研究開発に見た遠回りの結論にあきれる -水素エンジンと点火装置-


2013年5月12日日曜日

トヨタに有ったはずの熟成グループ 今はどうなっている

トヨタには、ほかの自動車メーカーにはない部署がある。(現在どうなっているのか定かではないが)

それが熟成グループという部署(組織と呼べない訳もある)

その名称を知ることになったきっかけは、昔勤めていたオートメカニック編集部時代に遡る。

熟成グループという言葉を知ることになった時代は、新しいエンジンが開発されると、そのエンジンの構造や作り方を紙面に取り上げるため、トヨタに限らず分解取材の申し込みを常に行っていた。そして、あるときトヨタの新エンジン搭載モデルに白羽の矢が立ったのだが、そのエンジンは注目されていた(クルマ本体と共に)こともあり、取材に対応してもらえるまでに数ヶ月の時間がかかってしまったのである。

発表・発売後に時間がかかってもいいのだが、普通に分解していくだけではなく、その構造説明や何故このような作り方をしたのか、などの質問を開発者に浴びせ、その時点で答えをもらいながら取材していくというのが、我々の方法だったので、分解の時には、エンジン開発担当者の同席が必要だった。

ところが、広報の担当者は、エンジンの準備が整っても、肝心の開発者がどこに移動となったのかわからないという。「今はその車種も“熟成グループ”に引き継がれていますし・・・」

熟成グループ???それなんですか。常に、何故、どうして、という疑問を持ちながら取材したり、話を聞く習慣から、熟成グループという言葉にひきつけられた。

熟成というからには、開発が終わり、発売されたそのクルマを、更に良くするため、またやり残した部分を開発し成熟させるために組まれた、特別な組織なのか、と思ったら、違っていた。そのような、やり残しの部分をやる組織は別にあり、それはそれで進行するという。

では、熟成グループとは、いったい何をする組織なのだろうか

熟成という言葉だけを聴くと、発売されたばかりのクルマを更に良くして、マイナーチェンジやモデルチェンジに生かすのではないかと思ってしまうが、実はまるで目標とすることが違う。

この熟成グループのやることは、宛がわれたクルマを普通に数人で使用し(テストコースでガンガン走らせるという項目はない)、欠点や不具合を見つけ、それを改良し、発展的データを集めること。

また、そこに集められるメンバーは、宛がわれたクルマの開発に一切携わらなかった人達で、クルマによって人員の数は違う。当時カローラクラスでは5名ほどだが、セルシオクラスでは10名以上という。

そして、そこに集められるメンバーは技術者とは限らず、事務系、仕入れ窓口、製造ラインなどありとあらゆる職種から選ばれる。

クルマを一般ユーザーが使うという設定に中で、何が不満となるのか検証するというわけだが、不満が出た部分は、改良を熟成グループが自ら行う。

それはサスペンションの改良などにも及ぶが、寸法などを変えることなく(コンセプトばかりではなく運輸省「国土交通省」へ届けたときと数字が変化するのは非合法ともなるし)剛性変更をブッシュ周りやアームの形状で行うにとどめる。スプリングやダンパー、ボディ周りの剛性バランスなど視野は全体に及ぶ。

更に、何故このような設計・開発をしたかわからないようなことも起きるが、そのようなことを想定して、この熟成グループ(一回限りの集団)には、開発者とコンタクトが取れる人員を1名だけ入れる。

で、一般的には、ここで得られたデータを次のモデルチェンジで有効活用する、と思われるのだが、それが違うのである。

もちろん一部のデータはモデルチェンジで使うこともあるが、大半は新型車を開発するときに、同様な設計をしたらどうなるのか、と言うような基礎的なものとして使われると言う。

