研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2013年2月10日日曜日

ホンダエコノパワー“ホンダエコマイレッジチャレンジ2012第32回全国大会”で見た問題を取り上げる

30年以上に渡り、参加したり、取材したり、運営事務局にアドバイスしたりしていると、普通の人には見えないものが見えてくる。今回は、競技の詳細ではなく、気がついたものについて書いてみたいと思う。

「用意」“ドン”のレースではない。だとするとライバルは隣のマシンではないはず

 

長年会場に顔を出していると、この燃費競技会は他のイベントと大きく違うことに気がつく。燃費競技会は、隣のマシンがライバルではないと言うこと。ライバルは、人間が住んでいるこの地球の環境(引力や大気など)なの。地球上の環境からどれひとつを取り去っても、燃費競技会は成立しない
エコマイレッジと言うのだから、参加者が持ち込む発電機にも触媒を付けさせるべき(カセットガスボンベを使うものは除いて)。私は自身が持っている発電機は、十年以上前から触媒を取り付けて使用している

そして、この偉大な地球環境に、ドライバーひとりが立ち向かっても、納得のいく結果が出ないことがあ。それは、マシンの造り方、走らせ方に不備が出た場合で、それを可能な限りオフィシャルやプレス(実力があれば)がアドバイスや、手を貸してやること(積極的に手を出すのではなく、道具を貸してやったり、カウルの脱着を手伝う、供回りするネジを押さえてやるなど)で、何とかそのドライバーとマシンをゴールへ導いてもいいはず。トラブルを起こしているマシンが、入賞する可能性はないし、それよりも、何とかゴール出来たと言うことで、次のマシン製作に励みが付くのではないかと思。ライバルは隣のマシンと思っていると、このような優しい考え方は出ないだろうが、それでいいとは思わない。

レギュレーション違反と言うが


2012年の最高記録は、水曜クラブが出した3242.784km/L(ガソリンの消費重量から計算する)だったが、それは素晴らしい記録として、別なことに集中したい。
 
毎回、前日の車検、練習走行から現場に入っている。今年、最初に目に入ったのは、市販車クラスへの出場バイク。「ホイールが・・・」で出場は認めるが、記録は出さないと言う。

何でもめているのか、詳細を聞いてみると「標準の鉄リムからアルミリムへ変更しているので規則違反」と言うのである。
ホイールを標準の鉄からアルミに変更していると言うことで、車検を不合格にされたマシンとチーム。レギュレーションからすると、フェンダーを切断して全長を変えること違反だが、そのようなマシンは堂々と合格している。これはおかしい
ところが、車両規則を見てみると、原則として、認定時の型式(市販車の状態)を変えてはならない。本項に記載した変更のみ認める。とあるのだが、市販車の状態を変えてはならない、と言いながら、リヤフェンダーの取り外しは可能と言う。バイクによるのだが、切断しないと取り外せないものや(スーパーカブ)、取り外すことで全長が短くなり(スーパーカブ)、認定時の型式から外れるものもある。

取り外しとは、ボルト&ナットなどで組み合わされているものの脱着可能な部分のことで、スポット溶接されているような部分の取り外しは、切断と言うのだが、これをどう判断するのだろうか。2013年以降の規則に手が加えられなかったとしたら、非常にチグハグで、車検委員の判断で決まるとしたら、とんでもないことである。
これがレギュレーション原文。これに従えば、リム交換(サイズはダメ)はOKのはずで、リヤフェンダーを切断したスーパーカブは違反と言うことになるのだが、それがまるで逆に解釈されたのにはあきれる
であるのに、認定時の型式から外れることのないリムの材質変更を、とやかく言うのはおかしい、と言うクレームを私から出した。まして、昨年はこの状態で出場していたと言うのだから。

競技委員長を交えて、擦った揉んだを30分ほど繰り返したが、競技規則の不備は認めるものの(来年は正しく書き換える?)、参加車両はリムの変更を余儀なくされた。振り回された参加者がかわいそうである。
 

競技進行時間の考え方


一般的なレースの考え方を適用すると、少しでも集合時間に遅れたチームは強制的に排除。つまりリタイヤさせられる。

これを適用しようと言うのはいかがなものかと思う。つまり、手作りマシンであり、素人が製作するのだから、直前トラブルがあってもそれは仕方がない。

ライバルが隣のマシンでないということがオフィシャルの頭に入っていれば、少しぐらいの集合時間遅れは「早く集合してね、・・・」で済ませるべき。僅かな時間を気にして、いい加減な状態で出場し、事故を起こせば元も子もない。
参加集合エリアへの時間は各クラスごとに決められていて、進行をスムーズにしているのだが、自作のマシンでは、時として突然のトラブルが発生する。当然集合時間には間に合わない場合もあるが、それは臨機応変に対応すべき。いきなり強制的なリタイヤは問題。ひどい場合には走行持ち時間と相殺すればいいのではないかと思う
せめて、集合時間に遅れた分を(トランスポンダーを装備しているので、集合エリアに入った時間は分かる)、走行時間の39分20秒11からマイナスする(2乗り、市販車クラスは16分29秒67)、と言う処置などはどうだろうか、と言うことを、の場を管理するオフィシャルに提案しておいたが、どうなることやら。

相変わらずブレーキ不良で車検を通らないマシンが多かった


毎度のことなのだが、ブレーキ性能不足で、車検に合格しないマシンが多い。ブレーキに対するシステムの不備、構造の理解度不足などがほとんどで、これを解消してやることによって、合格する。

今年も(毎年だが)ある高校のマシンに口出し、手出し(工具は握らないが)して、何とかブレーキのテストを合格させたら、そこにいた先生が「またお世話になりました」と言うのだ???

