研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2014年2月1日土曜日

自転車事故・違反の根源は日本独特の道路交通法にある、とのことになるのだが・・・

「自転車事故が増え、その賠償額は自動車と同じ」。だから注意して乗る必要がある、という結論に導くのは、少し的がずれているような気がしてならない。

根本的な部分を見ていないと思われるからだ。

数十年前からある観察を続けている。それは、歩行者同士が対面したとき、どちら側を歩くのだろうかという点。

また、歩道ではどちら側を歩いているだろうかという点。

日本の道路交通法では「人は右、クルマ(車両)は左」という大原則があるのだが、これは99%以上守られていない。

自分で歩くとき、気にしている人がいない、ということなのだが、私自身、気にしていないと、いつの間にか左側を歩いてしまう。つまり、人間の感性からすると、どうやら左側を歩く方がいいのか・・・

そして、この右側通行と左側通行という違いが、自転車の立場を分かりづらくしていると判断する。

一部では歩道の通行などが許される自転車。そのとき、対向して人が歩いてきたら、自転車はどちら側に避けるのか、一瞬にしてその判断が出来る人は少ない。いやいないかも知れない。

そのような時、脳裏に浮かぶのは「自転車は左側通行だから、左に避けるのが正しい」。となってしまうが、これは完全に逆。

どのような状態になるか、じっくりと考えてみると分かる。自動車と自転車、歩行者の通行区分位置を含めれば分かるはず。

自転車に乗っていると、時には歩行者と同等、時には自動車やバイクと同等と、勝手に解釈して、勝手な走り方をする。また、そのような状態を規則が作り出している。

その結果が事故を引き起こす原因。

道路交通法を変えて、人も左側通行と統一すれば、勘違いはなくなり、都合のいい解釈も出来なくし、自転車事故の撲滅に結び付けるべきだ、と特に最近思っている。

特記
30代の男性二人に「人は右、クルマは左」という道路交通法のあることを知っているか、と聞いてみたところ、「エっ、そんなの知りません」との返事。

「もう一度小学校で勉強して来い」、と吐き捨てたが、そんなことより、自然に左側を歩いてしまう人間(日本人だけ?)の感性を生かして、人も左側通行とすれば、少しは自転車事故も少なくなる方向へ行くのではないかと、最近思う。

いまさら「人も左側を歩く」、という法律に換えると、事故がおきやすい、という反対を述べる人はいないと思うのだが。というのも、人は右側通行ということが認識されていないのだから。

クルマは左、人は右、という車両と人が対面通行する道路交通法が、諸外国にもあるのか分からないが、日本でこのようなことになった理由は“日本は道が狭いので、同じ側を歩いていると自動車などのクルマが来たとき、それを事前に見つけて、素早く避けられないので危険。対向していれば、いち早くクルマを見つけることで、事故を回避できるから”、ということで、ゴチャゴチャな道路交通法が出来た、という話を60年近く前に聞いた。でもね~・・・

2014年1月13日月曜日

マツダが新ロータリーエンジンを開発

REの実用化で世界ナンバーワンのメーカーであるマツダは、RX8以降のREエンジン開発がどうなっていたか、あまり外部には漏れてこなかったが、開発陣はあきらめていなかったのである。

そのRE技術は、デミオEVの走行距離を大きく引き上げる目的で、搭載の発電機を回すことに行き着いた。デミオEVを俗に言うレンジエクステンダーにしたのである。
試作車となるデミオEVのレンジエクステンダー。試乗するとその静粛性と動力性能の高さは、高級車にも迫るものがある。後はいくらで販売できるかだ

その発電機用エンジンとして小型の1ローターREが開発された。排気量は300ccであるというから、かなり小さい。

新しくREを設計するなら、これまでやり残した技術を使って効率の高いエンジンを造り上げてほしいものであるが、話を聞くと既存の実績ある技術にこだわりがあるようなので、「それではマツダとしてブレークスルーにならないのでは」という話から、何をすべきなのか、おせっかいおじさんは、またまた一石ぶち上げた。