やりがいがあるかどうかは知らないが、せっかく得られた貴重なデータが、日の目を見ないことは多いと言うことであった。

このような組織編制がほかの自動車メーカーにもある、と言うことを聞いたことはない。

2013年5月8日水曜日

試乗会で見つけた、とんでもないクルマ達 その②

これもH社のクルマで、日本では一般販売しなかった車種。基本的にアメリカだけがターゲットのEV。ここまで書くと「ハハーン、あのクルマか」と分かる方もいるだろう。

で、どのような欠陥があったのかと言うと、アクセル周りの制御である。

具体的には、アクセルを踏んでいないのに、数十メートル勝手に走る現象。

試乗会は、正式なナンバーが取れるものではなかったので、大磯プリンスホテルの駐車場。

試乗前の説明では、ブレーキを強くかけると回生ブレーキもしっかりと作動すると言うので、思いつくままの走らせ方をしてみた。

その方法は、前進している状態で、アクセルペダルから右足を離し、左足でブレーキを踏み、その瞬間セレクターをリバースとしながらアクセルを踏む。

すると、強い回生ブレーキ状態が2秒ほど続いてから普通に停止、と思いきや、停止した次の瞬間、そのクルマは、アクセルを踏んでいないのにバック走行を開始。

その距離、数十メートル。

バック走行しながら、同様にセレクターをDにして実験すると、停止後に前進を開始する。

アクセルを踏んでいたことで、その記憶が残り暴走するのだろう。

この話を開発者に直接言ってみたのだが「普通のATでも、そのような操作はするのですか」、と、かなりとぼけた返事。思っても見なかった状態だったのだろう。そこで「EVはセレクターがスイッチですから、機械的なダメージはないので、やった結果です」、と話をしたのだが、これは大きな欠陥であることが後日分かった。

ほかのメーカーが試作するEVにおいては、走行中にセレクターを操作すると、電気が遮断され、リセットを要求してくる。

このときにはいったん停止し、イグニッションキーをオフにしてから、再度オンとするだけのことなのだが、操作ミスなどが想定されての制御である。

これができていなかったのはH社がアメリカ向けに開発していたEV。もちろん輸出される前に修正されていたのは言うまでもない。

発想の乏しい人物が開発をやると、常識としてあるべきシステムに気が付かず、このような失敗をしでかす。輸出される前でよかった。

ところで、その後、私のところには、何のお礼の言葉もない・・・・

2013年4月29日月曜日

首相のクルマが追突事故 それを回避できたのでは

先日、阿部首相が乗る車列が首都高の代々木料金所で追突事故を起こしたと言う。

運転手のミスとしては、ETCカードの装着忘れ。それと、たとえバーが開かなかったとしても、それを突き破らなかったことの2点。

そして、いつも言うことだが、AT車に乗る場合には、左足も有効に使ったほうがいい。

つまり、左足でのブレーキ操作ができていれば、少なくても5台まとめての追突は避けられたはず。

ブレーキ操作が必要になるであろうと言う予測ができれば、その時点でブレーキペダルには足がかかっており、緊急状態が発生したときには、間髪をいれずブレーキペダルを踏める。そのためのブレーキオーバーライド制御(ブレーキ優先)なのだから。

アクセルペダルを受け持っている右足でブレーキペダルを踏む場合、どうしても時間差が生じるので、その分進み、車間を十分にとっていなければ、追突して当然だ。

2013年4月24日水曜日

試乗会で見つけた、とんでもないクルマ達 その①

だいぶ前の話だから、ここいらで暴露してもいいだろうと判断して、自動車メーカーにとっては耳の痛い話しをしよう。

そのとしてはH社の2.0と2.5リッターのI

何が問題だったかと言うと、直進性にである。これは試乗会でのことで、高速道路を走行中に100mほど走ると1~2mほど右へずれる症状。

ただし、そのときには「まさか」と言うこともあり、私の運転センサーがダメになってしまったのか、と言う結論を出した。

開発者との話は、TAのシフトゲート形状に終始し、高速直進性には行き着かなかった。

しかし、試乗会後2ヶ月ほどしたときに、フリーのライターが、試乗会で乗ったクルマではない2.0リッターモデルを借用してきた。そして、そのクルマに乗ると、なんと試乗会での出来事を思い出させた。右に行ってしまう現象だ。

広報部に親しい方がいて、クルマの運転にも精通していたので、その方に全ての同型車で走行を確認してもらうと、なんと「ここにあるIは全部、右に行ってしまいます」、と言う返事が返ってきた。