実は、昨年も同様にアドバイスをして、車検を合格させたらしい。その先生は、機械いじりがダメ。昨年とは違うマシンなので、理由を尋ねると、別の高校に移動されたとか。いや~まいりました。

と言うわけで、何か方策を講じてブレーキが効くような状態にしたいと思うのだ。ピット・パドックにそれなりの場所と道具を整えれば、ある程度解決できる目星はある。松脂スプレーなどと言うものが昔存在したが、今でもあればそれは有効に使えそうだ。
ブレーキ不合格で、整備に入るマシンでパドックは満員御礼状態。ここで有効なアドバイスが出来る人員を配置すべき。適当にごまかして合格させることも出来るので、事故を想定すると、しっかり管理できる状態が好ましい
ブレーキ性能不足のマシンは、大半のリムがキラキラ・つるつる状態だからだ。リムを回転ヤスリで研磨すると言うのも有効だろう。それにはその工具などを、オフィシャル側で用意しなければいけないが。

車検時の大きなミスが発覚


これは土曜日の練習走行、スタート前燃料微調整エリアでのこと。
 
あるマシンからエンジンオイルが漏れている。エンジンを始動すると、クランクケースからダラダラと垂れる。
 
レギュレーションでは、オイルが垂れても撒き散らさないよう、オイル受け(容量は規定がない)をエンジン下に装備するように義務付けされているのだが。

レギュレーションに従ってオイル受けを装備していれば、オイル漏れを発見できなかった可能性もあるが、それより以前の問題として、オイル受けが装備されていないマシンに、車検の合格ステッカーが貼られてしまったことに問題がある。

では、車検エリアで、それらを確認する場所に、人員不足があったのかというと、そんなことはなく、昨年以上に人を増やして対応していた。
オイル漏れ、ガソリン漏れは各所に見られる。ホースのクリップにタイラップはダメである。しっかりと全周を締め付けることが出来ない構造だからだ。何本締めてもダメ(ホース抜け防止には役立つが)。細いステンレスの針金を2周巻いて締めるか、或いは純正部品のホースバンドを使用するように指導しなければ、これも事故につながる
このようなことが出てしまうのは、人間として自然のことであるが、こと安全に関する項目は、出場者に配られる車検チェック表だけではなく、オフィシャルが再度、特別にチェックする機会と、細かな項目を設けるべきである。

何故、危険を知らせる旗振りの人数が足らないのか

 

競技が始まると、グランドスタンド前のストレートに、旗振りがいない。レースで言うところのポストになるのだが、停止車両などが出た場合、後続のドライバーに黄旗を振ってそれを知らせる役目をする。
旗振りのオフィシャルが何処にも見えない。かろうじてゴールライン近くに数人。重要なのは、直線部分のコンクリートウォール側。せめて200m置きに二人の旗振りが必要。以前は十分に配置されていたのだが
当然止まるマシンは出るわけで、それに対してどうするのか、事故が誘発されないよう、少しハラハラしながら見ていると(側にオフィシャルがいれば注意を喚起できるが、それは出来なかった)かなり遠くの、ゴールラインから、ノコノコ小走りで歩いてきた。

旗振りオフィシャルの人数が足らないようだが、車検のところには多人数がいたはず。そして、車検はほとんど終了している状態であるのだから、人は余っている。この人員を何故旗振りに回さないのだろうか。事故が起きてからでは遅いと思う。

これ、このような状況。ストップしたマシンに対して、後続ドライバーへ黄旗の合図がない。近くはスタートラインで、そこには旗振りがいるはずなのだが、無視しているのか、気がつかないのか、事故の心配が募る

2013年1月24日木曜日

セミトラ点火装置の1次と2次波形からその良さを検証してみた

セミトラ点火装置は普通点火のポイントを利用し、安定した点火性能を長期に渡って維持できるように造られたトランジスター点火装置と言い切れるだろう。フルトラが当たり前の時代だが、普通点火からフルトラに移行する間、一時的にセミトラを採用するメーカーも有ったのだ。

そのセミトラによる1次と2次波形は、普通点火装置の波形とどう違うのか検証してみた。

使用したセミトラはウルトラのNo.6060。ベーシックなセミトラともいえる製品。

セミトラの波形を見るために使用したウルトラのNo.6060だが、正しい点火コイルとの組み合わせが重要なので、それを理解できないとしたら使用すべきではない。ハイパー・イグニッションNo.8900であるなら、専用の点火コイルと組み合わせてあるので、コレを使うべきだ。No.6060より高性能でもある

1次電圧波形と2次電流波形で普通点火とセミトラを比較検証すると、普通点火の1次波形にはポイントが開いた瞬間からその電流に落ち着きが出るまでの間、何回もの振幅がある。これはポイント接点でのスパークを意味する。その影響は2次波形にも及ぶため、点火エネルギーは小さくなる。これはポイントの接点修整が必要であることを示している。また、1次2次共にピークを示す部分の波形の明るさは、普通点火では流れる電流が多いため、波形もはっきりと見えるが、セミトラでは最大値あたりは霞んで見えない。