13B・REのときから気になっていたのは、ローターハウジングの内面処理。マツダREでは、鉄のタガを同時鋳込みし、その表面に硬質クロームめっきからポーラス処理(逆電流を流し、表面に無数の穴を作る。潤滑オイル保持が目的)をするというのだが、それは時代遅れもいいところ。

鉄のタガを同時鋳込みしたところで、熱による歪違いは処理できないことから、吹き抜け、潤滑不足など、さまざまな問題が発生する。
右奥が13BのRE。左手前が新REで、ローターの厚さは少なく、ハウジングの大きさも小さいことがわかる。ハウジングの内面は鉄のタガを同時鋳込み四、そこに硬質クロームのポーラスメッキを施すというのだが、それは時代遅れだ、ということを述べておいた 

そこで、バイクメーカーでは既に卒業してしまったシリンダーの表面処理を行うべきである、と助言。

シリンダーが穴だらけで排気ガスもそこを通過する2ストロークエンジンでは、如何に熱歪を最小限にとどめ、耐焼き付き性を向上させながら、更に高性能とするためレーシングバイクでの潤滑オイル混合は200(ガソリン):1(オイル)という状況で使われた。

潤滑オイルが少なくても、熱歪の少ないシリンダーが完成すれば、性能は向上する。そこで採用されたのが、アルミのシリンダー壁面にニッケルとシリコンカーバイトをコーティング処理するというもの。

アルミ地肌に硬質クロームメッキのポーラス仕上げは、ヤマハが45年以上前に完成させていた技術。

その硬質クローム・ポーラス仕上げよりも強固な仕上げが、ニッケルとシリコンカーバイトをコーティングするもので、混合気を薄くして(ガソリンとオイルを混ぜてしまう混合ガスの場合、潤滑オイルも少なくなる)性能アップを狙うと、場合によってはピストンとシリンダーは焼き付を起こしてしまう。

鋳鉄スリーブ同時鋳込みや、硬質クローム・ポーラス仕上げでは、このような状況になると、シリンダーにもダメージが加わり、再使用不可能であるが、ニッケルとシリコンカーバイトをコーティングしたシリンダーは、シリンダー表面にダメージが加わらないほど強固で、焼きついたピストンを無理やり引き出し(ピストンの再使用はできないが)、シリンダーに焼き付いているピストンのカスを、耐水ペーパーで研磨処理すれば、再使用も可能なほどのものなのだ。

このようにタフな表面のローターハウジングが出来れば、オイル消費量を積極的に押さえ、効率のいいREが出来上がるはず。

マツダにとってのブレークスルーを確立させるには、このようなこれまでに経験していない技術の導入も重要。ついでにローターもアルミにトライしてはどうか、ということも述べておいた。REを直接動力として使うことがないわけだから、エンジンに対する負荷は遥かに少ない。それは、十分にアルミローターを使用できる要素があるのではないのだろうか。
REは縦置きする(エキセントリックシャフトを直立にし、ローターは水平方向で回転させる)。それによりローターが回転することで発生する振動を、確実に処理できるばかりではなく、発電機とコクドベルトで繋げるので、更に回転変動にも対処でき、走行中の振動などは感じない

2013年12月29日日曜日

いい加減に使えよ!!この技術 圧力損失を8%低減する表面形状

いくら表面を平らにして磨いても、その上に流れる液体や気体は、大小の渦が出来ることで流れが阻害される。これが損失となる。

かれこれ35年以上も前の話だが、ある石油(原油)の輸入会社に対して、日本政府から「輸送タンカーを港へ止めておく時間がもったいないので、パイプライン(長さは数千キロに及ぶ)から送り出す原油の量をもっと増やせ」というような指示があったとか。

しかし、石油(原油)輸入会社は、「石油の井戸から港まで送るポンプの圧力は既に限界で、これ以上ポンプの圧力を上げたら、パイプラインが破損してしまう」「圧力損失があるので、それを何とかしてくれないと政府の要望に応えられない」というようなやり取りがあったらしい。

そこで研究開発されたのが、日本の工業技術院(確かそうだったと思う)による表面形状で、圧力損失は液体でも気体でも8%低減するというもの。

何故その形状の表面にすると圧力損失が低減するのか、読んでいたその新聞には(さすがに新聞、考察が何もない)、一切書かれていなかったので、その後数十年、私の頭の中では“ナゼナゼ問答が続いていた”。