そこで、そのような問題を集めて、改良点を導き出すような組織にいる方に、車種と症状を告げ、何が問題だったのか、調べてもらうと、なんと、フロントサスペンションを取り付けるブラケットを位置決めするジグに狂いがあり、アライメント不良(経験からすると、おそらく右のキャスター角不足)となっていたと言うのだ。

フロントはトーしか調整ができないH社のクルマでは、当然ほかのキャスターやキャンバーなどをチェックするシステムはないわけで、普通に組み立てラインを流れていた。

私の情報から組み立てラインを停止し、修正が行われたのは当然だが、何故このようなことが発生したのか聞いてみると「当時はバブル期真っ盛りで、開発責任者が最終チェックをする暇もなく、そのまま出荷していた」というのだが、果たして、開発責任者が最終試乗しても、この問題点を発見できたか、大いに疑問である。

2013年4月16日火曜日

今年のパイクスピークに日本からサイドカーで参戦しようとするチームが救いを求めている

パイクスピークとは、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムのことで、アメリカのコロラド州で毎年開催される。

このパイクスピークに、日本からレーシングサイドカーでチャレンジしようとするのが、イギリス・マン島TTレースにも出場経験のある「Rising Sun Racing」

ドライバーは渡辺正人さん、パッセンジャーは安田武司さん、メカニック兼サブパッセンジャーは大関政広さん。以上の3名だが、ここのところの円安で、資金不足となり、悲鳴を上げている。

どなたかスポンサーとなる人、企業の方はいませんか、と言うことで動き出しているのだ。

ちなみに、今年(2013年)のパイクスピークは6月15日から30日までだ。

参加の許可はすでに得ており、後は渡米するのみ・・・

左がドライバーの渡辺さん、右はパッセンジャーの安田さん


問い合わせ先は、048-533-3169㈲渡測内Rising Sun Racing
E-mail:watanabe@risingsun-racing.com

2013年4月6日土曜日

トヨタはディーラーメカニックを100%信用していないから、いいクルマ造りになっていたはずだが

トヨタのクルマをいじっているとわかること、それは他のメーカーのクルマに対して、日常メンテナンスを含めた分解・整備が非常にやりやすいのである。

あるクルマなどは、エアクリーナーの交換が僅か数十秒で完了する。工具も必要なく、組み付けミスも出ない。ケースに書いてある操作をするだけで、初めての人でもパーフェクトに交換できる。

何故このような考え方にこだわるのか、それは、トヨタに限らずメカニックにはヒューマンエラーが多く発生するからである。

「ここまでは一般オーナーがやれる部分、ここから先はメカニック」という線引きもしていない。いくらメカニックであっても、気が付かない間違いを起こすからである。しかも、その間違いが自分のものとして返ってこない(フロントで処理されるだけ)。そこに大きな組織としての問題も潜む。街の修理工場は直接お客からの苦情がメカニックに届くので、優秀な人材の育つ土壌があるが。

このヒューマンエラーについては、実際にどのような結果となっているか、追跡調査も行っていた。


そのやり方とは・・・例えば完全にディーラーでメンテナンス管理されたクルマが、下取りとしてメンテをしていたディーラーに入ったとき、ポンコツにされる状態まで使い込んでいたり、あるいは事故車であったりした場合、走行距離、使用年数の多いものを研究所に運び込ませ、整備記録簿に記載されている事柄が正しく行われていたかどうかのデーターを集めたのである。もちろん、全国各地から、出来るだけ数多くを集めたのは言うまでもない。

当然、検証に使われたクルマには、メンテナンスをしたことにより発生している問題点が数多く発見できた。それにより、メカニックが陥りやすい構造など、出来るだけ排除する設計を順次取り入れて、現在に至っている。

前記のエアクリーナーがそうであるし、補修部品の段階でも変更が見られる。それは、ブレーキホースとディスクキャリパーの接続部分に使われるガスケット。このガスケットは、片側を入れ忘れないよう、2枚のガスケットがコの字形の一体構造に変更された。2枚バラバラのワッシャではないので、紛失もしにくいし使用してあることが一目瞭然である。