普通点火の1次波形ではポイント接点が荒れているため1800回転では余計なものが写る

点火プラグに流れる2次の電流波形にも普通点火では同様な状態が見られる。失火と取れる状況だ

セミトラのように2次波形に余計な波がないということは、それだけ点火エネルギーが大きいと言う判断も出来る。

普通点火と同じ状況で(コネクターを差し替えるだけ。回転数は1800)セミトラに代えると、1次波形でも余計な波形はなく、しっかりと信号を送っていることがわかる

セミトラの2次波形も1次波形と同様に、乱れはなく、確実でしっかりとした火をプラグに飛ばしている

普通点火の場合にはポイントに流れる電流が一般的に最大4~5Ahと言われているが、セミトラでは1Ah(ウルトラの場合には0.4Ah)以下。つまり、ポイントに要求されているものが違うのである。

セミトラの場合ポイントは、点火時期を掌るスイッチのようなものであり、エネルギーを加える普通点火方式と根本的に違う。そのため流れる電流も小さいのである。結果として、ポイント接点の消耗・焼損はなくなるため、長期に渡って(他の機械的な部分の劣化・消耗はあるが)安定した点火火花が確保できる。

波形撮影ではポイントが荒れている状態だったこともあり、普通点火では低回転(1800回転)で点火ミスを示していたが、セミトラとなるとそのような症状は発生していない。これがセミトラの強みでもある。

意地悪テストとしてポイントギャップを大きくしてみたり、コンデンサーを取り外してみたが、波形の変化は見られなかった。ここで確認できたことは、ポイントが単にスイッチの役目に過ぎないと言うこと。

試しに普通点火では重要なコンデンサーを外
して5200回転としてみた1次波形。何も変わっていない 

同じくコンデンサーを外した2次波形。確実にプラグはスパークを行っている。つまり、セミトラにはコンデンサーが必要ないということになるのだろう。取り付けていても支障はなく、単に安全マージン? セミトラのユニットが不良となったときに、簡単に普通点火へ戻せることを考えれば、取り外さない方がいいといえるが・・・

ここからは知識として知っておいたほうがいいこと


専用コイルを持たないセミトラのユニットは、最近巷に使える点火コイルがないので、それを理解していない方は、専用コイルが組みつけられたものを購入した方がいい。価格は少し高いけれど点火性能は高い。

更にオークションでセミトラユニットだけを購入して使用する場合など、特に注意が必要。自身で使用可能な丸型コイルを持っているのならいいが。

例えば、永井電子(ウルトラ)のセミトランジスターNo.6060は、数十年前では普通に汎用として販売されていた丸型のコイルに合わせて開発されたのだが、現在はこのコイルを入手することは不可能。適当なものを組み合わせるとユニットが壊れるので、絶対にダメ。

そこで、同社では専用コイルを組み合わせた、高性能セミトランジスター点火装置を開発している。

このハイパー・イグニッションNo.8900は専用コイルを使用したことにより、電流制御やドエル角制御を組み込むことが可能となり、高回転まで安定した点火性能を確保できた。当然No.6060よりも高性能な点火装置といえるもの。


2013年1月8日火曜日

14代目トヨタクラウンのサスペンションは進化型か

ReBORN(生まれ変わる)と言うキャッチフレーズを使って発売された14代目の新型クラウンには、これまでとは少し考え方が違うサスペンション(足回り)設計が取り込まれた。

これはステアリングのタイロッドエンド。このようにS字形状をしている。伸び縮みしやすいことを利用して、ステアリング操作から来るタイヤの向きに僅かな遅れを生じさせ、コーナリング時の走行安定性を高くした

それは、フロントで言うとステアリングのタイロッドエンド形状にある。タイロッドエンドは普通ストレートのシャフトなのだが、そこをあえてS字形状とし(軸方向剛性を低減)、ステアリングを操作したときに、このS字が伸びることでタイヤの向きに、僅かな遅れが生じることを期待している。

この僅かな遅れは巻き込み現象を低減し、安定化方向へ導く。もちろん直進時にもステアリング操作に関係なく、タイロッドエンドのS字部分はタイヤに対する路面外乱を受け流し、一瞬起きるトーの変化が反対側のタイヤに伝わらないことを意味し、ここでも高速直進性に影響を与えるはずだ。

これが14代目のクラウン・リヤサスペンション。マルチリンクという形式は変わっていない。このサスペンションにはトーコントロールアームにも工夫がある。ロッドがストレートではなく僅かに湾曲しているのだ。その目的は横力を受けたときにタワミ、引かれたときには伸びることで、カーブなどの走行ではリヤタイヤが同位相することから安定が高くなる。伸び縮みするといっても0.1mm以下の数字だが、それがものを言うのだ

もうひとつは、リヤサスペンションのアーム形状に見られる。一般的には棒状の形か、パイプでもボックスセクションなのだが、新型クラウンでは違っている。

リヤサスペンションアームの断面は下側(水対策)に開口部を持つC型断面構造。捻り剛性を下げて微小作動性を向上させたというが、ショックアブソーバーが高圧ガスを使ったモノチューブのド・カルボン式ということだから、フリクションの多い(特に停止状態から動き出すとき)ショックを使うことへの対策とも取れる

ボックスセクションの下側に開口部を持つC型形状なのだ。つまり、捻り剛性を下げている。

この目的は、乗り心地を向上させるためで、サスペンションの作動が非常に小さいとき、ゴムブッシュの変位が起きる前の動きを、サスペンションアームが捻れることで先行させるもの。

ゴムブッシュだけではなくボールジョイントを採用している部分のサスペンションアームも同様な形状だ。ボールジョイントにおいても、動き出すまでの力は大きく、それを小さくすれば耐久性や位置精度が下がるため、作動としては不利になっても必要以上に強く締め挙げる処理が必要だからだ。

また、ショックアブソーバーは作動レスポンスの高いモノチューブ(ド・カルドンタイプ)で、ガス室との分離にはフリーピストンを使っている。ここの動きの抵抗を低減させるため、減衰力発生ピストンやそのピストンリングなどにはテフロン製を使っている。

と言うことは、ショックアブソーバーそのものの動きにも渋さ(初期作動抵抗)がある。それを少しでも解決するために、サスペンションアームの捻り剛性を小さくして、乗り心地を確保した、と分析するのは考えすぎか?