話は変わるがエンジンのチューニングアップで加工することが多い吸気ポート。切削後に表面仕上げをしてもツルピカにしないほうが性能は出る、という話を聞いていたので、私のエンジンチューニングでも、吸気ポートは回転ヤスリ(リューター)で削り、適当に仕上げた。サンドペーパーを棒の先に巻きつけて、磨くことが面倒であるし、その必要ないという話に同調していたが、これは大正解だったことが後に分かった。

この、工業技術院が開発した表面形状というのは、液体・気体が流れる方向にギザギザを造るというもの。

確か山のピッチが1.2mmで、谷の深さは0.8mmだったと記憶する。(逆だったかな。正確には特許庁で調べれば分かると思う)
 
これは、バイクのシフトペダル取り付け部分のセレーション形状だが、同様な形状の表面とすることで、圧力損失が低減する


工業技術院が開発したということで、特許にはなっていない。つまり、日本人なら誰もが無料で、無許可で使えるものであるのだ。

肝心の圧力損失が8%低減する理由だが、言われて見れば「なるほど、その通り」で、この形状を利用した製品がほんの一部のメーカーから発売されていた。

それは、タイヤのハイドロプレーニングを防止することに応用されている。

何がどのようなことで、という疑問が出るだろうが、幅広タイヤに発生しやすいハイドロプレーニング。それを防止するためにトレッドには広い溝をつけることになるが、広い溝とすればハイドロプレーニングを防止できても、タイヤが路面に接地する面積は少なくなり、グリップ性能が低下する。

闇雲に排水用の溝を太くする以外の方法は、その溝に対して流れる水(雨水)が、常に有効な断面積を確保できているかどうかが重要となる。

ここに圧力損失との関係がある。逆台形の排水溝は常に確実な流れが約束されているわけではない。流速が高くなればなるほど大小の渦が出来、場合によっては流れが止まることすらある。これは圧力損失によって発生し、それを少しでも防止するため、前述の形状を排水溝の斜面の部分に造ったのだ。

【リブレットウォール】
溝の壁に微細加工を施し水流の抵抗を低減
従来のタイヤの溝の平らな壁面では、水流により発生した乱流渦を「面」で受けるため、抵抗が大きくなっていました。しかし、ハイドロシミュレーションを駆使して溝の壁にさらに微細な溝を刻んだ[リブレットウォール]は、乱流渦と「点」で接触、抵抗を低減しトレッド溝内のスムーズな流れを実現、耐ハイドロプレーニング性能向上を果たしました。「ブリヂストンのサイトより」

この形状を取り入れると、そこに流れる液体や気体によって、小さな渦が定常的に発生する。その渦の上を液体や気体が流れることとなるため、それ以上大きな渦は出来ず、流れの阻害が低下する。つまり、圧力損失が低下することになる。

ここで、やっと疑問が解決したのだが、そのときのタイヤメーカーから説明があったこの形状は「NASAが開発した・・・」だったのだが、実は日本の工業技術院。「それ違います」とやると開発者の面子がつぶれるので、あえて黙っていたが、出所の分からない技術を何でもNASAということはやめてもらいたいものだ。

この技術を使えば、飛行機のプロペラ、ジェットエンジンのファンブレード、船舶のスクリュー。勿論レーシングカーのエンジンチューニングにも、大きく貢献できると思うのだが。

但し、プロペラやスクリュー(プレジャーボートや競艇用では関係ないだろうが)は、ハイブリッド構造にしなければ、その溝から破損してしまうので、CFRPなどの表面にその形状を作り、それを貼り付けるようにすればいいと思う。

プロペラやスクリュー、ファンブレードでは、表面形状の変化をさせるところは全体ではなく、一番表面流速が速く仕事が高くなる部分だけでいいのだ。それ以外のところはこの形状をつけても効率は高くならない。

何故この技術を使わないのだろうか。知らなかった???