このように徹底したサービス優先のクルマ造りが、いつしか利益優先のクルマ造りに変わった。それが今、問題を引き起こし表面に出てきたのではないかと思う。

2013年3月6日水曜日

POPヨシムラ ゴッドハンドの真実

POPヨシムラが、ゴッドハンドの持ち主だ、と言われるようになった所以は


それは、POPヨシムラ氏が手仕上げしたカムを取り付けたバイクの性能と、そのカムをベースに親カムを造り、量産したカムを取り付けたバイクでの性能に、明らかな差が出ていたからだ。

POPヨシムラ氏を知らない方は、他のサイトで調べてください。ここで経歴を述べていると、文章が長くなりすぎますので割愛します。

POPヨシムラ氏(以後ポップ)は、言わずと知れたバイク(4輪にも手をつけたが)チューニング会の大御所。

そのポップがチューニングしたエンジンは、素晴らしいものばかりだったのは言うまでもない。

私自身はポップと個人的な知り合いでもあった。ただし最初はバイク誌「モーターサイクリスト」の編集記者としての仕事から、個人的な付き合いに発展したのだが・・・

長い間ポップは、バルブタイミングにこだわり、開発では独自にカムシャフトを設計し、手作業で造り出していた。今のような工作機械がない時代であるから、カムを造るとなったら大仕事。

量産する場合には「親カム」という大きなマスターカムを作って、それを研磨機で使えばいくらでも造れるのだが、その親カムを生むためのベースとなるカムを手作業で造ろうというのだから、これは並大抵のことではない。

もちろん最初の荒削りは手動の工作機械を使うが、大切な仕上げはオイルストーンを使う手仕上げで、これまでの感と手で触れるカム面の感触だけが頼りになる。

納得の出来るカムが出来れば、直ぐにバイクへ組み込み富士スピードウエイで走行テスト。十分な性能を確信した状態から量産用のマスターカムを造り、これを使ってカムの研磨をする。

開発で仕上げたベースカムから造る親カムであるから、当然性能は同じとなるはずだが、自分達のところで走らせても、手仕上げベースカムのような性能は出ない。

何故なのだろうか?


はゴッドハンドだと言う噂が広まってしまったのだが、その不思議なことも、疑問に思っていると、あるときいきなり解決する。
 ポップから話だけは聞いていたが、その後このことは頭から離れず、カムを見るたびにポップの仕上げたカムと量産は何故性能が違うのか、不思議儀思っていると、何時しかチューニング関係者の間からはPOPヨシムラ

ジャンプカムと言うのが答えだ


十数年後、当時のグループAと言うカテゴリーで、ラリーへ参加している三菱自動車の岡崎研究所を尋ね、エンジンのチューニング内容を取材しているときに「ジャンプカムで高回転時のバルブ開閉量を多くしています」、と言う答えが返ってきた。

何ですか「ジャンプカムって」と言う問に対して「吸気カムのリフトの途中に、小さな山を設けることです。低回転では、そのカム山の形に添ってバルブは押し開かれますが、回転が高くなると、いくら小さな山でも、その山で弾き飛ばされる形となりますから、バルブの開く量がそこから大きくなり、繋がるカム山に当たるまでの間が、バルブの開口面積の増大となりトルクが増えます」というのである。

ここで、これまでの疑問が解けた。ポップの手仕上げカムも、このジャンプカム状態になっていたこのだ。

 左から普通のカム、三菱が使っていたジャンプカム(赤く塗ってあるところがジャンプ台)、右が、ポップ吉村氏が手仕上げして作ったチューニングカムの表面を誇張したもの(これも赤く塗って)。顕微鏡精度からすると、このように凸凹となるわけで、高速回転になれば僅かな凸凹であっても、ロッカーアームを跳ね飛ばすことによりバルブの開閉量が増え、バルブタイミングも違ってくる。バルブリフト量は増えるのだが、そのときピストンは既に下がっているためバルブが当たることはない