俗に言うガスショックはガス圧が非常に高く(作動によるキャビテーション防止が目的で10気圧以上)、その分ピストンを押し戻そうとする力も強くなり、いくら作動によるフリクションを低減しても、このガス圧に打ち勝たなければショックアブソーバーのピストンを作動することは出来ない。つまりサスペンションとしての微少作動に障害となる。なので・・・?

バイクの1本サスにもガスショックが使われているが、この場合には非常に強いスプリングと大きなレバー比(減速方向)としているため、ショックのフリクションが及ぼす影響は少ないのだ。

2012年12月27日木曜日

ブレーキレバーを改造して、レバー比をプログレッシブ化する

フロントブレーキが重要視されるバイクだが、時代と車種によっては、どうにも頼りないレバータッチで、更に急制動に対応しないものが多くある。そこで、技術力を酷使し、そのレバー比に対してプログレッシブな比率変化を求めて改造した。

ブレーキホースをレース用に交換するという手もあるが・・・

レーシングコースでの走行では、指を1本だけレバーにかけて、突如押し寄せる緊急回避行動に供える必要はないのだが、公道の走行では常にブレーキレバーには指1本か2本をかけておき、突如として起きる急制動に対する構えをしておく必要がある。

ところが、そのような状態から強い制動をかけようとしても、指1本での制動と、そこに必要な力が足らないばかりか、レバーを引くストロークが長く、充分に引くことすらできない。

親指以外の全てを使って、ガツンと引く場合にはブレーキレバーはグリップの根元まで引き寄せられるから問題ないのだが・・・

そこで行き着いた結論がブレーキレバーのレバー比をプログレッシブ化することである。

どの部分の改造かというと、ブレーキレバーとマスターシリンダーが当たるところの形状を変えれば、目的が達成できると結論を出した。

マスターシリンダー側に手を加えることは出来ないので、ブレーキレバー側である。

ブレーキレバーがマスターシリンダーを押す部分の形状をエキセントリックにすればいいのだ。

エキセントリックとすることで、マスターシリンダーを押す部分が移動し、同じレバーのストロークでもマスターシリンダーを押すストロークが増える。

で、どのようなことをやればこれが達成できるのだろうか。

ここからが技術力である


そのマスターシリンダーを押す部分の理想的なところへ3mmのビスをネジ込む。もちろん下穴(2.5mm)を開け3mmのタップでネジ立てである。

小さな万力にブレーキレバーを固定し、角度を確認しながらボール盤で下穴を開け、その角度のままボール盤のチャックにタップを取り付け、手でチャックを掴んで数回ネジ込み、ボール盤から外し、タップの角度が倒れないよう注意しながらタップハンドルに変えてネジ立てする。

ネジ立てが終わったらビスをしっかりとネジ込み、不要な部分をヤスリで削り取る。

何回もイメージして、何処でマスターシリンダーが押されるのか検証しながらヤスリ仕上げが重要となる。

これを取り付ければ理想的なブレーキの完成だ。なお、この改造はあくまでも自身の責任で行っください。
これがレバー比をプログレッシブにしたもの
上の写真では良く見えないので、加工した部分をアップにすると、このようになっている。レバーを引いても最初は、取り付けた突起部分が当たらず、普通にストロークもあるが、レバーを引くに従いマスターシリンダーを押す位置が変化し、レバー比もそれに合わせて変化する
このようにブレーキレバーを指一本で引ききれる。ここまで引いてしっかりと手ごたえが残っていれば、文句の付けようがないブレーキが完成する。もちろんガチガチのレバータッチではなく、ソフトな感触がありコントロール性が十分残っている


2012年12月16日日曜日

N-ONEお前もか

先月(11月)の19日に、ホンダN-BOX(自然吸気仕様)のブレーキオーバーライドとアイドルストップの制御がおかしい、と言う投稿をして、さてN-ONEはどうなっているのだろうか、確認出来次第報告する、ということで終わりにしたが、その確認ができた。

結論は、N-BOXと同様で、自然吸気仕様はアクセルを踏み込んだまま左足でブレーキ操作し、停止まで持って行くと、エンジンはスロットルを閉めるので、ブレーキオーバーライドは正しく作動しているが、停止した次の瞬間、エンジンも停止する。