注:開発したのは日本だが、工業技術院だったかどうか確かではない。念のため

2013年12月27日金曜日

RJCテクノロジー・オブ・ザ・イヤーについて考える

今のクルマはテクノロジーの塊。そのクルマに合ったコストバランスに優れたシステムを取り入れているので、そのテクノロジーを理解できなければ、クルマの正しい評価は出来ないと考えている。しかし、テクノロジーの評価はおろそかにされていた。

それを正したのは、昨年(2013年次)のRJCテクノロジー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた、スズキ・グリーン・テクノロジーである。

如何に優れたテクノロジーであるかは、ここでの説明を省くが、販売に対する訴求力は強い。

燃費(エコも含む)、走り、安全という、分かりやすい内容が込められているからだ。それをスズキは巧みに使い、新聞ばかりではなくTVのCFを特別に制作し、全国放送を数ヶ月に渡って放映した。更に、各地で行われるイベントに、そのテクノロジーを搭載したクルマを展示し“RJCテクノロジー・オブ・ザ・イヤー”に輝いたことを大きく、謳い文句で宣伝。

一般ユーザーでは分かり難い走りの性能ではなく(そのクルマの性能がどうでもいいということではない)、直接身に降りかかることに対してであるから、ユーザーは内容を理解しつつ、そのクルマを選んだはず。

このようなことを踏まえているのかどうか定かではないが、2014年次RJCテクノロジー・オブ・ザ・イヤーとなった、三菱アウトランダーPHEVについて、年明け早々特別なCFを流すという。

この背景は、前述したスズキのグリーン・テクノロジーに対する評価と、その販売訴求力を“使える評価”としたとも取れる。

このように最先端のテクノロジーに対しての理解は重要で、そのような意味からホンダ・フィットハイブリッドに搭載された、ツインクラッチミッションとアシストモーターを採用した“SPORT HYBRID i-DCD”に対する評価は重要だったのだが(シックスベストにも選ばれなかった)、何がどのように素晴らしいのか、すごいことなのか、という内容を分かりやすく説明していなかった。

フィット3のハイブリッドに採用されたツインクラッチミッションとモーターによるアシストの構造。その構造にはこれまでにはない内容が多く、非常に興味が沸く。但し、この構造と制御を、説明ボードから理解できた人は数多くない。そこが問題である。説明不足、勉強会不足だからだ 

フィット3の発表会場ではRJC会員だけではなく「説明ボードを見れば分かるだろう」「質問のある方は受け付けます」的な態度だった。言ってみれば、モータージャーナリストを買い被り過ぎで、テクノロジー、最先端技術に興味や理解を示さない人物は、特に最近の難しい技術に対しては、アレルギー反応を示す方もいることを認識すべきだ。

よほどの基礎技術や興味を持つ人物(RJC会員だけに限らない)以外、理解できないことは非常に多くなっている。

そして、その技術は、そこから放たれる内容が分かりやすく、直接ユーザーに購買意欲を沸かせることとなっているようだから、ジャーナリスト達にも、自分の頭の中で人に説明できるだけの理解をしてもらわなければ、正しい評価は得られないし、その評価が正しいかの判断すら出来ない。

クルマの制御に対するテクノロジーも同様である。今は、軽自動車ですらCan通信を使って多くの情報をECUに送っている。最近では、これでも速さと情報量に不足するので、更なる通信技術を使う研究がなされている。

このように難しいと思われる最新のテクノロジーは、それを理解して最終選考会まで持ち込むには、自動車メーカー側もそれなりに努力が必要だ。


2013年12月13日金曜日

カーナビとオートライトをリンクするといいと思うが

暗くなると点灯するオートライトを装備しているクルマがあるが、曇りの日などでは、橋の下を通過するだけでヘッドライトが点灯してしまう。

位置情報を持つカーナビは、今どこをどのような状態で走行しているかが分かるはず。

それを取り入れれば、必要のないことでヘッドライトやポジションライト(クリアランスライト)が点灯することもなくなる。

GPSが装備されているのだから、緯度を計算に取り入れれば、夕方の薄暗くなった時点で適正にライトの点灯も行われるはず。

何故、このようなものが組み込めないのか、十年以上前から不思議でならないのだ。

2013年12月1日日曜日

いまだにある、やり尽くしていない状態での自動車販売

モデルチェンジしたばかりのクルマとか、ニューモデルなどは、発売してすぐに買ってはいけない、ということを言われてきたが、一部の自動車メーカーのクルマでは、いまだにその状態が続いているような感じだ。

