルムアルデヒドが多く発生するメチルアルコールは、ひとつも環境に優しくないはず。そのため、熱エネルギーは少ないが、十数年後にエチルアルコール+数パーセントの(2%だったかな)燃料に切り替えたのだ。

また、メチルアルコールはアルミやゴムを溶かすので(特に温度が高いと)レースのパドックではメカニック達は大変。何が大変かというと、走行が終了するたびに燃料ラインを完全に洗浄し、次の走行に備えなければならないのだから。エチルアルコールではその心配が要らないので、その分楽になった。

更に、数年後のテレビ中継でもこんなことがあった。ガソリンとアルコールを入れた小さな缶に火をつける。アルコールの方はカゲロウが立ち上るだけで、炎は見えない。「いよっ、これは水を掛けて火を消す実験か。やっと真実が・・・」と思ったら、いきなり照明を消し、「アルコールは日中だと火災が見えません。暗くすれば火の付いていることがわかります」「そのため火災については特に気を付けています」で終わり。

これらの発言と報道が、以後長く日本におけるCARTやインディのレースで、燃料にアルコールを使う理由として、ツインリンクもてぎで行われるCART(その後インディに)のプログラムにも、燃料がアルコールあることの間違いは、約10年間毎年同じ内容で印刷されていた。でもあるとき、やっと、アルコールを使う理由の正しい記事が載ることになった。もてぎでインディをやるようになってから10年後だった。

もちろん、私自身は、当時在籍していたクルマいじり雑誌の中で、毎回、アルコールを使う理由を記事に出し、環境にやさしいからだという情報は間違いだ、という表現をし、ツインリンクもてぎの関係者にも、その旨を伝え続けて、やっとである。なんとも情けない話だが、ほかにも同様な間違いによる間違いの報道はある。ヤハリ、新しい情報はある程度の疑問を持って取り組んだほうがよさそうだ。

なお、インディ500のレースを見ていると、コースの内側にある芝生には常に散水がなされており、ドライバーがそこに転がって火を消すことが出来るようになっている。だいぶ前だが、F1ドライバーだったN・マンセルがコンクリートウォールにヒットしたとき、いきなりマシンから降りてきて、その芝生の上で転げまわっていたことがある。こんなことも見逃してはいけないのだが・・・