そのままの状態から、アクセル操作すればエンジンは始動するが、それでは遅すぎる状況が発生する可能性はある。

これはいいことではないと思うのだが・・・

だから、他のメーカーでは、ブレーキオーバーライドが作動したときにはアイドルストップさせないように制御している。

救いは、アクセルとブレーキの操作が自由に出来るドライバーなら、左足ブレーキと右足のアクセル操作を駆使して行う、アンダーステアの回避行動。

一般的に、ブレーキオーバーライド制御が組み込まれている車種では、一部のものを除いて、アクセルよりも後から踏まれたブレーキ操作が優先することから、ブレーキペダルを踏み続けている限り、アクセルにエンジンが反応することはないのだが、N-ONEの場合には(N-BOXは確認忘れた)ブレーキが踏まれていても、アクセルペダルを数回軽く踏むことで、エンジンが反応するようになる。

2012年11月29日木曜日

2007年初めにトヨタの“体たらく”を予見した奴が居た

それは2007年1月、AGN(今は消してしまったオートギャラリーネット)に原稿をアップした張本人、つまりこの私である


以下、当時の原文のまま

【こいつのここが気になる】カローラよお前もか


新型カローラには、新開発の1.8リッターエンジンである2ZR-FEを搭載している。新時代を見据えたエンジンとして、環境にも優しいという。それはいいことなのだが、メンテナンスに関することでは、疑問符が付く。オイルフィルターがバルクヘッド側(シリンダーブロックの裏側)にあり、ジャッキアップするかピット作業しなければフィルター交換ができない。

問題のオイルフィルター取り付け位置。後方排気なので、シリンダーブロックの後に位置していることがわかるだろう。な~ぜ

フィルターそのものは、ペーパーエレメントだけを交換するという、不燃物を少なくする方式で、環境にも優しい。でもおかしい。これまでのトヨタは、メンテナンスというサービスには、世界一気を配って、メンテナンスでミスの出ない、やりやすい方向でクルマ造りをしてきたメーカーである。

それがどうして? と思うのは、これまで数多くのクルマをいじり倒してきた経験を持つ編集者には納得できない。その点について、開発責任者にも聞いてみたが「図面の段階で、サービス評価グループからクレームが来ていないので、わかりません」という返事。世代交代が進んで、そんなものどうでもいい、という考え方が、主流を占めたのでは、という問いに対して「それはありません、いいものは継承していますから」。

では、エンジン開発責任者はどう答えるのだろうか。同じ質問をしてみると「ウーン、わかりません」という返事が返ってきた。なんだこれは、どこかで、誰かが悪い方向へ糸を引いている、としか思えない。

【編集部:青池 武】

ここからは追加原稿


当時のトヨタには(現在は知らない)開発時にその図面から整備性を評価するグループが居て、その権力は強く、100点主義を貫き通してきた。

つまり、如何にいじりやすく造り、整備することでやってしまうヒューマンエラーを少しでも少なくすることに特化していた。それだけディーラーメカニックを信用していないと言うことになるのだが、事実とんでもないトラブルを、私自身も押し込まれた経験がある。

エンジン開発者は「整備性を評価する方々が全てOKと言う印を押していますから、我々はそれ以上何も言えません」と言う返事だった。

では、何故オイルフィルターをバルクヘッド側に持ってきたのか、と言う問の対しては「エンジンフロント側をモジュール化して、コンパクトにした結果、近くにオイルフィルターを取り付ける場所がなかったので、安易にバルクヘッド側の空きスペースを利用したのです」と言う答え。

でも、エアコンのコンプレッサーとミッションハウジングの間には空きスペースがあり、他のメーカーではここにフィルターを持ってきているのですが、何故そのような設計をしなかったのですか、と聞いてみると・・・

今の状態を予見できる言葉が返ってきた。

「コストがかかるからです」


ここに全てが集約しているような気がしてならない。

あれほど素晴らしい整備性を持っていたトヨタは、今どこへ行ってしまったのだろうか
新時代を見据えて開発した2ZR-FE。軽量でコンパクトタイミングチェーンカバーなどもモジュール化して、スペース効率をアップ

フリクションを低減させるため、軽量ピストンを開発。ムービングパーツの軽量化により、燃費と騒音に貢献

2012年11月19日月曜日

N-BOXのブレーキオーバーライドとアイドルストップの関係がおかしい

ブレーキオーバーライド(アクセルペダルを踏んでいても、ブレーキペダルを踏んだとたんエンジンはアイドル回転近くなる、ブレーキ優先制御)が最近のクルマには搭載されている。もちろん左足でブレーキを踏むことの操作性に、安全機能を付加したものだ。

ただし、そこにアイドルストップと言う制御が加わると、少し厄介な制御が必要となる。それは、ブレーキオーバーライドが作動したときには、アイドルストップさせない、というもの。

もしアイドルストップさせると、ブレーキオーバーライド作動時におけるドライバーの精神状態から、事故の回避行動が送れ、悲惨な結果を招くことが考えられるからだ。

このように、ブレーキオーバーライドが作動したとき、アイドルストップさせない、と言う情報は、クルマを開発する技術者の中でも、共通事項として理解しているのが普通だが、ホンダは違っていた。
ホンダN-BOX

実は、RJCカーオブザイヤーの最終テストデーでホンダN-BOXに再度試乗する機会があり、発表会直後の試乗会で問題提起しておいた、ブレーキオーバーライド制御が、どのような形になっているか確認したのである。

その問題とは、ブレーキオーバーライド状態で停止すると、エンジンもアイドルストップが作動し、エンストしている。これは上記のようなことを想定すれば、よろしくない制御である。

テストデー当日には会場であるツインリンクもてぎパドックに、開発者が3名ほどお見えだったので、それとなく「最初の試乗会ではブレーキオーバーライド状態で停止させると、エンジンも停止していたが、それはどのように改良したのか」と言う問い掛けをしてみた。それに対し「その制御の担当者がここにはいないので分かりません。後ほど確認します」というのである。