何故そのようなことが起きるのか、それは、新しいクルマの開発・企画で、販売を担当する営業も同席し、発表・販売時期を何年・何月・何日まで決めるのだが、これは何処の自動車・バイクメーカーも同じ(海外は知らない)。ただし、そのことで問題が出る場合があるということ。

発表・発売時期が近づいて、全ての開発と実験・走行が終了し、何処からも批判されないクルマに仕上がっているのなら問題ないのだが、往々にして、開発から「もう少し時間をくれ、せめて1ヶ月」などという意見が、営業に伝えられる。

「了解、思う存分、納得のいくまで開発を行ってくれ」という、購入したユーザーを第一に考えるメーカーも有るだろうが、言い方は悪いが「未完成でも、とりあえず売ってしまえ」、と計画重視の営業から、逆切れされているような場合があることを見て取れる。

発表・発売が遅れれば、当然利益はその分少なくなる。ライバルメーカーの同様なクルマへ購入者が流れてしまうこともある訳だから、営業としては、会社の利益を考えた場合、それはあってはならないこと。そのため開発グループに対して「発売が遅れたら、いったい何億損をするのか、知っているだろうな」。というような発言が、今でも飛び交うようだ。

このような話は、メーカーの開発者と未完成の話をしているときに聞くことがあるので、そのときには、このような内容で切り返しなさい、とアドバイスする。それは「開発をやりつくしていない状態のクルマを購入したユーザーでも、その内、何かおかしい、ということには気が付くし、ネットでもそのクルマに対する評価が出てくれば、当然未完成のクルマを売りつけられた、と分かる」「こうなれば、リピーターになってはくれないし、購入を希望するお客を紹介してもくれない」「そのときの損失は、いったい何十億になるのか考えたことはあるか」。という内容である。

これが、どれほど効果を生むか分からないが、実際に販売店では、直接矢面に立たされているわけだから、開発をやりつくしたクルマと、そうでないクルマのお客さんは、当然気持ちが違うはず。それをダイレクトに感じている販売店からの意見も重要だ。

見た目には分からない未完成・開発途中のクルマ。自動車ジャーナリストでも、それを見極められない方は多いので、当然、一般ユーザーが、数十分ディーラーで試乗しても分かるはずがない。雑誌の試乗記にも欠点や未完成と思われる内容が書かれていることは少ないからだ。

コンピューターによる解析が進んでいなかった時代では、ハード(ボディ構造、サスペンション構造と作動軌跡など、制御部分ではない)に問題や未完成部分を見ることはあった。コンピューターによる解析技術が進んだ現在でも、ハード部分の未完成が絶対ないわけではないが、やはり制御と、その使い方に未完成部分を見つけることがある。

欧州車には個性とか思い違いという特徴はあっても、おかしなところは感じたことがない(認識が足らないのか?)ので、開発をやりつくしてからでないと、販売店に並ばないのかもしれない。

2013年11月16日土曜日

エンジン・チューニングの極意。それはヘッドボルトを締めないこと

「いきなり何だ」と反論を返されそうだが、ヘッドボルトを持つもの?は、それを締めなければガス漏れ、水漏れが起きて当然なので、あくまでも極意であることを念頭に入れて読んで欲しい。

バイク・エンジンでの経験談を下に話を進めると、それはレースで得た結果がある。

数十年も前のことだが、筑波サーキットで、当時盛んに行われていたミニバイクレース。そのレース用にマシンを製作した。

ベースとなったバイクはヤマハのGT80で、当時はヤマハからレース用の部品が発売されていたので、シリンダー回りはそれを使用したが、ヘッドはヤマハのチューニングパーツを製作販売していた“スペシャルパーツ忠男”の水冷ヘッド。

勿論、圧縮比は標準以上高くするため、ヘッドの合わせ面を旋盤で1mmほど削る。スペアとした空冷のヘッドも同様に加工して、水冷ヘッドを組み込んだが、ヘッドの厚みがあり、ナットとボルトの噛みあい寸法が十分ではないため、指定トルクまで(いくつか忘れた)締め付けられず、適当に締め上げてレースに参加。

但し、この当日、別の仕事が入りレース場にはいけなかった。もともとライダーは私ではないので、その友人にマシンを預けて結果を待つことに。

で、聞きました。レース結果を。すると「予選はブッチギリで、誰も付いてくる状態ではなかった」、「でも夕方の決勝前にパドックでエンジンを始動すると、ヘッドとシリンダーの間から火が噴出していたので、空冷のヘッドと交換し、しっかりとナットを締め、決勝に挑んだが、予選の走りは何処へやら」。結果は8位だったらしい。

何が変わってしまったのか。そのときには判断できなかったが、ある時、レーシングカートのエンジンで、常に速いカーターのエンジンをチューニングする人物は、ヘッドボルトをしっかりと締めず、軽く締める程度で、暖機運転中はヘッドとシリンダーの間から炎を噴いているが、暖機終了時にはピタリと治まっている、とか。

その目的は、シリンダーヘッドのボルトを締めることで、シリンダーやヘッドの熱膨張に対する歪を逃がすことが出来なくなり、その結果がシリンダーの真円度に出るので、エンジン性能の低下に結びつく、というものだった。

つまり、シリンダーヘッドを締めないことが、エンジン・チューニングには必要なことなのだ???

特に2ストロークでシリンダーとシリンダーヘッドを、クランクケースからの通しボルトで(スタッドボルト)締め付けているエンジンでは、エンジンが熱を持つことでシリンダーやシリンダーヘッドが膨張しても、締め付けボルトはそれほど延びないことから、暖機が終了する頃には、規定トルク以上にボルトを締めていることとなり、その歪は、シリンダーの内径に悪影響を与えるのだ。

それを熟知していたホンダ・スーパーカブ(SOHCでキャブ)エンジン開発責任者は、シリンダーとヘッドの締め付けボルトを吟味し、大部分の外径を細くすることで、必要以上に締め付け力(軸力というのだが)が高くならないようにしていた。

同様なことは、VWビートルの空冷エンジンにも見られる。1300~1600ccエンジンで、使用するボルトは長く、径は8mm。このヘッドボルト締め付けトルクは、確か3kg-m以下だったと思うし、いくら締めても、キッチリとした手ごたえを感じることはなかった。それで、あの安定した性能が得られていたのだ。

ある時、仕事の取材で、当時のチャンピオンエンジンを製作するショップにお邪魔したついでに、ヘッドのボルト締め付けについて聞いてみると「普通の方は、規定している締め付けトルクの±表示があると、ついついプラスの数値で締めますが、我々はマイナス数値で締めます」とのこと。「これは、ダミーヘッドボーリングやホーニングを行っても、熱が加わった状態での加工ではないため、それを見越してのことです」と話してくれた。なるほど矢張り・・・

F1エンジン(当時のチャンピオン、ルノーだったと思う)で、ある時、よく観察すると、どう見てもヘッドとシリンダーは一体構造。トヨタのエンジンでは、明らかにクランクケースとシリンダーが一体(一般のエンジンと構造が同じ)。

シリンダーとシリンダーヘッドが一体であれば、ヘッドガスケットを持たない構造となり、その部分の締め付けがないことから、ヘッドやシリンダーに対して締め付け歪、熱歪の影響が非常に少なくなる。シリンダーのボア大きく、ピストンのストロークが小さいレーシングエンジンなら、下側からヘッドの加工やバルブの組み立てなど、造作もないこと。

この、シリンダーとヘッドの一体構造は、実際に見たわけではないので“仮想”かと思っていたら、ある時、ケーブルテレビの番組で、アメリカのベンチャー企業が、F1エンジンのコンストラクターに参加しようと開発していたエンジンを見て、やはり、私の判断に間違いはなかった。一瞬だが、シリンダーの穴の先にヘッドが一体となっていることを見つけた。