ここで一言、上から目線で「他のメーカーでは、関係する開発者の全てが、ブレーキオーバーライドとアイドルストップの制御がどのようになっているか、常に共通項目として持っているのですがね~」とやったのである。

暫らくして、返ってきた回答は「他のメーカーさんと同様な制御になっています、と担当から連絡がありました」というので、開発者二人を乗せて走行チェックする。

テストはアクセルを軽く踏んだままでブレーキペダルを(もちろん左足で)強く踏み付け、停止させる。すると、アイドリングしている。「アッ、改良したんですね」と言いかけたとたん、エンジンは停止。何度やっても同様に停止。では、アクセルを大きく開けて加速状態からブレーキペダルを踏むとどうなるのか。これも急停止させようが穏やかだろうが、停止して一呼吸するとエンジン停止だ。

こりゃ危ない。ビックリ状態から作動したブレーキオーバーライドも、その状態から回避するための行動が、更に遅れることになるではないか


思い起こせば2009年1月のステップワゴン試乗会で、当時の開発責任者に「ホンダとしてもブレーキオーバーライドを組み込むべきだ」と言う提案をしたところ、その開発責任者から部下の開発者に対し「これは取り付けに値する事項だ、次から採用するように」、と業務命令的な指示がされたのに、このような状態の出来には、ただあきれるばかりである。

開発者、実験グループが完璧に左足ブレーキの操作を習得していないと、いろいろな使われ方に対する検証が出来ず、このような思い込み状態に発展してしまう。新しいもの造りに対して「好きなこと」が重要である、という証明のようなものだろう。

最近発売されたN-ONEがこのようなことでなければいいのだが。機会を見つけて確認し報告したいと思う

2012年11月15日木曜日

2013年次RJCカーオブザイヤー顛末記

インポート部門に、会始まって以来の同点が


今年もやってきました、RJCカーオブザイヤーの時期が。しかし、蓋を開けてみたら、インポート部門に同点のクルマが出てしまった

 

11月13日のツインリンクもてぎ。ここには、ベストシックスに選ばれた国産車、輸入車、テクノロジー、そして、RJC技術選定委員会(委員長は私、青池が勤めました)の特別賞候補である技術が並べられた。
テストデー当日早朝。まだRJC会員を迎える準備が着々と進行している。さてどのような結果が出るのだろうか

これより前の11月1日には、公開でベストシックスの開票が行われたわけだが、前評判とは少し違ったクルマやテクノロジーが、最終選考会のツインリンクもてぎへ持ち込まれることが決まった。
RJC会員が集合して、まず最初に始めるのは、当日集められたクルマの撮影。同じアングルで撮りたいカメラマン。それに応えるため走り回る会員がいる

2013年次RJCカーオブザイヤー・シックスベストは、ホンダN-BOX/N-BOXプラス、マツダCX-5、三菱ミラージュ、ニッサン・ノート、スズキ・ワゴンR、トヨタ・アクア。以下同様に順不同

インポート部門のシックスベストは、アルファロメオ・ジュリエッタ、アウディ・A4/S4、BMW・3シリーズ、シトロエン・DS5、メルセデス・Bクラス、フォルクスワーゲン(以下VW)・up!

テクノロジーのシックスベストは、マツダ・スカイアクティブ-D、ニッサンノート・エコスーパーチャージャー、スズキ・グリーンテクノロジー、トヨタ・プリウス用プラグインハイブリッドシステム、VW・up!に搭載のシティエマージェンシーブレーキ

技術選定委員会からの特別賞技術は、三菱ふそう・キャンターエコハイブリッドに搭載される、トラック初のハイブリッドモーター内蔵ツインクラッチミッションが持ち込まれた。

会員の最終確認が終わり、投票から開票へと移る。まず最初は特別賞。

この特別賞については、その技術を信任するかしないかで決まるわけだが、これまでテストデー当日に、不信任で却下されたことはないので、まず信任されるはず。当然その読みは正しかった。
特別賞は、三菱ふそう・キャンターエコハイブリッドに搭載された、 トラックとしては初のハイブリッドモーター内蔵ツインクラッチミッション

次はテクノロジーだが、私が押していたマツダのスカイアクティブ・ディーゼルは、イヤー賞とならず残念。

このすごい、世界のディーゼル・エンジニアが注目する位置にあるディーゼルエンジンであるが、それを理解していなければ、高い評価点を与えることは出来ない。理解不足が招いた結果とも言える。

つまり、RJC会員に対するマツダのディーゼル勉強会が足らないだけではなく、テストデー直前での復習勉強会などの開催も重要であったと思う。世界最高の技術であると言う判断が出来るには、それなりの基礎技術が頭に入っていなければ無利と考えるからだ。

RJC会員の大半は、この基本的な技術(ディーゼルに限らず)の知識はないのだから、そのあたりからの勉強会は今後も必要だと思う。

で、テクノロジー部門のイヤー賞は、スズキのグリーンテクノロジーに決まった。スズキとしては、初のテクノロジー賞受賞である。
テクノロジー賞は、マツダのスカイアクティブ・ディーゼルを寄せ付けず、スズキ・グリーンテクノロジーが獲得

インポート部門のイヤー賞は何と2台。VW・up!とBMW3シリーズ。

衝撃が走ったのはインポート部門。実は、イヤー賞となったVW・up!とBMW3シリーズは、点数を読み上げるたびに同点得票、逆転得票、逆転の逆転を繰り返し、最後の投票用紙を読み上げたところで、同点の得票になる、と言う結末が。
インポートでイヤー賞となったBMW3シリーズ。ディーゼル搭載モデルもあり、輸入車なのにガソリン仕様との価格差は少ない
同数でインポート部門のイヤー賞となった、VW・up!。これまでとは違うVWの先を見越したクルマといえそう

イヤー賞で同点となった場合の扱いは決めていなかったので、会長の一言「両車ともにイヤー賞です」で、会始まって以来の出来事が起きた。

最後はRJCカーオブザイヤー賞の開票であるが、これは大方の予想通りニッサン・ノートが受賞。開票の始めから順当に得票を伸ばし、追い上げるマツダCX-5を突き放した。
大方の予想通りに票を獲得したのは、はやりニッサン・ノート。クルマのできは、コンパクトカーの領域を超えている

2012年11月2日金曜日

ポイント式点火装置を勉強する その⑥

ポイントのギャップが大きいときには、このように乱れた波形になってしまう

 

ポイントのギャップで重要なのは、閉じている時間と開いている時間のバランス。つまり、ギャップが狭くても(コイルの発熱が多くなる)広くてもダメ。

広いと何がダメなのかと言うと、高回転時のコイルへの通電時間が短くなり(業界用語ではコイルへのチャージと言う)、その結果スパークエネルギーが低下する。

ポイントギャップが広くなると、1次波形も、ポイントが閉じるとき電流に乱れの生じている様子が分かる。この結果、次の点火に支障が出てしまう

1気筒エンジンなら、かなり適当にいじってもそれほど問題とはならないが、マルチエンジンでは重要となる。自作したデモ機の場合には、3気筒だったので、その点ではかなり有利。

これが、4気筒、6気筒となったら、シビアになる。まして、昔のV8エンジンとなったら、非常にデリケート。そして、いくらギャップを正しくしても、6気筒や8気筒ようなエンジンでは高回転時の点火エネルギーが不足し、かつ点火時期が遅れるため、高回転時の燃焼が難しくなってしまう。

2次波形を見るとそのエネルギーが小さく、そして放電時間も短いことが分かる。これではまともに燃焼できず、HCを多量に排出することとなる

2012年10月28日日曜日

トラックにもツインクラッチとハイブリッドの組み合わせが登場してきた

三菱ふそう・キャンターエコハイブリッドの試乗会へ参加して気がついたことがある

 

開発・企画で大切なことは「自分の欲しいもの」であって、「これなら売れる」と言う発想で開発すると失敗が多い。ただし、「自分の欲しいもの」と言う考えがまとまるには、趣味や興味が大きなきっかけを作る

 

キャンターエコハイブリッドには、ボルグワーナーの特許に関わらないツインクラッチのシステムと、更に、リチウムイオンバッテリー搭載のモーターによるハイブリッドシステムが組み合わされている。

これが、三菱ふそうで開発された、トラック用のツインクラッチシステムとハイブリッドモーターが組み合わされたミッション。モーターだけでの走行も可能だが、エンジンの停止はしない。それをやるには補機類の駆動を見直す必要が有り、まだ時間がかかる。ツインクラッチなので、乗用車同様2ペダルのATである 

駆動モーターの電池に充電するのは、エンジンの動力ではなく、減速時のモーター/ジェネレーターによる回生ブレーキ発電でのみ。

ディーゼルエンジンなので、エンジンブレーキを強く利かせるため、排気ブレーキも付いているが、その作動開始は実に穏やか。排気ブレーキのバルブが閉ると、回生ブレーキを一瞬少なくし、その後再び、回生率を上げるので、強い減速力が起きず、ドライバーに優しい制御も組み込まれた。

試乗している最中に考え付いたのは、「トラックは積載量によって、走りが大きく違う。空荷のときと積載のときにハイブリッドモーターのアシスト量を変化させたらどうか」というもの。

もちろんモーターのアシスト量は、積載量として500kg増しごとぐらいで段階的に変化させれば十分。リニアな変化である必要はない。

空荷のときにはアシスト0でもいい。積載量が増えるにしたがって、アシスト量も増やしていくことが重要。

この狙いは、最大加速性能を一定として、ドライバーの運転負荷を減らすことが目的。

もちろん、積載量によっては、同じようにはならない(モーターの能力次第だが)だろうが、普通状態に近くなればそれで十分。

500kg増すごとに、最大積載重量までの段階で、アシストの変化が付け難いことはないだろう。この発想は乗用車とは違ったものとなるのだが、総重量が大きく変化するトラックでは十分使えると思う。

キャンターエコハイブリッド仕様。多くの種類を乗ることができた


2012年10月26日金曜日

ポイント式点火装置を勉強する その⑤

ポイント接点のギャップが狭いとどうなるのか

 

正常なポイントギャップの1次波形と2次波形、狭いときの波形を比べると、大きな違いは見当たらない。デジタルオシロなら違いを見つけられるのだろうが、アナログオシロでは無理のようだ。

実際のギャップは、指定された寸法の半分ほど。これで安定した火が飛び続ければそれでもいいのだが、実は、イグニッションコイルへの通電時間が長くなることによって、コイルが発熱し、効率が下がり、プラグへのエネルギーが低下する。

低速運転ほどその傾向が強くなるので、実用上の問題が出るため、やはり指定のポイントギャップが大切と言う話。

ポイントギャップが狭くなることで、ポイントが閉じた瞬間のバウンスはなくなるため、きれいに0Vとなることが分かるが、それならベストと言うわけではない

2次波形は放電時間とエネルギーを計測している。正常なポイントギャップのものと変化は放電時間の僅かな違いだが、それは、シャッタータイミングの違いかもしれない

2012年10月23日火曜日

ポイント式点火装置を勉強する その④

ポイントの接点が完璧でないと、1次電圧が低くなる。荒れることで接点間の抵抗が増え、イグニッションコイルへの通電量が低下するからだ


前回の1次波形を見ると分かるのだが、ポイントが荒れていると電圧の立ち上がりは問題ないとしても(時間設定のゼロ点位置が違うので同じ位置から表示していないが)、電圧は低く、点火エネルギーに影響する状況だった。

正常な状態のポイントを使った1次波形。十分な電圧と鋭い立ち上がりで、イグニッションコイルには確実に電気を送っていることがわかる。縦方向が電圧で一枡20V設定だから、最大80Vと言うことになる 

正常なポイントの1次波形を見るとバッテリー電圧の12Vではなく、瞬間は最大80~100Vであることが分かる(流れている電流は遮断した瞬間に高電圧が発生するので)。つまり、点火コイルには、ポイントが開いた瞬間この電圧が一瞬かかり、その衝撃によって点火コイルの2次側に溜まっている電流が放出され、点火プラグにスパークが起きる。

正常なポイントによる2次波形。しっかりときれいな放電波形が見える

2012年10月15日月曜日

ポイント式点火装置を勉強する その③

ポイントが正常でなければ波形も変化する


ポイント接点の状態とポイントギャップが重要。もちろん点火時期や進角装置が正しく作動していなければならないのは当然のこと


 進角装置にはふたつ組み込まれているのが一般的。ガバナ進角とバキューム進角。ガバナ進角は、エンジン回転数上昇に合わせてある回転まで点火時期を進める装置。バキューム進角は、基本的にエンジンの負荷によって点火時期を変化させるのだが、排気ガス規制が出来たことで、少し目的が変わってしまった、と言うより機能が追加された。

 バキューム進角は、スロットルバルブに作用するバキューム圧(スロットルバルブとスロットルボア間に発生する)を利用するのだが、スロットルバルブが完全に閉じている場合に、少しでも燃焼条件を良くするため、アイドル時だけの進角を行ったり、軽い負荷が加わったとき、遅角(点火時期を遅らせる。NOx対策)も行う機構が組み込まれているものもある。

 これらの装置が正しく作動しているとして、話を進める。

 ポイント式点火装置の波形を見ることで、しっかりと点火エネルギーが出ているかどうかの判断が出来るのだが、それを見るためには、点火装置のデモ機を造る必要があるのだが、それは前回のレポートのように何とか完成した。

 当初は100Vから電気を取り・・・と考えていたが、それよりもバッテリーを2個使用し、点火装置用、モーター用としたほうがよさそうだと言うことが分かった。と言うよりその方が造りやすいのだ。

 波形測定には数十年前に購入したアナログのオシログラフを使う。2現象だが、同時に(といっても代わり番になるが)測定すると、波形がややこしくなるのでプローブはそれぞれ繋いだ状態にして、別々に測定する。
波形測定に使用したオシログラフ。今じゃ骨董品。デジタルオシロが欲しいけれど・・・表示のボルトを設定するダイアルは、1次波形は2Vで、2次波形は0.2Vとした

 1次波形はコイルのマイナス側から取り、2次波形は点火プラグのアース側とデモ装置のグランドの間に、特別に製造してもらったアダプターを入れ、電流値を電圧に変換したものを測定し、エネルギーの比較を行う。電圧の波形を取ることも可能だが、比較が難しそうなのでやめた。
これが電流値と電圧値を計測するためのアダプター。エネルギーは電流であらわされるので、それを計測する

アダプターは点火プラグのアースとデモ機のグランド間に入れ、プローブは点火コイル側にプラスを繋ぎ、アースはデモ機のグランド側にする

 また、当初、回転数を可変にするということで、可変抵抗などを組み合わせたが、これは間違いだった。それは、回転数が変化すると波形も変化するからだ。そのため、最初にテストしたときの波形は使えないので、改めて配線をやり直し、可変抵抗器を取り去り、ダイレクトに12Vを加え、最高回転数での波形だけに止めた。
回転数は7000RPMを目標としたが、ポイントの状態もあって少々表示は上下する

 結果として、ポイントが荒れた状態を再現できなかったので(磨いてしまったので)、ポイントが荒れたときの波形は、その後に見る波形と状態が少し違っている。ただし、ファンクションダイヤルの位置は変更していないので、荒れた状態のポイントによる1次波形は、違いがしっかりと分かる。また、そのときの2次波形も取り忘れた。
装置としての状態も、実際に使用する上では重要な部分。たまには分解してガバナの作動や、バキューム進角の作動チェックをしたい

荒れた状態のポイント。導通常件が悪くなればコイルに加わる電圧に影響を及ぼす。結果として、プラグに飛ぶ火が弱くなる

荒れた状態のポイントによる1次波形。これだけ見たのでは、違いが分からない。コイルの1時側に加わる瞬間最大電圧は約40V。本来はもっと上のボルトになる。正常なポイントの波形は次回に。なお、説明したように2次波形は取り忘れた